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製造業における生成AI活用のユースケースと 関連技術要素(RAG,MCP)の解説

製造業における生成AI活用のユースケースと 関連技術要素(RAG,MCP)の解説

ハノーファーメッセ2025での各社のAI活用事例(Siemens、AWS、SAPなど)を紹介。従来の予測型AIから創造型生成AIへの進化を解説。RAGやMCP(Model Context Protocol)などの技術要素、UNS(統合名前空間)とA2A(Agent2Agent)による未来の自己修復型生産ラインや動的サプライチェーンの可能性を含めています。

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濱田孝治

June 18, 2025
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  1. 2 濱田孝治(ハマコー) 製造ビジネステクノロジー部 マネージャー • 独立系SIerを経て2017年9月 クラスメソッド入社 ブログ, SNS •

    「クラスメソッド 濱田」で検索 • はてなブックマーク累計 約15,000個 • Xアカウント:@hamako9999 コミュニティ運営 • JAWS-UG コンテナ支部運営 • Grafana Meetup Co-organizer AWS認定関連 • 取得済みAWS認定:SAP, DOP, DBS, SOA, SAA, DVA, SCS, CLF, AIF, MLA, MLS • AWS APN Ambassador 2020 執筆書籍 • みんなのAWS • SoftwareDesign 2022年11月号 コンテナ特集
  2. 15 Agenda • クラスメソッドとサービス紹介 • ハノーファーメッセ2025の様子とAI活用ユ ースケース • AIの進化の歴史 •

    デモ:自然言語によるデータ分析 • デモ:自然言語による3Dモデル作成 • AI活用の未来と関連技術
  3. 17 Agenda • クラスメソッドとサービス紹介 • ハノーファーメッセ2025の様子とAI活用ユ ースケース • AIの進化の歴史 •

    デモ:自然言語によるデータ分析 • デモ:自然言語による3Dモデル作成 • AI活用の未来と関連技術
  4. 23 可視化部分イメージ:品質管理 パネル例 • 保管温度 • 温度トレンド • 原材料歩留ま り

    • 充填重量トレ ンド • 殺菌温度推移 • 異物検知回数 • 日別異物検知 数 • 現在製造ロッ ト情報
  5. 24 可視化部分イメージ:設備監視 レポート例 • OEE(総合設備 効率) • サイクルタイム • 生産状況

    • 時間損失内訳 • OEE構成要素ト レンド • OEE改善推奨事 項 • アクチュエータ 基準値超過 • アクチュエータ 動作時間
  6. 30 Agenda • クラスメソッドとサービス紹介 • ハノーファーメッセ2025の様子とAI活用ユ ースケース • AIの進化の歴史 •

    デモ:自然言語によるデータ分析 • デモ:自然言語による3Dモデル作成 • AI活用の未来と関連技術
  7. 熟練エンジニアが、オートメーション設計プラ ットフォーム「TIA Portal」上で、自然言語 (日本語)を使い「コンベアAからコンベアBへ 部品を移送するラダーコードを生成して」と指 示。 Industrial Copilotが数秒でコードを生成し、さ らに「このコードに、部品が落下した場合の安 全停止シーケンスを追加して」と依頼すると、

    即座に修正案を提示 。 これにより、従来数時間かかっていたプログラ ミング作業が数分に短縮。 40 Siemens AIユースケース 生成AIによるエンジニアリングの高速化 生成AIによるエンジニアリングの高速化 ref:https://www.siemens.com/global/en/company/insights/unlocking-the-power-of-generative-ai-siemens-industrial-copilot.html
  8. 高速で流れてくる形状が不揃いな部品 を、ロボットアームがピッキングする デモ。 AIビジョンシステムがコントローラー 上でリアルタイムに部品の形状と向き を認識し、最適な掴み方を瞬時に判 断・実行。 クラウドとの通信遅延がないため、サ イクルタイムを従来比で30%向上。 45

    BECKOFF AIユースケース コントローラー上で完結するAIビジョン制御 コントローラー上で完結するAIビジョン制御 https://www.beckhoff.com/en-us/company/news/multimedia-ai-and-automation-hannover-messe-press-preview.html
  9. SAPのビジネスAI「Joule」が、地政学リスクに関 するニュースフィードと、輸送遅延データをリアル タイムで分析。 「主要サプライヤーA社の拠点がある地域で大規模 ストライキが発生。部品Bの納入が7日間遅延する可 能性85%」と警告 。 さらに、「代替サプライヤーとしてC社とD社を推 奨。C社に切り替えた場合の追加コストと、生産計 画への影響シミュレーションはこちらです」と、具

