日本のプロバスケットボールリーグ(B.LEAGUE)の各個人に対する攻守それぞれの貢献の定量的指標を新しく提案・算出する研究です.
試合に出ている5人の組み合わせ(ラインナップ)と対戦相手,および時間と得失点に依存する予測勝率を組み合わせて,各選手の攻守それぞれでの貢献を定量化します.貢献は「その選手が試合に出ている単位時間当たりの予測勝率の変化量」で定義されます.
2022年度名城大学大学院修士論文公聴会で発表したスライドです.
プロバスケットボール・B.LEAGUEにおける勝利貢献度の提案および算出小中研究室213426015 杉江幸治
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目次研究背景バスケットボールとスタッツ(統計)選手評価指標:インパクトメトリクス提案手法単調性リアルタイム勝敗確率の構築WPA の定義および算出勝利貢献度の定義および算出まとめ・今後の予定1
目次研究背景バスケットボールとスタッツ(統計)選手評価指標:インパクトメトリクス提案手法単調性リアルタイム勝敗確率の構築WPA の定義および算出勝利貢献度の定義および算出まとめ・今後の予定2
バスケットボールではそれぞれの選手が関与したプレイの回数(得点,シュート数など)が記録されるプロレベルではプレイ単位(得点とその方法,ボール保持の変更,選手交代などの事象とその時刻)まで記録・公開されている3それぞれの選手が関与したプレイの回数(スタッツ) Play-by-playデータ研究背景
研究背景バスケットボールではそれぞれの選手が関与したプレイの回数(得点,シュート数など)が記録されるプロレベルではプレイ単位(得点とその方法,ボール保持の変更,選手交代などの事象とその時刻)まで記録・公開されている4選手の貢献度や活躍度を測るために使われる
研究背景既存スタッツの課題5コート上にいたスタッツに記録されない選手の貢献の評価が難しいhttps://www.youtube.com/watch?v=qKde9M1gKvY&t=1311s2022/07/18 accessed
研究背景インパクトメトリクス:選手が試合結果に与える影響・貢献を単一量で表すことを目的とした指標例: +/-, EFF, PIPM,LEBRON,RPM,RAPTOR, …問題:守備選手の貢献が反映されにくい具体的な手法について学術論文の形式で公表・議論されているものは著者の調査範囲内では見当たらない6
研究背景Play-by-playデータに基づきラインナップの情報を活用する手法ラインナップ:コート上5名の選手の組み合わせ試合のリアルタイム勝敗確率モデルに基づいてベイズ回帰モデルを用いる方法確率の合理性や単調性が保証されていないリアルタイム勝敗確率を用いている7
確率の合理性や単調性が保証されていないリアルタイム勝敗確率8試合経過時間得点差S.K. Deshpande and S.T. Jensen,“Estimating an NBA player’s impact onhis team’s chances of winning,”Journal of Quantitative Analysis inSports, vol.12, no.2, pp.51–72, 2016.得点差が大きくなっても予測勝率が下がっている
研究背景目的:インパクトメトリクスの提案および算出各試合時刻ごとに得点差に対して勝敗確率が単調性を保つリアルタイム勝敗確率の構築Win Probability Added (WPA)の定義および算出勝利貢献度の定義および算出日本のB.LEAGUE,(特にB1リーグ)の選手を対象9
