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異業種に転職したらレベル1でクラッカーと戦うことになった件 〜Recruit-CSIRT セキュリティ監視の現場から〜

異業種に転職したらレベル1でクラッカーと戦うことになった件 〜Recruit-CSIRT セキュリティ監視の現場から〜

2019/8/27 ITmediaエンタープライズ主催セミナーでの安東の講演資料になります。

Recruit Technologies

August 27, 2019
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Transcript

  1. 2 ⾃⼰紹介 安東 美穂 (あんどう みほ) 株式会社リクルートテクノロジーズ 2014年 12⽉ リクルートテクノロジーズ

    ⼊社/現職 セキュリティオペレーションセンター(SOC)所属 2011年 4⽉ 国内某ホスティング会社 新卒⼊社 パブリッククラウド商材のテクニカルサポート担当 ⽒名 所属 略歴 ⽇経コンピュータ連載記事に寄稿 書籍「現場で使えるセキュリティ事故対応」 好きなコマンド:nmap 課外活動:ミニ四駆 ・リクルートのサービスのセキュリティ監視、解析(IDS/WAF) ・WAF監視導⼊⽀援 など 担当 業務
  2. リクルートグループについて 7 創業 1960年3⽉31⽇ 「⼤学新聞広告社」としてスタート グループ 従業員数 45,856名 (2019年3⽉31⽇時点) 連結売上⾼

    23,107億円 (2018年4⽉1⽇〜2019年3⽉31⽇) 連結営業利益 2,230億円 (2018年4⽉1⽇〜2019年3⽉31⽇) グループ 企業数 344社 (⼦会社および関連会社、2019年3⽉31⽇時点) ⽬指す世界観 「あなた」を⽀える存在でありたい
  3. リクルートの事業内容について 8 ライフイベント領域 進学 就職 結婚 転職 住宅購⼊ ⾞購⼊ 出産/育児

    旅⾏ ビジネス⽀援 ⽣活/地域情報 グルメ・美容 ライフスタイル領域 選択・意思決定を⽀援する情報サービスを提供し、 「まだ、ここにない、出会い。」を実現する。
  4. リクルートのビジネスモデルについて 9 リクルートには、ユーザーとクライアントという2つのお客様が存在します。 企業と⼈(B to C)、企業と企業(B to B)、⼈と⼈(C to C)、すべての間に⽴ち、

    双⽅にとって最適なマッチングを図る「場」を提供しています。 ユーザーとクライアントを新しい接点で結び、 「まだ、ここにない、出会い。」の場を創造する。
  5. リクルートテクノロジーズは、リクルートグループのIT・ネットマーケティング領域の テクノロジー開発を担う会社です。 リクルートグループにおけるリクルートテクノロジーズについて 10 リクルート ホールディングス リクルートキャリア リクルート住まいカンパニー リクルートライフスタイル リクルートジョブズ

    リクルートマーケティングパートナーズ リクルートテクノロジーズ リクルートスタッフィング スタッフサービス・ホールディングス リクルートコミュニケーションズ メディア & ソリューション事業 (株)リクルート ⼈材派遣事業 Recruit Global Staffing B.V. HRテクノロジ― 事業 RGF OHR USA, Inc. その他海外派遣グループ会社 Indeed,Inc.
  6. 14 Recruit CSIRTのSOCについて 早期検知 未然防⽌ ▪脆弱性診断、開発者教育 ▪パッチマネジメント(情報収集と展開) ▪早期警戒 被害最⼩化 ▪事故発⽣時の対応⽀援

    ▪現場対応(証拠保全、影響調査など) ▪外部関連機関との連携 ▪セキュリティ監視運⽤ (商⽤インフラ、マルウェア解析、内部不正) ▪監視基盤の運⽤・開発 ▪監視機器チューニング Recruit CSIRTはリクルートグループのセキュリティ監視/事故対応/開発⽀援を ⾏う専⾨部隊です。
  7. 15 Recruit CSIRTのSOCについて 早期検知 セキュリティ事故の予兆の検知、および事故発⽣時の対応を 迅速に・効率良く⾏うのがSOCの役割 未然防⽌ ▪脆弱性診断、開発者教育 ▪パッチマネジメント(情報収集と展開) ▪早期警戒

    被害最⼩化 ▪事故発⽣時の対応⽀援 ▪現場対応(証拠保全、影響調査など) ▪外部関連機関との連携 ▪セキュリティ監視運⽤ (商⽤インフラ、マルウェア解析、内部不正) ▪監視基盤の運⽤・開発 ▪監視機器チューニング Recruit CSIRTはリクルートグループのセキュリティ監視/事故対応/開発⽀援を ⾏う専⾨部隊です。
  8. リクルートのインフラ環境 SOCの監視対象の環境は⼤きく分けて執務と商⽤の⼆種類 – 執務環境:リクルートグループの社内システム/従業 員端末などがあるインフラ(NW) – 商⽤環境:リクルートのWEBサービスがあるインフラ 16 執務環境 商⽤環境

