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細かすぎて伝わらない短歌名歌鑑賞2022
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嶋稟太郎 / しまさん
December 19, 2022
Technology
0
1.6k
細かすぎて伝わらない短歌名歌鑑賞2022
# イベントの様子はこちら
2022年12月 社内LT会フォトレポート
https://tech.speee.jp/entry/2022-2nd-lt-report
嶋稟太郎 / しまさん
December 19, 2022
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Transcript
細かすぎて伝わらない 短歌名歌鑑賞 2022 嶋 稟太郎 2022年末LT大会@Speee 持ち時間 5分
今年紹介するのは・・・
佐藤佐太郎 1909年 - 1987年 家と会社を往復する日々を短歌にした昭和 16年のデビュー作『歩道』はあま りにも有名。時代の先を行きすぎたとも評され、今なお多くのフォロワーを生 んでいる。 さとう・さたろう ※実在する歌人です
夕光のなかにまぶしく花みちて しだれ桜は輝を垂る 第9歌集『形影』昭和45年(1970年) 夕暮れどきに枝垂れ桜の花がまぶしく見えてまるで木が光を垂らしているようだ ・・・と言う歌。 ゆうかげ かがやき
夕光のなかにまぶしく花みちて しだれ桜は輝を垂る 第9歌集『形影』昭和45年(1970年) ゆうかげ かがやき 光を”かげ”と読ませ る歌は佐太郎の他の 歌でもあって … 二句をひらがなに開くと読むス
ピードが遅くなり光の重さをじ んわりと読者に伝えて … 三句に主題をもって きた理由・枝垂れと 表記しないために … 送り仮名”き”を外に 出したらどうなるの か?他の例として … 結句の時制は現在 形かつ定言命法のよ うに普遍的な性質を … まぶしく=連体形に することで花の出てく るタイミングを … 歌の中に一つだけ漢 語を入れる手法を佐 太郎はよく使って …
夕光のなかにまぶしく花みちて しだれ桜は輝を垂る 第9歌集『形影』昭和45年(1970年) ゆうかげ かがやき 1時間欲しい
夕光のなかにまぶしく花みちて しだれ桜は輝を垂る 第9歌集『形影』昭和45年(1970年) ゆうかげ かがやき ひとつだけ
夕光のなかにまぶしく花みちて しだれ桜は輝を垂る 第9歌集『形影』昭和45年(1970年) ゆうかげ かがやき
夕光のなかにまぶしく花みちて しだれ桜は輝を垂る 第9歌集『形影』昭和45年(1970年) ゆうかげ かがやき 「て」
夕光のなかにまぶしく花みちて しだれ桜は輝を垂る 第9歌集『形影』昭和45年(1970年) ゆうかげ かがやき https://kobun.weblio.jp/content/%E3%81%A6
夕光のなかにまぶしく花みちて しだれ桜は輝を垂る 第9歌集『形影』昭和45年(1970年) ゆうかげ かがやき https://kobun.weblio.jp/content/%E3%81%A6 「AてB」 A→B 順番か原因を示す
夕光のなかにまぶしく花みちて しだれ桜は輝を垂る 第9歌集『形影』昭和45年(1970年) ゆうかげ かがやき
夕光のなかにまぶしく花みちて しだれ桜は輝を垂る 第9歌集『形影』昭和45年(1970年) ゆうかげ かがやき A 光の中に花が満ちている B 桜の木が光をたらす
夕光のなかにまぶしく花みちて しだれ桜は輝を垂る 第9歌集『形影』昭和45年(1970年) ゆうかげ かがやき A 光の中に花が満ちている B 桜の木が光をたらす 「て」A→Bの順番か原因を示す
夕光のなかにまぶしく花みちて しだれ桜は輝を垂る 第9歌集『形影』昭和45年(1970年) ゆうかげ かがやき A 光の中に花が満ちている B 桜の木が光をたらす 「て」A→Bの順番か原因を示す
……が、実際のAとBは同時に起こって 見えてるのでは???
夕光のなかにまぶしく花みちて しだれ桜は輝を垂る 第9歌集『形影』昭和45年(1970年) ゆうかげ かがやき この歌の「て」はひとつの風景 を分解している
夕光のなかにまぶしく花みちて しだれ桜は輝を垂る 第9歌集『形影』昭和45年(1970年) ゆうかげ かがやき 順序がないものに 順序を感じ取っている!
夕光のなかにまぶしく花みちて しだれ桜は輝を垂る 第9歌集『形影』昭和45年(1970年) ゆうかげ かがやき 短歌が切り取るのは景色では なく感覚
夕光のなかにまぶしく花みちて しだれ桜は輝を垂る 第9歌集『形影』昭和45年(1970年) ゆうかげ かがやき 事実よりもめちゃくちゃ光って 感じませんか?
夕光のなかにまぶしく花みちて しだれ桜は輝を垂る 第9歌集『形影』昭和45年(1970年) ゆうかげ かがやき 思い浮かべる光景は 一人ひとり違う
夕光のなかにまぶしく花みちて しだれ桜は輝を垂る 第9歌集『形影』昭和45年(1970年) ゆうかげ かがやき 感覚は事実から 引き起こされる
個人の感覚 事実
個人の感覚 事実 他者の感覚
個人の感覚 事実 短歌の射程距離 他者の感覚
個人の感覚 事実 短歌の射程距離 = 抽象度の高さ 名詞 動詞 助詞 (てにをは) 他者の感覚
夕光のなかにまぶしく花みちて しだれ桜は輝を垂る 第9歌集『形影』昭和45年(1970年) ゆうかげ かがやき 自分の“感覚”を捉えるのは難しい。 名詞3年・動詞5年・ てにをは10年と言われる。
(おしまい) もっと短歌について知りたくなったら # z-tanka へ!