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オープンデータの内製化から分かったGISデータを巡る行政の課題
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室木直樹
November 29, 2025
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オープンデータの内製化から分かったGISデータを巡る行政の課題
2025年11月29日Foss4G Shinshuの講演資料です。
室木直樹
November 29, 2025
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Transcript
オープンデータの内製化から分かった GISデータを巡る行政の課題 2025.11.29 @FOSS4G SHINSHU 2025 室木直樹(現所属:林野庁東北森林管理局) 本資料の取扱い CC BY
4.0
本日お話しする内容 GISデータを巡る行政の課題 オープンデータの内製化 1 林野庁が主体となって、全国の森林情報の オープンデータ化を進めることになりました。 しかし… ・公開地域を増やしたいけど、お金がない。 ・データ形式の標準化を担える業者が少ない。 ・原データの仕様と標準化データの仕様の
ギャップを理解していないと、業者と対峙 できない。 ・原データの現状を分析し、データ変換工程の予 測可能性を高めよう。 …心理的ハードル↓ ・原データごとの変換手順を示せば、対応できる 業者も増えるのでは。 …技術的ハードル↓ ・てか、Foss4Gで変換をやれるようにすれば、 行政機関でも内製できるのでは? Foss4Gを使って、オープンデータを内製する、対応で きる業者を増やすことは可能であることが分かりました。 しかし… ・そもそも、原データの仕様が揃っていれば、変換作業 は要らない。変換手順が一つでも減れば、経費も時間 も節約できる。 ・そもそも、発注者は原データの仕様がどうなっている か、知ってます?成果物をちゃんと検査してます? ・経費が変わる訳でもない、データの使い方が変わる訳 でもない、ある種“こだわらない部分”をもう少しこ だわって、データを作ろう。 ・成果物をちゃんと検査できるように、Foss4Gを活用 しよう。
自己紹介 2 私のイメージ図 略歴 2015年に林野庁に入庁。九州森林管理局在勤中の2016 年に、平成28年熊本地震の対応でQGISと出会う。 自治体支援や内部管理などあらゆる場面でGISを使い、資 料を地理空間化するオタクに成長。2022年から林野庁計 画課でリモートセンシング技術の活用やオープンデータ 推進を担当。
2025年4月に東北森林管理局(秋田県)に転出。黒子に なって、オープンデータ推進に携わっている。 執筆 宮崎県綾地域のスギ人工林における間伐が照葉樹林化に 与える効果(九州森林研究,2018) UAV オルソ画像を活用した標本調査による林分材積の推 定(九州森林研究,2019) UAV 空撮画像と地上レーザスキャナを併用した林分材積 の推定(森林計画学会誌,2019) 航空レーザによる地形変化把握(ベース設計資料,2025) 全国の森林資源情報のオープンデータ化と発展的な利活 用を目指して(GIS NEXT,2025) 複数の光学衛星ステレオ画像による森林樹高推定精度の 比較検証(日本リモートセンシング学会誌,寄稿中) 芯:役人 行動:民間人 属性:役人
1.森林情報のオープンデータ化の歩み 3
林野庁の取組 4 2021 • 成長戦略会議に おいて、北欧を倣う べしと提言を受ける 2022 • 森林簿・森林
計画図の公開 手法の検討 2023 • 航空レーザデータ の公開実証 (3県) 2024 • 公開データの標準 仕様の検討 • 航空レーザデータ の公開地域の 拡大(5県) 2025 • 森林簿・森林計 画図の全国公開 (作業中) • 航空レーザデータ の公開地域の 拡大 (5→11県) 凡例 2023 公開(3) 2024 公開(5) 2025 公開(5) 2025 公開(地形のみ)(7) 2025 公開予定(6) Point いずれも、G空間情報センターにデータを集約
公開データの一例 5 DEM 基盤地図情報よりも高解像度(0.5m) Geotiffとラスタタイル(データPNG) 林相識別図 木の種類や大きさが強調された図 ラスタタイル 微地形表現図 地形の特徴が分かる
ラスタタイル DCHM 木の高さや本数が分かる Geotiff 樹種ポリゴン 木の種類別に林相識別図をポリゴン化 ジオパッケージ+ベクトルタイル 図法は、基本的には、 CS立体図に統一しつつ、 各者の図法も公開する場合 もある。 G空間情報センター(林野庁)
長野県における取組 6 https://forestgeo.info/opendata/20_nagano/csmap_2022/{z}/{x}/{y}.webp
データの標準化 7 森林情報は、国有林については林野庁が、民有林(個人や法人が保有する森林)については、都道府県が整備することとされている。 このため、自治体ごとでデータやシステムの仕様が異なり、システムの維持コストやデータの全国的な利用が進まないといった課題があった。 そこで、業界や団体と連携しながら、標準仕様書を定め、普及に努めているところ。 航空レーザ(解析)2022- 森林簿・森林計画図2018- 航空レーザ(公開)2025-
2.オープンデータの内製化 8
オープンデータ化の課題(役所内) 9 いつになったら、 全国のデータが出揃うんだ? 林野庁がやるなら、全国だろ 説明しましたよね、 標準仕様ができる前の データはカオスだって… イイよって言ってくれましたよね、 できるところからミニマムに
始めるだけでもいいと… やってみたいですけど、 予算はどうするんですか?
