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横浜翠嵐高校 職業講話 / Talk for YOKOHAMA SUIRAN 2024

横浜翠嵐高校 職業講話 / Talk for YOKOHAMA SUIRAN 2024

『「普通の文系学部生」がソフトウェア・エンジニアリングの業界で仕事を続けられた3つの鍵』というタイトルで、横浜翠嵐高校 職業講話にてお話した際のスライドです

Takuya "Mura-Mi" Murakami

March 14, 2025
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Transcript

  1. まず、雰囲気を掴みたい で、皆さんに質問 • プログラミングしたことある人? • 授業以外でプログラミングしたことある人? • 最近も(自ら進んで)プログラミングしてる人? • 大学入試共通試験で新設された

    「情報Ⅰ」を解いてみた人? ◦ 何点くらい取れた? • 「プログラマー・ソフトウェアエンジニア 理系 仕事だ」と思う? • 「プログラマー・ソフトウェアエンジニア 数学ができないと務まらない 」と思う? • 「プログラマー・ソフトウェアエンジニア 男性 方が適している 」と思う? • 「プログラマー・ソフトウェアエンジニア 終日プログラムを書き続ける仕事 だ」と思う? • 「ウォーターフォール」「アジャイル」という言葉を知っている? • 生成AIに興味がある?
  2. 今日 話 • 私 誰か • 「ソフトウェア・エンジニア」 仕事について • 自分が「ソフトウェア・エンジニア」としてキャリアを重

    られた3つ 鍵 参加された皆さんが、現在 文理選択や得意不得意 意識などに関わらず、ひとりでも 多くが「ソフトウェア開発に興味を持ち」「キャリア 選択肢として考えてもらえる」と良い なと思いながら話します。
  3. About me • 村上拓也 • 1989年生まれ(来月で36歳) • 横浜国大附鎌倉(小中)出身 • 翠嵐

    普通科60期(2005年4月入学、2008年3月卒 業) ◦ 音楽部 • 一橋大学 商学部 2012年3月卒業 ◦ 3,4年時 専攻 「消費者行動」 • 現在 シンプレクス・ホールディングス(株)にてHR 部門(人事)に所属し、自社 システムエンジニア ・ITコンサルタント 育成に関わっている。 • 妻・息子(4歳)とともに東京都在住
  4. むらかみ 大学選びと大学時代 • 翠嵐時代 至って普通 高校生だった(と思う …) ◦ 音楽部 頑張ってた

    (拘束時間が厳しい部活で ないけど、「定期演奏会」に向かう 1年 流れを頑張ってた) ◦ 2年まで 「ベイスターズ友 会」に入って放課後にガラガラ ハマスタに通っていた • 大学選び ある意味消極的に決定 ◦ 家庭 事情もあり、最初から「文系 大学に進学 →4年で学部を出て就職する」ことが求められて いた。 ◦ 大学選び自体に特段 理由 なかった。偏差値、得意科目、自宅から通える範囲、などで一橋志 望を決め、オープンキャンパスに行ったら気に入った でそ 気になった。 • 大学時代も普通 大学生だった(と思う …) ◦ 普通に授業を受けて、音楽系サークル活動でサークル運営・ライブ向け制作を頑張ったり、大学受 験予備校 チューターや衣料品店 店員をしていた
  5. ファーストキャリア: シンプレクス • 就活 最中に東日本大震災があった ◦ 当初 “普通 就職活動” で、有名な大企業を中心に説明会や面談などをしていた。

    ◦ それらしい物心がついてから、「社会が大きく変わりそうな気がする」と思う に一番大きい出来事 だった。 ◦ 当時 自分なりに「大きな会社にいるからといって良い仕事ができると 限らない」「若いときにス キルをもって稼げる根拠を持ちたい(会社に依存したくない)」 と思うようになった ◦ 「金融業界 レーシングカーを作る ような仕事をする」「一番優秀なプレイヤーがコードを書くべきだ し、一番給料が高くあるべき 」「若いうちにとにかく成長 」という社長 言葉・考えがわかりやすく、シ ンプレクスへ 意向が高まり、幸いに内定がもらえた で決定。 • 当時 シンプレクス 従業員数 300人台(今 約 1,500人) ◦ 親 大企業志向だった で、シンプレクスに決めたときに 不安がられた(と思う)
  6. 最初 4年半と転職、そして復帰 • シンプレクスで 複数 金融機関向けに市場リスク管理システム 開発・改善 を行って いた ◦