    体的な代替案と影響分析を提示 。 管理者がワンクリックで代替案を承認すると、関連 する発注や生産計画が自動で更新。 49 SAP AIユースケース 生成AIによるサプライチェーン寸断リスクの自律的回避 サプライチェーン寸断リスクの自律的回避 https://go4.events.sap.com/hannovermesse/en_us/home.html
  10. AWS IoT Coreで世界中の工場から設備データを収集。 AWS IoT TwinMakerで作成したデジタルツイン上で、 設備の稼働状況を可視化。Amazon Lookout for Equipment(AI異常検知サービス)が、センサーデー

    タの僅かな異常パターンを学習。 「3日以内にコンプレッサーC-102のベアリングが故 障する兆候を検知」とアラートを出し、自動でメンテ ナンスチームに通知。 54 AWS AIユースケース IoTとデジタルツインによるリモート監視と異常検知 IoTとデジタルツインによるリモート監視と異常検知 https://aws.amazon.com/jp/blogs/industries/experience-the-future-of-smart-manufacturing-at-hannover-messe-2024/
  11. 56 Agenda • クラスメソッドとサービス紹介 • ハノーファーメッセ2025の様子とAI活用ユ ースケース • AIの進化の歴史 •

    デモ:自然言語によるデータ分析 • デモ:自然言語による3Dモデル作成 • AI活用の未来と関連技術
  12. 61 AI関連の言葉の定義 AI(人工知能): • 人間の知的振る舞いをコンピュータで実現する 科学技術の総称 機械学習(Machine Learning, ML): •

    AIの一分野。データから自動的に学習し、パタ ーンやルールを見つけ、予測や判断を行う技術 • 人間が明示的にプログラムせず、データ駆動で 学習 ディープラーニング(Deep Learning) • 機械学習の一手法。人間の脳神経を模倣した 「ニューラルネットワーク」を多層化したモデ ル(DNN)で学習 • 「深い」層構造で、複雑・抽象的な特徴を自動 抽出・学習
  13. 62 LLMの発展の主要因 技術的ブレークスルー(Transformer)がLLMの発展を後押し Transformerアーキテクチャ(2017年) - 並列処理可能、長い文脈の効 率的処理、大規模モデル訓練の実現 •注意機構(Attention Mechanism)文章内の重要部分への焦点化、文脈 理解の向上、自然な文章生成

    •事前訓練と転移学習 - 大量テキストでの事前訓練後に特定タスクへ微調整、 効率的な高性能モデル構築 その他の重要な要因 •計算資源の向上 - GPU性能の飛躍的向上 •大規模データセットの利用可能性 - 訓練用データの充実 •分散計算技術の発展 - 大規模モデルの訓練を可能にする技術
  14. 64 生成AIによる製造業ユースケースの変遷 製造領域 従来のML(概要と限界) 生成AIによる変革(概要と強化された能力) 製品設計・開発 過去データに基づくパラメータ最適化、性能 予測(新規性の創出は限定的) 新規デザインコンセプトの自動生成、要件に 基づく多様な設計案提示、仮想プロトタイピン

    グの高速化、材料選定支援 品質管理 画像認識による欠陥検出・分類(原因特定や 対策提案は困難) 欠陥検出に加え、原因分析、改善策提案、未 知の欠陥パターンの学習用合成データ生成 予知保全 センサーデータに基づく故障時期予測(具体 的な保守手順の提示は限定的) 故障予測に加え、詳細な保守指示書の自動 生成、故障シナリオのシミュレーション、複雑 な要因を考慮した保守計画の最適化 サプライチェーン最適化 過去データに基づく需要予測(突発的な変動 への対応や複雑なシナリオ分析は困難) 需要変動シミュレーション、リアルタイムでの 生産・在庫・物流計画の動的最適化、サプラ イヤーとの交渉支援、契約書ドラフト作成 プロセスエンジニアリング 既存プロセスのパラメータ調整による効率化 (抜本的なプロセス革新は困難) 新規プロセスフローの設計提案、デジタルツ イン上での多様な生産シナリオシミュレーショ ンと評価、運用手順書の自動生成 ナレッジマネジメント・トレ ーニング 文書検索、FAQシステム(文脈理解や専門的 アドバイスは限定的) 対話型AIによる専門知識の提供、技術マニュ アルの自動要約・解説、熟練者の暗黙知の 抽出と共有、個別化されたトレーニングコンテ ンツ生成
  15. 75 Agenda • クラスメソッドとサービス紹介 • ハノーファーメッセ2025の様子とAI活用ユ ースケース • AIの進化の歴史 •

