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情シス視点でのEOL対応 / What Should IT Do Regarding End-...

情シス視点でのEOL対応 / What Should IT Do Regarding End-of-Life Support

2025/9/13 に行われたJAWS-UG情シス支部×神戸支部コラボでのチョークトークです。
LambdaやRDS/AuroraのEoLが発生していますが、これについてどのように対処していくべきかのディスカッションを行いました。

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Naomi Yamasaki

September 13, 2025
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Transcript

  1. チョークトークの進め方 • チョークトークとは対話型のセッションで学校の授業やゼミに近いものです • 質問について発言したい方は手を挙げてください ◦ あなたの体験談とそこから学んだこと(成功例でも失敗例でも OK) ◦ 自分ならこう考える・こういう行動をする

    ◦ おすすめツール • チョークトークはクイズではないので正解も不正解もありません • 前向きで建設的な発言をするように心がけましょう • 積極的に発言と議論をして、みんなで知見の共有をしましょう!
  2. 想定企業とシステムについて • 企業名:株式会社シャークロジスティクス( Shark Logistics Co., Ltd.) • 企業理念:海を駆ける、技術で繋ぐ •

    事業内容:海洋物流・水産物流通 • 規模:従業員 500名、年商150億円 • 本社所在地: JR池袋駅徒歩 10分(サメが輝く水族館の近く)
  3. 想定企業とシステムについて • IT部門: ◦ 部長: 鮫島 - 経営層との予算交渉では獰猛な武闘派、部下には温厚な 52歳 •

    エンジニア : ◦ チームリーダー:永川 - 鮫島部長と現場の間を取り持つ調整上手な 38歳 ◦ 帆白、守木( 40代)- ベテランの海千山千エンジニア ◦ 板地(20代)- 新進気鋭の技術者 ◦ ここに参加しているみなさん • 主なシステム ◦ 基幹システム、在庫管理システム、配送管理システム ◦ インフラ: AWS上でマイクロサービス構成 ◦ 主要技術スタック : Lambda、API Gateway、Aurora ◦ それぞれ本番、検証、開発環境がある ◦ AWSアカウントはシステムごと、環境ごとに分離している
  4. ディスカッション タイム 🗣 対象リソースの状態 • Aurora PostgreSQL 13(3クラスター)の EoL: 2026年2月28日

    ▪ 基幹システム用: megalodon-cluster 13.18 ▪ 在庫管理システム用: hammerhead-cluster 13.18 ▪ 配送管理システム用: tiger-shark-cluster 13.12 • Lambda Python 3.9(50関数)のEoL: 2025年12月15日 ◦ 関数群: shark-fin-functions(全て"shark-fin-functions"として一括管理 ) ▪ 基幹システム用: 25関数 ▪ 在庫管理システム用: 15関数 ▪ 配送管理システム用: 10関数 • 各システムが相互連携しながら、水産物流通の全工程をカバーしている
  5. ディスカッション タイム 🗣 現状の課題 • 延長サポート費用 : 年間800万円 ◦ Aurora

    PostgreSQL 13の3クラスター分のみ ◦ Lambda Python 3.9は延長サポートなし( 2025年12月で完全終了) • 移行費用見積 : 1,200万円 ◦ Aurora PostgreSQL 13 → 15への移行: 700万円 ◦ Lambda Python 3.9 → 3.11への移行: 500万円 • Lambdaは延長サポートがないため、 2025年12月までに必ず移行が必要 • Auroraは延長サポートで時間を稼げるが、年間 800万円のコストが発生 • 全体移行なら 1,200万円の一時費用で済む
  6. テーマ1: 予算確保の戦略的アプローチ 💰 状況: 鮫島部長は IT部長として、年間 IT予算2,000万円の60%を占める 移行費用1,200万円の承認を経営会議で得る必要がある。 あなたは鮫島部長が経営会議で移行費用の承認を得るための資料を作成します。 具体的状況

    : • 経営陣: 「なぜ動いているシステムに 1,200万円も?」 • 財務部: 「延長サポート 800万円の方が安い」 • 営業部: 「システム停止は絶対に避けたい」 ◦ 1日停止=売上500万円減
  7. テーマ1: 予算確保の戦略的アプローチ 💰 具体的なアプローチ例: • EoL対応を「コスト」から「投資」へ視点転換する説明方法 ◦ セキュリティリスクの金銭的影響試算 ◦ 新機能による業務効率化効果の定量化

    ◦ 競合他社との技術格差リスク • 経営層への効果的なプレゼンテーション手法 ◦ 3年間のTCO比較表作成 ◦ 業界事例を用いたリスク説明 ◦ 段階的投資プランの提示 • リスク定量化による予算承認率向上のコツ ◦ システム停止時の機会損失計算( 1日停止=売上500万円減) ◦ セキュリティ事故時の対応コスト試算 ◦ 人材流出リスクの金銭換算
  8. テーマ2: システム移行の段階的戦略 🔄 議論ポイント : あなたなら以下についてどうしますか? orこのような経験はありますか? • 一括移行 vs

    段階的移行のメリット・デメリット比較 • 業務継続性を保ちながらの移行計画立案 • ユーザー影響を最小化する移行タイミングの見極め
  9. テーマ2: システム移行の段階的戦略 🔄 具体的なアプローチ例: • 一括移行 vs 段階的移行のメリット・デメリット比較 ◦ 一括移行:

