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保育中心設計でつくる保育ICTの裏側

 保育中心設計でつくる保育ICTの裏側

23.01.25 / チャイルドケア2023セミナー登壇内容
https://www.tvoe.co.jp/cc/seminar/

Takahiro Yamaguchi

January 25, 2023
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Transcript

  1. 3 今日お話ししようと思っていること • 自己紹介(既に終了) • ユニファについて • ルクミーのご紹介 • ルクミーの作り方

    • 園との対話により生まれた機能の具体例 • どうしてこういうプロセスを取っているか • 今日のまとめ
  2. 7 弊社代表のご紹介 土岐 泰之 (とき やすゆき) ユニファ株式会社 代表取締役CEO 1980年生まれ。2003年住友商事に入社し、リテール・ネット領域におけるスタート アップへの投資および事業開発支援に従事。 二児の父として自身の共働きの中での育児の大変さ、子育て環境を支えるサービスの

    必要性を痛感した経験をもとに、2013年5月にユニファ株式会社を設立。全世界から 1万社以上が参加した第1回スタートアップ・ワールドカップ(2017年)にて優勝。 ▪略歴 2003年3月 九州大学経済学部卒業 2003年4月 住友商事株式会社入社 2008年2月 ローランド・ベルガー入社 2009年3月 デロイトトーマツコンサルティング入社  2013年5月 ユニファ株式会社設立、代表取締役CEO就任
  3. 23 開発者と園の接点をまとめると… 課題ヒアリング 解決方針レビュー プロダクトレビュー ※ユーザビリティテスト も含む 何が問題か 考えてきた案で解決で きそうか

    使いこなせるシステム になっているか 単一ではなく規模や方針の異なる複数の園にお話しを伺いつつ、プロダクトを 生み出します。(特に方針の議論は多め) 社内の元保育士に もヒアリング
  4. 34 例1:個別連絡の保護者画面 開発する上で見えてきたこと ほとんどが園から保 護者への早退お迎え 依頼 ずっと園に連絡・相 談し続けてしまう保 護者の存在 連絡が来るかも…と

    ずっとスマホをみな ければならない先生 メッセージ送信画面を日単位で仕切り直し、あくま でその日に何か連絡するための手段と見せる 保護者から発信を許可 するかは園が選べる 世間のメッセージアプリほどの自由度がない方が先生にとっても良いですし 保護者にとってもそこまで支障がありません。
  5. 39 例2:ドキュメンテーション保護者共有 先生の記録の仕方 写真を見て感じたことを コメントする。 保護者に提供したい価値 テキストから始まると先生の感じ方を先 に読むことになり、それが正解に思われ てしまう 先生としては写真を見て感じたことを言

    葉にする体験がとてもよかったと思って いる。そのため、保護者にも同じ体験を して欲しい。 情報としての写真+コメントを共有するだけでなく、見せ方次第で子どもの 育ちについて考える機会も合わせて共有できます。
  6. 42 例3:帳票の文例設定 キャリアの浅い先生 キャリアを積んだ先生 • 何をどう書くのか?をゼロか ら考えること自体が先生とし ての知識基盤や経験になる • 「なぜその文例になるか」を

    理解しないまま文例流用して しまうと、本来若手のうちに 学ぶべきことが学べない • 自分がこれまで書いてきた内 容と専門家監修のある文例と のギャップから学ぶチャンス が生まれる • 仮に文例がマッチしていない 場合でも、自分の判断で書き 分けられる 文例があるとプラス 文例があるとマイナス 先生(受け持ちクラス)により文例の利用可否を選べるようにし、園での先 生育成の機会を奪ってしまうことを防ぎました。 ※文例の設定はテンプレートごとに行います。作成したテンプレートはクラスごとに設定できます。
  7. 43 例3:帳票の文例設定 - もちろん逆の意見もある キャリアの浅い先生 キャリアを積んだ先生 • ひとりでは何を書いたらいい かわからない •

    文例があることでキャリアの 長い先生に聞かなくてもまず は自分で書いてみることがで きる • 文例があってもなくても自分 で書けるのであまり関係ない 園の方針によって意見は分かれます。すべてをカスタマイズできるようにす ると複雑になり使いづらいですが、ここは分岐が必要と判断しました。
  8. 44 部外者から見ると不便だけど、当事者にとってはむしろよいこと。 • 日頃時間がないなかで、ICTを導入したら気にすることが増えてしまって は意味がない ◦ 解決したい課題にピンポイントで対処できればいい • 自由度を狭めることが結果プラスになることもある ◦

    世の中の他のサービスの適用は「余計なお世話」なことがある ◦ 利害上どうしようもない場合「ルクミーのせい」にして説明いただ いてもよいと思っている 気軽に追加した「あった方が良い機能」が意図せずマイナスをうみだす可能 性があるというのが、保育ICTをつくっていく中で気をつける部分です。
  9. 46 最初はキッズリーをなぞって作るしかなかったルクミーICT • 2016年からあるサービスであり、既に 色々考えられているものでした。 • その機能がなぜ存在するのか、実際それ は機能していたのか、それともまだ検証 途中だったのか…??? •

    誰かの仕事を引き継ぐのが難しいよう に、プロダクトでも設計思想が分からな いと何をどうしていくべきかを適切に判 断することができません。 キッズリーへのご意見、ルクミーをリリースしてみてからの反響、園との対 話を重ねる上で、その機能がどうあるべきかを自走して考えられるように。
  10. 47 作り手の設計思想が好きかどうかが、使う人にとっても大事 園と保護者がアプリ でメッセージ交換で きるようにしよう 必要な課題を解決でき るように機能を縛ろう メッセージ交換なら世 のアプリに倣おう 日単位で区切るメッ

    セージ機能 コミュニケーション を時間軸を意識せず 使えるメッセージ機 能 一見似た機能でも作り手が何を大事にしているかによって解決策の方向性は 異なるし、今後の改修方針も当然変わっていきます。
  11. 50 今日のまとめ • 「保育中心設計」自体はぱっと出の造語でした。しかし、いま何が課題 でそれが合っているのか?を確かめ続け、それが実際の現場で役に立つ ことをいつも願っています。 • 園によってニーズが分かれるのは当然です。なんとなくの便利さに流さ れず、解決すべき課題に向かうこと、ともすれば不便さですら必要なと ころがこの仕事の難しさであり楽しさだと思っています。

    • 教育・保育のプロの視点だと「まだまだ分かってないな」という部分が 多いと思いますが、現場がより使いたいことに時間を使えるよう、引き 続きお話を聞かせてください。 お時間頂きありがとうございました!「ルクミー知らなかったよ」という方 はぜひ黄色いポロシャツのブースをのぞいてみてくださいね。