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多様性の高いGatheringを実現する情報保障の試み - RSGT2023 うきうきテーブルで分かったこと -

Chiemi Watanabe
March 04, 2023
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多様性の高いGatheringを実現する情報保障の試み - RSGT2023 うきうきテーブルで分かったこと -

私は筑波技術大学産業技術学部という聴覚障害学生を対象とした大学(学部)で情報工学を教えています。

先日RSGT2023でアジャイル開発を学んだ学生チーム(うきうきなっとう)が登壇をしました。その際に彼らが楽しくGatheringできるよう、「うきうきテーブル」という雑談テーブル(音声認識を使った会話ができるテーブル)を設置しました。

結果、うきうきメンバーが多くの人と会話ができRSGTをエンジョイできるようになった一方で「さまざまな聞こえ方の人が対話する」ことに関して本質的な問題がたくさん浮き彫りになりました。
・互いに自分の発言が伝わっているかについて無自覚である
・意外と互いの話を聞いていない
・誰が主体で話をするかによって対話のテンポを意識する必要がある
・聴者とろう者、それぞれ気づいていなかったことがある

本発表では浮き彫りになった問題をさらに分析し、今後異なる聞こえ方の人たちがわいわいと盛り上がれるようになる情報保障とは何か、仮説を立ててお話ししたいと思います。

なお今回は聞こえ方を対象としていますが、将来的には多様性の高いGatheringを実現する試みの第1歩と考えています。

また現時点ではGatheringを対象としていますが、これはアジャイル開発の価値の一つ「個人と対話(Individuals and Interactions)」を多様性のあるチームで実現するための第1歩だと考えています。

ですので聴覚障害者の情報保障に限らず、多様性のあるチームの働き方の話として議論するきっかけになればと思っています。

Chiemi Watanabe

March 04, 2023
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Transcript

  1. 検証︓字幕が意味の通らないものになっていたら、Discordで補⾜お願いします︕ 事前の試⾏錯誤(その2) • ⾳声認識ツールは何を使う︖ チャット⾵ ⾳声認識アプリ 話者分離ができる ⾳声認識アプリ クラウドエディタの ⾳声認識機能

    • 聴者と聴覚障害者の対話を 想定した機能がある • 修正ができる • 認識中の⽂字が表⽰される • ディレイが少ない • ⼀つのマイクで複数⼈の ⾳をとっていてもソフトウ エア的に話者分離する • 対⾯・話者数が少なければ 話者は分かりそう • 語尾が消えやすい • 1画⾯の表⽰⽂字数が 多く流れていかない • 共有には不向きかも • 修正がしにくい • YYProbe • UDトークなど • LINEクローバなど • Word • Google documentなど
  2. 検証︓字幕が意味の通らないものになっていたら、Discordで補⾜お願いします︕ RSGT初⽇でのショック • 私はうまく機能していると思っていた • コーヒーを飲みに来た⼈が気づく • チーム「うきうきなっとう」の話の後に来てくれる • ⾳声認識もそこそこできているように思う

    • その後のメンバーからのフィードバック • 話に⼊れなかった • 認識結果が出る前に話がどんどんと先に進んでしまう • 変な⾳声認識結果が出ても、質問がしづらい • ⾃分達が話を理解できているか、気にしていない
  3. 検証︓字幕が意味の通らないものになっていたら、Discordで補⾜お願いします︕ ⽿栓会話はどうだったのか︖ • より詳細なレポートはふじえもんnoteを参照 • https://note.com/fujiemon_tad/n/n616e6315fc86#45685680- efbe-4bbd-848a-ecee820315d5 • 参加者の感想(⼀部抜粋) •

    話者と付箋と⾳声認識の視線移動が⼤変 • ディスプレイを⾒ている間に話者交代すると誰が話しているかわからなかった • 声の抑揚がわからないので、話の中で⼤事な部分がわからない • テキストに起こされると全部フラットになる • いつもより話者の顔を⾒た • 画⾯を⾒ていたか︖修正はされていたか︖ • よく⾒られていた • 修正はされていなかった(修正の⼿段が伝えられていなかった)
  4. 検証︓字幕が意味の通らないものになっていたら、Discordで補⾜お願いします︕ 考察1︓ ⾳声認識を使えば良いのか︖ • ⾳声認識に振り回されている • そもそもUIが対⾯の会話向きでないところを対⾯に使っている • 確認・修正が必要なのに、対⾯会話だと無理がある •

    「会話で⾳声認識を使うのは好きじゃない」 • あくまで補助的に使う・使いたい • メインは読唇で、確認で使う程度 • (聴者が)⾳声認識に頼りすぎてしまう • 「これを使えば理解できるだろう」 • 経験がない故の無理解 • ディレイ、誤認識
  5. 検証︓字幕が意味の通らないものになっていたら、Discordで補⾜お願いします︕ 考察2︓主導権 • 会話のテンポについていけない問題 • ⾳声認識にはディレイがある • 読唇では⼗分でない(マイクで隠れる)、⾳声認識で確認した後に 理解をして話に加わろうとしても、次の話に流れている •

    話についていけていないことに気づかれない • 話の主導権を誰が握るか • 「OSTでは⾃分がファシリテータをしていたので、 確認がしやすかった」 • 「⾃分から⾊々質問をして相⼿の話を引き出してメモ化した」 • 「少⼈数での⾳声認識+筆談の時は、会話しやすいテンポだった」
  6. 検証︓字幕が意味の通らないものになっていたら、Discordで補⾜お願いします︕ マイノリティとしての苦労を 上乗せしない環境づくりと試み • 聴者だけがアタリマエの組織の中で聴覚障害者が ⼀⼈で切り込んでいく難しさ • 開発に集中する以外のところで調整や⼯夫が必要 • (聴者が気づかないうちに)多くのことを諦めてさせて

    いるかもしれない • 打開するアプローチ 1. 聴者を巻き込んだ試⾏錯誤や実験を打ち出していく • ⼀緒に考える • 聴覚障害者がアタリマエに居て普通に⼯夫が⽣まれる環境を作る 2. デフエンジニアチームの可能性 • マイノリティでない環境でチーム開発に集中する