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学会に発表者として継続的に参加するためのセルフマネージメント
Ryo Masumura
March 04, 2019
Research
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学会に発表者として継続的に参加するためのセルフマネージメント
Ryo Masumura
March 04, 2019
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Transcript
Copyright©2019 NTT corp. All Rights Reserved. 学会に発表者として継続的に 参加するためのセルフマネージメント 増村 亮
日本電信電話株式会社 NTTメディアインテリジェンス研究所
Copyright©2019 NTT corp. All Rights Reserved. 2 簡単に自己紹介 増村
亮 (ますむら りょう), 博士(工学) 2005/4-2009/3: 東北大学工学部卒業 2009/4-2011/3: 東北大学大学院工学研究科修士課程修了 2015/4-2016/9: 東北大学大学院工学研究科博士課程修了 2011/4- 日本電信電話株式会社入社、現在に至る 経歴 主な研究分野 音声A(音声認識、音声言語処理)、自然言語処理 2018年4月 2019年3月 ICASSP 2018 INTERSPEECH 2018 APSIPA 2018 * 2 EMNLP 2018 SIGDIAL 2018 COLING 2018 ASJ 2018A*2 ASJ 2019S*2 国 内 国 際 JSAI 2018 NL 201812 NLC 201902 自身のこの1年の主著発表(国内査読なし8, 国際査読あり7) SP 201903
Copyright©2019 NTT corp. All Rights Reserved. 3 研究というフィールド 今からでも、世界のスーパースターになれる可能性が
残っているフィールド 今から皆さんがフィギュアスケートというフィールドで羽生選手や、 野球というフィールドで大谷選手のようになるのは非現実的… 研究をやることは非常に夢があること、でも”この年齢からでも十分 に間に合う”といえど、他のフィールドと同様に簡単なことではない… 一方で、研究というフィールドなら この年齢からでも十分にスーパースターになれる可能性がある 研究というフィールドにおける大谷翔平選手や羽生結弦選手
Copyright©2019 NTT corp. All Rights Reserved. 4 何が必要なのか? インプットとアウトプットのサイクルを回すこと
研究におけるインプット: 「成果に繋げるための勉強、経験」 研究におけるアウトプット: 「インプットを元に収めた実績や成果」 新たな技術(理論、プログラミングなど)の習得 スポーツで言えば、インプット「日頃の練習で鍛錬を積むこと」、 アウトプットは「大会で成果を上げること」 2段階目: 研究発表や論文採録に関する数と質、付随する受賞など 周辺技術のサーベイ 論文執筆能力、プレゼンテーションの能力向上、英語の勉強 1段階目: 性能向上や新たな発見を生むこと アウトプットからの反省と行動が、インプットに直結する
Copyright©2019 NTT corp. All Rights Reserved. インプットとアウトプットを両立するいい方法 5 学会に発表者として継続的に参加することが、
インプットとアウトプットのサイクルを回すのに最適 学会(特に査読付き国際会議)で発表するということのサイクル に含まれるインプットとアウトプット 研究を進めて 一定の成果を上げる 査読に耐えうる 質の論文を執筆 学会で新たな研究 や自分以上の存在 に触れる 採択されれば 学会で良い プレゼンを実施 学会経験をもとに、 新たに必要なこと を勉強する 1段階目の アウトプット 若手は、 発表者でないと このインプットの 権利は得られない サイクル全体の反省を もとに新たにインプット アウトプットの機会、 プレゼン準備も 多くのインプットがある 2段目のアウトプット、 でも関連文献や 論文の書き方など、 インプットも多い その他にも旅行できる、知り合いが増えるなど、メリットはたくさん
Copyright©2019 NTT corp. All Rights Reserved. 6 サイクルを作り出すには? 「そうだ、論文書こう」
なんてことは、きっと皆さんよく分かっており、 どのように書くべきかといったポイントは、良く議論されている でも「そうだ、論文書こう」と思うこと自体が簡単なことではなく、 それ相応のモチベーションを持って、計画の上に行動し、 自身の持っている力をうまく発揮しなければうまくいかない 「うわー、論文書かなければいけない」だと辛い… 自然言語処理分野の内容ではあるが、 個人的に非常におすすめのスライ http://www.phontron.com/slides/neubig15nlptutorial.pdf
Copyright©2019 NTT corp. All Rights Reserved. 7 セルフマネージメントの必要性 セルフマネージメントは、