    市場リスクと ?→ 世 中でやり取りされている金利・為替が変わると、金融機関が保有している債券( 2者間 であらかじめ決めた時期・利率に基づいて資金をやり取りする契約) 評価額が変わる → 金融機関 損益が 変わる ◦ 「いま金利が 0.01% 上がったら自分たち いくら損する?」「リーマンショック級 相場変動が今起きたらどれく らい 損失になる?」などを計算する • 当時 自分 置かれている状況よりもっと成長できる で ないか?と思い、 5年目 秋 に転職 ◦ そ 後、Web広告配信システム開発 → 個人向け資産運用サービス → 製 業スタートアップ ◦ 2年弱ずつで転々とする(2016~2021) ◦ だんだん「ひとり エンジニア」 仕事よりも「エンジニアリング・マネジメント」 仕事が多くなっていった • (そ 後色々ありつつ、)2021年にシンプレクスにフリーランスとして復帰し、2022年より HRにて研修に関わり始める。2024年に正社員に戻って今に至る。
  7. 独立とシンプレクスへ 復帰 • 色々あって2021年に正社員として働くことをやめて、 フリーランスに。 ◦ 個人事業主として「開業届」を税務署に提出する ◦ 個人として企業と「業務委託契約」(not 雇用契約)を結んで仕事を受ける

    ◦ 税金や社会保険に関する手続き 自分でやる • フリーランスとして 「コーチ」「コンサルティング」「広報支援」などをしていた ◦ 「コーチ」→ 開発チームが抱えている課題 解決を支援するために動いたり、チーム リーダー 相談相手になる ◦ 「広報支援」 → ソフトウェア・エンジニア 採用活動 激化 一途。企業 プレゼンスを高めて、「働きたいと思っても らう」「スカウトがかかったときに検討してもらう」 がとても大事。 • フリーランスとなったと同時に、 シンプレクスに契約社員として復帰 ◦ 契約社員 = 有期雇用契約。 ◦ よくある正社員(無期雇用契約)と違い、契約期間が終わるごとに契約 見直し(終了するかどうかを含む)がある ◦ こ 期間 途中から新人育成に関わるようになる。 • 2024年4月よりほか フリーランス活動を実質終了させ、 正社員としてシンプレクス で働き始める
  8. 「ソフトウェア・エンジニア」「システム・エンジニア」と ? • ソフトウェア : ハードウェア 実行方法を規定するプログラムや、それを記述したも (ソースコードを含む) ◦ (対)

    ハードウェア : コンピュータを構成する物理的な部品やそ 集合 • システム:「所定 任務を達成するために, 選定され, 配列され, 互いに連係して動 作する一連 アイテム (ハードウェア, ソフトウェア, 人間要素) 組合せ」(JIS定 義) • エンジニア : 専門的な技術に関する知識・経験を持ち合わせ、機械や複雑なシステ ム、建 物などを設計・開発・試験する人 以降 スライドで「エンジニア」と書くとき 、「ソフトウェア・エンジニア」「システム・エンジ ニア」両方を指します。 (それ以外 領域 エンジニア 前提から外します)
  9. エンジニア 働き方(稼ぎ方) いくつかある • ソフトウェアを作って売る ◦ 映像制作ソフトやゲームソフトなど ソフトウェアを作って、それ自体を売る ◦ 上記に挙げた例

    一般消費者向け・個人向けだが、企業向け ソフトウェアを作って売ることもあ る。 ◦ ソフトウェア開発者向け ソフトウェア(開発ツールなど)もある。 • 事業会社 エンジニアとなる ◦ 何らか 事業を行っている会社で、そ 事業を支えるソフトウェアを作ったり、 システムを動かしたりする • 受託開発 ◦ システムを調達する必要があるが自分で作ることができない企業に向けて、 要望を聞いてシステムを開発して納品したり、運用を支援したりする
  10. ソフトウェア開発・システム開発 特徴 ソフトウェア開発も「モノづくり」と言われるが、物理的なモノがある「モノづくり」と 性質 違う面が多々ある。 • 量産可能性 : 同じも であれ

    量産コスト 0、再現性もほぼ保たれている ◦ 僕とあなたがダウンロードしたアプリ 性能や挙動が違ったらおかしい • 変更可能性 : 土台 部分から見直すこともできる、リリースしたあとに変更を加える こともできる ◦ そ 分、物理的な構 物よりも簡単に壊れたり劣化することもある • 直接 目に見えない : 「こういうも が欲しい」と簡単に伝えることができない。 ◦ 物理的な構 物と違って、事前にシミュレーションできることがとても少ない
  11. ソフトウェア つくりかた(工程)とエンジニア 仕事 考える 組む 試験 する 実使 用 する

