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核軍備撤廃に向けた次の大きな一歩─核兵器を先には使わないと核保有国が約束すること
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HKano
December 01, 2025
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核軍備撤廃に向けた次の大きな一歩─核兵器を先には使わないと核保有国が約束すること
公開シンポジウム「核抑止からの脱却を目指して」2025年11月5日、広島国際平和会議場におけるフランク・N・フォンヒッペル講演資料
HKano
December 01, 2025
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Transcript
核軍備撤廃に向けた次の大きな一歩 核兵器を先には使わないと核保有国が約束すること フランク・N・フォンヒッペル (Frank N. von Hippel) プリンストン大学「科学とグローバル・セキュリティー・プログラム(SGS)」 公開シンポジウム「核抑止からの脱却を目指して」 於
広島国際平和会議場 2025年11月5日午後5時
概要 • 「核戦争に勝者はあり得ないが…」 • 各国の核態勢 • 1万発の核兵器が依然として文明を脅かしている • 米国とロシアはなぜこれほど多くの核兵器を保有しているのか? •
攻撃に対し脆弱なICBMサイロは、「警報即発射」 (launch on warning: LOW)態勢につながっている • 英国の核態勢は、先制[=先行]不使用(no first use)と両立する • 先制不使用なら米・ロ・中は英国の水準まで核保有数を削減できる • 日本は先制不使用反対の立場について再考すべき • 先制不使用宣言下での抑止力 • 核兵器ゼロには「開かれた世界」が必要か?
核兵器の使用に関する中・仏・ロ・英・米の共同声明 (2022年1月3日) 4年前、核武装をした最初の5カ国が次のように宣言した: 「我々は、核戦争に勝者はありえず、核戦争は決して起こしては ならない」 これは良いことだ。だが、声明は続けてこう述べた。 「核兵器が存在する限り、核兵器は…侵略を抑止し、戦争を防止 するべきだ。」 しかし、核兵器以外の兵器による侵略を核兵器によって抑止する というのは、核兵器を先に使うとの脅しだ!
これから説明するように、米国は、このような危険な脅しをして いる。これは一つには、日本政府からの圧力による。 だから、私はこう論じる。私たちは、日米両政府の核兵器政策を 「核兵器の先制[=先行]不使用」へと転換させるべく取り組ま ねばならない。
米国は、日本を含む 32カ国(黄色で示された国々)を いかなる種類の攻撃からも守るために 必要とあれば、核兵器を先に使うと約束している。 核保有国:9 米[ロ]の「核の傘」の下: 32[1] 非核兵器地帯(NWFZ)内の国: 105 その他:
46/ 国連加盟国: 193 核兵器禁止条約批准:74(未批准:21)
None
なぜなら、これらの核弾頭の大部分が互いを標的にしているからだ! つまり、これらは、「先制的な」(preemptive)「第一撃」攻撃(first strike)を可能に する態勢にあるということだ! 米国とロシアはなぜこれほど多くの核弾頭を保有しているのか? 0 1000 2000 3000 4000
5000
ロシアによる「先制的」「第一撃」攻撃への懸念から、米国のミサ イルは「警報即発射 (LOW)」という危険な態勢に置かれている。 大陸間弾道ミサイルの総飛行時間は約30分。 ロシアの核攻撃の警報(探知)から、米国大統領が自国のミサイル を発射するかどうかを決定するまでの時間は約10分しかない。 これが偶発的な核戦争の危険性を生み出している。 Russia’s ballistic missiles
can reach US ICBM silos with ≤ 30 min. flight time. President’s decision time less than 10 minutes. 65,000 warheads 7 https://thebulletin.org/premium/2025-01/united-states-nuclear-weapons-2025/