「目標や夢を叶えるために、自分自身を律するための能力」 どんな管理が必要かをもう少しいくつかの要素に分割すると? タスク管理・時間管理・リスク管理 健康管理 目標とのギャップを客観的に管理 セルフブランディングの管理 スポーツから仕事まで、いろいろなことで重要になること、 では研究においてはどんなセルフマネージメントが必要か? モチベーション管理
Copyright©2019 NTT corp. All Rights Reserved. 8 これ以降でお話しさせて頂くこと 自身の経験をもとに、
研究におけるセルフマネージメントの考えを議論 「論文を書く・継続的に学会で発表する」ということに 必要な要素を主眼とするが、研究全般に通ずるものも多い 「こうやることが正解」と主張するつもりは全くなく、 皆さんにとって「考える機会」になることが一番の目的 スポーツが好きなので、ちょいちょいスポーツの例を出します… 想定する聞き手の中心は、 一人称で研究を進めることが多い学生や若手研究者 「指導」みたいな話は、完全に除外して話をします
Copyright©2019 NTT corp. All Rights Reserved. 研究におけるセルフマネージメント 9 目的・モチベーション主導型で行動することが、
セルフマネージメントの軸 ただただ研究が好きで、 目の前の研究を とにかく進める どんどん成果が出て、 目の前のちょうどいい会議 や論文誌向けにどんどん通る これで順調なら言うことなし、このままでよいと思う 天才型のみが許される自由なやり方 いつまでにどの程度研究を 進めて、いつ頃に一定の成果 を上げることを目指すか明確 にして、研究を進める これからこんな研究分野で、 こんな成果を実現できるよう な研究者になりたい 天才型以外の人は、こういう考えの人が多いと思う、 具体化の度合いの違いが行動の質や量に差を生む気がしている セルフマネージメントをベースにやるやり方 なお、アイデアを生み出す研究活動の時間は計画よりも純粋さが大事 そのために論文書いて 国際会議に参加して、 インプットとアウトプット を両立したい 結果的に分野の 第一人者の研究者になる
Copyright©2019 NTT corp. All Rights Reserved. セルフマネージメント① 10 目標がないと、行動の指針ができない
将来を見据えたうえで、短期的・長期的な目標や 「論文を書く」モチベーションを明確にする 目標がないと、タスク管理や時間管理ができない 目標がないと、足りてるか足りていないか判断できない
Copyright©2019 NTT corp. All Rights Reserved. ①-a:目標の目安となる研究者を見つける 11 研究者として、どうなっていくかの指針を作る上で重要
身近には研究室の先輩や先生であるが、是非他の組織の人も見てほしい 短期的な目標となる研究者は、例えば若手フォーラムメンバー もぜひ見てみてほしい、ホームページを見ると非常に参考になるはず http://asj-fresh.acoustics.jp 活躍している 若手先輩研究者の これまでの活動を知る と目安になる 短期的な目標と中長期的な目標の両者が必要、1人である必要もない
Copyright©2019 NTT corp. All Rights Reserved. 12 ①-b:会議や論文誌をちゃんと知る 目標の目安となる研究者を作るとともに、実際に対象となる
会議や論文誌の立ち位置を良く知っていることが大事 目標となる研究者はどんなレベルの会議でどんな実績を 上げているのかを知っていると知っていないとでは大きく異なる https://scholar.google.co.jp 例えば、自分の目標に到達するために、 「日本音響学会誌」で実績を積めば十分か?これは人による… http://www.asj.gr.jp
Copyright©2019 NTT corp. All Rights Reserved. 13 ①-c:理想的にはセルフブランディングを具体化する 好きなこと・得意なことを深堀りする路線は軸として
いいが、できれば自分の独自性がでる将来像を描く 研究でも独自性が出ないとアクセプトされないように、 研究分野においても他の人との差分があることが理想的 「Aに対してめちゃくちゃすごい人」でもいいし、 「BもCもDもトップと遜色なくすごい人」でもいい 学会や論文誌の投稿を目指すうえでは、 ここまで考えやれるようになるベスト 自分が、多く国際会議出すようにしてきているのも、 セルフブランディングの一種
Copyright©2019 NTT corp. All Rights Reserved. 14 最終目標達成に向けて、小さな目標にブレイクダウンする ①-d:今後の研究者目標を具体化する
今年一年の研究目標・投稿目標を描く 例えば年単位をマイルストーンとして、到達したいレベルを描く 2019年4月 2020年3月 ICASSP 2020投稿 INTERSPEECH 2020投稿 APSIPA 2019投稿 国 際 ASRU 2019投稿 国 内 2019年4月 5年後 〇〇分野で 国内トップになる 目 標 目 安 もちろん、受賞のような目に見えるレベルの目安を描いてもいい この時点までにICASSP *5 INTERSPEECH* 5 音響学会 学生奨励賞 音響学会 粟屋賞受賞 〇〇分野で 国内で目立つ存在になる ASJ 2019A投稿 ASJ 2020S投稿 3年後 1年後 学振でDC1が 取れるレベルになる どんな研究をやるかまで決めておけると一番よい (例) (例)
