Upgrade to Pro — share decks privately, control downloads, hide ads and more …

日心2020_会社は,変えられるか︖ 「会社マインドセット」と⾃⼰研鑽的な学習⾏動・組織変⾰的...

日心2020_会社は,変えられるか︖ 「会社マインドセット」と⾃⼰研鑽的な学習⾏動・組織変⾰的な学習⾏動との関連

2020年の日本心理学会大会で発表したスライドです。

会社は,変えられるか︖「会社マインドセット」と⾃⼰研鑽的な学習⾏動・組織変⾰的な学習⾏動との関連

https://cir.nii.ac.jp/crid/1390008841537504640

More Decks by 岩本 慧悟 / Iwamoto Keigo

Other Decks in Research

Transcript

  1. ◦岩本(⼤久保) 慧悟1 2・沓澤 岳1 ・滝⼝ 雄太1 ・尾崎 由佳1 (東洋⼤学1・パーソル総合研究所2) ⽇本⼼理学会

    第84回⼤会 1 ご連絡先︓ [email protected] 会社は,変えられるか︖ 「会社マインドセット」と⾃⼰研鑽的な学習⾏動・組織変⾰的な学習⾏動との関連
  2. ・組織変⾰的な⾏動を説明する組織論の議論に「組織学習」 ・組織学習とは︓ 組織成員が既存の組織に関する諸知識を更新すること (Argyris & Schön, 1978などを正⽊・村本, 2015が整理) ・2つの組織学習⽅略(正⽊・村本, 2015)

    (1)シングルループ学習 組織成員が個⼈または複数で積極的に学習を⾏うこと (2)ダブルループ学習 集団のあり⽅の改善を意図して、率先して組織の既存価値観や ⾏動基準からの逸脱を⾏うこと 組織変⾰的な⾏動であるダブルループ学習を⽀える認知的要因は︖ 組織変⾰的な⾏動 本研究の着眼点 3
  3. マインドセット ・困難な状況の中での挑戦的な⾏動を促す認知的要因として, マインドセット(暗黙理論*)が挙げられる ・マインドセットとは,知能や性格などの性質について個⼈ が抱く信念であり,学業上の成功や困難に直⾯した際の粘り 強さを予測する(e.g., Hong et al., 1999;

    Blackwell et al., 2007; Yeager et al., 2019) -増⼤的マインドセット 能⼒や性格などの性質を「変えられるもの」と捉える -固定的マインドセット 能⼒や性格などの性質を「備わっているもの」と捉える ・マインドセットは安定性のある個⼈差であるが,⽐較的低 コストで介⼊可能である(e.g., Yeager et al., 2019) *Dweck & Yeager(2019)によれば,研究初期は暗黙理論(implicit theory)と呼んでいたが(一般に)伝わりやすいように途中からマイン ドセットと呼び方を変えたとのこと 4
  4. マインドセット ・マインドセットは,困難な状況における重要な事柄に対す る改善⾏動に影響を与える Hong et al(1999) ・英語で講義が⾏われる⾹港⼤学の新⼊⽣に英語の補講を案内 ・⼊学時点の英語成績が悪い学⽣でこそ,増⼤的MSを持つ学⽣は, 固定的MSを持つ学⽣よりも補講に対して参加に積極的 ・MSを操作した実験室実験でも同様⾏動を確認

    ・マインドセット研究は,能⼒や性格以外にも,意志⼒(Job et al., 2010; 櫻井・渡辺, 2019) や,ストレス(Crum et al., 2013; 岩本ら, 2020) や 興味(OʼKeefe et al., 2018) などの信念にも拡張されている 組織変⾰的⾏動に影響しうる認知的要因として, 「会社」の可塑性についての領域特有のマインドセットを検討する 本研究の⽬的 5
  5. ・興味MSを扱ったOʼKeefe et al(2018)の⼿法を参考として, Dweck(1999)の知能MS項⽬に基づき4項⽬6件法で測定 結果① 会社マインドセット 従業員が懸命に働きかけることで、会社の⾵⼟を変 えることができる * 1

    その会社らしさは変わるものなので、従業員次第で 変えることができる * 2 その会社らしさは根本的なものなので、従業員が⼤ きく変えることはできない 3 仕組みや制度を変えることはできても、会社の根本 的な部分を従業員が変えることができない 4 会社マインドセットの測定項⽬(α=.77) 0 10 20 30 40 50 60 1 1.5 1.75 2 2.25 2.5 2.75 3 3.25 3.5 3.75 4 4.25 4.5 4.75 5 5.25 5.5 5.75 6 度 数 会社マインドセット得点 *を逆転処理し,平均値を算出 (得点が⾼いほど,固定的MSを⽰す) 固定的MS (変わらない) 増⼤的MS (変わらない) 平均値 ︓3.39 標準偏差︓0.81 8
  6. 結果② 会社MSと組織変⾰的⾏動との関連 シングルループ学習 ダブルループ学習 step1 step2 step3 step1 step2 step3

