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小惑星から地球を守れ

Ryou Ohsawa
September 13, 2020

 小惑星から地球を守れ

NHK 「コズミックフロント☆NEXT 」連携講座 − 宇宙から見た地球「小惑星から地球を守れ」で使用した講演資料です.

Ryou Ohsawa

September 13, 2020
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  1. アウトライン 私たちの住む太陽系のすがた 地球接近小惑星とその起源 地球に小惑星が衝突したら何が起こるのか (休憩 10 分) 地球接近小惑星とは何か 1. (45

    分程度) プラネタリーディフェンス 2. (35 分程度) 脅威となる小惑星の衝突に備える 地球は天体衝突の危機に瀕しているのか?
  2. 地球(惑星) 直径 およそ 13,000 km リュウグウ 直径 およそ 900 m

    セレス(準惑星) 直径 およそ 1,000 km Earth: www.nasa.gov; Ceres: NASA/JPL/Justin Cowart; Ryugu: hayabusa2.jaxa.jp 地球と太陽系小天体の大きさ
  3. 地球(惑星) 直径 およそ 13,000 km リュウグウ 直径 およそ 900 m

    セレス(準惑星) 直径 およそ 1,000 km Earth: www.nasa.gov; Ceres: NASA/JPL/Justin Cowart; Ryugu: hayabusa2.jaxa.jp 地球と太陽系小天体の大きさ
  4. 太陽系における小惑星の分布 リファレンス 地球よりも内側 (< 1 au) から海王星よりも外側 (> 30 au)

    まで 太陽系に広く分布している * 小惑星の分布には偏りがある * メインベルト / ヒルダ群 / トロヤ群 / エッジワース・カイパーベルト 惑星のそばには少ない & 大惑星の重力によって強く影響を受けている 小惑星の軌道は長い時間をかけて変わりうる * ケンタウルス族の小惑星はもともと太陽系外縁にいた天体 軌道が変化しつつある小惑星もいる
  5. 地球接近小惑星の寿命 Gladman et al. (2000) および Morbidelli et al. (2002)

    の結果を参照 軌道共鳴: 長い時間をかけて惑星の重力に揺さぶられる効果 (軌道が細長くなる) 近接遭遇: 惑星の重力で投げ飛ばされる効果 (軌道の大きさが変化する) 太陽系の内側は惑星からの影響を受けやすい * 地球接近小惑星の寿命は短い * 地球接近小惑星は何年間生き残れるかを計算機の中で実験 (Gladman et al. 2000) 軌道が既知の 117 個の小惑星の運命を 6,000 万年後まで計算して調べた ほとんどの小惑星は 1,000 万年程度で消失 or 弾き飛ばされてしまった 太陽系の年齢 (46 億年) に比べて地球接近小惑星の寿命は遥かに短い
  6. Gladman et al. (2000) および Morbidelli et al. (2002) の結果を参照

    小惑星の大半は太陽に突入して消失 ⇨ 衝突の可能性が高い惑星は金星と地球 ⇨ 木星に弾き飛ばされて太陽系の外へ ⇨ 6,000万年生き残ったは 16% のみ ⇨
  7. 地球接近小惑星の起源 Gladman et al. (2000) および Morbidelli et al. (2002)

    の結果を参照 約 1,000 万年前 (中新世): ヒトとゴリラが生物学的に分岐した時期 約 6,500 万年前 (中生代): 巨大隕石衝突による中生代最後の大量絶滅 (恐竜の絶滅) 地球史の時間スケールで見ても地球接近小惑星の寿命は短い 地球接近小惑星の寿命は 1,000 万年程度 * 地球接近小惑星の起源 * 太陽系が今の姿になってからおよそ 30 億年程度が経っている どこかから定常的に地球接近小惑星が供給され続けなければ空っぽになっているはず メインベルトにある小惑星が輸送されてきているという説が有力
  8. 地球接近小惑星の起源 Gladman et al. (2000) および Morbidelli et al. (2002)