    標準環境 NW リクルートID サービス向け インフラ 標準商⽤ インフラ 独⾃オンプレ ※複数 独⾃クラウド ※複数 独⾃NW ※複数 セキュア 環境NW • 端末のマルウェア感染 • 内部不正 • WEBアプリ/サーバーソフトウェ アの脆弱性を狙った攻撃 • 不正ログイン
  9. リクルート⼊社前 21 国内の某ホスティング会社のテクニカルサポートに新卒⼊社 WEBサーバート ラブル切り分け VM作成、設定 サポート SSL証明書設定 ⽅法案内 ユーザー向け

    FAQ作成 DDoSによる 障害 不正アクセス被害 の相談 Abuse/警察 対応 OS/MW 脆弱性対応 専⽤サーバー/パブリッククラウド担当だったため、 不適切なサーバー管理によるセキュリティのトラブルを多く⽬の当たりに
  10. リクルート⼊社前 22 国内の某ホスティング会社のテクニカルサポートに新卒⼊社 WEBサーバート ラブル切り分け VM作成、設定 サポート SSL証明書設定 ⽅法案内 ユーザー向け

    FAQ作成 DDoSによる 障害 不正アクセス被害 の相談 Abuse/警察 対応 OS/MW 脆弱性対応 専⽤サーバー/パブリッククラウド担当だったため、 不適切なサーバー管理によるセキュリティのトラブルを多く⽬の当たりに 技術⾯でのスキルアップに加え、 安⼼なサービスを管理/運⽤する側に回りたいと考えるように
  11. 26 当時の状態 この当時の私 • LPIC、CCENT、Oracle Master Bronzeなどイン フラ基礎資格は所有 • セキュリティエンジニア

    って何するの? • Pcapという拡張⼦を知ら ない • サンドボックスは、箱? • 何がセキュリティ⽤語で 何がリクルート⽤語か区 別がつかない
  12. 27 当時の状態 この当時の私 • LPIC、CCENT、Oracle Master Bronzeなどイン フラ基礎資格は所有 • セキュリティエンジニア

    って何するの? • Pcapという拡張⼦を知ら ない • サンドボックスは、箱? • 何がセキュリティ⽤語で 何がリクルート⽤語か区 別がつかない この当時の組織 • 数ヶ⽉前に国内他社で起 きたセキュリティ事故を 受け意識が⾼まっている 状態 • セキュリティを専⾨とす る社員わずか数⼈ • のちにCSIRTのマネー ジャーとなる⼈が同期⼊ 社 • のちにSOCのマネー ジャーとなる⼈が3ヶ⽉ 後に⼊社 ×
  13. 28 当時の状態 この当時の私 • LPIC、CCENT、Oracle Master Bronze(などイ ンフラ基礎資格は所有 • Pcapという拡張⼦を知ら

    ない • wireshark触ったことな し • サンドボックスは、箱? • 何がセキュリティ⽤語で 何がリクルート⽤語か区 別がつかない この当時の組織 • 数ヶ⽉前に国内他社で起 きたセキュリティ事故を 受け意識が⾼まっている 状態 • セキュリティを専⾨とす る社員わずか数⼈ • のちにCSIRTのマネー ジャーとなる⼈が同期⼊ 社 • のちにSOCのマネー ジャーとなる⼈が3ヶ⽉ 後に⼊社 × ⾮常にチャレンジングな状況
  14. リクルートの商⽤監視 31 IDS Intrusion Detection System WAF Web Application Firewall

    NWF Network Forensics 主にOSやミドルウェアの脆弱性を狙った通信 を検知するシステム ※検知+遮断する場合はIPS(Intrusion Protection System) 主にWEBアプリケーションの脆弱性を狙った 通信を検知/遮断するシステム 環境内に流れる通信のパケットをキャプチャし て収集、解析するためのシステム • 商⽤監視では以下の3つの監視機器を活⽤
  15. IDS/WAFの監視対応 34 監視対象サービス 400以上 1ヶ⽉の検知アラート数 約2億件 ※IDS+WAF • SOCでWAF/IDSを⽤いて監視をしている規模 とりあえず電話が鳴ったら出