オープンデータ化の課題(業界) 10 お予算は、 何億円ございますか? 技術部門から、 ・ただのデータ変換はつまらんと… ・他社のデータはちょっと… ・いや実は、人手がですね…
Foss4Gを使った内製化 11 もともとの思考 ・業者任せは、無責任。つまらない。 ・自分でもデータを触りたい。使いたい。 できごと ・令和6年能登半島地震の対応で、4者から3,900㎢ のデータが納品される。データ公開を待ち望む人たちがいる。 (なお、公開データ作成の予算はない。) ・別の補助事業で、相手方の技術力不足(データPNG、
ベクトルタイルの作成ができない)により不履行を起こしそう。 (なお、発覚時期は年度末目前の3月) 今すぐ使えるFoss4Gで自分でやろう。
オープンデータへのこだわり 12 標準化データ + マップタイル
その成果をマニュアルとして公開 13 PDF版 HTML版 https://forestgeo.info/
解説していること 14 Point QGISと、それとセットでインストールされるOSGeo4W Shellしか使っていません。 データ種類ごとの解説 ラスタタイル(RGB値を使う場合) 微地形表現図、林相識別図など ラスタタイル(ラスタ値を使う場合) Terrain-RGB、PNG標高タイルなど
ベクトルタイル 樹種ポリゴンなど 作業フローの1から10 基データに欠損、異常がないかの事前確認 基データの2次変換(geotiff変換、Nodata・アルファバンド 設定、仮想ラスタ化など) マップタイルへの加工(gdal, pythonコードの解説、パッケー ジツールのインストール手順など) ベクトルタイルのスタイルjson作成(正直手薄です…)
オープンデータ化の成果 15 全国Q地図|各種地形図・地理空間情報の統合閲覧サイト
3.内製化から分かったこと 約20県、約10社のデータを扱った経験談です。 16
内製化でわかったこと① 17 仕様書に定めていないところで、 打合せ協議のない 任意仕様が独り歩き
任意仕様の独り歩きが困るワケ 18 アルファバンドを設定するか問題 ラスタデータにおいて、Nodataを表わすRGB値をアルファバ ンドに設定し、透過させる、させない、という2つの選択肢が あります。 アルファバンドが設定されているラスタと設定されていないラ スタを統合することはできません。 なお、アルファバンドが設定されていれば、マップタイルに変 換する際に、透過設定を指定しなくてもよい、Nodataに何の値
が使われていたかを無視できるというメリットもあります。 Nodataを何にするか問題 ラスタデータにおいて、業務区域外にNodataを設定する場合が あります。第一に、Nodataを設定するか、しないか、という2 つの選択肢があります。 Nodataに設定する値には、ラスタ値の場合は、0、-32,768、 -9,999、-99,999、±3.4×1018の6パターンが、RGB値の場 合は、RGB(0,0,0)やRGB(255,255,255)の2パターンが多い ように思われます。 一番困る仕様は、標高0mもある地域で、Nodataを0とすること。 図表現で使われているRGB値をNodataでも使うことです。 なお、Nodata以前の問題として、RGB値を8bit(256)ではな く16bitとされている場合があります。 Point 発注者も受注者も、過去の業務や近隣の業務で採用されていた仕様を確認し、カオスさを増やさないようにしよう。 とある自治体の事例 Nodataに白と黒が使われていたところ、 その確認を怠り、白だけが透過処理され、 業務区域外に黒塗りが残ってしまった例 とある自治体の事例 Nodataをアルファバンドに設定せず、 透過設定もせず、マップタイルに加工 してしまった例
内製化でわかったこと② 19 行政区域って 結局、何に揃えると良いんですかね?
