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アジャイル研究始めたら教員/TA/受験生の関係がフラットになってきた話

Chiemi Watanabe
September 26, 2020

 アジャイル研究始めたら教員/TA/受験生の関係がフラットになってきた話

ScrumFest Mikawa 2020で話しました。

Chiemi Watanabe

September 26, 2020
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Transcript

  1. ⾃⼰紹介 • 渡辺知恵美(わたなべ ちえみ) • 筑波⼤学 図書館情報メディア系 准教授 / 筑波技術⼤学

    産業情報学科 准教授 • 専⾨:データ⼯学、個⼈情報保護技術、暗号化DB • 2013年より教育プロジェクトenPiT専任教員として 筑波⼤にてチームによるシステム開発教育に携わる • AgilePBL祭り実⾏委員会 デブサミ2019, 永瀬先⽣による紹介 RSGT2018, kyon_mmさんのスライドにチラリ アジャイルコーチとしてお世話に なっているお⼆⼈のスライドの ⼀部でちょくちょく紹介して もらっていますが、 ⼤学関係のイベント以外で ⾃ら話すのは多分初めて 2
  2. 話の流れ • 前提:enPiT • Project Based Learning (PBL)によるチーム開発の授業 • 登場する⼈たち

    • 導⼊:⼤学でなぜこんなことをしているのか • 学びをどこにつなげていくか • (個⼈的⾒解)⼤学⽣活の本番は研究 • 本題:3種類のサイクルの絡み合い • チーム開発 / 研究活動 / カリキュラム開発 • ともに「複雑で不確実なもの」に対峙 4
  3. enPiT筑波⼤学 • 学部3年⽣と⼤学院(修⼠1年)を対象とした授業 • カリキュラムの位置付けとしては「実験・演習」 • 情報系学部を対象(情報学群)→ 分野としては広い • 情報科学類(Computer

    Engineering/Science) • 情報メディア創成学類(Contents Technology, Media Art) • 知識情報図書館学類(Library Science, Knowledge Management) 前提:enPiT, アジャイル開発の授業 学部1年 学部2年 学部3年 学部4年 修⼠1年 修⼠2年 基礎科⽬ 実験 専⾨科⽬ 実験 実験 卒業研究・修⼠研究 (enPiT) 6
  4. Project (Problem) Based Learning : PBL • 課題解決型学習 • 学⽣が⾃ら課題を発⾒し解決していく能⼒を⾝につける

    • 系統学習(教師が準備し、学⽣は設計したステップを踏む)とは逆 • 問題を解決することを⽬的に、学⽣は積極的に技術を学ぶ • プロジェクト型学習 • チームを作り、決められた期間の中でプロジェクトを実施する • プロジェクトで課題を解決することを合わせてPBLと称している ことが多い 前提:enPiT, アジャイル開発の授業 7
  5. カリキュラムの流れ • 基礎知識学習・ソロ活動 • 顧客もプロジェクト管理関係なく、⾃分が触りたいものを触る・作りたいものを作る • チーム形成・プロダクトディスカバリー • 合宿 •

    初⽇:アジャイル開発研修 • 2⽇⽬〜4⽇⽬:1⽇スプリント(9:00-18:00) • アジャイルコーチ(miholovesq, kyon_mm)による研修・コーチング • 本格的な開発期間 • 授業の枠(⽔曜3時間+⾦曜3時間)1週間スプリント×10回 前提:enPiT, アジャイル開発の授業 ⾝近に感じている問題を出し合い共感したメンバーでチームを結成 チームで問題を解決するためのシステム開発をする 4 6 7 夏休み 10 12 8
  6. 成果物の例 • Wal:l:lamp (チーム:⾬ニモマケs) • 課題 :⾬の⽇はゆううつでいやだ • 解決⼿段:⾬を⽌めよう •

    CatchApp(チーム:シスコーン) • 課題(要望):スキマ時間でも最新論⽂を パパっとみて把握ときたい • 解決⼿段:スマホ画⾯で論⽂の 概要(⽇本語訳+画像)を表⽰ 前提:enPiT, アジャイル開発の授業 9
  7. PBLにアジャイル開発をとりいれる経緯 • PBLに対する教員の意識(2013年当時、私個⼈の印象) • 開発のための基礎技術演習+⾃由時間 • 専任教員=世話⼈ • 「新規性を要求されない研究みたいなもの」 •

    期間内に成果物を出すことは求められるが、根性で頑張る • もしくは担当の先⽣が⾃⼰流で⼯夫してがんばる 前提:enPiT, アジャイル開発の授業 10
  8. PBLにアジャイル開発をとりいれる経緯 出会い:産技⼤enPiTのスプリントレビュー→スクラム研修@NTTデータを 3週間受ける→本を読み漁る 前提:enPiT, アジャイル開発の授業 11 2013 2014 2015 2016