    • 売りたいソフトウェア 企画 • 自社サービス企画 • 自社 なん 業務をどうシステム化するか • 顧客 作りたいシステム、成し遂げたいこと なにか (とてもざっくり)
  12. ソフトウェア つくりかた(工程)とエンジニア 仕事 考える 組む 試験 する 実使 用 する

    • どんな機能を作る? • 保存するデータ 構 ? • どんな画面? • いつ何が自動で動く? • などなどを決めながらプログラムを書く (とてもざっくり)
  13. ソフトウェア つくりかた(工程)とエンジニア 仕事 考える 組む 試験 する 実使 用 する

    • 計算ロジック 正しい? • こ ボタンを動かしたとき 処理 正しく動く? • 大人数で利用したときに問題なく動く? • ハッカー 攻撃起点となる弱点が無いか? • など、色々な粒度で観点を洗い出し、検証する (とてもざっくり)
  14. ソフトウェア つくりかた(工程)とエンジニア 仕事 考える 組む 試験 する 実使 用 する

    • アプリを公開したり、システム 実稼働 &使用が始まっ たり。 • 試験 フェーズで 見つからなかった不具合が見つ かったり、そもそも企画 時点で想定していなかった問 題が見つかる • 利用者から新たな要望が上がったり、外部環境 変化 へ 対応が余儀なくされる (とてもざっくり)
  15. ソフトウェアが使われ続く限り、こ サイクルが続く 考 え る 組 む 試 験 す

    る 実 使 用 す る 考 え る 組 む 試 験 す る 実 使 用 す る 考 え る 組 む 試 験 す る 実 使 用 す る … • 一度作ったソフトウェアやシステムが、そ 後ずっと手をかけないままなこと 、 現代で ほとんどありえない。 • 「ソフトウェアやシステムを作る」ことも難しいが、作ったも を動かし続けること や、必要に応じて壊さずに変更すること 、同等かそれ以上に難しい。
  16. エンジニアに求められる仕事・能力・特性 • コンピューターサイエンスやソフトウェア技術・手法 知識 ◦ 当然ながら必要。 ◦ 大学時代から素養を身に着けた者を採用する か、ポテンシャルで採用して研修などで教え込む か

    企業による。(現職 新卒採用 後者) • コミュニケーション力・言語化スキル ◦ 目に見えないも について「どう作るか」「いつまでに」「何が問題な か」などを関係者でコミュニ ケーションして認識を揃える必要がある。 • 問題解決能力 ◦ 単に与えられた問題を解決する みならず、「そもそも問題 何な か」を特定するところから始ま ることも多い。 • 他にも色々… ◦ 判断力、物事 推進力、ファシリテーションスキル、粘り強さ、探究心、体力などなど …
  17. 学び続けることを学ぶ(”Learn How to Learn”) • やれ やるほど知らないことに遭遇する 。キャリアを通じて 学び続けることがとにかく大事 ◦

    特に大学時代に専門的なことを学んだわけでもない で、 最初 2,3年 特に大変だった。 ◦ 週末も技術書読んだり、自分なりにも を作ったり、会社 プロダクト ソースコードを読んだりしていた。 • それに加えて、現代 ソフトウェア技術 新陳代謝 とに かく い。 ◦ 新しい言語、ライブラリ、ツール、手法など … ◦ 最近でいうと、生成AIを利用した開発 効率化など 毎週何かしら新し い話題が出てくる • 自分なりに学ぶ方法を確立する ◦ 歳を重 るほど学ぶことに純粋に割ける時間 少なくなってくる ◦ そ 分、時間 使い方が上手くならなくて いけない
  18. スキル 掛け合わせを意識する 『テクノロジー 上位 10%に入る とても厳しいが、テ クノロジー 上位 30%と金融 上位

    30%に入れ 、金 融×テクノロジー 上位 9%に入れる』 ◦ 現実問題 そんなに単純でもない(そもそも「上位n%」と ?)が、アイディアとして とても有用 ◦ 複数 領域に専門性を持っていると、単体 専門性だけで できない問題認識や取捨選択ができるようになる で、成果 が出せるようになる。 ◦ それでも『上位30%に入る』努力 大事。なんとなく知ってい るだけで 武器にならない。
  19. ソフトウェア開発 『人』 側面 • ソフトウェア開発 ソフトウェア技術 ことだけを考えていれ よいと、当初 思っていた。 •

