広く浅く語るKotlinの魅力

https://kotlin.connpass.com/event/61903/ で使用したスライドです。

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1. 広く浅く語るKotlinの魅力 2017-07-24 長澤 太郎 @ngsw_taro
2. もくじ 1. Kotlin概要と誕生の背景 2. コードベースをスリムにするKotlinのGood Parts 3. バグの作り込みを防ぐKotlinのGood Parts 4. Kotlin界隈の未来
3. 自己紹介 • 長澤 太郎（たろーって呼んでね） • @ngsw_taro • エムスリー株式会社 • やすべえとディズニーが大好き！
4. （事実上の）Kotlinエバンジェリスト • 日本Kotlinユーザグループ代表 • 講演実績 ◦ DroidKaigi 2015, 2016, 2017 ◦ JJUG CCC 2015 Fall ◦ Hacker Tackle 2016 ◦ Lightweight Language of Things など • 執筆実績 ◦ Kotlinスタートブック ◦ 日経ソフトウエア ◦ Software Design ◦ I/O など
5. 1. Kotlin概要と誕生の背景
6. Q. Kotlinとは？
7. Q. Kotlinとは？ A. プログラミング言語のひとつ
8. Q. Kotlinとは？ A. プログラミング言語のひとつ • 静的型付けオブジェクト指向言語 • いわゆる「JVM言語」 • 開発元: JetBrains • 2016年2月に正式リリース • Apache License ver2.0
9. Q. Kotlinとは？ A. プログラミング言語のひとつ • 静的型付けオブジェクト指向言語 • いわゆる「JVM言語」 • 開発元: JetBrains • 2016年2月に正式リリース • Apache License ver2.0 静的型付け: プログラムの実行前（コンパイル時）に型が決まる オブジェクト指向: Javaと同じく対象物（オブジェクト）に着目してプログラ ムを組み上げる
10. Q. Kotlinとは？ A. プログラミング言語のひとつ • 静的型付けオブジェクト指向言語 • いわゆる「JVM言語」 • 開発元: JetBrains • 2016年2月に正式リリース • Apache License ver2.0 Java仮想マシン（JVM）の上で動作する「Javaバイトコード」 にコンパイルされるようなプログラミング言語 JavaScriptやLLVMもターゲットに！？
11. Q. Kotlinとは？ A. プログラミング言語のひとつ • 静的型付けオブジェクト指向言語 • いわゆる「JVM言語」 • 開発元: JetBrains • 2016年2月に正式リリース • Apache License ver2.0 統合開発環境 IntelliJ IDEAの開発元の会社。 Googleと共同で財団の設立。 大きな後ろ盾があることを意味する。
12. Q. Kotlinとは？ A. プログラミング言語のひとつ • 静的型付けオブジェクト指向言語 • いわゆる「JVM言語」 • 開発元: JetBrains • 2016年2月に正式リリース • Apache License ver2.0 新しい言語です！現在 ver1.1.3-2
13. Q. Kotlinとは？ A. プログラミング言語のひとつ • 静的型付けオブジェクト指向言語 • いわゆる「JVM言語」 • 開発元: JetBrains • 2016年2月に正式リリース • Apache License ver2.0 オープンソースです。 ソースコードを自由に入手・改造できる！