    コスト効率 vs リスク集中 ◦ 段階的移行 : リスク分散 vs 管理コスト増 ◦ ハイブリッド運用期間の複雑性 • 業務継続性を保ちながらの移行計画立案 ◦ Blue-Green デプロイ戦略 ◦ データ同期方法の選択 ◦ ロールバック手順の詳細化 • ユーザー影響を最小化する移行タイミングの見極め ◦ 業務カレンダーとの調整 ◦ 段階的ユーザー切り替え ◦ 緊急時対応体制の構築
  10. テーマ3: ベンダー依存からの脱却戦略 🔓 具体的なアプローチ例: • マルチベンダー戦略の構築方法 ◦ クラウドポータビリティの確保 ◦ 標準技術への移行計画

    ◦ ベンダー評価基準の策定 • オープンソース活用によるベンダーロックイン回避 ◦ PostgreSQLへの移行検討 ◦ Prometheus/Grafanaによる監視 ◦ コンテナ化による可搬性向上 • 契約見直しのタイミングと交渉ポイント ◦ 更新時期を活用した条件交渉 ◦ 複数年契約による割引獲得 ◦ SLA条件の見直し
  11. テーマ4: 組織内のスキルアップ推進策 📚 状況: 永川リーダーは、 40代エンジニア 2名(帆白、守木 : PostgreSQL 9.6経験)

    20代エンジニア 1名(板地: Python 3.8経験)を、 PostgreSQL 15とPython 3.11に対応させるための施策を考える必要がある。 あなたは永山さんと一緒に教育施策を考えることになりました。 具体的状況 : • 40代エンジニア : 新技術への不安 • 20代エンジニア : 学習意欲高いが経験不足 • 研修予算: 年間100万円 • 業務時間での学習時間確保が困難
  12. テーマ4: 組織内のスキルアップ推進策 📚 具体的なアプローチ例: • 年齢層に応じた技術習得支援方法 ◦ ベテラン向け : 既存知識との差分学習

    ◦ 若手向け: 体系的な基礎学習 ◦ ペアプログラミングによる知識共有 • 新技術導入時の社内教育プログラム設計 ◦ 段階的学習カリキュラム ◦ ハンズオン環境の構築 ◦ 外部研修と内部勉強会の組み合わせ • モチベーション維持のための仕組み作り ◦ 技術習得に対する評価制度 ◦ 社内技術発表会の開催 ◦ 資格取得支援制度
  13. テーマ5: EoL情報の効率的な収集・管理体制 📋 状況: 運用担当の守木さんは今回の EoL対応が後手に回った反省を踏まえ、 将来的なEoL情報を効率的に管理する体制を構築したいと考えた。 あなたは守木さんと一緒にアイデア出しをすることになりました。 具体的状況 :

    • 現在: 各エンジニアが個別に情報収集 • 使用技術の棚卸しが不完全 • EoL情報の共有が属人的 • 意思決定までのリードタイムが長い ◦ 工数見積、事前審議、稟議承認で早くても 3ヶ月はかかる
  14. テーマ5: EoL情報の効率的な収集・管理体制 📋 具体的なアプローチ例: • EoL情報の一元管理システム構築 ◦ 技術スタック管理台帳の作成 ◦ EoLカレンダーの可視化

    ◦ 影響度評価マトリックス • 自動アラート機能の活用方法 ◦ RSSフィードや APIを活用した情報収集 ◦ Slackやメールによる定期通知 ◦ ダッシュボードでの可視化 • 関係部署との情報共有フローの最適化 ◦ 月次報告会の設置 ◦ 経営層向けサマリー作成 ◦ 各部署への影響度通知
  15. テーマ6: 延長サポート活用の判断基準 ⏳ 状況: 鮫島部長は経営会議で 1200万円の予算獲得をしたが、 Aurora PostgreSQL 13の 延長サポート(年間

    800万円)を利用するか、即座に移行( 1,200万円)するかの 判断を行う必要がある。 あなたは鮫島部長が判断しやすい材料を揃える必要があります。 具体的状況 : • 延長サポート期間 : 最大3年 • 移行準備期間 : 最低6ヶ月必要 • 他の重要プロジェクト : 新倉庫システム導入 • リソース制約 : エンジニア不足
  16. テーマ6: 延長サポート活用の判断基準 ⏳ 具体的なアプローチ例: • 延長サポート利用の費用対効果分析 ◦ 3年間の総コスト比較 ◦ 移行時期の最適化

    ◦ 他プロジェクトへの影響評価 • 短期的コスト vs 長期的リスクの評価方法 ◦ セキュリティリスクの時系列変化 ◦ 技術的負債の蓄積コスト ◦ 人材確保の困難度上昇 • 延長サポート期間中の移行準備戦略 ◦ 段階的移行計画の策定 ◦ スキルアップ期間の確保 ◦ 新技術検証の並行実施
  17. まとめ 📝 EoL対応で重要な 6つのポイント • 早期発見: EoL情報の継続的な監視体制で「後手に回らない」 • 投資視点: コストではなく「競争力強化への投資」として経営層に説明

    • 段階移行: リスク分散と業務継続性を両立する計画的アプローチ • スキル投資 : 技術変化を組織成長の機会として活用 • 選択肢評価 : 延長サポートと移行の総合的な費用対効果分析 • 体制構築: 属人化を避け、組織として継続的に対応できる仕組み作り