    の結果を参照 2.1 天文単位付近で土星からの影響を受けてやってくる 2.3 天文単位付近で木星からの影響を受けてやってくる 地球や金星と近接遭遇することでさまざまな軌道をもつ小惑星になる 地球接近小惑星はメインベルトからやってくる * 何が地球接近小惑星の数を決めているか * 不安定な領域に小惑星を輸送させるメカニズムが鍵 熱輻射の不均一性による加減速 (ヤルコフスキー効果) が有力な候補
  9. 小惑星の衝突による影響 宇宙空間での速さは中心天体の重力と軌道の大きさで決まる 地球の静止軌道での円運動速度 … 3.14 km/s (≒ 銃弾の初速) 衝突の規模(エネルギー)は 質量×速さ2

    * 太陽の周り 1 au (地球) での円運動速度 … 30 km/s (地球静止軌道の 100 倍のエネルギー) ⇨ スペースデブリが飛び交う空間はマフィアの抗争と同程度に危険 ⇨ 1 g の石ころでも高速道路を 100 km/h で走行する乗用車と同じエネルギー ⇨ 5 t のマイクロバスの場合ベイルート爆発と同規模のエネルギー
  10. ロシア・チェリャビンスクへの隕石落下 2013 年 2 月 15 日午前 9 時ごろ (現地時間)

    エカテリンブルグから見た隕石の飛跡 (写真: Svetlana Korzhova)
  11. ロシア・チェリャビンスクへの隕石落下 人口 100 万人超の大都市 / 通勤時間帯 (朝 9 時頃) だったこともあり目撃者多数

    チェリャビンスク: ロシア西南部の中心都市 * この爆発を引き起こした隕石 (小惑星) の大きさは直径 20 m 程度と推定されている ⇨ ベイルート爆発の 500 倍/ 広島型原子爆弾の 10 倍 / 兵庫県南部地震と同程度 火球は上空 30 km ほどでエアバースト * エアバースト…分裂し表面積が瞬間的に増加, エネルギーを一気に開放する現象 分裂破片は 70 km ほど離れたチェバルクリ湖周辺に落下 (直径 6 m 程度のクレーター) エアバーストによる光や衝撃波によって 100 km 程度の範囲で被害が発生 爆発の総エネルギーは TNT 爆薬 500 キロトン (~ 2 PJ) に相当 Brown et al. (2013) および Popova et al. (2013) の結果を参照
  12. 小惑星の衝突が引き起こす現象 1. 地表への衝突で起きる現象 * 隕石孔 (クレーター) の形成と衝突噴出物の堆積 小惑星の大きさの 10 倍以上の大きさの孔が形成

    / 噴出物が周囲に堆積 2. 蒸発した物質による火球の形成と輻射熱 衝突速度が 15 km/s 以上の場合は融解した岩石が蒸発して半球状に広がる 3. 衝突による地震波 距離による減衰が他の効果よりも少ないため遠距離まで影響がある 4. 爆発によって形成される衝撃波 瞬間的に圧力が上昇する衝撃でガラスや建物を破壊する
  13. 小惑星の衝突による影響 ケース 1: 直径 40 m の鉄隕石 (バリンジャー隕石孔) ケース 2:

    直径 1.75 km の石質隕石 (ネルトリンガー・リース) ケース 3: 直径 18 km の石質隕石 (チクシュルーブ・クレーター) 仮想的な小惑星が衝突した時の影響を見積もる * ⇨ それぞれのケースで爆心地から 200 km 離れた位置での被害について考察 バリンジャー隕石孔 ネルトリンガー・リース チクシュルーブ・クレーター
  14. ⇦ 巨大噴火爆発相当 ⇦ クレーターよりも巨大な火球 ⇦ 中規模の被害 (200km) ⇦ 200km先でも10cm程積もる ⇦

    木造建築物が倒壊 ⇦ 火球からの熱で衣服が発火 0.09m ⇦ 日本地図の書き換えが必要
  15. 小惑星の衝突による影響 100 m 程度の小惑星 ⇨ 1 km スケール (市町村) で地形が変わる

