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統計的因果探索: セミパラメトリックアプローチを中心に

Shohei SHIMIZU
December 16, 2021

統計的因果探索: セミパラメトリックアプローチを中心に

電子情報通信学会 パターン認識・メディア理解(PRMU)研究会

Shohei SHIMIZU

December 16, 2021
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  1. 統計的因果探索とは • データを用いて因果グラフを推測するための方法論 2 Maeda and Shimizu (2020) 仮定 推測

    • 関数形 • 分布 • 未観測共通原因の有無 • 非巡回 or 巡回 など データ 因果グラフ
  2. 因果探索の適用例: ターゲットの原因候補の探索 https://www.shimizulab.org/lingam/lingampapers/applications-and-tailor-made-methods • 生命科学 (Maathuis et al., 2010) •

    医学 (Kotoku et al., 2020) • 化学 (Campomanes et al., 2014) • 材料 (Nelson et al., 2021) • 気候学 (Liu et al., 2020) • 経済学 (Moneta et al., 2013) • 心理学 (von Eye et al., 2012) • 政策 (高山ら, 2021) • ネットワークデータ (Jarry et al., 2021) 3 Kotoku et al. (2020) Moneta et al. (2013) OpInc.gr(t) Empl.gr(t) Sales.gr(t) R&D.gr(t) Empl.gr(t+1) Sales.gr(t+1) R&D(.grt+1) OpInc.gr(t+1) Empl.gr(t+2) Sales.gr(t+2) R&D.gr(t+2) OpInc.gr(t+2)
  3. 相関があるからと言って 因果関係があるとは限らない 5 Messerli, (2012), New England Journal of Medicine

    ! " # $ 賞 受 賞 者 ( 数 相関係数: 0.79 P値 < 0.0001 チョコレート消費量
  4. 相関関係と因果関係のギャップ 6 チョコ 賞 ? チョコ 賞 or GDP GDP

    チョコ 賞 or GDP 相関係数 0.79 P値 < 0.0001 複数の因果関係が 同じ相関関係を与える 賞 未観測共通原因 未観測共通原因 未観測共通原因 ギャップ チョコ
  5. ランダム化実験しないとき • 重症な患者に投薬する傾向 8 薬 治癒の 割合 治癒の 割合 なし

    などなどたくさん ≠? 重症多め 少なめ 投薬の有無以外にも重症度が違う: 交絡がある
  6. ワクチンの効果推定のために 共通原因で調整 (Dagan et al., 2020) • ワクチン接種とCovid-19の感染(or 重症化)の共通原因となりそうな変数で調整 –

    年齢、性別、セクター(一般ユダヤ人、アラブ人、超正統派ユダヤ人) – 居住地域 – 過去5年間のインフルエンザワクチン接種歴 – 妊娠 – 重症化の危険因子として特定されている併存疾患の合計数 11 ワクチン接種 Covid-19 共通原因 年齢 性別 セクター 居住地域 インフル 接種歴 妊娠 併存疾患
  7. どの変数で調整? • 構造的因果モデルで領域知識・仮定を表現 (Pearl, 2001) • 非巡回有向グラフであれば、 十分条件: 𝑥の親すべて, 𝑥の先祖すべて等

    – バックドア基準など 12 構造方程式 因果グラフ 𝑦 = 𝑓! (𝑥, 𝑧, 𝑒! ) 𝑥 = 𝑓"(𝑧, 𝑒") x y z w u v q 薬 ! 治癒 " 重症度 # 共通原因 !! !"
  8. 効果の分解と公平性 • 直接効果: 性別は女から男に変えるが、 適性は変えないとき、 雇用される確率はどのくらい変わるか? – これが大きいと、性差別がある • z

