継続性視点での開発生産性マネジメント / Managing Engineering Organization in a Strategic Way

2024年5月28日に開催された「ビジネス成長を止めてしまうペインはどこにある？投資した開発品質との向き合い方」（主催：ファインディ株式会社）における技術責任者 @sunaot の発表資料です。

https://developer-productivity-engineering.connpass.com/event/316486/

Transcript

1. 継続性視点での 開発生産性マネジメント 2024-05-28 開発生産性イベント powered by Findy Team+ 田辺 順 ( 株式会社エス・エム・エス)
2. 自己紹介 • 経歴 SIer ( 官公庁系) → 外資生保 → toC コミュニティ系サービスの開発内製化 → アスクル子会社で EC 立上げ → ディー・エヌ・エーで横断技術支援チーム立上げ、SET → エス・エム・エスで内製組織の立上げ
3. 自己紹介 レガシー改善 レガシー改善 レガシー改善 レガシー改善
4. 自己紹介 • エンジニアとして • ソフトウェア設計とテスト、基盤開発 • Rubyist Magazine 編集者など Ruby コミュニティでの活動 • OOP やシステム設計への傾倒や SET など品質への投資をこだわっ てやってきたキャリア
5. 自己紹介 • マネージャーとして • 社会人2 年目くらいから一人で働くかチームのリード役をしてきた • エス・エム・エスでは 2015 年の入社から開発組織のトップの役割 • 約25 人の組織からスタートし、現在は90 人程度へ成長 • いわゆる「ビジネスの強い会社」であった上場企業の開発を内製化し、 メガベンチャーやテックカンパニーから転職した人が活躍する会社へと 変化する過程をマネジメントとして推進してきた
6. 株式会社エス・エム・エスの紹介 • オフィシャルな解説の詳しくはウェブで • 理念 https://www.bm-sms.co.jp/company/philosophy/ • 私たちが大切にしていること https://www.bm-sms.co.jp/company/values/ • 私たちが目指していること https://www.bm-sms.co.jp/company/mission/
7. We’re hiring. • エンジニア採用情報 https://careers.bm-sms.co.jp/engineer • テックブログ https://tech.bm-sms.co.jp/ • サービスごとの採用情報 • カイポケ (https://careers.bm-sms.co.jp/engineer/kaipoke-renewal) • キャリア ( 医療領域) (https://careers.bm-sms.co.jp/engineer/medical-care-career) • シニアライフ (https://careers.bm-sms.co.jp/engineer/senior-life)
8. 今日の流れ • 開発組織における意味合いの解説 • 開発生産性 • マネジメント • 継続性 • 開発組織の戦略と開発生産性マネジメント • 開発生産性マネジメントのサイクル • ストラテジーのプロセス • プランニングのプロセス • モニタリングのプロセス • パフォーマンスを支えるケイパビリティ • EM の仕事としての戦略志向の組織マネジメント
9. 開発生産性
10. 開発生産性 これは正しい？ 　ソフトウェアデリバリーの開発生産性 ＝開発組織の生産性
11. 開発生産性 これは正しい？ 　開発生産性 ＝開発組織の生産性
12. It depends. ( 場合による)
13. 開発組織への期待や役割 といった位置付けによる
14. Lean と DevOps の科学 [Accelerate] で もデリバリーのパフォーマンスと組織 のパフォーマンスは別物として扱い、 Four Keys はデリバリーの指標として 使っている • ただし、ソフトウェアデリバリーのパ フォーマンスが高いことは、組織全体 のパフォーマンスへ影響を及ぼす ( 正 の相関を持つ) とも書かれている • この発表では、デリバリーのパフォー マンスについては扱わず、開発組織に とっての開発生産性とはなにかを議論 していく