    1 km 程度の小惑星 ⇨ 10 km スケール (都道府県) で地形が変わる 10 km 程度の小惑星 ⇨ 100 km スケール (日本列島) で地形が変わる テストケースで見る衝突の規模 * 天体衝突が引き起こす長期的な影響 * 巻き上げた砂・チリによって全地球的に日照量の低下と寒冷化を引き起こす 天体衝突は人類の活動に深刻な影響を与えうる * 直径およそ 1 km 程度の小惑星であっても地球規模で影響がある
  16. 脅威となる小惑星の軌道を“そらす” 軌道をそらす = 小惑星に速度変化を与える 瞬間的に大きなエネルギーを与えて小惑星の速度を変える 大質量の人工物をぶつける (インパクター) / 核爆弾を使用する など

    ミッションはシンプルだが微調整が効かないなどの問題もある 弱い力を長期間に渡って与え続けて小惑星の速度を変える レーザー / イオンビーム / 重力トラクタ などの方法が提案されている ミッションが長期間に渡るので衝突直前に発見されても使用できない まだ実用化には遠い技術もある
  17. 脅威となる小惑星の軌道を“そらす” 衝突までにどれだけの時間猶予があるかによって選択肢と難易度が変わる リードタイム (= 衝突までの時間猶予) 時間猶予がほとんどない場合(<10 年) 小惑星に対して瞬間的に力を与える手法しかない (インパクター or

    核爆発) 大きな速度変化を与えないと衝突を回避できない 時間猶予が十分にある場合(>10 年) 上記の手法に加えて継続的に弱い力を与え続ける手法を採用できる 小さな速度変化でも衝突を十分回避できる可能性が高い
  18. 衝突体による軌道変更 質量をぶつけるシンプルな手法 今の人類が打ち上げられる質量は 20 t 程度 リードタイム 10 倍なら必要な質量は 1/10

    になる 100 m 級の小惑星なら現実的 /1 km 級の小惑星に対しては打ち上げ能力が足りない 地球と似た軌道を持つ小惑星に対しては効果が薄いという弱点がある 効率よくエネルギーを与えることができるか? 観測から小惑星は一枚岩ではない (ラブルパイル構造) ことが知られている 小惑星のどこにどうやってぶつけるのが適切かをあらかじめ調査する必要がある
  19. 継続的な力による軌道変更 レーザ光 / イオンビーム / 重力 をもちいた軌道変更手法 わずかな力でも継続的に与えることで衝突体よりも大きく軌道をそらすことができる 時間はかかるが衝突体による手法のような苦手な小惑星はない /

    微調整もできる 技術的な課題はあるが将来的にはとても有望な選択肢 レーザ光・イオンビームによる手法はスペースデブリ対策でも期待されている レーザ光による軌道変更 イオンビームによる軌道変更 重力トラクタによる軌道変更
  20. 仮想小惑星 2017PDC 画像: Planetary Defense Conference 2017 より 2017年 に

    こ の 位 置 で 発 見 ⇨ 2027年にここで衝突する可能性 ⇨ 2027 年に小惑星が通りそうな箇所
  21. 仮想小惑星 2017PDC 画像: Planetary Defense Conference 2017 より 偵察専用機 調査用探査機

    衝突専用機 衝突予測 ⇨2024 年に計 5 機の衝突専用宇宙機が衝突 & 軌道変更に成功
  22. 仮想小惑星2017PDC エクササイズではリードタイム = 10 年を設定 1. 小惑星の軌道を確定させる (衝突確率を正確に計算する) 2. 小惑星のサイズを確定させる

    (軌道変更ミッションの確定) 3. ミッションに必要な宇宙機の建造 4. 建造した宇宙機が小惑星に到着するまでのフライトタイム 軌道変更ミッションを実行するには以下の準備が必要 実際に衝突体を打ち込めたのは 7 年後 軌道変更の実効的なリードタイムは 3 年しかない ⇨ 脅威となりうる天体を早期に発見することが極めて重要
  23. 脅威となる小惑星を発見する 天体衝突による災害が議論され始めたのは 1980 年代ごろ 以下のイベントを契機に対策をすべき問題として認識され始めた スペースガード・ゴール 1991 年: メキシコ・ユカタン半島にチクシュルーブの構造が巨大クレーターと認定 1994

