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検索レコメンド開発における戦略思考とDMMTVにおける事例紹介

 検索レコメンド開発における戦略思考とDMMTVにおける事例紹介

検索レコメンドの開発によって、事業やユーザー体験への貢献を実感できている方はどれほどいるでしょうか。そもそも検索レコメンドの役割を、どのように定義しているでしょうか。そして、それを通じて事業価値を最大化するための戦略は、どれほど明確に描かれているでしょうか。実際には、測定しやすい一方で収益やユーザー・顧客満足と必ずしも整合しない指標の良し悪しに一喜一憂していたりやモデル学習の方法が雰囲気で決まってしまっている現場が多いのではないでしょうか。そのような状態では、検索レコメンドによる事業貢献はほとんど運任せになってしまいます。

本発表では、検索レコメンドによる効率的な事業貢献を達成する上での戦略思考の重要性を論じ、事業貢献戦略を練るための思考回路をまとめたフレームワークを提示します。また、DMMの検索レコメンドチームと連携して進めているDMMTVにおける戦略策定の取り組みについて簡単にご紹介します。

https://dmm.connpass.com/event/352763/

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usaito

June 12, 2025
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Transcript

  1. ブログで紹介した事業貢献戦略フレームワーク 
 ① KGIと貢献目標を設定する 
 ② KGIを重要KPIに分解する 
 ③ ボトルネックを特定する

    
 ④ ボトルネック 解消度を 
 測るため 評価基準を確立する 
 ⑤ ボトルネックを狙い撃ちする 
 モデル改善を行う 
 • 工程を飛 してしまうと、 
 事業貢献が“運任せ”に 
 
 
 • 実際に事業貢献について 
 悩んでいる現場 多くで、 
 戦略思考が浸透していない 

  2. ① KGIと貢献目標を設定する 
 ② KGIを重要KPIに分解する 
 ④ ボトルネック 解消度を 


    測るため 評価基準を確立する 
 ⑤ ボトルネックを狙い撃ちする 
 モデル改善を行う 
 ③ ボトルネックを特定する 
 ブログで紹介した事業貢献戦略フレームワーク 

  3. 事業貢献目標 設定 
 • KGIを定める = チームや推薦システム 役割・存在意義を定める 
 


    • ミッション達成 ためにチームや推薦が果たすべき役割 明確か? 
 ◦ 収益 最大化?
 ◦ ユーザー・顧客満足 最大化?
 ◦ ユーザー・顧客不満 最小化?
 • これら 事業貢献 達成確率を上げるために有効な が戦略思考 
 
 • チーム 役割や事業貢献が具体的に定義されていない場合、 
 それを達成することも主張することもできるわけがない 
 ◦ 貢献目標が定まっていない場合、スタートラインにも立てていない

  4. 事業貢献戦略フレームワーク 
 ① KGIと貢献目標を設定する 
 ② KGIを重要KPIに分解する 
 ③ ボトルネックを特定する

    
 ④ ボトルネック 解消度を 
 測るため 評価基準を確立する 
 ⑤ ボトルネックを狙い撃ちする 
 モデル改善を行う 
 チームや推薦モデル 
 存在意義を定める 

  5. KPI分解とボトルネック特定 
 ゴール:収益最大化・ユーザー顧客満足 最大化 
 スタート:検索レコメンドモデル 学習・評価 
 長い道 りで、経路

    無数に存在 
 
 人員も時間も限られているため、 
 可能な限り効率的な経路を選び取りたい 
 
 にもかかわらず、“考えうる中で最も効率的 
 な経路”を特定せずに走り始めてしまう現場が多い 

  6. 身近な戦略思考 
 ゴール:北海道根室市 (齋藤 出身地) 
 懇親会後22時スタート:六本木一丁目駅 
 長い道 りで、経路

    無数に存在 
 
 可能な限り効率的な(最 ) 
 経路を選び取りたい 
 
 こ 時、最初に何をしますか? 
 最も早くゴールした人 1000万円獲得! 

  7. 身近な戦略思考 
 ゴール:北海道根室市 (齋藤 出身地) 
 こ 時、最初に何をしますか? 
 おそらくほとんど

    方が、GoogleMap等で、 
 ど 経路が皆さんにとって最適と思われる経路 
 を特定する ず (たとえ完璧に遂行できないとしても) 
 懇親会後22時スタート:六本木一丁目駅 
 最も早くゴールした人 1000万円獲得! 