    てね 私 当時のボス はい! (いきなりアラート対応…! できるだろうか…) あと対応フローを⾒直して 作り直してみて はい! (フロー整備は得意) • MSSからのアラート通知が来たら攻撃成否/影響を判断し、 事業への通知や通信遮断を⾏うのが主な任務
  16. 商⽤環境インシデント対応フロー例 (1)攻撃の種類や内容の調査 検知アラートの内容から攻撃の可能性を判断。また、何を狙ったどのよ うな攻撃かを⾒⽴てる。 (2)送信元、送信先の調査 IPアドレスなどの基本的な情報から不審な送信元かどうかを判断。 (3)攻撃成否/影響範囲の調査 ネットワークフォレンジックで通信のリクエストとレスポンスを確認し 攻撃成否と攻撃意図を調査。また前後の通信を確認し影響を判断する。 (4)脆弱性の確認

    脆弱性のあるプロダクト/ソフトウェアの利⽤有無とバージョンを確認。 必要に応じパケットの再送や検査を実施し影響を検証。 (5)ログ、履歴の調査 必要に応じてFWログやApacheログ、認証ログなどとの突合調査。 35 IDS/WAF 検知 NWF 深堀調査 封じ込め/ 回復 → FW遮断、脆弱性の修正、サイト停⽌などのインシデントレスポンスへ
  17. 36 着任して間もない頃の対応例 不正なファイルアップロード試⾏の攻撃を検知しました。 攻撃が成功している可能性があります。 不審な送信元IPみたい・・FW遮断をして事業に通知! 私 事業 担当 MSS 確認しました。問題ありませんでした!

    私 承知しました。ご確認ありがとうございます! あれ、問題ないと⾔っているけど、本当に問題ないんだろう か?? →何を根拠に判断すれば良いか分からず、⾃信を持って判断できない
  18. セキュリティ施策を横断組織で推進 • リクルートでは、株式会社リクルート(RCL)と株式会社リクルートテクノロジーズ(RTC)が 共同でセキュリティに対するマネジメント運営を実施しています。 • RCLでは業務セキュリティ、RTC ではシステムセキュリティに関する対応をしています。 40 サービス アプリ

    インフラ ASP セキュリティ 組織 グループ会社事業組織 グループ⼦会社 経営企画 総務 事業部A IT 企画 内 部 統 制 事業部B IT 企画 NB部 IT 企画 経営企画 総務 事業部 C IT 企画 委託先 (⼀般& システム) 委託先 (⼀般& システム) 指 ⽰ / 管 理 要件共有 施策詳細 グループ会社体制 内部統制責任者 総務 システ ム 内部統 制 全体 責任者 施策 推進者 保有する情報資産の例 リクルートグループのセキュリティ機能 リクルートグループにおけるセキュリティ対策の対象 セキュリティ対策の対象 機能 役割 戦略 全体統括 ⽅針・規定 施策推進 運⽤管理 (CSIRT) 監査 リスク管理 セキュリティ戦略の策定/経営との合意 予算管理 セキュリティ組織全体の管理 業務セキュリティの⽅針・要件の策定 システムセキュリティの⽅針・要件の策定 ソリューションの構築 各社の施策導⼊に対する推進・検討⽀援 インシデント対応 セキュリティ監視(SOC) 脆弱性管理 業務セキュリティ監査・アセスメント システムセキュリティ監査・アセスメント セキュリティ 実装⽀援 業務セキュリティ実装・検討⽀援 システムセキュリティ実装・検討⽀援 ルール策定 執⾏依頼
  19. • 商⽤セキュリティ施策導⼊の流れ アプライ アンス導⼊ パラメータ ヒアリング 監視サービス 設計 実装・ チューニング

    本格 運⽤開始 SOCの担当範囲 セキュリティ施策の導⼊〜運⽤開始まで 導⼊におけるSOCの役割 監視対象環境に導⼊されたセキュリティ機器で監視開始できるように するのがSOCの役割 ① 監視サービス設計 ② 監視ルールの設定 ③ 監視ルールのチューニング ④ サイト責任者連絡先確認、フロー説明
  20. セキュリティ施策の導⼊〜運⽤開始まで ①監視サービス設計 – MSS選定 – 監視基盤の設置、ログ収集回線敷設 – 社内SOCとしての監視サービスレベル、提供内容の検討 ②監視ルールの設定 –

    どの監視ルールをONするか?(監視対象環境に合わせて設定) ③監視ルールのチューニング – ルールをONにした後の検知状況を様⼦⾒(1週間〜2週間) – 過検知したアラートの対応を検討する(無視する/除外する) ④サイト責任者連絡先確認、フロー説明 – サイトの開発者や事業担当の連絡先をヒアリング – サイト担当へSOCによる運⽤のサービスレベルやフローを説明 45
  21. 課題③ 分析スキル/精度向上 • アナリストチームによる詳細調査 SOC内に設けられたアナリストチームで 定型対応外の分析・詳細調査を実施 →分析⼿法の検討・評価も⾏えるようになり、 それらを他メンバーへ共有することで定型化 55 など..