「警報即発射」態勢は必要ではない。 英国の唯一の核兵器システムは弾道ミサイル潜水艦だ。少なくとも1隻 が約50発の核弾頭を搭載し、英国への核攻撃に対する抑止力として常 に海洋に潜伏している。これらの核兵器を発射するようにという時間 的プレッシャーは存在しない! ミサイル管制センター ミサイル発射管 原子炉 機械室
米国とロシアが先制不使用政策を採用すれば、核兵 器削減においてさらなる大きな一歩を踏み出せるだ ろうーーフランスや英国のレベルに向けて 実際、今日、米国は常に8~10隻の潜水艦に約600発の核弾頭を配備 している。これだけでも抑止力としては十分すぎる。 しかし、米国の陸上配備弾道ミサイルが「警報即発射」態勢にある ため、海洋配備の米ミサイルの多くも同様に「警報即発射」態勢 に置かれている。 だからこそ、ペリー元国防長官ら多くの米国の核政策専門家が、米 国は陸上配備型大陸間弾道ミサイルを廃棄すべきだと強く主張し
ているのだ。
しかし米国の「核の傘」の下にある国々―特に日本―は 米国の先制不使用(NFU)政策採用に反対している 加藤勝信官房長官(自民党)は、2021年4月6日の記者会見で、米国 のNFU政策についての日本の反対を次のように説明している。 [米国のNFUは]すべての核兵器国が検証可能な形で同時に行わなけれ ば有意義ではない。 だが、その検証は不可能であり、いずれにしても、日本は先制不使用 に反対しているとし、その理由は次のようなものだと述べている。 我が国周辺には質量ともに優れた軍事力を有する国家が集中し…[こ のような]我が国に対する安全保障上の脅威が存在する以上…[米国
の]核抑止力…不可欠だと考えています」 加藤氏は、明らかに、米国の核兵器先制使用の選択肢を「不可欠」な ものに含めている。 日本の人々は、自国政府が米国の核先制使用の選択肢の維持に固執し ていることを認識し、それが日本の真の安全保障上の利益にかなうの か、あるいは非核兵器による攻撃から日本を守るには日米の非核戦力 の組み合わせで十分か、を検討すべきである。
先制不使用政策採用の場合の抑止力 核の先制不使用政策をとっても、核以外の攻撃に対する核先制使用の可能 性は実は残る。なぜなら、戦争の最中に政策が変更される可能性がある からだ。したがって、その可能性による抑止力は依然として残る。 しかし軍部は、政治的指導者が最終局面で先制不使用政策を変更すると勝 手に想定することはできず、したがって核を最初に使うことを許可され ることを当てにして計画を立てることはできなくなる。 実際、バイデン大統領は、先制使用をせず、小規模な核攻撃に対する第二 使用もしない、との政策を有していたと私は考えている。 具体的には、ウクライナでロシアが先制使用をした場合、米国の対応は非
核とするとバイデン大統領は計画していたと私は考える。 その対応とは、核兵器を使わずにウクライナ内のロシア軍を破壊すること だ。 バイデン大統領がこの方針を決めたのは、ロシアの先制使用(第1使用) に対して米国が「第2使用」で応酬すれば、文明が瞬時に破壊される恐 れがあると判断したからだと私は考える。 そして大統領は、危険性は低く、それでも効果的な非核対応が可能だと理 解していたのだ
核兵器ゼロへに向けて 核兵器の先制不使用政策は、核兵器ゼロに向けた次の一歩となり得る。 もちろん、ゼロに至るにはまだ長い道のりが残されている。 最終的な課題は、すべての核兵器が破壊されたことを検証することだ。 その実現には、偉大な物理学者ニールス・ボーアが1950年に提唱した 「開かれた世界」が必要となるかもしれない。これはゴルバチョフ大 統領がソ連国内で確立しようとした「公開性」の国際版と言える。 パグウォッシュの初代リーダー、ジョセフ・ロートブラットは「社会的 検証」について語っている。これは、如何なる秘密の核兵器について も市民が国際機関に通報する仕組みだ。
しかし、核なき世界へ向けて今踏み出すべき一歩は、核兵器の先制不使 用政策だというのが私の考えだ。 ご清聴、ありがとうございました!