    (雇用)を機械学習の予測に置き換え • 「公平」な機械学習モデルの構築 (Kusner et al., 2017) – 因果モデルに基づき公平性を定義 15 x (性別) y (適性) z (雇用) (Pearl, 2001) 公平にしたい変数Aの非子孫を説明変数にすればよい
  9. 原因の確率(Pearl, 1999; 黒木, 2014) と説明性 • 必要性の確率 – 現実には放射能を浴びて疾患を発症した対象者が 放射能を浴びなかったならば疾患を発症しなかったであろう確率

    • 十分性の確率 – 現実には放射能を浴びず疾患を発症しなかった対象者が 放射能を浴びたならば疾患を発症したであろう確率 • 必要十分性の確率 – 「放射能を浴びなかったならば疾患を発症しなかったであろうし、 放射能を浴びたならば疾患を発症したであろう」確率 • 放射能が疾患の必要かつ十分な原因である程度 • 高いほど、実際の原因(actual cause)と考える • 放射能: ある説明変数, 疾患: 予測結果へ置き換え (Galhotra et al., 2021) 16 16 Galhotra et al. (2021)
  10. 機械学習のための因果推論でも要 (かなめ) • 公平性 (Kusner et al., 2017) • 説明性

    – 原因の確率 (Galhotra et al., 2021) – 予測メカニズム解析 (Blobaum et al., 2017; Sani et al., 2020) • 個体レベルの最適介入 (Kiritoshi et al., 2021) • 転移学習 (Zhang et al., 2013; Zhang et al., 2020; Bareinboim et al., 2016) • 科学的知識の取り込み (Teshima et al., 2021) • 上記のさまざまな因果に関するクエリーに答えられるかを判 定するために因果グラフが必要 17
  11. フレームワーク • 構造的因果モデル (Pearl, 2001) • 因果モデルに仮定をおき、 その中でデータとつじつまの合うモデルを探す – 典型例1:

    • 非巡回有向グラフ • 未観測共通原因なし(すべて観測されている) – 典型例2: • 非巡回有向グラフ • 未観測共通原因あり 19 x3 x1 e3 e1 x2 e2 𝑥! = 𝑓! (𝑥! の親, 𝑒! ) 誤差変数
  12. 拡張など • 潜在(未観測)共通原因を含めた同値類 (Spirtes et al., 1995) • 時間情報の利用 (Malinsky

    & Spirtes, 2018) • 巡回グラフを含めた同値類 (Richardson, 1996) 21 x y f w z x y w z x y f1 w z f2 F. Eberhardt CRM Workshop 2016より (Malinsky and Spirtes, 2018)
  13. 具体的には、非ガウス性と独立性をどう使うか? 23 x1 x2 e1 e2 正しいモデル 結果x2を原因x1に回帰 原因x1を結果x2に回帰 2

    1 21 2 1 1 1 2 2 ) 1 ( 2 ) var( ) , cov( e x b x x x x x x r = - = - = は独立 と ) 1 ( 2 1 1 ) ( r e x = 残差 ( ) ) var( var ) var( ) , cov( 1 ) var( ) , cov( 2 1 21 1 2 2 1 21 2 2 2 1 1 ) 2 ( 1 x x b e x x x b x x x x x r - þ ý ü î í ì - = - = は と ) 2 ( 1 2 1 21 2 ) ( r e e b x + = 2 e 従属 ガウスだと 無相関=独立 𝑥! = 𝑒! 𝑥" = 𝑏"! 𝑥! + 𝑒" 𝑏!" ≠ 0
  14. DirectLiNGAMアルゴリズム (Shimizu et al., 2011) • 潜在共通原因なし (すべて観測されている) • 回帰分析と独立性の評価を繰り返す

    • Guaranteed to converge in finite steps (変数の数) • p>nの場合への拡張 (Wang & Drton, 2020) • 並列化+GPUで高速化 (Shahbazinia et al., 2021) • 数百から数千変数くらい 24 関連論文: https://www.shimizulab.org/lingam
  15. 推測された因果グラフを評価 統計的信頼性評価 • 有向道や有向辺のブートストラップ確率 – 例えば、閾値0.05を越えるものを解釈 – LiNGAM Python package

