トラス構造の三次元バイナリマニピュレータの構造(伸縮長)の設計法を提案し,数値例により検証しました.手先到達点の集合の評価として,最大空円およびコルモゴロフ・スミルノフ統計量を利用しています.
電子情報通信学会システム数理と応用研究会(2023年3月開催)で発表しました.
進化計算を用いた三次元バイナリマニピュレータの設計名城大学大学院 理工学研究科 情報工学専攻杉林 恵多* 小中 英嗣
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目次• 研究背景• 研究目的• 提案手法– 評価指標– 最適化手法• 数値実験• まとめ参考文献2
目次3• 研究背景– マニピュレータ– バイナリマニピュレータ• 研究目的• 提案手法– 評価指標– 最適化手法• 数値実験• まとめ参考文献
マニピュレータ現在、多くの工場で様々なマニピュレータが稼働している4https://robotics.kawasaki.com/ja1/xyz/jp/1804-03/
バイナリマニピュレータ各アクチュエータが伸びと縮みの二値のみの状態をとりうるマニピュレータ小中英嗣,バイナリマニピュレータ・ハイブリッドマニピュレータ,計測と制御,Vol56,No7,pp503-508,20175
バイナリマニピュレータ伸縮の状態を変えることで、様々な形状をとる6
目次7• 研究背景• 研究目的– バイナリマニピュレータの問題点– 研究目的• 提案手法– 評価指標– 最適化手法• 数値実験• まとめ参考文献
手先の到達点の分布伸縮長を変化せることで、手先の到達点の分布が変化8
問題点伸縮長を変化せることで手先の到達点の分布が変化手先の到達点は離散的な分布目標位置とは常に誤差が生じるバイナリアクチュエータの伸縮長を設計し、目標位置との誤差をできるだけ小さくする9
研究目的設計バイナリマニピュレータの目標位置との誤差をできるだけ小さくするバイナリマニピュレータに作業させたい領域を作業領域として定義し、作業領域内をくまなく均一に覆うことができるようなバイナリマニピュレータの各アクチュエータの伸縮長を求める作業領域内をくまなく均一に覆う事に関する評価進化計算を用いて、バイナリアクチュエータの伸縮長を変化させる目的10
目次11• 研究背景• 研究目的• 提案手法– 評価指標• 最大空円• KS統計量– 最適化手法• 数値実験• まとめ参考文献
最大空円手先の到達点と目標位置の誤差の最大値最大空円12大 小低 高半径密度
最大空円空間上に作業させたい領域を定義する手先の到達点(母点)13
最大空円空間上に作業させたい領域を定義する手先の到達点(母点)14
最大空円母点と隣接するボロノイ頂点の距離の最大値を求める手先の到達点(母点) ボロノイ頂点15
最大空円母点と隣接するボロノイ頂点の距離の最大値を求める手先の到達点(母点)16ボロノイ頂点
KS統計量理想的な手先位置(作業領域内で発生させた一様分布)の距離分布に近づけたいコルモゴロフ・スミルノフ(KS)統計量手先の到達点の分布 理想的な手先位置の分布17
KS統計量𝐷 = max𝑥𝐹 𝑥 − 𝐺(𝑥)作業領域の中心からバイナリマニピュレータの手先の到達点までの距離𝑥に対する累積分布関数𝐹 𝑥作業領域の中心から作業領域内で発生させた一様分布の各点から得られる距離𝑥に対する累積分布関数𝐺(𝑥)18
評価指標作業領域内をくまなく均一に覆うことに関する評価指標として、最大空円とKS統計量を用いる最大空円KS統計量手先位置の誤差の最大値理想的な点の分布に近づく19
評価関数𝑤1, 𝑤2> 0 𝑤1+𝑤2= 1𝐽 = 𝑤1× 𝑟𝑚𝑒𝑐+ 𝑤2× 𝐷最大空円の半径 KS統計量𝐽の値が小さくなるほど、手先の到達点の分布が作業領域内をくまなく均一に覆うことを表している20
目次21• 研究背景• 研究目的• 提案手法– 評価指標– 最適化手法• 進化計算• 数値実験• まとめ参考文献
提案手法進化計算遺伝的アルゴリズム:生物の遺伝と進化のモデルを利用した最適化手法の一手法である。遺伝的操作により、よりよい個体を生成する交叉、突然変異など遺伝子各バイナリアクチュエータの基準の長さを𝐷0とした伸縮長の情報をもつ∆𝒅 = ∆𝑑1, ⋯ ∆𝑑𝑖, ⋯ ∆𝑑6×𝐵𝑇22
提案手法のアルゴリズム23適応度関数として𝐽 (= 𝑤1× 𝑟𝑚𝑒𝑐+ 𝑤2× 𝐷)を定義1.