    デモ:自然言語によるデータ分析 • デモ:自然言語による3Dモデル作成 • AI活用の未来と関連技術
  16. 76 MCPとは MCP(Model Context Protocol) • AIモデルやエージェントが外部データソース・ツール と接続するためのオープンスタンダード • 「AIのUSBポート」とも呼ばれる標準化されたインタ

    ーフェースを持つ • AIとツール・データ感の接続を単純化し、M✕N統合問 題(M個のAIアプリがN個のツールに接続しなければ ならない)を解決する
  17. 78 Grafana MCP server Grafana Labs公式でGitHubに公開済 • 主な機能 • Search

    for dashboards • List and fetch datasource information • Query datasource • Query Prometheus metadata • Query Loki metadata • Search, create, update and close incidents https://github.com/grafana/mcp-grafana
  18. 84 Agenda • クラスメソッドとサービス紹介 • ハノーファーメッセ2025の様子とAI活用ユ ースケース • AIの進化の歴史 •

    デモ:自然言語によるデータ分析 • デモ:自然言語による3Dモデル作成 • AI活用の未来と関連技術
  19. 92 Agenda • クラスメソッドとサービス紹介 • ハノーファーメッセ2025の様子とAI活用ユ ースケース • AIの進化の歴史 •

    デモ:自然言語によるデータ分析 • デモ:自然言語による3Dモデル作成 • AI活用の未来と関連技術
  20. 94 例:動的需要応答型サプライチェーン 従来の課題: 需要変動への対応は遅く、在庫過多や 欠品リスクが高い 新たな可能性: •UNS: ERPデータ、市場データ、生産能力データを 統合 •MCP:

    AI需要予測エージェントが外部データ(天 候、イベント、SNS)にアクセスして需要の急変を 予測 •A2A: 需要予測エージェントが生産計画エージェン ト、サプライヤーエージェント、物流エージェント と連携 具体例: 食品メーカーでは、大型スポーツイベント 前のSNS分析から特定商品の需要急増を予測。AIが 自動的に原材料発注を調整し、サプライヤーAIと納 期交渉、生産ラインのスケジュール再構成、物流ル ートの最適化を実施。これにより売上機会損失を防 ぎつつ、過剰在庫リスクを軽減。
  21. 100 製造業におけるよくある困り事 https://dev.classmethod.jp/articles/workshop-deigital-thread/ • 設計エンジニア: 「コンセプトから詳細設計段階に移行するために、主 要な材料供給の課題を知る必要があります」 • サプライチェーン: 「パーツ#XYZが遅延しています。調達の問題はあ

    りますか?同様の品質スコアを持つ代替サプライヤーを検討できます か?」 • 事業開発: 「新しいRFQ(見積依頼書)が来ています。類似点を特定す るために、過去のRFQ回答や仕様書にアクセスできますか?」 • 計画/購買: 「部品のリリース状況と変更記録を入手して、調達計画を 立てられますか?」
  22. 103 UNS(Unified Name Space)とは? 製造環境における「単一の信頼できる情報源」として機能するイ ベント駆動型のデータアーキテクチャ 主要コンポーネント • MQTTブローカー:発行/購読型メッセージングの中心ハブ •

    Sparkplug:MQTTプロトコル上で動作し、メタデータを追加 し自動検出や例外報告を実現 • データモデリング:ISA-95標準に基づく階層的なデータ構造 • エッジオペレーション:エッジに配置されたソフトウェアが機 器に接続し、生データを変換・標準化
  23. 106 UNSの特徴とAIモデルやエージェントと相性が良い理由 ②リアルタイム性の確保 • 従来の課題: 多くのデータは定期的なバッチ処理やエクスポー ト/インポートプロセスを通じて移動し、データのリアルタイ ム性が無い • UNSの解決策:

