Upgrade to Pro — share decks privately, control downloads, hide ads and more …

Xenのスケジューラがぜんぜんわからん

 Xenのスケジューラがぜんぜんわからん

Kernel/VM探検隊online part4 発表資料

Keisuke Nishimura

November 20, 2021
Tweet

More Decks by Keisuke Nishimura

Other Decks in Programming

Transcript

  1. Xenのアーキテクチャ DomU Dom0 DomU vCPU vCPU vCPU vCPU vCPU vCPU

    pCPU pCPU pCPU NIC GPU Xen (VMM) Domain (VM) スケジューラ VM間通信機構 ・・・ ・・・ vCPUをpCPUに 割り当てる 2
  2. vCPUスケジューリング • 目的は計算資源の再配分(OSスケジューラと同じ) • OSのスケジューリングとの違い • スケジューリング単位(VM v.s. Process) •

    実際に動作するApp.に関する情報の粒度 • VMM-App.間にOSが挟まるDouble-Scheduling … • OSからみると,CPUが常に使えるとは限らない. (参考) 本来のOSはCPUは常に使えることが前提 • 例:IO発生時すぐにCPUに割り込みが来る想定 • 例:IPC発生時すべてのコアが動作している想定 3
  3. Xen のスケジューラ • Credit スケジューラ • Credit2 スケジューラ • SEDFスケジューラ

    • RTDSスケジューラ • BVTスケジューラ … ←このLTの対象 (汎用,非RT系) 4
  4. Credit スケジューラ • 元デフォルトスケジューラ: 3.0~4.11 (2005-2018) • 固定タイムスライスでProportional Share(PS) •

    タイムスライスはデフォで30ms固定 (例外あり:tickle, IO) • PS: 各VM(vCPU)はWeight(優先度)に比例した時間割当て • Credit = Weightに応じ配分された実行時間 • 使い果たしたVM (credit <= 0) OVER • 残っているVM (credit > 0) UNDER • UNDERのvCPUをRRで順にスケジュール 該当コード: xen/xen/common/sched/credit.c Creditの値に非依存 (「0以上か」が重要) 5
  5. 実験:レイテンシ計測 8 目的:(1)BOOSTの影響を定量化し,(2)あるVMが別 のVMのIOレイテンシに与える影響を調査. 方法:バックグラウンドで動作するVMで全体に 負荷をかけつつ,別VM間のping RTT計測 • 負荷1:iperfで別マシンと通信するNW-boundなタスク •

    負荷2:yes > /dev/null を実行するCPU-boundなタスク 補足1: VM間通信はIOではないが,VMから見るとIOとほとんど同じ. 外乱が少ないメリットがある. 補足2: 誤差を減らすため,pingはRTタスクで実行,DVFSは無効化
  6. 結果:レイテンシ計測 0 5 10 15 20 25 30 35 no

    BG w/ CPU BG w/ NW BG ping RTT (msec) mean max BOOSTのおかげで レイテンシ小 Tail Latencyが最悪 (×60 ~ ) Creditスケジューラ(パラメタはデフォルト) 9
  7. Creditスケジューラ 問題点:BOOSTしたvCPU間の調停無し (同マシンに複数のIO boundなVMが存在する場合等) • Tail Latencyの大幅な悪化として観測 • BOOSTで割り込んだたくさんのvCPUが,OVERにならな い程度に長い時間の処理を続けるのが原因

    • 固定のデフォルトタイムスライス(TS)が長すぎるのが元凶 • 短いタイムスライス は相対的にContext Switchコスト大 解決策(1) 短いTS (現代のCPUなら無難だが,限界あり) 解決策(2) BGのVMにCapを導入 (×Work Conservation) 10
  8. Credit スケジューラ Capと Work Conservation • Cap: VM(vCPU)の1pCPUに対する実行可能時間 (割合)の上限(%単位表記) •

    例: 4pCPU上であるVM(3vCPU)が, cap値 200[%] で動作 = 最大で全体の50%(200/(4*100))のpCPUを使用可能 (cap無しの場合,最大で全体の75% (3/4)のCPU利用可能) • Work Conservation(WC): Idleな(p)CPUがあるときほか のCPUで実行待ちのタスク(vCPU)が無い性質 Cap値を設けると メリット:CPUの”空き”が保証可能 デメリット:WCが満たされないため無駄が発生 11
  9. 結果:レイテンシ計測 0 5 10 15 20 25 30 35 30

    ms no cap 5 ms no cap 30 ms cap 200(/400) ping RTT (msec) W/ NW BG mean max Creditスケジューラ(パラメタは調整) NW BG に対するcap: タイムスライス: 12
  10. Credit2 スケジューラ • サポート開始 4.8~,デフォルト化 4.12~ • 変動タイムスライスでProportional Share(PS) •

    タイムスライスは実行時に計算 • PS: 各VM(vCPU)はWeightに比例した時間割当て • Credit = Weightに応じ消費される実行時間 (UNDERとかOVERとかは存在しない) • よりレイテンシを抑えたいシステム向き※ ※Creditと比べて,スケーラブルという側面もある. 13 Wiki(更新されていない)曰く Credit2 is not in use by default.
  11. Credit2 スケジューラ タイムスライス決定アルゴリズム 1. Runqに他の実行待ちvCPUが… ある:c2t(実行予定vCPUのcredit - max(待ちvCPUのCredit)) ない:c2t(実行予定vCPUのcredit) 2.

    1の値を次のパラメタで調整(上下限を設定) • ユーザ指定パラメタ: Cap, Rate Limit(=最短実行時間) • 静的なパラメタ: MIX(MIN)_TIMER ※ c2t(): credit を時間に変換する関数, Dom.のWeightに依存 最大credit 次に大きなcredit 15
  12. Credit2 スケジューラ Event(IO)が発生したvCPUは… Runqに突っ込まれてCredit順にソートされ 最大CreditをもつvCPUを実行(tickle) 気持ち: • IO-boundなVMは待ち時間が多くcreditが減っていない ことが想定される. •

    結果として,Event発生VMが優先されやすい. • 複数のVMが同時にIOしている状況に対応しやすい. ※厳密には,最短実行時間などパラメタで調整あり 18
  13. 結果:ping RTTの比較 0 0.5 1 1.5 2 2.5 no BG

    w/ CPU BG w/ NW BG ping RTT (msec) mean max Credit2スケジューラ(パラメタはデフォルト) Tail の悪化が抑制 20
  14. (再掲)結果:レイテンシ計測 0 5 10 15 20 25 30 35 30

    ms no cap 5 ms no cap 30 ms cap 200(/400) ping RTT (msec) W/ NW BG mean max Creditスケジューラ(パラメタ調整) 21
  15. まとめ • Xenのスケジューラの主要な2つを説明した. • Credit スケジューラ • 固定タイムスライス,Proportional Share •

    IOレイテンシ削減のためにBOOST • 複数のBOOSTが同時に起こる環境ではレイテンシ大 • Credit2 スケジューラ • 変動タイムスライス,Proportional Share • レイテンシの観点で性能改善 23