    2017 2018 2019 2020 ア ジ # イ ル 研 修 ︵ 講 義 の み ︶ ア ジ # イ ル 研 修 + コ 0 チ ン グ ア ジ # イ ル 研 修 ︵ 講 義 の み ︶ 1month 2weeks 1week 1week スプリントの⻑さ(夏合宿) スプリントの⻑さ(Oct.~Dec.) 1day 1day 1day 1day 2weeks 1week 1week 1day enPiT1 (⼤学院⽣対象) enPiT2 (学部3年⽣+⼤学院⽣対象)
  9. enPiTに関わる⼈たち • 教員 • 担当教員:3名 • アジャイルコーチ:miholovesq, kyon_mm • 社会⼈メンター(ゲスト講義,スポット参加等)

    • 学⽣メンター(6〜7名) • enPiT修了⽣が参加 • 違う視点からの学びを得られる • 受講⽣ 前提:enPiT, アジャイル開発の授業 メンターチーム 10名程度 ※運営等は除く 12
  10. enPiTに関わる⼈たち • 教員 • 担当教員:3名 • アジャイルコーチ:miholovesq, kyon_mm • 社会⼈メンター(ゲスト講義,スポット参加等)

    • 学⽣メンター(6〜7名) • enPiT修了⽣が参加 • 違う視点からの学びを得られる • 受講⽣ 前提:enPiT, アジャイル開発の授業 ※運営等は除く 今回この学⽣メンターが キーパーソンになる 13
  11. 話の流れ • 前提:enPiT • Project Based Learning (PBL)によるチーム開発の授業 • 登場する⼈たち

    • 導⼊:⼤学でなぜこんなことをしているのか • アジャイル開発の学びをどこへつなげていくのか • (個⼈的⾒解)⼤学⽣活の本番は研究 • 本題:3種類のサイクルの絡み合い • チーム開発 / 研究活動 / カリキュラム開発 • 「複雑で不確実なもの」に対峙 導⼊:アジャイル開発の学びはどこへ 14
  12. ⼤学は卒業研究からが本番 • 卒業研究はプロセスを⼀通り学ぶ “練習” • それをベースに修⼠の2年間でフィードバックループを回し リリースを繰り返す 導⼊:アジャイル開発の学びはどこへ 学部4年 修⼠1年

    修⼠2年 博⼠課程 1st. Release (卒論, 国内研究会 国際会議(submit)) 修⼠論⽂: 今までの集⼤成 +論⽂誌 実際は⾊々と重なる • 国際会議だと投稿から発表まで半年はかかる • トップ会議を狙う(or論⽂誌)なら数回のチャレンジが必要になるので1年は想定する 研究会or 国際会議 研究会or 国際会議 研究会or 国際会議 中 間 発 表 着 ⼿ 発 表 基礎知識学習 サーベイ テーマ探し 中 間 発 表 中 間 発 表 (と教員は多分思っている) ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ 16
  13. よし、アジャイルに研究しよう! • 研究は個⼈活動 • 教員や共同研究者はいわゆるステークホルダー的な 役割であることが多く、チームとしては考えにくい • 周りの誰もアジャイル開発を知らない • 教員も「ふーん何それ関係あるの?」

    • システム開発のフレームワークなんでしょ? • 研究のアプローチ⽅法は研究室によって異なる • 先⽣の経験的知識が引き継がれる 導⼊:アジャイル開発の学びはどこへ 18
  14. 研究は本当に個⼈活動か?研究室とは? •研究室という「場」 • 指導教員・研究分野を同じくする研究者が集う場 • 卒研⽣、修⼠、博⼠、ポスドク、研究員 • 研究スケジュール(投稿、発表等)とゴールを 緩やかに共にする •

    MTGや勉強会、ゼミだけじゃなくて、研究室でコーヒー飲 みながら雑談しながら研究の相談したり、遊んだり、ご飯⾷ べたり、先⽣の愚痴を⾔ったりするのも⼤事 導⼊:アジャイル開発の学びはどこへ 20 ある意味、緩やかなチームなのでは
  15. 昨年の取り組み • 協⼒を依頼 • 1研究室のグループ 3名 • 3年⽣の1実験グループ 2名 •

    11⽉〜12⽉の2ヶ⽉間 enPiTのチーム開発と同じタイムスケジュールで 個別の研究と実験を実施 導⼊:アジャイル開発の学びはどこへ 研究や実験は個別に実施 スケジュールと⼤まかな⽬標を共にする仲間を 緩やかなチームとみなし、スクラム開発⾵なサイクルを実施 21
  16. 昨年の取り組み • Research Backlog: • 2ヶ⽉後のそれぞれのリリース⽬標を決定し、 ブレイクダウンしたバックログを作成 • バックログアイテム:成果物を「知⾒」とする •

    関連研究論⽂調査: 得られた知⾒(概要と研究との関連) • 実装: レビュー時に動かして結果がわかるもの • 実験: 実験計画、結果、分析、別々に成果としてOK • 論⽂執筆: 執筆したところの⼤まかなストーリー 導⼊:アジャイル開発の学びはどこへ 22
  17. 振り返りから • Research backlogを⼊れたらゴール思考で作業できた • 特に論⽂読みの時に効果があった • 「考えを整理する」「聞いてもらう」タスクは良い! • 他の⼈には相談しづらい