14. Q. JVM言語？
15. Q. JVM言語？ A. JVMｻｲｺｰだけどJava言語はﾁｮｯﾄ...
16. Q. JVM言語？ A. JVMｻｲｺｰだけどJava言語はﾁｮｯﾄ... • 冗長、ボイラープレートの嵐 • nullポインタのデリファレンス問題 • 後方互換性の維持 ◦ 古い文法が存在する ◦ 型安全性に問題あり
17. Q. JVM言語？ A. JVMｻｲｺｰだけどJava言語はﾁｮｯﾄ... • 冗長、ボイラープレートの嵐 • nullポインタのデリファレンス問題 • 後方互換性の維持 ◦ 古い文法が存在する ◦ 型安全性に問題あり いろんなところで動いている。 JVM用コード（Javaコード）がたくさんある。 歴史長い。強い。
18. Q. JVM言語？ A. JVMｻｲｺｰだけどJava言語はﾁｮｯﾄ... • 冗長、ボイラープレートの嵐 • nullポインタのデリファレンス問題 • 後方互換性の維持 ◦ 古い文法が存在する ◦ 型安全性に問題あり 書かなきゃいけないコードが無駄に多い。
19. Q. JVM言語？ A. JVMｻｲｺｰだけどJava言語はﾁｮｯﾄ... • 冗長、ボイラープレートの嵐 • nullポインタのデリファレンス問題 • 後方互換性の維持 ◦ 古い文法が存在する ◦ 型安全性に問題あり めっちゃバグるんですけど。 そもそもの言語仕様がアレなのでは。
20. Q. JVM言語？ A. JVMｻｲｺｰだけどJava言語はﾁｮｯﾄ... • 冗長、ボイラープレートの嵐 • nullポインタのデリファレンス問題 • 後方互換性の維持 ◦ 古い文法が存在する ◦ 型安全性に問題あり 今は使うべきでない文法が存在する。 削除してくれればいいのに...そういうわけにも。
21. Q. なんでKotlin？
22. Q. なんでKotlin？ A. いいこといっぱいだから！
23. Q. なんでKotlin？ A. いいこといっぱいだから！ • Javaよりも安全、簡潔なコードを書ける • Javaエンジニアにとって、学習コストが低そう ◦ 精神的なハードルもやや低めっぽい • JetBrains／Googleの後ろ盾がある • JSへのトランスパイル、実験段階だけどLLVM
24. 2. コードベースをスリムにする KotlinのGood Parts
25. Extension 既存のクラスやインタフェースを変更せずに、新たにメソッドやプ ロパティを追加するような機能。 fun String.hello() { println("Hello, $this!") } "world".hello()
26. Extension 既存のクラスやインタフェースを変更せずに、新たにメソッドやプ ロパティを追加するような機能。 fun String.hello() { println("Hello, $this!") } "world".hello() Stringに対して 拡張関数を定義 メソッドのように呼 び出せる
27. Extension 既存のクラスやインタフェースを変更せずに、新たにメソッドやプ ロパティを追加するような機能。 fun String.hello() { println("Hello, $this!") } "world".hello() thisでレシーバ を参照できる
28. Extension 既存のクラスやインタフェースを変更せずに、新たにメソッドやプ ロパティを追加するような機能。 fun String.hello() { println("Hello, $this!") } "world".hello() Stringテンプレート
29. 拡張プロパティ val Int.isEven: Boolean get() = this % 2 == 0 123.isEven //=> false
30. 拡張プロパティ val Int.isEven: Boolean get() = this % 2 == 0 123.isEven //=> false Intに対する 拡張プロパティ
31. プロパティ • オブジェクトの性質・属性などを表す • Javaのフィールドのようにアクセス可能 • しかし実装は自在
32. プロパティの例 class Name { var value: String = "" get() = field set(newValue) { field = newValue } val length: Int get() = value.length } name.value = "Taro" name.length //=> 4
33. プロパティの例 class Name { var value: String = "" get() = field set(newValue) { field = newValue } val length: Int get() = value.length } name.value = "Taro" name.length //=> 4 変更可能な プロパティvalue 変更不可能な プロパティlength こんな感じで使える
34. プロパティの例 class Name { var value: String = "" get() = field set(newValue) { field = newValue } val length: Int get() = value.length } name.value = "Taro" name.length //=> 4 取得時の実装 取得時の実装 セット時の実装
35. プロパティの例 class Name { var value: String = "" get() = field set(newValue) { field = newValue } val length: Int get() = value.length } name.value = "Taro" name.length //=> 4 暗黙の変数 field 暗黙の変数 field 初期値必須
