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脱シャーディング!! NewSQLのTiDBで実現~楽しいね!を世界中の日常へお届けするためにエンジニアリングで行ったこと

PingCAP-Japan
September 07, 2023

脱シャーディング!! NewSQLのTiDBで実現~楽しいね!を世界中の日常へお届けするためにエンジニアリングで行ったこと

2023年8月に開催されたイベント「CEDEC 2023」でのWonderPlanet社とPingCAPによるセッション「脱シャーディング!! NewSQLのTiDBで実現 ~ 楽しいね!を世界中の日常へお届けするためにエンジニアリングで行ったこと」の資料です。

イベント開催日:2023年08月24日

楽しいね!と言ってもらえるゲームを作る、ゲーム業界に携わるみなさんにとっても最も重要なことだと思いますが、一方でユーザー様に長く楽しんで頂くために足元を整えることもかかせません。運用フェーズを見据え、想定を超えるアクセスがあった際どのようにして機会損失が発生しないようにするか、運用コストの削減にエンジニアリングの観点でどう寄与していくか、特にデータベースのシャーディングや先の読めないサイジングをどう解決していくかはひとつの大きなテーマかと思います。

シャーディングなしで高負荷にも耐えられるスケール性を持ちつつ、リソース活用の最適化が容易なものがあったらイイと思いませんか?慣れ親しんだMySQL互換でこれらの課題を解決してくれるNewSQLデータベースのTiDBを検証し、実際に採用したポイントやその効果について話します。

アーカイブ動画:https://youtu.be/7MrnPin74Ek

PingCAP-Japan

September 07, 2023
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Transcript

  1. Agenda 【前半】TiDBについて(PingCAP) • 会社/⾃⼰紹介 • TiDBの特徴やアーキテクチャー、ユースケース 【後半】TiDBの活⽤について(ワンダープラネット) • 会社/⾃⼰紹介 •

    抱えていた課題 • これまでの対策 • TiDBの活⽤⽅法 • 採⽤に関するワンポイント ピンちゃん ※PingCAP⾮公式キャラクター
  2. それ、DBを ⼤量アクセスの対策として やったものの‧‧‧ シャーディングしてますよね? いままで アプリケーション User1
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 • 実装の複雑化、メンテナンス⼤変 • DBリソースの不均衡によるコスト⾼ ※インフラ費⽤に占める割合としても無視できない • ゲーム性も限定される要因に
  3. こうしたい アプリケーション User1
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 どうやる? → NewSQL
  4. RDBMSとNewSQLの違い(1/2) - ストレージエンジン RDBMS NewSQL B+Tree ‧読取りに特化した平衡⽊ ‧上書き型 LSM-Tree ‧書込みに特化した構造

    ‧追記型  ex. ⼀時的にメモリに書込み、   ソート/マージしつつディスク保存 ソート&マージ ソート&マージ
  5. RDBMSとNewSQLの違い(2/2) - 拡張性を求めた構成 RDBMS NewSQL ‧マスターが更新ログを送って同期 ※もしくはStorage共有など ‧読取り:リードレプリカで負荷分散 ‧書込み:マスター ※ボトルネック

    ‧Shared-nothing:データを分割管理 ※各ノード(リーダー)で書込み/読取 ‧ノード追加により、  読み書き共にスケール App マスター リードレプリカ Read Only Read/Write App マルチマスター Read/Write リーダー フォロワー
  6. TiDBのアーキテクチャー ⽔平⽅向に スケール ※垂直も可 ※ワンアクションで TiDB = コンピューティング ‧Parser /

    Optimizer etcを担う ※都合の良いストレージコンポーネントからデータを読む TiKV = ストレージ(Row型) ‧ACIDトランザクションを提供する分散KVS ※NewSQL的なStorage TiFlash = ストレージ(Column型) ‧列形式のデータストア ‧オプショナルで追加 ※HTAP PD = 司令塔 ‧データの物理的な配置情報管理 ‧グローバルで⼀意なタイムスタンプ発⾏
  7. データ管理の仕組み Autoシャーディング ∴設計‧実装の考慮不要 • Raftグループを形成(Multi-Raft) ◦ Leader :読み書き対象 (1つ) ◦

    Follower :バックアップ (2つ) ◦ Learner :カラムナ側 (1+ ) • Region単位で管理 ◦ PKなどのRangeで分割 ◦ デフォルト96MBを軸に⾃動分割
  8. TiDBのラインナップ • Serverless ◦ クラウド型フルマネージド ◦ マルチテナント • Dedicated ◦

