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記号論の新たなランドスケープ :平井靖史「記号過程」の時間的アーキテクチャ: ベルクソン記号論...

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August 31, 2026
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記号論の新たなランドスケープ :平井靖史「記号過程」の時間的アーキテクチャ: ベルクソン記号論へ」への応答

日本記号学会公開セッション「ベルクソン記号論の可能性をめぐって」での発表。

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Kanta Tanishima

August 31, 2026

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Transcript

  1. 自己紹介 2 / 19 谷島貫太 二松学舎大学 専門 技術哲学 ベルナール・スティグレール 記号論

    パースの指標概念 メディア研究 アテンション/流通 〇 進行中の研究課題 パースの指標概念の変遷と応用 基盤研究(C)・代表:佐古仁志 言語生成AI時代における主体性概念の再考 基盤研究(C)・代表:西田洋平 計算言語人類学の基盤構築 AI for Science(SPReAD)・代表:谷島貫太 今日は主にパース記号論の視点を踏まえての応答 技術哲学や痕跡論との接続についてはまた別の機会に 『アテンション資本論』 新曜社・2026年8月刊行
  2. 本応答の目標:平井論文の〈問い〉を引き受ける ベルクソン記号論を触媒として、記号論のランドスケープを更新する一歩目 「記号活動は、いかにして安定性と創造的な逸脱を両立させているのか」(p.189) 〇 前提となる記号主体のモデル: 特定の環境とパースペクティブに埋め込まれ、使える資源に限りのある主体 〇 三つの問題系 1 2

    3 記号主体を、有限なリソースを元手にコストを払って行為する存在として捉えるべきでは? ——行動誘発の濃淡、認知コスト、〈行為モデル〉 認知・判断コストの節約のどのようなメカニズムが記号過程を支えているのか? ——断熱性、ランドスケープ 差異産出を、異なる時間相でのそれぞれのリズムの作動から捉え直せるのでは? ——未完了相、破れ、予測生成 三つの問題系を〈予測のエコノミー〉の観点から横断的に捉えることを試みる。 3 / 19
  3. 1|パースにおける探究のエコノミー 6 / 19 パースは、探究を有限な資源の配分問題として扱う視点を持っている。 ECONOMY OF RESEARCH(1879) 「経済の一般的な原理は、効用と費用との関係を扱う。そのうち研究に関わる部門、すなわち「研究の経済」は、私たちの知識に含まれ る確率誤差を減少させることの効用と、そのために要する費用との関係を考察する。その中心的な問題は、一定の金銭、時間、エネルギ

    ーを費やすことで、いかにして私たちの知識に最も価値ある増加をもたらすことができるか、ということである。」(CP 7.140) THE FIXATION OF BELIEF(1877) 「信じているという感じは、われわれの行為を決定することになる何らかの習慣が、われわれの本性のうちに確立されていることの、多かれ少なかれ確 かな指標(indication)である。」(CP 5.371) 「信念は穏やかで満足のいく状態であり、これを避けたいとも、別の何かへの信念に取り替えたいとも思わない。〔…〕まさに現に信じているその内容 を信じ続けることに、粘り強く執着するのである。」(CP 5.372) 「信念は、われわれを直ちに行為させるのではなく、機会が生じたときにある定まった仕方でふるまうであろうような状態に、われわれを置く。疑念には 、そのような能動的効果は少しもなく、疑念が破壊されるまで、われわれを探究へと刺激する。」(CP 5.373) 疑念は、習慣で行為を決定できる状態を回復させる駆動力 探究は、真理そのものではなく、信念を回復させる範囲でのみ作動する。
  4. 1|パースにおける〈行為モデル〉:活動的解釈項 記号の効果は、感じにとどまらず、現実の努力・行為としても現れる。 解釈項の三様態 (1907年、CP 5.475–476) 情感的 emotional 感じ 活動的 energetic

    論理的 logical 単一の努力・行為 一般的効果・習慣 活動的解釈項(energetic interpretant)=記号効果が現実の努力・行為として現れる様態 個別の行為と結びついた努力であり、「意味」の手前 努力の反復が習慣変容(habit change)につながるとき、論理的解釈項となる 未確定性の中で行為を生成していく、一種の〈行動的アブダクション〉といえる? 7 / 19
  5. 2|記憶ランドスケープと外的ランドスケープ 記憶ランドスケープを、外的ランドスケープの動的なネガとして捉えることはできないか 外的ランドスケープ 記憶ランドスケープ 環境・人工物・制度に沈殿した抵抗の地形 外的ランドスケープのネガ/痕跡(≒習慣) 更新のサイクル ① 現実の抵抗が驚き(二次性)として現れる——生きた疑いが生じるとき、アブダクションが行為の候補を出す ②