    MQTT/Sparkplugベースのイベント駆動型アー キテクチャにより、データの変更がほぼリアルタイムで伝播 • AIへの影響: AIエージェントは常に最新の情報に基づいて判断 できるため、現実の状況とAIの認識のずれが最小限
  24. 107 UNSの特徴とAIモデルやエージェントと相性が良い理由 ③コンテキストの保持とメタデータの充実 • 従来の課題: データは文脈から切り離されることが多く、その 価値や関連性が失われていた • UNSの解決策: Sparkplugによるメタデータの追加や、ISA-

    95に基づく階層構造により、データに豊富なコンテキストを 付与 • AIへの影響: AIモデルはデータポイントだけでなく、その意味 や関係性も理解できるため、より高度な推論が可能
  25. 124 The Industrial AI Podcast Colin Masson https://open.spotify.com/episode/1akdmbHfJHOMPu2ohktiRq MCPとA2Aは、現場での活用に最適 か?

    要約:MCPとA2Aプロトコルが工場デー タの活用に革新をもたらす可能性につい て議論。Anthropicがオープンソースとし てリリースしたMCPは、産業機器データ のコンテキスト化を可能にし、それをAIと 接続。GoogleのA2A拡張機能は複数の AIエージェント間の連携を実現します。
  26. 125 MCPとA2Aについて MCP(Model Context Protocol) • AIモデルやエージェントが外部データソース・ツールと接続するための オープンスタンダード • 「AIのUSBポート」とも呼ばれる標準化されたインターフェース

    • AIとツール・データ間の接続を単純化し、M×N統合問題を解決 A2A(Agent2Agent Protocol) • 異なるAIエージェント間の通信・協調を可能にするオープンスタンダー ド • Googleが提唱した、ベンダーに依存しない相互運用可能なプロトコル • エージェント間の自律的な協調をサポート
  27. 126 OPC UA, UNS, MCP, A2Aの関係 •UNS(Unified Namespace):OPC UAの上に構築され、 個々の機械と直接通信する必要なく、工場内の機械とその能力

    (温度、圧力、流量など)を整理するレイヤー •MCP:AIエージェントがUNSに簡単に接続できるようにする プロトコル(OPC UAとも直接通信可能) •A2A:複数のAIエージェントが互いに通信し、MCPを通じて アクセスしたデータやツールを使ってタスクを調整するための 拡張機能
  28. 131 ユースケース①:自己修復型生産ライン 従来の課題: 設備故障は事後対応が基本で、早期発見で きても人間の判断と介入が必要 新たな可能性: •UNS: 全ての機器からのセンサーデータを統合し、リア ルタイムで異常パターンを検出 •MCP:

    AIエージェントが過去の故障履歴と現在のデー タを分析し、問題を診断 •A2A: 保守エージェントが部品調達エージェントと連携、 自動的に部品発注・ロボット修理指示 具体例:自動車組立ラインの溶接ロボットが振動異常を 示した場合、AIが原因を特定(ベアリング劣化)し、部 品在庫を確認、最適なメンテナンス時間を計算、必要に 応じて代替生産ルートを確保しながら、次のシフト変更 時に自動修理ロボットが対応する一連の流れが人間の介 入なく実行される。
  29. 132 ユースケース②:動的需要応答型サプライチェーン 従来の課題: 需要変動への対応は遅く、在庫過多や 欠品リスクが高い 新たな可能性: •UNS: ERPデータ、市場データ、生産能力データを 統合 •MCP:

    AI需要予測エージェントが外部データ(天 候、イベント、SNS)にアクセスして需要の急変を 予測 •A2A: 需要予測エージェントが生産計画エージェン ト、サプライヤーエージェント、物流エージェント と連携 具体例: 食品メーカーでは、大型スポーツイベント 前のSNS分析から特定商品の需要急増を予測。AIが 自動的に原材料発注を調整し、サプライヤーAIと納 期交渉、生産ラインのスケジュール再構成、物流ル ートの最適化を実施。これにより売上機会損失を防 ぎつつ、過剰在庫リスクを軽減。