目次研究背景バスケットボールとスタッツ(統計)選手評価指標:インパクトメトリクス提案手法単調性リアルタイム勝敗確率の構築WPA の定義および算出勝利貢献度の定義および算出まとめ・今後の予定10
リアルタイム勝敗確率の構築 予測勝率モデルෝ𝑤 𝑡, Δ𝑠 𝑡: 試合経過時刻 Δ𝑠: 点差 データセット B1 League, 1736試合 2016/9-2019/10 (3 レギュラーシーズン)
単調性とは ෝ𝑤 𝑡, Δ𝑠 が単調⇔ ෝ𝑤 が Δ𝑠 に対して単調 𝑡 = 0, ⋯ , 2400の経験勝敗確率に対しロジスティック回帰を行う
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オフェンスWPA(以降,WPA𝑂):その選手がオフェンスを始めてからオフェンスが終わるまでに変化した試合の勝敗確率の量の総和ディフェンスWPA(以降,WPA𝐷):その選手がディフェンスを始めてからディフェンスが終わるまでに変化した試合の勝敗確率の量の総和WPA:その選手のWPA𝑂とWPA𝐷の合計14Win Probability Added(以降,WPA)の定義
WPAの例攻撃or守備 ෝ𝒘 𝒊の得点 𝒕 𝒋の得点 ෝ𝒘 攻撃or守備攻撃(開始) 0.65 18 702 9 0.35 守備(開始)攻撃(終了) 0.72 21 722 9 0.28 守備(終了)守備(開始) 0.72 21 722 9 0.28 攻撃(開始)15・・・チーム𝑗の選手のWPA𝐷は0.28 − 0.355= −0.014チーム𝑖の選手のWPA𝑂は0.72 − 0.655= 0.014・・・チーム𝑖 チーム𝑗ෝ𝑤 722,12 = 0.72
WPAの例攻撃or守備 ෝ𝒘 𝒊の得点 𝒕 𝒋の得点 ෝ𝒘 攻撃or守備攻撃(開始) 0.65 18 702 9 0.35 守備(開始)攻撃(終了) 0.72 21 722 9 0.28 守備(終了)守備(開始) 0.72 21 722 9 0.28 攻撃(開始)16・・・チーム𝑗の選手のWPA𝐷は0.28 − 0.355= −0.014チーム𝑖の選手のWPA𝑂は0.72 − 0.655= 0.014・・・チーム𝑖 チーム𝑗ෝ𝑤 722,12 = 0.72
WPAの例攻撃or守備 ෝ𝒘 𝒊の得点 𝒕 𝒋の得点 ෝ𝒘 攻撃or守備攻撃(開始) 0.65 18 702 9 0.35 守備(開始)攻撃(終了) 0.72 21 722 9 0.28 守備(終了)守備(開始) 0.72 21 722 9 0.28 攻撃(開始)17・・・チーム𝑗の選手のWPA𝐷は0.28 − 0.355= −0.014チーム𝑖の選手のWPA𝑂は0.72 − 0.655= 0.014・・・チーム𝑖 チーム𝑗ෝ𝑤 722,12 = 0.72
評価対象(WPA)対象期間:2018-19のレギュラーシーズン540試合評価対象:B1リーグの268人具体例チーム: 千葉 (52勝) ,栃木 (49勝)出場時間が 10000[s]を超えている選手(およそ 3[分/試合])18
評価結果(WPA)19対象期間の千葉ジェッツのWPA/s 対象期間の栃木ブレックスのWPA/s
評価結果(WPA) :ペース20対象期間の千葉ジェッツ,栃木ブレックスのWPA/s(ピンク:栃木,緑:千葉)WPA𝑘𝑂 /𝑠 と WPA𝑘𝐷 /𝑠 をチームごとに比較栃木が大きい栃木の方が時間当たりの得失点の回数が多い傾向にあるWPAは得失点で大きく変化する
評価結果(WPA) :PG21対象期間の千葉ジェッツのWPA/s 対象期間の栃木ブレックスのWPA/s速い遅い速い速い