Copyright©2019 NTT corp. All Rights Reserved. セルフマネージメント② 15 タスク管理・時間管理を考えて取り組まないと、
論文投稿直前で論文を書きに充てる時間が無くなったり、 十分な実験を行えなくなる 目標達成に必要な研究活動のタスク・時間・リスク管理 について、自分の研究スタイルを作り出す リスク管理を考えて取り組まないと、 今やっている研究がうまくいかなくなった瞬間に破綻してしまう
Copyright©2019 NTT corp. All Rights Reserved. ②-a:必要な時間やタスクを具体化する 16 目標とする成果点(国際会議など)までの道筋を、
研究フェーズごとに見積もっておく サーベイ、アイデア考案、実装、実験に必要な時間とタスク量 論文執筆に必要な時間とタスク量 この時間がちゃんと取れないと、結局良い論文は書けない、 自身の執筆能力と締切日と相談して、 いつまでにこれ以前のタスクを終えなければいけないか見積もる ここが不十分だと論旨がなく筋も悪い研究になってしまうが、 永遠に時間をかけていいわけではない これらを、複数平行して行うために必要な時間とタスク量 例えば、1カ月ずれの2つの異なる国際会議投稿締め切り、 執筆と研究を両立できるかでどうかでやり方は変わるが、 自分の能力をよく考えて見積もる
Copyright©2019 NTT corp. All Rights Reserved. ②-b:研究に関するリスクマネージメント 17 「思いついたアイデアがうまくいくと限らない」のが研究、
それでも具体化した目標を達成するためのリスク管理が必要 ある研究テーマに対して、 2-3個のアイデアを平行して試せるぐらいだと非常に理想的 逆に、それでも1つもうまくいかないことはある… (後述) 複数のアイデアがうまくいけば、複数分けて投稿も期待できる さらに複数の研究テーマについてリスク管理を平行できるようになる と、成果の量産体制が大分整う
Copyright©2019 NTT corp. All Rights Reserved. ②-c:研究以外のリスクマネージメント 18 プライベートや別の仕事が入ってくるのは当たり前、
その時にどう行動するかを具体化しておくことが重要 どちらかを優先させる必要があるときは、プライオリティを考える 「就活や研究以外の業務が忙しくて研究ができない」という人は、 「就活や研究以外の業務」のプライオリティが高いと判断できている なら問題ないが、もしも自分の目標に対してネガティブな要素である ならば、何かを変える必要がある 両立可能な範囲内であれば、得意な処理パターンを作り出す ここは完全に人それぞれ、 「こうやれば問題ない」と自分自身で感じられる方法が必要
Copyright©2019 NTT corp. All Rights Reserved. セルフマネージメント➂ 19 モチベーションを保つ術がないと、パフォーマンスが上がらない
「そうだ論文を書こう」のモチベーションを 長く保つためのメンタリティを確立する モチベーションを保つ術がないと、研究がうまくいかなくなったり、 査読落ちしてしまったときに、手が止まってしまう
Copyright©2019 NTT corp. All Rights Reserved. 20 ➂-a:ダメな時のメンタルマネージメント 研究も論文採否もうまくいかないことは普通のこと、
その時に逆にモチベーションを上げれるようになると強い 世の中には、これに鍛えることに特化したメンタルトレーナー がいるほどで、非常に難しいこと これはもう自分で拠り所を見つけるしかない 1つ分かっていることは自分だけがそうである訳ではないこと、 自分以外も研究うまくいかないことは多いし、 自分以外も査読落ちることはある…
Copyright©2019 NTT corp. All Rights Reserved. ➂-b:個人的なライバルを作る 21 ライバルは、自分の現時点を客観的に評価する指標に
成り得るし、モチベーターに成り得る 学会の同年代の人(知り合いでも知り合いでなくても)で、 ライバルがいると、自分と比べてどうかを知る指標できる 「自分も頑張らないと」と思わせてくれる存在は、 研究活動を高みに引き上げてくれるはず
Copyright©2019 NTT corp. All Rights Reserved. 22 まとめ 「そうだ、論文書こう」の一歩手前として、
研究におけるセルフマネージメントを議論 論文を書く前に、その目的や目標を具体化 自分の能力を見積もって、目標を遂行できるような研究計画 モチベーションを保つことが継続的に行う秘訣 今日議論した以外にもセルフマネージメントは、 他の人のやり方から学べることが多い 音響学会若手フォーラムに入ると、 近い年代の見本となる人やライバルに出会って、 間違いなく皆さんの研究活動にプラスになると思います ここまでくると、自ずと「そうだ、論文書こう」になる