    クラウド型フルマネージド ◦ お客様毎の専⽤VPC内にTiDB構築 • Self-Hosted ◦ OSSバージョンのTiDB ◦ 様々な環境/構成で構築可能 マルチAZ 構成
  9. プロデューサー プランナー エンジニア つまり、ゲームの設計‧開発〜運⽤の過程で エンジニアリング的にもビジネス的にもメリットが?! 今まで ※シャーディング TiDBなら ワールド限界 ※ゲーム性の幅 サービスを停めたくない

    予想外れ機会損失/コスト⾼ 実装の複雑化 メンテナンス⼤変 シャーディング不要な実装 ※慣れ親しんだMySQL互換 ワンポチで⾃在なスケール 障害/バージョンアップ時も サービス継続
  10. こんなことにもお困りでは? プランナーさん (多数派:SQL書けない)  ビジネス判断のためデータを早く欲しい • 今⽉の売上げを⽇別にまとめて • 継続率を1⽇・3⽇・7⽇・30⽇で⽇毎にまとめて • 3万円以上課⾦して⼀週間以上ログインしていな

    いユーザーのレベルを教えて • 第三ステージのクリア時のLvと戦⼒を教えて エンジニアさん (多数派:SQL書ける) やるべきことはたくさん (正直めんどくさい)
  11. TiDBだと • DB負荷 Resource Control機能 ∴影響気にしない • データ • SQL

    • 活⽤するリソースをユーザー単位で制限 →分析クエリ発⾏者には制限をかけることで、ゲームユー ザへの影響を減らす
  12. TiDBだと • DB負荷 Resource Control機能 ∴影響気にしない • データ TiFlashに追加により ∴TiDBで完結

    ∴データ鮮度良好 • SQL Chat2Query機能で⾃然⾔語をSQLに変換 ∴プランナー⇔エンジニアのパス不要 ※APIもあり
  13. © WonderPlanet Inc. 30 アジェンダ TiDBの活用について • 会社/自己紹介 • 抱えていた課題

    • これまでの対策 • TiDBの期待と検証 • TiDBの活用方法 • 採用に関するワンポイント
  14. © WonderPlanet Inc. 33 主要タイトル概要と注力分野 アリスフィクション クラッシュフィーバー ジャンプチ ヒーローズ 新規タイトル開発

    【タイトル概要】 ・2015/7リリース ・運営8年目 ・日本版、海外版を運営中 【タイトル概要】 ・2018/3リリース ・運営5年目 ・日本版、繁体字版を運営中 【タイトル概要】 ・2022/7リリース ・全世界同時配信・同時運営 全世界同時運営 全世界1400万DL 全世界2000万DL ギネス記録認定 自社開発タイトル(オリジナル) 自社開発タイトル(IP) 新規事業領域参入 コンシューマー系ゲーム開発会社との 共同事業新規タイトルを準備中
  15. © WonderPlanet Inc. 36 これまで取ってきた対策 - 1 Amazon Auroraを活用してWrite/Readでクエリの接続先を分ける -

    Readレプリケーションにはスケール性がある - ストレージの自動拡張が可能 Writeはスケールしないので他の対策が必要 - ゲームサービスは書き込みクエリ量が多い
  16. © WonderPlanet Inc. 37 これまで取ってきた対策 - 2 更にNoSQLを活用する - 低レイテンシ・高スケーラビリティ

    メインDBとして運用するのが厳しく、サブシステムやキャッシュに活用 - 一貫性の担保、保守性、学習コストに課題あり
  17. © WonderPlanet Inc. 39 そもそもデータベース分割は複雑で難度が高い どのように分割するかの設計が難しい - 分割の仕方が良くないとデータの取り回しが悪くなり処理が複雑になる - 全シャードを探索する必要があるとパフォーマンスが落ちる

    データベースが分割されていることを念頭に置いた開発・実装が難しい - どのデータベースにどのデータが入っているかを把握する必要がある - Write - Readのレプリケーション遅延を考慮する必要がある 分割されたデータベースを運用することが難しい - 想定通りのユーザー数にならず分割が無駄・負債になったり分割数を増やす必要が出る - データの偏りが発生しシャードの振り分け方法を最適化する必要が出る - 分析・集計処理やデータ修正が複雑・困難 - シャード分割起因の不具合や障害が発生する etc...
  18. © WonderPlanet Inc. 40 そもそもデータベース分割は複雑で難度が高い どのように分割するかの設計が難しい - 分割の仕方が良くないとデータの取り回しが悪くなり処理が複雑になる - 全シャードを探索する必要があるとパフォーマンスが落ちる