    マルウェア感染経路の深堀解析 早期警戒情報からの予防遮断 各種ログからのハンティング 定型運⽤外の解析 分析⼿法の 検討・評価 定型運⽤化 ・ 他メンバー へ共有
  22. 57 おかげさまで今に⾄る 2014 2015 2016 2017 2018 2019 セキュリティ監視の前線に⽴てるようになり、 監視をベースにクラウド環境の施策検討など少しづつ幅を広げて精進中

    ⼊社 ⼤規模セキュリティPJ システムC/Oを経験 WAF導⼊PJ SOCにおけるPLを経験 商⽤監視 TL クラウドの 監視検討WG参加
  23. • セキュリティ関連業務と⼀⼝に⾔っても多岐にわたる – インシデントハンドラー、脆弱性診断⼠、リサーチャーetc… • セキュリティ⼈材のスキルマップ/ガイドライン例: – SecBoK:情報セキュリティ知識項⽬(JNSA) https://www.jnsa.org/result/2018/skillmap/ –

    iCD:i コンピテンシ ディクショナリ、ITSS:ITスキル標準(IPA) https://icd.ipa.go.jp/icd/ability/attention/security – https://www.ipa.go.jp/jinzai/itss/index.html 58 セキュリティエンジニアって? ※引⽤元「SecBok全体整理表」 業務遂⾏のための前提ス キルと必須スキルがマッ ピングされている。 例えば「リサーチャー」 の場合、プロジェクト管 理、インシデント対応関 連スキル、攻撃⼿法、ソ フトウェア関連知識など が前提
  24. • 関連業務が幅広いため様々なスキルの合わせ技で戦う必 要がある 60 セキュリティは総合格闘技 ※引⽤元 セキュリティ業務を担う⼈材のスキル可視化ガイドライン プラス・セキュリティ⼈材の可 視化に向けて<β版> https://www.jnsa.org/isepa/images/outputs/JTAG_guideline-%CE%B2_190118.pdf

    テクノロジー領域はアプリからNW、 DB、暗号/認証技術までレイヤー問わず ビジネス領域はマネジメント、プロ ジェクト管理から法/制度まで まめつぶくらい ほぼゼロからのスタートの場合、どうすれば・・ AS-IS
  25. スキルアップのために • 体系的知識を扱う外部研修(SANS等) • 外部コミュニティでの情報収集 • 海外カンファレンス参加 65 ナレッジ •

    攻守の演習型の研修(サイバーレンジ、 Hardening) • 脆弱WEBアプリの擬似テスト • マルウェアの静的解析 テクニカルスキル
  26. スキルアップのために • 体系的知識を扱う外部研修(SANS等) • 外部コミュニティでの情報収集 • 海外カンファレンス参加 66 ナレッジ •

    攻守の演習型の研修(サイバーレンジ、 Hardening) • 脆弱WEBアプリの擬似テスト • マルウェアの静的解析 テクニカルスキル 海外で肌で感じる刺激は視野を広げる/モチベーショ ンを⾼めるには良い。 カンファレンスで海外のユーザー企業のエンジニアと 交流できると楽しい!
  27. スキルアップのために • 体系的知識を扱う外部研修(SANS等) • 外部コミュニティでの情報収集 • 海外カンファレンス参加 67 ナレッジ •

    攻守の演習型の研修(サイバーレンジ、 Hardening) • 脆弱WEBアプリの擬似テスト • マルウェアの静的解析 テクニカルスキル アナリストの同僚にレクチャーを受け、実際に⾃社で 検知されたマルウェアを解析。 ツールの使い⽅、⽬の付け所や勘所、報告の仕⽅など を⾒よう⾒まねで訓練。
  28. • ⾃分がもともと得意な領域/活躍できる領域から ⼟壌を固めていく – サポートで培った業務設計、運⽤改善の経験があったので、専⾨ 知識がない状態でもなんとか⽴ち上がることができた – 関連領域が広い分、必ず何かのスキル/知識が活かせる • ⽬指したい⽅向(レーダーチャートの形)と登

    り⽅(必要なスキルと⾝につけ⽅)を考えなが ら進む – 登り始めはどんな業務があるかもあまりよく分からない – とりあえずできるだけ戦場に近いところに⾝を置くのも1つ 68 セキュリティ未経験からの登り⽅