15. マネジメント
16. マネジメント マネジメントの役割は一般に、 「組織のパフォーマンスを最大化すること」 と言われる
17. マネジメント 組織のパフォーマンスを分解する • ユーザーやビジネスへ生み出すフローの価値 • アセットやケイパビリティへ積み増す内部へ のストックの価値
18. マネジメント 今回の発表では開発生産性と呼ぶときには、 デリバリーの効率のことではなく、 開発組織の組織パフォーマンスを指す ( ことにする)
19. 継続性
20. 継続性 • 現代のエンジニアリングで継続性は非常に重 視されている • CI = Continuous Integration のように継続的 な活動であることの重要性・価値はあちこ ちに見られる • 継続するとはただ存続することではなく、成 長/ 前進をすること
21. 継続性 一方で、エンジニアリングの外にあると考えら れているのか、健全なエンジニアリングの継続 性を壊す別の要因については積極的に語られる ものを見ない それが、ビジネスの継続性
22. 継続性 健全な開発継続性は、ビジネスの継続性が前提 になる どれだけ開発環境や体制へ投資をしていても、 ビジネスが停滞するとその価値が発揮できなく なる ( ことがある。まれによくある)
23. 開発の継続性と ビジネスの継続性は 相互依存する両輪
24. 開発の継続性とビジネスの継続性は相互依存する両輪 • 開発の継続性が損なわれると？ • 一時的な成長を得ても長期的にはどこかでその無 理をした分を回収するターンがやってくる。その結 果、ビジネスの成長を緩めながら進む時期が来る • ビジネスの継続性が損なわれると？ • 投資した開発資産や組織能力が発揮する価値が弱 まる。長期的に停滞をすると、( 多くの場合は開発 体制の縮小などで) 開発の継続性を損なっていく
25. 開発の継続性とビジネスの継続性は相互依存する両輪 • デリバリーの開発生産性へいかに投資をしても、その 外側の要因で投資が活きなくなることがある。デリバ リーの効率だけでなく、その先で生んでいる価値と継 続性への寄与を同時に見ていく必要がある • 急な成長かゆるやかで継続的な成長か、置かれた状況 で選ぶものは違ってくる。自身に合った成長モデルの 場で働くことも大切 • 私は急成長急停滞のモデルは自身の開発投資のスタイ ルと合わなかった
26. 開発組織の戦略と 開発生産性マネジメント
27. 開発生産性のイベントなのでこじつけ たところがあるが、組織のパフォーマ ンスと組織マネジメントのステップ、 の解説 おそらく正しいタイトルは「戦略志向 の組織マネジメント」
28. とくに 「戦略志向」とはどういうことかと、 そのための具体的な仕事のステップを 中心に説明する 他はオマケ
29. 閑話休題
30. 開発生産性マネジメントのサイクル 開発生産性マネジメントのサイクルは、 • ストラテジー • プランニング • モニタリング で 1 セット ( 戦略・計画・観測でもよいが、一般的な用法と区別するために この発表中は固有のプロセスについて上記のカタカナで呼ぶ)
31. 開発生産性マネジメントのサイクル • ストラテジー 長期の戦略を持つこと ( 目標、時期、イシュー、アプローチ、 チームとプロセス)
32. 開発生産性マネジメントのサイクル • プランニング 戦略に基づく「開発生産性が高い」とはどう いう状態かを定義すること
33. 開発生産性マネジメントのサイクル • モニタリング 定性・定量での指標に対して、計測と改善の サイクルを回すこと
34. ストラテジーのプロセス
35. 開発生産性マネジメントのサイクル • ストラテジー 長期の戦略を持つこと ( 目標、時期、イシュー、アプローチ、 チームとプロセス)
36. ストラテジーのプロセス 一般に「組織のパフォーマンスが高い状態」は 挙げることができるが、戦略志向の組織マネジ メントではビジネスドメインごとに組織のパ フォーマンスが高い状態の構造を設定し、戦略 を通して組織マネジメントを実現していく
37. ストラテジーのプロセス 普通の組織マネジメント 一般に組織のパフォーマンスが高い状態に基づい て組織マネジメントの方針をつくる 戦略志向の組織マネジメント ビジネスドメインごとに組織のパフォーマンスが 高い状態の構造を設定し、戦略を通して組織マネジ メントを実現していく