    データベースが分割されていることを念頭に置いた開発・実装が難しい - どのデータベースにどのデータが入っているかを把握する必要がある - Write - Readのレプリケーション遅延を考慮する必要がある 分割されたデータベースを運用することが難しい - 想定通りのユーザー数にならず分割が無駄・負債になったり分割数を増やす必要が出る - データの偏りが発生しシャードの振り分け方法を最適化する必要が出る - 分析・集計処理やデータ修正が複雑・困難 - シャード分割起因の不具合や障害が発生する ゲームの楽しさ作りに集中できない! etc...
  19. © WonderPlanet Inc. 42 負荷分散・シャーディング周りの課題が解消できそう! 内部的に分割されているだけで 
 外からは1つのデータベースとして扱える 
 TiDB

    Writeもスケールアウトが可能
 - 簡単に負荷分散できる
 
 自動シャーディング
 - データ配置を意識しなくて良い 
 
 MySQL互換
 - これまでの資産が無駄にならない 
 
 Cloudネイティブ
 - サーバ管理から解放される
 
 データベース分割周りの問題が解決! 

  20. © WonderPlanet Inc. 43 TiDB Cloudの検証 TiDB Cloudはゲームサービスの運用に耐えられるのか?の観点でAuroraと比較検証 • 処理性能

    ◦ 通信レイテンシはどうか ◦ クエリ処理速度はどうか ◦ 負荷耐性はどうか • 拡張性 ◦ 運用中に非停止でDDL適用することができるか ◦ 運用中に非停止でスケールすることができるか ◦ コネクション管理はどうか ◦ スケールが許容できるコスト感か • 機能 ◦ MySQL互換性は十分か ◦ 復旧機能(バックアップやリストア性能)は十分か ◦ ログや統計情報など、運用のための情報を取得できるか
  21. © WonderPlanet Inc. 44 TiDBとAuroraの比較:処理性能 Amazon Aurora TiDB 通信レイテンシ ◯

    ◯: Auroraと同程度 レプリケーション 遅延あり 遅延なし 単体のクエリ処理速度 ◯ △: 10~20%ほどビハインド 負荷耐性 △: EngineCPU90%でエラーが出始める ◯: 速度遅延していくのみ
  22. © WonderPlanet Inc. 46 クエリ処理速度について TiDB CloudはLB, TiKVが別Availability Zoneに あるため通信コストが掛かる

    - 軽いクエリはネットワークのレイテンシで不利 I/Oコスト優位な本番ワークロードで改善の見込み - リリース前負荷試験で測定予定
  23. © WonderPlanet Inc. 47 負荷耐性について 
 
 
 
 TiDB

    Cloudに負荷を掛けて検証 - 平均100ms位掛かるデータとクエリ CPU使用率90%辺りでQPSが上昇しなくなる - 以降はレスポンス時間が伸びていった - ~2000msまで観測 - エラー率は0% スロットリングせずクエリ処理時間が伸びる ような挙動
  24. © WonderPlanet Inc. 48 TiDBとAuroraの比較:拡張性 Amazon Aurora TiDB 非停止DDL適用 ◎:

    Fast DDLあり ◯ スケールアウト △: Readerのみ、Writeは不可 ◯ スケールイン ◯ ◯: コネクション再接続が必要 スケールアップ / ダウン △: 停止が必要 ◯: コネクション再接続が必要 コネクション数 △: メモリサイズ依存 ◯: 上限なし 1ノードあたりの費用 △: 高め △: 高め 最小コスト 1ノード分の費用 Serverless:従量、Freeあり Dedicated:TiDB x1, TiKV x3 ストレージ拡張 ◎: 自動 ◯: 容量指定
  25. © WonderPlanet Inc. 49 コスト面について - 1 * コンピューティング Aurora

    vCPUを合わせる TiDB TiKV 4 vCPU, 16 GiB $0.627 (r6g.xlarge, 4vCPU/32GiB) $0.5704 $0.5704 8 vCPU, 16 GiB $1.253 (r6g.2xlarge, 8vCPU/64GiB) $0.9844 - 8 vCPU, 32 GiB $1.253 (r6g.2xlarge, 8vCPU/64GiB) - $1.1408 16 vCPU, 32 GiB $2.506 (r6g.4xlarge, 16vCPU/128GiB) $1.9688 - 16 vCPU, 64 GiB $2.506 (r6g.4xlarge, 16vCPU/128GiB) - $2.2816 比較は難しいが、ノード単位で見ると大体同程度 - Auroraと同等スペックのノードがTiDB Cloudでは提供されていない - 実際の料金には通信やI/Oコストなどが掛かるので読みにくい
  26. © WonderPlanet Inc. 50 コスト面について - 2 2023/07/06にServerless Tierが一般提供開始 -