    年: シューメーカー・レヴィ第9彗星が木星に衝突 1998 年 NASA は小惑星による突然の衝突を防ぐために以下の観測目標を設定 「10 年以内に 1 km 以上の地球接近小惑星を 90% 発見する」 観測装置 (カメラ) の性能向上によって地球接近天体の発見数は爆発的に増加 発見数: NASA Center for Near Earth Object Studies の統計より 2000 年: 362 件 ⇨ 2005 年: 629 件 ⇨ 2010 年: 925 件 ⇨ 2015 年: 1562 件
  24. 地球接近小惑星の発見統計 画像: Harris (2019) PDC presetation より 10km 1km 100m

    10m 1010 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 12 17 22 27 小惑星の絶対等級 小惑星の累積個数分布 絶対等級に対応する小惑星の直径 (ρ V =0.14) 人工衛星が観測した火球の個数 (Brown et al. 2002) 地上で観測した火球の個数分布 (1994−2013) 超低周波で検出した火球の個数分布 観測された小惑星のサイズ個数分布 小惑星のサイズ個数分布予測 標識再捕獲法による推定 ↖直径 1km よりも大きい小惑星の数 およそ 1000 天体ほど
  25. 地球接近小惑星の発見統計 統計的には 2015 年ごろに 1km 小惑星の 90% 発見を達成している 人類が気づかぬうちに 1km

    より大きい小惑星に衝突される危険はほぼ回避された スペースガード・ゴール ⇨ 達成 地球規模の災害をもたらす危険については十分に評価できる Harris による推定では 1 km 超級の小惑星は 942 個 ⇨ 40 個程度は未発見で残されている NASA は次の目標として 140 m 以上の小惑星をターゲットに見据えている 発見数: NASA Cener for Near Earth Object Studies 次のスペースガード・ゴールは? 100 m 級でも落下すればかなり大規模な災害 ⇨ 衝突回避ミッションのターゲット 140 m 超級の小惑星は合計で数万天体あると考えられている これまでの総発見数を数倍にするような努力が必要
  26. 地球接近小惑星の発見統計 画像: Harris (2019) PDC presetation より 10km 1km 100m

    10m 1010 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 12 17 22 27 小惑星の絶対等級 小惑星の累積個数分布 絶対等級に対応する小惑星の直径 (ρ V =0.14) 人工衛星が観測した火球の個数 (Brown et al. 2002) 地上で観測した火球の個数分布 (1994−2013) 超低周波で検出した火球の個数分布 観測された小惑星のサイズ個数分布 小惑星のサイズ個数分布予測 標識再捕獲法による推定 ⤵ 次の目標 直径140m級を90%発見 発見した地球接近小惑星の統計
  27. Panoramic Survey Telescope and Rapid Response System ハワイ大学が中心となって運営している望遠鏡システム マウイ島ハレアカラ山頂に設置された1.8 m

    望遠鏡 2 台で構成 2016 年に全天の 75% を観測した 3π サーベイの結果を公開 年間 2000 件超の地球接近小惑星を発見する世界有数の望遠鏡 PS1 ドーム (panstarrs.stsci.edu) Pan-STARRS 1 号機による 3π サーベイ (panstarrs.stsci.edu) Pan-STARRS(パンスターズ)
  28. 宇宙の地図の決定版を作るために現在開発されているサーベイ専用望遠鏡 サーベイ能力指標が Pan-STARRS の約 27 台分という圧倒的な観測効率 現在チリのラ・セレナに望遠鏡を建設中 / 2023 年より観測運用を開始予定