36. プロパティの例 class Name { var value: String = "" get() = field set(newValue) { field = newValue } val length: Int get() = value.length } name.value = "Taro" name.length //=> 4 省略OK
37. データクラス データを表現するクラスを簡単に定義するための仕組み。 便利なメソッドが自動生成される。 data class Person( val id: Long, val name: String )
38. データクラスが提供する便利なメソッド val taro = Person(id=5, name="Taro") taro.toString() //=> Person(id=5, name=Taro) taro == Person(id=5, name="Taro") //=> true val jiro = taro.copy(name="Jiro") val (id, name) = jiro id //=> 5 name //=> Jiro
39. データクラスが提供する便利なメソッド val taro = Person(id=5, name="Taro") taro.toString() //=> Person(id=5, name=Taro) taro == Person(id=5, name="Taro") //=> true val jiro = taro.copy(name="Jiro") val (id, name) = jiro id //=> 5 name //=> Jiro 名前付き引数
40. データクラスが提供する便利なメソッド val taro = Person(id=5, name="Taro") taro.toString() //=> Person(id=5, name=Taro) taro == Person(id=5, name="Taro") //=> true val jiro = taro.copy(name="Jiro") val (id, name) = jiro id //=> 5 name //=> Jiro toStringメソッドの実装が自動生成される
41. データクラスが提供する便利なメソッド val taro = Person(id=5, name="Taro") taro.toString() //=> Person(id=5, name=Taro) taro == Person(id=5, name="Taro") //=> true val jiro = taro.copy(name="Jiro") val (id, name) = jiro id //=> 5 name //=> Jiro equalsメソッドの実装が自動生成される
42. データクラスが提供する便利なメソッド val taro = Person(id=5, name="Taro") taro.toString() //=> Person(id=5, name=Taro) taro == Person(id=5, name="Taro") //=> true val jiro = taro.copy(name="Jiro") val (id, name) = jiro id //=> 5 name //=> Jiro コピーメソッド
43. データクラスが提供する便利なメソッド val taro = Person(id=5, name="Taro") taro.toString() //=> Person(id=5, name=Taro) taro == Person(id=5, name="Taro") //=> true val jiro = taro.copy(name="Jiro") val (id, name) = jiro id //=> 5 name //=> Jiro 中身を分解して取得可能
44. 3. バグの作り込みを防ぐ KotlinのGood Parts
45. Null安全 • nullの可能性のあるものと、そうでないものを厳格に 区別することでケアレスミスを防ぐ • nullの可能性のない型（NotNull） • nullの可能性のある型（Nullable） ?をつけて表現 val a: Int = null // コンパイルエラー val b: Int? = null // OK b.toString() // コンパイルエラー
46. Nullableの扱いは、とことん慎重に val s: String? = getString() s.length // コンパイルエラー これを許してしまうと NPEの原因になる
47. if文などによるnullチェック if (s != null) { s.length } nullでないことが保証される文脈 ではNotNullとして扱える
48. 安全呼び出し s?.length if (s != null) s.length else null 同じ if-elseは式 （評価されて値になる）
49. 安全呼び出し s?.length if (s != null) s.length else null 同じ if-elseは式 （評価されて値になる） foo?.bar()?.baz()?.qux() メソッドチェーンで役立つ
50. 拡張関数 let fun <T, R> T.let(f: (T)->R): R = f(this)