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23Δෝ𝑤 = 0.07ラインナップ𝑖のある選手のWPA:0.075= 0.014チーム𝑖のラインナップチーム𝑗のラインナップWPAはラインナップ(相手味方問わず)と経過時間を考慮していないWPAから勝利貢献度(VC)へ拡張
要素 WPA VCラインナップ(相手味方問わず) × ラインアップの対戦で予測勝率の変化量が説明されると仮定経過時刻 × 1秒ごとの予測勝率の変化量に変更24ラインナップの実力 選手個人の実力:勝利貢献度(VC)VC:ある選手が含まれているラインナップレーティングの出場時間による重み付き平均VCの定義ラインナップの定量的実力評価を行う
WPAから勝利貢献度(VC)へ拡張25𝐽 = ΣΔ𝑡Δෝ𝑤Δ𝑡− 𝑝2ラインナップの定量的実力評価に線形回帰を用いるレーティング:定量的評価値𝑝: 1秒ごとの予測勝率の予測変化量𝐽: 評価関数−: オフェンスレーティング : ディフェンスレーティング= 𝑝: Δ ෝ𝑤Δ𝑡の予測量𝑟𝑗𝐷𝑟𝑖𝑂
26チーム𝑻のラインアップ 𝑟𝑖𝑂 𝑟𝑖D 𝒕1.23 ∗ 10−3 −2.01 ∗ 10−4 261728.57 ∗ 10−47.74 ∗ 10−5 69975.51 ∗ 10−4 −4.61 ∗ 10−5 2512選手ID:𝑘WPAから勝利貢献度(VC)へ拡張・・・・・・VC𝑂:オフェンスVCVC𝐷:ディフェンスVC選手𝑘のVC𝑂は1.23𝑒−03∗26172+8.57𝑒−04 ∗699726172+6997=1.15𝑒 − 03選手𝑘のVC𝐷は−2.01𝑒−04 ∗26172+7.74𝑒−05 ∗699726172+6997=−1.42𝑒 − 04
VC𝑂:オフェンスVCVC𝐷:ディフェンスVC 27・・・チーム𝑻のラインアップ 𝑟𝑖𝑂 𝑟𝑖D 𝒕1.23 ∗ 10−3 −2.01 ∗ 10−4 261728.57 ∗ 10−47.74 ∗ 10−5 69975.51 ∗ 10−4 −4.61 ∗ 10−5 2512選手𝑘のVC𝑂は1.23𝑒−03∗26172+8.57𝑒−04 ∗699726172+6997=1.15𝑒 − 03選手ID:𝑘WPAから勝利貢献度(VC)へ拡張選手𝑘のVC𝐷は−2.01𝑒−04 ∗26172+7.74𝑒−05 ∗699726172+6997=−1.42𝑒 − 04・・・
評価対象(VC)28対象期間:2018-19のレギュラーシーズン540試合評価対象:B1リーグの268人具体例チーム: 千葉 (52勝) ,栃木 (49勝)出場時間が 10000[s]を超えている選手(およそ 3[分/試合])
評価結果(VC)29対象期間の千葉ジェッツのVC 対象期間の栃木ブレックスのVC
評価結果(VC) :ペース30対象期間の千葉ジェッツ,栃木ブレックスのVC(ピンク:栃木,緑:千葉)VCO と VCD をチームごとに比較栃木が大きい栃木の方が予測勝率の変化の回数が多い傾向にあるVCは予測勝率の変化量で大きく変化する
評価結果(VC) :PG31富樫> 西村 鵤=渡邊対象期間の千葉ジェッツのVC 対象期間の栃木ブレックスのVC
目次研究背景バスケットボールとスタッツ(統計)選手評価指標:インパクトメトリクス提案手法単調性リアルタイム勝敗確率の構築WPA の定義および算出勝利貢献度の定義および算出まとめ・今後の予定32
まとめ 試合時刻ごとに得点差に対して勝敗確率が単調性を保つようなリアルタイム勝敗確率を構築した リアルタイム勝敗確率に基づいたインパクトメトリクスを定義・算出した WPA 勝利貢献度(VC) 千葉ジェッツ,栃木ブレックスに所属している出場時間が 10000[s]を超えている選手の中でWPA およびVC を用いて各選手の攻守それぞれにおける貢献を定量化した33
今後の予定複数年にわたる提案指標の算出および分析34