    17 年運用すれば 140 m より大きい地球接近小惑星の 90% 発見を単独で達成可能 (左)LSST カメラの 3D 図面, (中) カメラ焦点部分の実スケール模型, (右) 望遠鏡の 3D 図面 (lsst.org) Vera C. Rubin Observatory(ベラ・ルービン天文台)
  29. 次世代宇宙望遠鏡との連携 画像: Report of the Near-Earth Object Science Definition Team

    (2017) より ラグランジュポイントL1 からの観測案 金星軌道上からの観測案 宇宙望遠鏡を L1 あるいは金星軌道に配置することで相補的な観測が可能 140 m 以上の地球接近小惑星を 90% の目標を 10 年以内に達成可能 地上望遠鏡による観測 ⇨ 夜側しか監視できない
  30. おわりに 私たちの住む太陽系のすがた 地球接近小惑星とその起源 地球に小惑星が衝突したら何が起こるのか 地球接近小惑星とは何か 1. プラネタリーディフェンス 2. 脅威となる小惑星の衝突に備える 地球は天体衝突の危機に瀕しているのか?

    小惑星は太陽系に広く分布 / 惑星の重力に強く影響を受けている 地球接近小惑星は短命 / 起源はメインベルト小惑星 1 km 超級が衝突すると地球規模の大災害 / 100 m 級でも 100 km 範囲で被害 国連 (IAWN, SMPAG) が中心となって活動 / 小惑星の軌道を変化させる技術は開発途上 1 km 超級の衝突の可能性はほぼないことが分かった / 次のゴールは 140 m 級
  31. 観測システムのサーベイ能力:AΩ A Ω 集光面積が 2 倍になると 1/2 の時間で天体が見えるようになる ⇨ 観測効率

    2 倍 集光面積が 3 倍になると 1/3 の時間で天体が見えるようになる ⇨ 観測効率 3 倍 ︙ 集光面積が N 倍になると 1/N の時間で天体が見えるようになる ⇨ 観測効率 N 倍 : 望遠鏡の有効集光面積 : カメラが一度に撮影できる面積 (視野) 観測視野が 2 倍になると 1/2 の時間で領域を掃ける ⇨ 観測効率 2 倍 観測視野が 3 倍になると 1/3 の時間で領域を掃ける ⇨ 観測効率 3 倍 ︙ 観測視野が N 倍になると 1/N の時間で領域を掃ける ⇨ 観測効率 N 倍 目標: ある暗さの天体が映ることを保証しつつある指定した領域の写真を撮りたい
  32. 観測システムのサーベイ能力:AΩ 直径 10 m 0.1 平方度 直径 2 m 1

    平方度 直径 25 cm ×8 台 10 平方度 ~3.93 m2 平方度 ~3.14 m2 平方度 ~7.85 m2 平方度
  33. 大型望遠鏡による観測システム A, Ω の値がどちらも大きなシステム Subaru/Hyper Suprime-Cam (8.2 m, AΩ=94.0) Dark

    Energy Camera (8.2 m, AΩ=37.7) Pan-STARRS (1.8 m ×2, AΩ=35.6) Catalina Sky Survey (0.7 m, AΩ=7.70) SkyMapper (1.3 m, AΩ=7.45) Zwiky Transient Facility (1.2 m, AΩ=54.9) Large Synoptic Survey Telescope (6.7 m, AΩ=336) 集光力が高く暗い (遠い) 変動現象でもとらえることができる Good 見つけた天体の詳細を調べるには同クラス以上の観測システムが必要 Bad Large Synoptic Survey Telescope (lsst.org)
  34. 0 50 100 150 200 250 300 350 サーベイ効率 Hyper

    Suprime-Cam Dark Energy Camera Pan-STARRS (PS2) Catalina Sky Survey Sky Mapper ZTF LSST ATLAS ASAS-SN MASTER ROTSE Evryscope TESS Kepler Gaia OASES TAOS-II OGLE-IV MOA-cam3
  35. 半導体イメージセンサ 1980 年代後半に実用的な半導体イメージセンサが登場 光 e- 光が半導体にあたる ⇨ 半導体から電子が出る (光電効果) ⇨

