PHPで任意精度演算を行って「正しい」金額計算をする方法 / Perform arbitrary precision arithmetic in PHP to achieve "accurate" monetary calculations

PHPerKaigi 2023 • Day 1での登壇資料です。
https://phperkaigi.jp/2023/
https://fortee.jp/phperkaigi-2023/proposal/3630baf7-f540-4dba-b10a-89cdbddf62da

Transcript

1. PHPで任意精度演算を行って 
 「正しい」金額計算をする方法 2023年3月24日 / PHPerKaigi 2023 • Day 1 合同会社テンマド　山岡広幸
2. さて、突然ですが
3. 0.1 + 0.2 = ?? php > var_dump(0.1 + 0.2);
4. 0.1 + 0.2 ≠ 0.3 php > var_dump(0.1 + 0.2); float(0.30000000000000004) 🤔
5. 自己紹介 - 山岡広幸 / Twitter: @hiro_y - Webアプリケーションエンジニア - PHPは3から。最近はNode.js多め - 合同会社テンマド 代表社員
6. - 受託制作・コンサルティング - 各種アドバイザー、各種制作（デザイン・開発） - 例: 株式会社イノベーター・ジャパン 社外CTO - 自社サービスの運営 - iruca、mimemoなど 👨💻👨💻👩💻👩💻
7. 0.1 + 0.2 が 0.3 にならない世界
8. 我々は PHP 8 の 時代を生きているので
9. 型で考えてみる
10. 0.1の型？ php > var_dump(0.1); float(0.1) php > var_dump(gettype(0.1)); string(6) "double" 🧐
11. マニュアルを見る https://www.php.net/manual/ja/language.types. fl oat.php
12. fl oat / double - PHPで、整数は int（integer）という型 - 10進数、16進数、8進数、2進数で指定可能 - 「整数以外」を表現するのに浮動小数点数を使う - fl oat（ただし倍精度）、double - intの上限（PHP_INT_MAX）を超える整数も対象
13. 浮動小数点数 もう少しくわしく
14. 2進数の世界 - コンピューターは2進数で動いている - 0 or 1（OFF or ON）のバイナリの世界 - 10進数の小数は2進数の世界で表現可能か？ - 0.1（2進数）は2-1（10進数の0.5） 
 0.01（2進数）は2-2（10進数の0.25）
15. 翻って、我々の世界 - 10進数で物事を考えている - 部分的に他の基数も使うが、10進数が基本 - 2進数をそのまま扱うのは不便すぎる - 10進数の0.1は2進数で正確に表現できない
16. 浮動小数点数 - 10進数の実数を有限桁の2進数の近似値で表現 - 浮動小数点（ fl oating-point） - -1 x 0.101010101010101 x 2-1 と 
 -1 x 1.01010101010101 x 2-2 は同じ 
 符号、仮数、指数 - 複数フォーマットがある（そのうちの1つがIEEE 754）
17. 不便すぎるので - 必要な桁数の精度を得るための演算処理を実装 - ただし、コストがかかるので非常に遅くなる… - そのうちの1つの方式が「任意精度演算」 - 多くの環境で実装されている
18. ここで体験談
19. 新卒のころの話 - 新卒研修はCOBOL（その後Java） - 金融系のプロジェクトに配属 - 投資信託／ファンドのパフォーマンス評価 - たくさん小数点計算が必要だった
20. 計算を何気なく実装 result = value * rate; 😡
21. Javaで十進演算するには - java.lang.BigDecimalを使う必要がある - プリミティブな型の fl oatを使ってはいけない - COBOLは10進数を言語でサポート（二進化十進数） - C#ならdecimal、RubyならBigDecimal
22. 我らがPHPの場合
23. 言語として 任意精度計算の 仕組みがない 😵
24. だけど大丈夫 https://www.php.net/manual/ja/language.types. fl oat.php
25. BC Math 関数 - GNU bc（Basic Calculator）からのfork - https://www.gnu.org/software/bc/ - PHPを「--enable-bcmath」を付けて構築 - 関数: bcadd、bccomp、bcdiv、bcmod、bcmul、 bcpow、bcpowmod、bcscale、bcsqrt、bcsub
26. 例えば足し算 php > var_dump(bcadd('0.1', '0.2', 1)); string(3) "0.3" php > var_dump(bcadd('0.1', '0.2', 20)); string(22) "0.30000000000000000000"
27. GMP 関数 - GNU Multiple Precision Arithmetic Library - https://gmplib.org/ - PHPを「--with-gmp」を付けて構築 - とてもたくさんの数学関数群
28. 雑なベンチマーク <?php $floatStart = microtime(true); for ($i = 0; $i < 10000000; $i++) { $result = 0.1 + 0.2; } $floatEnd = microtime(true); $bcStart = microtime(true); for ($i = 0; $i < 10000000; $i++) { $result = bcadd('0.1', '0.2', 1); } $bcEnd = microtime(true); echo 'float: ' . ($floatEnd - $floatStart) . "ms\n"; echo 'bcadd: ' . ($bcEnd - $bcStart) . "ms\n";
29. 高コストな結果 # php test.php float: 0.040148973464966ms bcadd: 0.86464095115662ms 🥺
30. 注意: 引数は文字列で - BC Math関数に渡す引数は「文字列」で - fl oat表記で渡すとstringにキャストされる - 例: 0.00001 は 1.0E-5 になってしまう - 数値を表す文字列ではないのでエラーになる可能性
31. 一応、もう一つのやり方 - PHPで整数の計算には誤差が発生しない - つまり、小数も整数に変換した上で計算、 
 小数に戻せば誤差は発生しない - 複雑になってしまうし、 
 絶対に間違えるのでオススメできない
32. 【結論】 BC Math関数を使おう
33. ただし - BC Math関数に用意されているのは 
 基本的な算術関数のみであることに注意 - 例えば、 fl oorやceil、roundのような関数はない - 雑に fl oor関数等に渡すと fl oatに変換されるので 
 計算誤差が発生する可能性がある
34. 便利ライブラリ紹介 - Brick\Math - https://github.com/brick/math - GMP関数、BC Math関数、手計算の各実装 - 四捨五入、切り捨て／切り上げが実装されている
35. Brick\Math例 $result = BigDecimal::of('2.5') ->multipliedBy(BigInteger::of('2')) ->divideBy('0.3', 3, RoundingMode::HALF_UP);
36. さて、余談 // Google Chrome DevTools Console > 0.1 + 0.2 0.30000000000000004
37. JavaScriptも同様 - 浮動小数点数、IEEE 754に準ずる - 解決方法: ライブラリを使う - https://github.com/MikeMcl/decimal.js - BigDecimalのプロポーザルあり - https://github.com/tc39/proposal-decimal
38. まとめ - 浮動小数点数の扱いには注意が必要 - BC Math関数を使えばOK - 必要に応じてライブラリを利用して楽をしよう - フロントエンド側も配慮が必要
39. 実は身近な小数点計算 - 消費税、金利、住宅ローン…
40. 正しい小数点計算を していくために
41. 任意精度演算を 使っていこう （フロントもね！）
42. ありがとう ございました！