提案手法のアルゴリズム24初期個体の集団乱数を用いて、個体を𝐼個持つ初期個体の集団を生成2.・・・個体・・・遺伝子
提案手法のアルゴリズム250.30.40.60.50.7𝑔世代目の集団に対して、適応度関数(J)を用いてそれぞれの個体の適応度を求める3.適応度・・・個体・・・遺伝子
提案手法のアルゴリズム26順位 1 2 3 4 5個体適応度 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7適応度の下位40%の個体を淘汰するエリート戦略を行う4.・・・個体・・・遺伝子
4 50.6 0.7提案手法のアルゴリズム27順位 1 2 3個体適応度 0.3 0.4 0.5淘汰適応度の下位40%の個体を淘汰するエリート戦略を行う4.・・・個体・・・遺伝子
提案手法のアルゴリズム元の集団の上位40%の個体から2つの個体をランダムに選択し、交叉点を2つ選び、二点交叉を行い、新しい個体を淘汰した数だけ生成5.親1交叉点1 交叉点2親2交叉点1 交叉点228
提案手法のアルゴリズム親1 親2子2子129元の集団の上位40%の個体から2つの個体をランダムに選択し、交叉点を2つ選び、二点交叉を行い、新しい個体を淘汰した数だけ生成5.
提案手法のアルゴリズム突然変異発生30淘汰を生き残った集団の上位40%以外の個体と交叉によって生成された新しい個体に対して、確率mで突然変異を繰り返す6.
提案手法のアルゴリズム31𝑔 + 1世代元の集団の上位40%と突然変異を行った個体を𝑔 + 1世代の集団として生成7.・・・個体・・・遺伝子
提案手法のアルゴリズム32𝐺世代・・・𝑔世代 𝑔 + 1世代3から7の処理を繰り返し行い、世代数が𝐺に達すると処理を終了8.・・・個体・・・遺伝子
目次33• 研究背景• 研究目的• 提案手法– 評価指標– 最適化手法• 数値実験– 実験条件– 実験結果• まとめ参考文献
実験条件𝐵 = 4のバイナリマニピュレータの伸縮長を求める作業領域 中心(0,0,32)の半径2の球バイナリアクチュエータの基準長を8、伸縮の範囲を(0,2)𝐽 (= 𝑤1× 𝑟𝑚𝑒𝑐+ 𝑤2× 𝐷)の重みを𝑤1= 0.75、𝑤2= 0.25初期集団の個体数 𝐼 = 50 、突然変異の確率 𝑚 = 0.15 、終了条件の世代数 𝐺 = 50034
実験結果(各世代ごとの最良個体)第1世代から第500世代までの手先の到達点の分布の変化35
実験結果(第1世代)𝑟𝑚𝑒𝑐= 1.1343 𝐷 = 0.3248𝐽 = 0.931936
実験結果(第500世代)𝑟𝑚𝑒𝑐= 0.3643 𝐷 = 0.2943𝐽 = 0.346837
実験結果(比較)𝑟𝑚𝑒𝑐= 0.3643, 𝐷 = 0.2943,𝐽 = 0.3468𝑟𝑚𝑒𝑐= 1.1343, 𝐷 = 0.3248,𝐽 = 0.9319第1世代 第500世代38
実験結果進化計算を用いることで𝑟𝑚𝑒𝑐と𝐷の値が減少していき、評価関数の値𝐽も減少した手先の到達点の分布が作業領域をくまなく均一に覆う39
目次40• 研究背景• 研究目的• 提案手法– 評価指標– 最適化手法• 数値実験• まとめ– まとめ– 今後の課題参考文献
まとめ• 進化計算を用いて、バイナリアクチェータの値を変化させることで、様々なバイナリマニピュレータの手先の到達点の分布を求めることができた。第500世代まで処理をすることで、評価関数の値を約37%まで小さくすることができた。• 評価関数として最大空円とKS統計量を用いることで、作業領域内をくまなく均一に覆うことができた。41
今後の課題• 作業領域を凹凸のある図形やピックアンドプレイスを想定した異なる2領域に定義したときのバイナリマニピュレータの設計42
参考文献• 産業用ロボットはどんな構造?ロボットアームが動く仕組みを徹底解説,https://robotics.kawasaki.com/ja1/xyz/jp/1804-03/• 小中英嗣,バイナリマニピュレータ・ハイブリッドマニピュレータ,計測と制御,Vol56,No7,pp503-508,201743