51. 拡張関数 let fun <T, R> T.let(f: (T)->R): R = f(this) • 任意の型Tの拡張関数
52. 拡張関数 let fun <T, R> T.let(f: (T)->R): R = f(this) • 任意の型Tの拡張関数 • 戻り値の型は、任意の型R
53. 拡張関数 let fun <T, R> T.let(f: (T)->R): R = f(this) • 任意の型Tの拡張関数 • 戻り値の型は、任意の型R • 引数fは「Tを引数に取ってRを返す」関数
54. 拡張関数 let fun <T, R> T.let(f: (T)->R): R = f(this) • 任意の型Tの拡張関数 • 戻り値の型は、任意の型R • 引数fは「Tを引数に取ってRを返す」関数 • 引数としてthisを渡してfを呼び出し、その戻り値をそのまま 返す
55. 拡張関数 let fun <T, R> T.let(f: (T)->R): R = f(this) • 任意の型Tの拡張関数 • 戻り値の型は、任意の型R • 引数fは「Tを引数に取ってRを返す」関数 • 引数としてthisを渡してfを呼び出し、その戻り値をそのまま 返す val got = "I love Kotlin".let { s -> s.toLowerCase() } got //=> "i love kotlin"
56. 拡張関数 let fun <T, R> T.let(f: (T)->R): R = f(this) • 任意の型Tの拡張関数 • 戻り値の型は、任意の型R • 引数fは「Tを引数に取ってRを返す」関数 • 引数としてthisを渡してfを呼び出し、その戻り値をそのまま 返す val got = "I love Kotlin".let { s -> s.toLowerCase() } got //=> "i love kotlin" ラムダ式を渡す
57. 拡張関数 let fun <T, R> T.let(f: (T)->R): R = f(this) • 任意の型Tの拡張関数 • 戻り値の型は、任意の型R • 引数fは「Tを引数に取ってRを返す」関数 • 引数としてthisを渡してfを呼び出し、その戻り値をそのまま 返す val got = "I love Kotlin".let { s -> s.toLowerCase() } got //=> "i love kotlin"
58. 安全呼び出し + 拡張関数let val messag: String? = getMessage() val got: String = message?.let { s -> s.toLowerCase() }
59. 安全呼び出し + 拡張関数let val messag: String? = getMessage() val got: String = message?.let { s -> s.toLowerCase() } messageがnullだったら これ以降の呼び出しは行われない
60. 安全呼び出し + 拡張関数let val messag: String? = getMessage() val got: String = message?.let { s -> s.toLowerCase() } messageがnullでなければ この中が実行される
61. 複数のNullableをNotNullに→素直にifで if (foo != null && bar != null) { foo.execute(bar) } foo?.let { f -> bar?.let { b -> f.execute(b) } } ◎よい例 ✖ダメな例（必要以上にネストが深くなる）
62. Nullableに関する演算子 val a: String = b ?: "default" val a: String = b!! エルビス演算子 !!演算子
63. Nullableに関する演算子 val a: String = b ?: "default" val a: String = b!! エルビス演算子 !!演算子 b != null -> b b == null -> "default"
64. Nullableに関する演算子 val a: String = b ?: "default" val a: String = b!! エルビス演算子 !!演算子 禁断のNotNull強制変換 絶対に使わないこと！ どうしても強制変換したい場合はrequireNotNull関数を使用する。
65. 4. Kotlin界隈の未来
66. 今後のKotlin界隈 • Kotlinに対する過度の期待からの勢い導入 • そして、失敗。挫折。 ◦ 拡張関数、演算子オーバロード、委譲プロパティの濫用とか ◦ Javaとの相互運用に関して ◦ コーディング規約、コードレビュー、学習コスト • 銀の弾丸はない。適切な道具を適切に使うこと。 • 数年で「ブーム」から「定番」に移行
67. 今後の日本Kotlinユーザグループ • JKUG主導イベントをもっと開催したい • 運営体制の強化（メンバー増員、運営定例会） • 1Day カンファレンスを計画中！
68. 今後のKotlinエバンジェリスト • 泥臭く真面目に活動（講演・執筆など） • スケールしやすい形での貢献 ◦ 書籍の監修 ◦ 技術顧問（レビューやペアプロ、指導など）
69. まとめ • JVMは魅力的だがJava言語に課題感を持っていた→JVM言 語の台頭→Kotlin誕生 • Javaよりもコードベースをスリムに保つ ◦ 例）Extension, データクラス、プロパティ • NullPointerExceptionを発生させない仕組み ◦ Null安全 ◦ 扱い安さの工夫: 安全呼び出し、エルビス演算子、拡張関数let • 今はKotlinブームだがそのうち定番になる