    電子の数 (電荷量) を測定することで光の強さが分かる 半導体イメージセンサの利点 感度が高く観測効率が高い 半導体イメージセンサの欠点 高感度を達成するためには冷却が必要 (カメラの大型化 + 複雑化) イメージセンサの大型化が難しい 電荷量と光子数が 1 対 1 対応するため線形性が極めて高い
  36. CCDイメージセンサ 16 メガピクセル CCD (2015) CCD for LSST (lsst.ac.uk) CCD

    イメージセンサの改良 ⇨ 天文学の発展 イメージセンサの大型化 (画素数の増加) より青い色・赤い色にも感度をもつように改良 感光部の面積を広げる (裏面照射型 CCD) 冷却用素子 1メガピクセル CCD (1989) 木曽 CCD カメラ (東京大学)
  37. CCD1 CCD2 CCD3 CCD4 モザイク CCD カメラ (概念図) モザイクカメラ 複数のセンサを組み合わせたカメラ

    より広い領域を一度に撮ることができる "ふち" のない CCD イメージセンサが必要 木曽 モザイク CCD カメラ (東京大学) Hyper Suprime-Cam (国立天文台, naoj.org)
  38. 太陽系形成モデルグランド・タック・モデル/ニース・モデル 日心距離 (au) 1 10 100 1 10 100 太陽系誕生からの時間

    (×106年) 4600 1000 900 800 0.6 0.4 0.2 0 ニース・モデル グランド・タック・モデル DeMeo and Carry (2014), Nature, 505, 629-634, Figure 2 を元に作成 原始惑星系円盤 ガス惑星の移動 小天体の混合 不安定な軌道から 取り除かれる 海王星の大移動 外縁部の天体に影響 カイパーベルト天体 メインベルト天体
  39. 太陽からの距離と小惑星の材質 日心距離 (au) 1 2 3 4 5 no obj.

    no obj. no obj. ハンガリア群 no data no data 5−20 km 級 20−50 km 級 50−100 km 級 100−1000 km 級 メインベルト内側 メインベルト中央 メインベルト外側 キュベレー族 ヒルダ群 木星トロヤ群 有機物系 石質 金属質 その他 炭素質 DeMeo and Carry (2014), Nature, 505, 629-634, Figure 4 を元に作成 重量による割合を 円グラフで表現
  40. Pan-STARRS(パンスターズ) Panoramic Survey Telescope and Rapid Response System ハワイ大学が中心となって運営している望遠鏡システム. マウイ島ハレアカラ山山頂に設置された1.8

    m 望遠鏡 2 台で構成される. 2016 年に全天の 75% を観測した 3π サーベイの結果を公開した. 世界で最も時間領域天文学に貢献している望遠鏡システム. PS1 ドーム (panstarrs.stsci.edu) Pan-STARRS 1 号機による 3π サーベイ (panstarrs.stsci.edu)
  41. CatalinaSkySurvey(CSS,CRTS) アリゾナ大学が中心となって運営している望遠鏡システム. 1.5 m, 1.0 m, 0.7 m の 3

    台の望遠鏡から構成されている. 観測所自体は 1960 年代に設立, 1998 年よりカタリナスカイサーベイを組織. 2018 年地球接近小惑星発見数世界一/変動天体の検出でも Pan-STARRS と同格. 0.7 m シュミット望遠鏡 (catalina.lpl.arizona.edu) 1.5 m サーベイ用望遠鏡 (catalina.lpl.arizona.edu)
  42. VeraC.RubinObservatory(LSST) 宇宙の地図の決定版を作るために現在開発されているサーベイ専用望遠鏡. サーベイ能力指標である AΩ が 300 を超える圧倒的なサーベイ効率を誇る. 1 分あたり 20,000

    件の変動天体を検出することが見込まれている. 現在チリのラ・セレナに望遠鏡を建設中 / 2023 年より観測運用を開始する予定. (左)LSST カメラの 3D 図面, (中) カメラ焦点部分の実スケール模型, (右) LSST 望遠鏡の 3D 図面 (lsst.org)