    実際に 『人』 側面 問題も多いことに気づいた。 ◦ ソフトウェアやシステムを欲しがる も、評価する も最終的に 『人』。 ◦ 作り手 複数人でチームを組んでソフトウェアを作る。目に見えない ソフトウェアづくりが正しい方向に進んでいるかを、どうにか確かめな がら進めていく。 • ソフトウェアが目に見えないからこそ、「言葉に起こす力」 「正しく伝える力」が重要になる。 ◦ 正しく言葉を使う、背景まで汲み取って真意を理解するなど
  20. とにかく流れが い生成AI関連技術 • こ 先、いつ、どれくらい ことができるようになるか、全く予測できない ◦ 2022年末〜2023年始: ChatGPT(GPT-3) 衝撃

    ◦ 2025年始: エージェント型生成AI が話題に ◦ こ 先…?? • 登場時に世間に与えた印象がとてもセンセーショナルなこともあり、 「もうプログラマーやエンジニア 不要?」という話題が常にあがる。 • 諸説あるが、エンジニア 重要性 高まりつつ、働き方や求められるスキル どん どん変わっていくと、個人的に 考えています。
  21. • エンジニア 理系 仕事か? → No ◦ そもそも何をもって「理系 仕事」という かわかりませんが

    … ◦ 専門性 必要 ◦ 大学で「生物学を専攻してた人」と「社会学を専攻してた人」 出発点 ほぼ同じ • エンジニア 数学ができないと務まらないか? → 直接 関係ない ◦ 深い理論を突き詰めていくと必要になることもあるが、直接必要となるわけで ない。 ◦ 「論理や手段を積み重 てなにかを完成させる」という意味で 、大学 数学 問題を解く と似ているところ ある かもしれない。 • エンジニア 男性 方が適しているか? → 明確に No ◦ 苦手意識を持つ女性 多いが、「苦手に感じる男性が少ない」わけで ない。 ▪ 研修で新卒入社者・内定者を累計700人以上見ていて 印象。 ▪ つまり、性別 問題で ないと思っている。 ◦ 実際に活躍している若手 女性メンバー 勤務先に何人もいる ◦ 個人的に 、ライフイベントがあってもスキルが陳腐化しづらく働きやすい ずで、勿体ないなと思っている。 • エンジニア 終日プログラムを書き続ける仕事か? → 明確に No ◦ そういう日もあるけど ◦ 問題解決をしたり「人」 側面 問題を乗り越えるために対話・会話が大事な局面も多々ある。 ソフトウェア・エンジニアリング 誰に適した仕事か?
  22. 生成AI時代にこそ重要な「3つ 鍵」 • 「学び続けることを学ぶ」 ◦ 常に新しい技術や話題に追いつき続ける必要がある ◦ 追いつき続けさえすれ 、出来ること 増えていく

    ず • 「スキル 掛け合わせを意識する」 ◦ 生成AI アウトプット 間違いを見抜けるだけ 「見識 広さ」を持つ • 「ソフトウェア開発 『人』 側面を意識する」 ◦ 生成AIによってソフトウェア開発が簡単になっても、結局「作り手側」も「使い手側」も「価値判断」を する 『人』である。 ◦ 生成AIで「考える」ことをサボれるようになってしまうからこそ、教育 あり方が重要になる。
  23. 翠嵐生へ伝えたい、「高校生活」と「3つ 鍵」 関係 • 「学び続けることを学ぶ」: 本質に迫る学びを意識する ◦ 大学 先生も、「知的コンバット」し甲斐 ある学生を求めている

    ◦ 「アドミッション・ポリシー」を志望大学が出しているなら、よく読んでみてほしい • 「スキル 掛け合わせを意識する」: 選り好みしない ◦ 「文系/理系だから」「入試で要る /要らないから」で ない軸を持つ ◦ 「知らない / 知っている / 分かる / 出来る」 段階を意識する (全部「出来る」まで持っていく 大変だが、「知っている」だけでもなにかに役立つかも) • 「ソフトウェア開発 『人』 側面を意識する」: 人と関わる ◦ 部活、行事など何でも良いが、「組織立って何かを成し遂げる」経験が大事 ◦ 成果が残るかどうかで なく、すべて自分 思う通りに進まない状況で試行錯誤する経験が大事