    マルチテナント型の従量課金 - 現時点(2023/08/24)ではAWSクラウドのみ 無料クォータがあり開発や検証に利用しやすい - 小規模な開発なら無料枠に収まる
  27. © WonderPlanet Inc. 51 TiDBとAuroraの比較:その他機能 Amazon Aurora TiDB SQL MySQL

    5.x, 8.x 100%互換 MySQL 5.7互換 (一部互換なし, 独自機能あり) バックアップ ◯ ◯: 1日1度自動バックアップ リカバリ ◯: Point in Time Recovery ◯: Point in Time Recovery メトリクス監視 ◯ ◯ アラート ◯ △: 自由に設定するには外部ツール必要 クエリ分析 ◯ ◯
  28. © WonderPlanet Inc. 52 MySQL互換性について MySQLの全ての機能をサポートしていない - ストアドプロシージャと関数 - トリガーやイベント

      : MySQLと挙動が異なる機能がある - AUTO_INCREMENT - EXPLAIN - DDLの制限   : データベース機能を使わないシンプルなクエリであれば影響は小さい - あるゲームのデータベースをTiDBにリストアして結合試験し、MySQLと同じ結果を得た
  29. © WonderPlanet Inc. 53 TiDBの特徴まとめ シャーディング対応する規模で高頻度でスケーリングするサービスに向いている - シャーディング不要・レプリケーション遅延問題が発生しない - 非停止でDDL適用やスケーリング可能

    - コストや処理性能はAuroraと同等程度 ネットワークレイテンシの観点でマイクロ秒レベルの最適化が必要なサービスは不利 →ワンダープラネットのゲームプロダクトに合致
  30. © WonderPlanet Inc. 55 活用状況 検証の結果、開発中タイトルへ導入することに - シャーディングしないで済む管理・運用コストの改善が魅力 - ビジネススケールに合わせて直ぐスケーリングできる

    - 特にリリース時や大規模イベントといった負荷を読みにくいタイミングに効果を期待 - 最悪MySQL (Amazon Aurora) に戻せるように互換性を保っておく - ローカル開発時はMySQL、開発環境はTiDB Cloud 細かい課題はありつつ、概ね問題なく動作している
  31. © WonderPlanet Inc. 56 採用に関するワンポイント - 機能 MySQLとの細かい違いに注意が必要 - MySQLをStrict

    Modeで動かしておらず、移行時にDEFAULT・NULL値周りでトラブル AUTO_INCREMENTは非推奨 - ホットスポットを誘発しやすくなりパフォーマンス劣化の原因になってしまう - ワンダープラネットではアプリケーション側でUUIDを採番している スケーリングの際にコネクションが切れる - アプリケーション側でハンドリングして自動リトライを入れた - TiDB Cloud側でプロキシを前段に立てる改善予定とのこと
  32. © WonderPlanet Inc. 57 採用に関するワンポイント - 運用 物理DDL適用に時間が掛かる - 論理DDLと物理DDLがありインデックス追加などが物理DDL

    - オンラインで実行できるものの、MySQLより時間が掛かる TiDB Cloud Serverlessが便利 - ちょっとした検証のために立てて繋ぐことができる - ローカルでもDocker上でTiDBを構築できるがちょっと重い TiDB自体のバージョンアップによる機能改善サイクルが早い - LTSを約6ヶ月毎にリリースするサイクル - 検証中にバージョンが上がってスケール性が向上した - 速度改善や独自機能の追加も盛ん
  33. © WonderPlanet Inc. 58 採用に関するワンポイント - サポート ドキュメントが豊富 - 前述のMySQL互換やAUTO_INCREMENTなど、つまづいたところは大体解説

    されている - バージョン更新に伴ってドキュメントも更新されていく - Youtubeで基本的な仕組みから詳細な機能まで解説されている - GitHubにコードが公開されている サポートが手厚い - 前述の課題はPingCAP社に相談して解決や回避策を取っている
  34. © WonderPlanet Inc. 60 まとめ ワンダープラネットではデータベースのシャーディングに課題感を持っていた - 設計・開発・運用どのタイミングでも問題が起こりやすい TiDBを検証して、開発中プロダクトへの導入を決定 -

    ビジネススケールに合わせてインフラサイズを調整しやすい - 複雑なデータベース分割から解放されインフラ管理工数の削減が期待できる 複雑なシャーディングを考えずにゲームの楽しさ作りに集中できるように!