38. 戦略志向の組織マネジメントではビジネスドメインごとに組織パフォーマンスの高い状態の構造を設定して、 そこへ向けて組織マネジメントを設計していく 開発組織の最初の仕事は自分たちの仕事のパ フォーマンスが出ている状態を定義して関係す る人へ発信すること それがどのように事業構造とつながっているか を説明可能にすること
39. BtoB SaaS カイポケのレセプト開発での話 当初レセプトの開発は一部の有識者のもので、 重視されていなかった 実際は開発のボトルネックがレセプトの開発能 力にあり、事業拡大をしたいのなら真っ先にレ セプトの開発能力を拡張する必要があった
40. BtoB SaaS カイポケのレセプト開発での話 実際は開発のボトルネックがレセプトの開発能 力にあり、 この部分がビジネスドメイン固有のパフォーマンス制約だった
41. ストラテジーのプロセス で重要なのはドメインを 知りにいくこと
42. そのエンジニアリング上の意 味を解釈して、組織への影響へ 変換し方針へ反映させること
43. そうしてできたストラテジーは ドメイン固有の要素を備えた特化 した解になり、結果的に戦略性の 高い優れたコンセプトになる
44. ストラテジーの作り方 • どのような状況か • ドメイン • その他の要素。チームの状況、能力、どのような人がいる か、なにを求めているか、会社の MVV や事業戦略、プロダク ト戦略などなど • その中でどのような状態を目指すのか • その過程でのイシューはなにか • イシューに対して実現までの過程ではなにを重視する必要があ るか ( アプローチ) • そのためのチームとプロセスはどうあるべきか
45. ストラテジーの作り方 • どのような状況か • その中でどのような状態を目指すのか • その過程でのイシューはなにか これらの一連の検討の中で、技術アセットへの影響評価や その活用をどう見込むかを考える際にエンジニアリングの能力が必要 “ エンジニアリング” マネージャーである価値の見せ所
46. プランニングのプロセス
47. 開発生産性マネジメントのサイクル • プランニング 戦略に基づく「開発生産性が高い」とはどう いう状態かを定義すること
48. プランニングのプロセス ストラテジーで多くの構造を明らかにしている 場合、プランニングはアプローチやチームとプ ロセスを検討する過程で考えていく
49. モニタリングのプロセス
50. モニタリングのプロセス アプローチやチームとプロセスのプランから、 組織のコンディションから健全性を測り状況把 握をするための要素を決めていく EM として働いている場合、普段から状況の良 し悪しを判断するニオイを色々持っているは ず。そのうち、そのときの組織でとくに意識的 に見ていったほうがよいものを言語化していく
51. パフォーマンスを支える ケイパビリティ
52. パフォーマンスを支えるケイパビリティ パフォーマンスとは、 • 戦略進捗 • そこへつながるアウトプット • その幅を持たせるケイパビリティ拡大
53. パフォーマンスを支えるケイパビリティ ケイパビリティは、具体の例を挙げていくことは理解の ために重要 一方、「ケイパビリティではないもの」を挙げて絞るこ とはさほど意味はなく、その組織にとって特定の活動は ケイパビリティへの貢献とみなせるかについての文脈評 価をしていくことが大事 ( なにが組織の成長へ意味があるか、それはなぜかの理解 を組織として深めていくことが組織の成長へつながる)
54. EM の仕事としての 戦略志向の組織マネジメント
55. EM の仕事としての戦略志向の組織マネジメント EM としては、 • 自分の組織のケイパビリティの構成要素とドメイン の関係性 • その長期的なパフォーマンスへの相関のメカニズム を理解する そして、あらゆる場面でそれに基づく意思決定をして いくことが、戦略志向の組織マネジメントと組織の構 築につながる
56. EM の仕事としての戦略志向の組織マネジメント プロダクト開発において将来的に実現したいこ ととそのアプローチ、必要なケイパビリティが 見えてくると、そこから逆算して組織のあり方 を考えていくことができる すると、採用育成なども含んだ組織の戦略づく りへつながってくる