    モデル仮定の評価 (崩れの検出) • 誤差(残差)の独立性評価 – 例えば、HSIC (Gretton et al., 2005) • マルコフ境界による予測の良さで評価 (Biza et al., 2020) • 複数のデータセットでの結果を比較 • 領域知識による評価 25 Wikipediaより x3 x1 … … 総合効果: 20.9 x3 x1 x2 x3 x1 46% 10%
  16. 他の識別可能なモデル • 非線形 + “加法” 誤差 (Hoyer et al., 2008;

    Zhang et al., 2009; Peters et al., 2014) • 𝑥# = 𝑓#(par(𝑥#)) + 𝑒# • 𝑥# = 𝑔# $"(𝑓#(par(𝑥#)) + 𝑒#) • 離散: ポワソンDAGモデルと拡張 (Park+18JMLR) • 離散と連続の混在: LiNGAM + ロジスティック型モデル (切片に条件必要) (Wei et al. 2018) • 時系列モデル (Hyvarinen et al, 2010) • 巡回モデル(Lacerda et al., 2008) は識別可能でない場合も 26
  17. 非線形回帰して説明変数と残差が独立か調べる 27 x1 x2 e1 e2 正しいモデル 結果𝑥# を原因𝑥$ に非線形回帰

    原因𝑥$ を結果𝑥# に非線形回帰 説明変数𝑥! (= 𝑒! )と残差は独立 ガウスだと 無相関=独立 𝑥! = 𝑒! 𝑥" = 𝑓(𝑥! ) + 𝑒" 𝑏!" ≠ 0 説明変数𝑥" と残差は従属
  18. 潜在共通原因ありの場合 • 潜在共通原因のあるペアがどれか (Maeda & Shimizu, 2020) • 潜在共通原因のあるペアの間を推測 (Hoyer

    et al. 2008; Salehkaleybar et al., 2020) 28 𝑥# 𝑥$ 𝑓$ 𝑥% Original 出力 𝑥& 𝑥# 𝑥$ 𝑥% 𝑥& 𝑓# 𝑥# 𝑥$ 𝑓$ 𝑒$ 𝑒# 𝑏!" 𝜆!" 𝜆"" 𝑥# 𝑥$ 𝑓$ 𝑒$ 𝑒# 𝑏"! 𝜆!" 𝜆"" or
  19. 潜在因子間の因果探索 (Shimizu et al., 2007) • Causal representationと呼ばれることも (Adams et

    al., 2021) • 因果グラフは不変な特徴という主張 (Schölkopf et al., 2021) • 目的関数 = 尤度+スパース正則化項 s.t. DAG制約 29 𝒇 = 𝐵𝒇+𝝐 𝒙 = 𝐺𝒇+𝒆 DAGである ⟺ ℎ 𝐵 = tr 𝑒'∘' −変数の数=0 (Zheng et al., 2018)
  20. 他の話題: 変数をどうとるか • マクロ変数とミクロ変数 – 国レベルと個人レベル – 結果は一致するのか • 領域知識の利用

    – (論文)テキストデータ等から抽出 • より一般に、データによる支援は可能? – 介入によるアルゴリズム (Chalupka et al. 2017) 30 Messerli, (2012) Chalupka et al. (2017)
  21. まとめ • 統計的因果推論: 因果クエリーに答えるための方法論 – 仮定+データ+因果クエリー -> 回答 (ができれば) •

    因果クエリーを式で表す • 因果クエリーに回答可能か判定 (識別性) • 実際に推定 • 仮定の崩れの検出方法 • 識別性を重視 (推定の技術は機械学習と共通) 32 仮定 領域知識 識別性 推定 評価 データ 実験・調査の 計画に生かす 変数・データの追加/仮定の変更 分析者 文献