行政区域が揃わないと困るワケ 20 Point 歴史・紛争もあるのは承知ですが、リモセン業界においては、行政区域は揃えたい(あるいは、行政区域は使わない)。
内製化でわかったこと③ 21 3次元点群データは .las(.laz)に揃えませんか。
lasに揃ってほしいワケ 22 Point? CSVやTXTで出力したところで、たぶん、行政職員は開かないです(小声)。であれば、再出力の際のカオスが起こり得ないlasのママがいい。 CSVやTXT出力されると困ること 図郭単位が大きい場合、非力なPCでは、そもそもcsvやtxtが開かない。処理落ちして迷惑。 データ容量がlasよりも大きい。ストレージをひっ迫。 ヘッダーの有・無、1列目の通し番号の有・無が業務単位で区々であり、一斉処理ができない。 基本はSHIFT_JISで出力しているようでありますが、ときどき、受注者がSHIFT_JISのtxtファイル群の中に、UTF-8の txtファイルを混在させるヒューマンエラーを起こしてくる。(相場観としては、各県に1業務はあります。)
ここで、疑問。 発注者は、ちゃんと成果品を検査していますか? 受注者は、納品前検査をどのようにやっていますか?
内製化でわかったこと④ 23 マップタイルは公開データとしても便利だけど、 成果品を検査する上でも有能
マップタイル化が検査で有用なワケ 24 より多くの人数で、視覚的に確認できる HDDで数1,000ファイルを受け取って、どのように検 査しますか。PC内のストレージにコピーできますか? 1枚1枚見て、見落としは発生しませんか。進捗管理で きますか。 ありがちなヒューマンエラーを見抜くことができる 座標参照系(EPSGコード)の混在 文字コードの混在
アルファバンド有無の混在 PC夜な夜な頑張れよ! と言って寝たのに 朝起きたら・・・ マップタイル生成に至る前(データ形式の 変換や仮想ラスタの生成時等)でエラー が起きます。 WEB-GISを使い、大人数で同時閲覧 することも可能になります。 (非ジオ職員の協力を得られます。)
4.オープンデータ推進に向けて 25
オープンデータ推進に向けたお願い(発注者にも、受注者にも) 26 理想としては、全国でデータが標準化されていると良いが、自治体には、地域ごとの特色がある事務があり、民間企業には、 それぞれの営業分野がある中でデータを作るので、究極的に標準仕様に従ってほしいとは言い難い。 他方で、全国規模でなくても、個々の自治体において、発注業務単位を超えてデータを使うこともあるわけであり、細々と したことであっても、業務単位でデータの仕様の違いがないことは、望ましいことであり、データのカオスさが増さ ないよう、過去の仕様の確認、仕様の連続性を担保してほしい。 加えて、いざオープンデータにする段階において、成果品のエラーが発覚することが多々あるが、それが第三者では、エ ラーであることを感知できない場合もある。原データの納品を受ける段階で、しっかりと検査できるような発注の仕方 を考えていく必要。(その1つの方法として、マップタイル化があると思われる。)
Point 地域ごとで、データのカオスさが少しでも減れば、オープンデータは進む。 これが担保されるだけでも、 手早く、 手軽にオープンデータは進む
Foss4G界隈へのお願い 27 この間のオープンデータの取組により、文化財関係者による地形データの活用など、森林管理以外を目的としたデータ利用が進んできました。 他方で、利用者の多くは、地形に関心がある一方、木の種類や大きさには興味がなさそうです(いや、そうだと思います)。 航空レーザの公開地域も続々と増え、本年末には、森林簿・森林計画図に由来するデータでよければ、全国公開が行わ れます。是非とも、木に関心を寄せたデータ利用もお願いします。 年末に予定する公開データ 航空レーザデータの公開状況 凡例 2023
公開(3) 2024 公開(5) 2025 公開(5) 2025 公開(地形のみ)(7) 2025 公開予定(6)
林野庁のオープンデータはこちら 28
私の情報発信はこちら 29
謝辞 30 マップタイル加工の技術的課題については、全国Q地図の運営者・辻さんに御助言いただきました。 この場を借りて御礼申し上げます。