    β p β p β p β p β p β p 性別ダミー .04 .01 .01 .01 -.01 -.01 年齢 -.02 -.01 -.01 .04 .05 .05 職種_営業 .19 ** .16 ** .17 ** .12 + .09 .10 職種_企画 .13 * .09 .09 .15 * .12 * .12 * 職種_マーケティング .08 .08 .09 .04 .04 .04 職種_事務 .03 .03 .03 .12 + .12 + .12 + 職種_技術(IT通信) .08 .04 .04 .19 ** .16 * .15 * 職種_技術(電気・電⼦・電 機) .17 ** .16 * .15 * .18 ** .17 ** .16 * 職種_技術(メディカル・化学・ ⾷品) .16 * .14 * .12 * .10 .09 .08 職種_技術系(建築/⼟⽊) .14 * .16 ** .16 ** .14 * .15 * .15 * 職種_専⾨職 .05 .03 .03 .15 * .13 * .13 * 仕事の困難さ -.03 -.02 -.02 .11 + .12 + .12 + 知能MS -.01 .06 .05 .00 .06 .05 会社MS -.37 ** -.36 ** -.31 ** -.31 ** 仕事の困難さ*知能MS -.14 * -.10 仕事の困難さ*会社MS .05 .06 R2 .09 * .22 ** .24 ** .10 * .18 ** .19 ** 表 組織学習を⽬的変数とした階層的重回帰分析 ・シングル/ダブルループ学習の両変数につい て会社MSが有意に関連 ・会社が変わると捉えるほど,⾃⼰研鑽的 ⾏動も,組織変⾰的⾏動がなされる (仮説1⽀持) ・知能MSとの関連は⾮有意 ・シングルループ学習と,困難さ×知能MS の交互作⽤が有意(次⾴で検討) ・ダブルループ学習と,困難さ×会社MSの 交互作⽤は⾮有意(仮説2不⽀持) 1 1 2 3 2 3 9
  7. •Argyris, C. & Schön, D. A. (1978). Organizational learning: A

    theory of action perspective. Massachusetts: Addison Wesley. Blackwell, L. S., Trzesniewski, K. H., & Dweck, C. S. (2007). Implicit theories of intelligence predict achievement across an adolescent transition: A longitudinal study and an intervention. Child development, 78(1), 246-263. •Crum, A. J., Salovey, P., & Achor, S. (2013). Rethinking stress: The role of mindsets in determining the stress response. Journal of Personality and Social Psychology, 104, 716–733. •Dweck, C. S. (1999). Self-theories: Their role in motivation, personality, and development. New York, NY: Psychology Press. •Dweck, C.S. & Yeager, D.S.(2019) Mindests: A View From Two Eras. Perspectives on Psychological Science, 14(3), 481-496. •Hong, Y.-y., Chiu, C.-y., Dweck, C. S., Lin, D. M.-S., & Wan, W. (1999). Implicit theories, attributions, and coping: A meaning system approach. Journal of Personality and Social Psychology, 77(3), 588–599. •ؠຊ(େٱอ) ܛޛɾ஛ڮ ༸ؽɾߴ ࢙໌ʢ2020). ετϨεϚΠϯυηοτई౓ͷ๜༁͓Αͼ৴པੑɾଥ౰ੑͷݕ౼, ৺ཧֶݚڀ , 90(6), 592-602. •Job, V., Dweck, C. S., & Walton, G. M. (2010). Ego depletion: Is it all in your head? Implicit theories about willpower affect self- regulation. Psychological Science, 21, 1686–1693. •ਖ਼໦ Үଠ࿠ɾଜຊ ༝لࢠ(2015) ૊৫ίϛοτϝϯτ͕૊৫ֶशʹٴ΅͢Өڹʹ͍ͭͯ, ࣾձ৺ཧֶݚڀ, 31, 46-55 •จ෦Պֶল Պֶٕज़ɾֶज़੓ࡦݚڀॴ(2018) Պֶٕज़ࢦඪ2018, ௐࠪࢿྉ-274 / 2018.8 •ٴ઒ ণయ(2005). ஌ೳ؍͕ඇҙࣝతͳ໨ඪ௥ٻʹٴ΅͢Өڹ,ڭҭ৺ཧֶݚڀ, 53(1), 14-25. •O’Keefe, P. A., Dweck, C. S., Walton, G. M. (2018). Implicit theories of interest: Finding your passion or developing it? Psychological Science, 29, 1653–1654. •ᓎҪ ྑ༞ɾ౉ล ঊ(2019). ׆ൃͳਫ਼ਆత׆ಈʹର͢Δҙࢤྗͷ҉໧ཧ࿦ई౓ʢImplicit Theory of Willpower for Strenuous Mental Activities Scale: ITW-Mʣ೔ຊޠ൛ͷ࡞੒, ύʔιφϦςΟݚڀ, 27(3), 259-262. •Yeager, D. S., Hanselman, P., Walton, G. M., Murray, J. S., Crosnoe, R., Muller, C., Tipton, E., Schneider, B., Hulleman, C. S., Hinojosa, C. P., Paunesku, D., Romero, C., Flint, K., Roberts, A., Trott, J., Iachan, R., Buontempo, J., Yang, S. M., Carvalho, C. M., Hahn, P. R., Gopalan, M., Mhatre, P., Ferguson, R., Duckworth, A. L., and Dweck, C. S. (2019). A national experiment reveals where a growth mindset improves achievement. Nature, 573(7774), 364–369. 引⽤⽂献 12