    • 「ゆるやかなチーム感」は感じられなかった • レビューのスタンスが難しい • 時間が短い、専⾨家でない⼈に話すことには意味があるのか 導⼊:アジャイル開発の学びはどこへ 23
  18. AgilePBL祭りでの発表 • AgilePBL祭り 2020/2/21 • PBLでアジャイル開発を実践している 学⽣チームの交流イベント • 筑波⼤、はこだて未来⼤、広島⼤、東 京⼯芸⼤、九⼯⼤、琉球⼤

    • 修⼠1年の学⽣が発表 • ⾃分で⾊々アレンジをしている • 実施期間外も含め、1週間スプリント にしている 導⼊:アジャイル開発の学びはどこへ https://www.slideshare.net/TaroAso/ss-229063080 24
  19. 話の流れ • 前提:enPiT • Project Based Learning (PBL)によるチーム開発の授業 • 登場する⼈たち

    • 導⼊:⼤学でなぜこんなことをしているのか • アジャイル開発の学びをどこへつなげていくのか • (個⼈的⾒解)⼤学⽣活の本番は研究 • 本題:3種類のサイクルの絡み合い • チーム開発 / 研究活動 / カリキュラム開発 • 「複雑で不確実なもの」に対峙 導⼊:アジャイル開発の学びはどこへ 本題:3つのサイクルの絡み合い 25
  20. enPiTをオンラインで実施 • 遠隔グループワーク練習を合宿前の2ヶ⽉間実施 • アイスブレイクからモブプログラミングまで • Discordを利⽤ • 合宿前から学⽣メンターを依頼することに •

    学⽣メンターは去年のenPiT修了⽣ • 各⾃研究室に⼊って卒業研究に取り組みつつの 参加(本分は研究) 27 導⼊:アジャイル開発の学びはどこへ 本題:3つのサイクルの絡み合い
  21. 「卒研をスクラムでやりたい」 • AgilePBL祭りに参加していたメンターからの進⾔ • 共感したメンター数⼈で⾃主的にはじめる • それぞれ別々の研究室、テーマも異なる • オンラインだからこそやりやすくなった •

    enPiT授業⽤のDiscordでやることに • 「誰でもみれる場所でやって、受講⽣も参加して欲しい」 28 導⼊:アジャイル開発の学びはどこへ 本題:3つのサイクルの絡み合い
  22. Passwork • ⾃分のやるべきことを確実に前に進めるための仕組み • 毎⽇15分のミーティング+毎週1時間のミーティングで構成 • やるべきことはToDoリストで管理 • デイリーミーティング •

    ⾃分の進捗を定点観測 • 他⼈の進捗から刺激を受ける • ウィークリーミーティング • ⾃分の1週間の活動を振り返る • 他⼈の振り返りと⾃分の次の1週間に⽣かせる • Passwork⾃体を継続的に改善できる https://enpit2020.kibe.la/shared/entries/7b59d2b1-e98e-4dc0-9752-34a99014db4a 学⽣メンター数名 受講⽣(修⼠1年) 受講⽣(学部3年) 29 導⼊:アジャイル開発の学びはどこへ 本題:3つのサイクルの絡み合い
  23. メンバーが⼊り混じる オンライン PBL授業 研究 (Passwork) オンライン チーム開発 教員 ◎ ◯

    ◯ 学⽣メンター ◎ ◎ ◯ 受講⽣ ◯ ◯ ◎ オンラインモブプロは メンターチーム・ 教員チームも同列に参加 修⼠1年の受講⽣、 3年⽣も参加し始める 教員も参加 ツール選定や使い⽅、 受講⽣のフィードバック をもとに 作り上げていく 31 導⼊:アジャイル開発の学びはどこへ 本題:3つのサイクルの絡み合い
  24. 3者の関係は本当にフラットになってきたのか • そんな気がしているだけかもしれない • しかしどのチームも、⾃チームを主体として教えられ たことや他チームの活動を「利⽤」していた • 違和感があったら⾃分たちで⼯夫する • ⼯夫したことを共有する

    • 疑問に思ったら議論をふっかける 33 教える 教わる 学ぶ 情報 情報 情報 情報 これこそPBLで 学ぶべきこと 教員 メンター 受講⽣ by 教員 by メンター by 他チーム 導⼊:アジャイル開発の学びはどこへ 本題:3つのサイクルの絡み合い
  25. この先 • 横のつながり:他の⼤学でのAgilePBL • タテのつながり:就職後、企業でのアジャイル開発 35 学部3年 学部4年〜修⼠(〜博⼠) アジャイル開発で 得た学び

    企業での開発 導⼊:アジャイル開発の学びはどこへ 本題:3つのサイクルの絡み合い いろんな 学⽣アジャイル チーム いろんな 企業チーム