    行為・試行とそのフィードバックを通じて、習慣=記憶ランドスケープが改訂される(三次性) ③ 行為は同時に、道具・場・制度という外的ランドスケープの側も変える(p.198)——努力とニッチ構築 前提:外的ランドスケープへの無媒介のアクセスはない 接触は、記憶ランドスケープへのフィードバック回路を通して、つねに記号と行為に媒介される ランドスケープ論のパース的再構成。ベルクソンにおける生や愛の〈ネガ〉に対して、 パースの場合はbrutalな現実のネガ。 10 / 19
  6. 3|記号論的断熱性の分類学 12 / 19 コードの変化が十分に遅いことが、記号イベントの安定した拘束を可能にする(p.200) 二つの非必然性 A 法則形成における非必然性 / B

    法則適用における非決定性(p.201) A はさらに二つに分けられるのでは? A-1 パースペクティブの非必然性——同じ制約構造の下でも、パースペクティブごとに利用可能な相互作用が異なる A-2 制約構造の非必然性——制約構造それ自体が、歴史的に別様でありえた 別軸として——制約の維持様式 物質的慣性が優位(大地) 再生産が優位(社会的ルール) 維持コストなし・期待に非応答 受け取り・制裁・人工物・制度が再生産 違反は物理的衝突として実現 違反は、記録され受け取られた場合に限り制約へ書き戻 されうる 間主観的ランドスケープでは、形成原理と再生産コストを併せて問う必要があるのでは?
  7. 3|多層的セミオーシスとMTS 13 / 19 ある層で習慣化された三次性が、別の層では一次性として機能する ——多層的セミオーシスモデルは成立するか? 例:文字の認知と読解 文字の獲得:線の知覚(一次性)→ 個別の試行錯誤(二次性)→ 文字の習慣的認知(三次性)

    読解:文字認知が一次性として与えられ → 別種の試行錯誤(二次性)→ 文章読解の習慣化(三次性) さらに、生物学的な古層(エッジ・色の知覚)=進化的に獲得された習慣が 意識には一次性として与えられる 進化的・後天的な三次性が一次性として働くことという捉え方ができるのでは? 断面で見れば、一つの記号のなかに類像的・指標的・象徴的性格が混合している(CP 4.448)——同一 の記号内に共存するMTS? 各層の三次性は、その上を走る速い過程にとっての安定した所与として機能するのでは?
  8. 3|多層的セミオーシスの入れ子構造イメージ 14 / 19 三次性=読解の習慣 深い層ほど遅く・古い 読解(いま) 文字の獲得(生涯) 生物学的古層(進化的) 文字認知の層(線→試行錯誤→文字)が

    丸ごと頂点に畳み込まれている その一次性の中にも、 生物学的古層(エッジ・色)が 畳み込まれている 一次性=文字認知(開くと、下の層の三項全体) 二次性=読解の試行錯誤
  9. 4|社会的指標性の二機能 社会的指標は、ありうる解釈と行為の分布を事前に偏らせる 予測コストの二重の縮減 ① フレームインデックス:どのレジスター/参与枠組みが採用されているかを重みづける ② 参与役割/footing のインデックス:そのレジスター内の、どの位置からの発話かを示す ——レジスターが決まれば、コストはその内部での適切な立ち回りに縮減される (社会的)指標は、ランドスケープ内での立ち回りを可能にすると同時に、

    ランドスケープの制約の構造をネガとして指標する ところで、コミュニケーションをどのフレームに投錨すべきかは自明でない ——レジスター選択自体に認知コストが生じる フレームそのものを再編するような遂行的な指標(entailing index, Silverstein)も ランドスケープの再編を、指標記号の作動の(未完了)相に見出す 17 / 19
  10. 4|人格(エピソード記憶)はどの範囲で ランドスケープ再編の資源となりうるのか? 18 / 19 レジスターを逸脱する発話は、違反・冗談・修復・フレーム転換などとして交渉され、 必要に応じて個体履歴(「この振舞いの背景には個人的傾向がある」)も参照される あるレジスターにおける相互行為が、ランドスケープが担保していたはずの 相互予測の「破れ」に直面した際に、「人格」をどこまで参照するか/しないかは、 レジスター内部であらかじめ(かなりの程度)制度化されているのでは?

    〇 個人レベルのランドスケープの変容と 社会レベルのランドスケープの変容との連続性と非連続性 ・個々のランドスケープの変容の蓄積 ・社会的ランドスケープ変容の触媒となる「聖者」 ・あるいは「聖者」自体が、それをある仕方で扱う社会制度によってあらかじめフレーミングされているのでは? 誰のどのズレが、どの制度的回路を通じて、ランドスケープへ書き込まれるのか。
  11. 19 / 19 まとめ 1 生態心理学的な視点において、ベルクソンとパースには かなり近しいところがあるのでは? 2 ランドスケープ概念は、二次的な衝突を介した三次的な習慣化という パース的なモデルと、どこまで重なりどこからズレるのか?

    3 MTSのモデルを踏まえると、異なるリズムで作動するセミオーシスが多層的に 重なり合って展開されていく、という描像が得られるのでは? 4 個人レベルのランドスケープ変容と社会レベルの(多元的な)ランドスケープの 変容はどこまで連続的/非連続的なのか?