  8. KPI分解とボトルネック特定 
 長い道 りで、経路 無数に存在 
 
 人員も時間も限られているなか、 
 可能な限り効率的な経路を選び取りたい

    
 GoogleMap等で行程を決めてから 
 動き始める と、同じことができているか? 
 ゴール:収益最大化・ユーザー顧客満足 最大化 
 スタート:検索レコメンドモデル 学習・評価 

  9. 事業貢献戦略フレームワーク 
 ① KGIと貢献目標を設定する 
 ② KGIを重要KPIに分解する 
 ③ ボトルネックを特定する

    
 ④ ボトルネック 解消度を 
 測るため 評価基準を確立する 
 ⑤ ボトルネックを狙い撃ちする 
 モデル改善を行う 
 チームや推薦モデル 
 存在意義を定める 
 事業貢献を達成するため 
 効率的な経路を見つける 

  10. ブログで用いた例 
 総視聴時間
 無料ユーザー平均
 有料ユーザー平均
 全ユーザー平均
 Aモデル群
 10分
 22.2分
 21分


    Bモデル群
 20分
 20分
 20分
 Aモデル vs Bモデル テストにおいて以下 結果が得られた
 こ 時、どちら モデルを採用すべき??? 
 全ユーザー中、無料ユーザーが1割、有料ユーザーが9割を占める想定 

  11. ブログで用いた例 
 総視聴時間
 無料ユーザー平均
 有料ユーザー平均
 全ユーザー平均
 Aモデル群
 10分
 22.2分
 21分


    Bモデル群
 20分
 20分
 20分
 Aモデル vs Bモデル テストにおいて以下 結果が得られた
 こ 時、どちら モデルを採用すべき??? 
 どういった戦略 もとで行われたABテストであるかによる 

  12. ブログで用いた例 
 総視聴時間*
 無料ユーザー平均
 有料ユーザー平均
 全ユーザー平均
 Aモデル群
 10分
 22.2分
 21分


    Bモデル群
 20分
 20分
 20分
 • 無料ユーザー 体験改善を通じた事業貢献を目指しているならBモデル 
 • 有料ユーザー 体験改善を通じた事業貢献を目指しているならAモデル 
 
 • ABテスト 結果が出てから議論している ようで 遅い 
 ◦ => そもそもレコメンドモデル 学習時点で意図がない
 • *総視聴時間 改善に意味があるか否か かなり場合による で注意

  13. 新たなフレームワークに対する第一印象 ? 
 ① KGIと貢献目標を設定する 
 ② KGIを重要KPIに分解する 
 ③

    ボトルネックを特定する 
 ④ ボトルネック 解消度を 
 測るため 評価基準を確立する 
 ⑤ ボトルネックを狙い撃ちする 
 モデル改善を行う 
 チームや推薦モデル 存在意義が 
 明確に定まっているか? 
 事業貢献達成をど ような 
 経路で達成するか定まっているか? 
 事業貢献や達成経路に合わせて 
 ABテスト運用やモデル学習方法 
 を調整しているか? 

  14. DMM 推薦システムにおけるフレームワーク 活用 
 月額550円 DMMプレミアム会員 に登録することでアニメ約5,900作 品を中心に19万本以上(※) 映 像作品や、漫画、2.5次元、声優に

    フォーカスしたオリジナル番組な ど多彩なエンタメコンテンツを楽し めるサブスクリプション動画配信 サービス。
 
 新作アニメ 国内トップクラス 作 品数を配信している他、DMM 他 サービスと連携したエンタメ体験を 提供。
 ※2024年4月時点
 約1年半前から、因果関連 分析や戦略策定に関して連携 

  15. DMM における事業貢献戦略フレームワーク 適用 
 ① KGIと貢献目標を設定する 
 ② KGIを重要KPIに分解する 


    ③ ボトルネックを特定する 
 ④ ボトルネック 解消度を 
 測るため 評価基準を確立する 
 ⑤ ボトルネックを狙い撃ちする 
 モデル改善を行う 

  16. DMM レコメンドモデル開発におけるKGI設定 
 KGI:年度新規獲得売上 
 各年度に新規入会した会員
 による累計総課金額
 24年度〇〇万円 
 25年度

    万円 (10%改善など) 
 • 検索レコメンド 役割 = 収益最大化 
 ◦ 今後 状況次第で、役割をユーザー満足に切り替える可能性 ある
 
 • 各年度発生売上をKGIとしてしまうと、各年度 貢献と 乖離が生じる 
 ◦ 25年度4月発生売上 、ほとんど24年度 努力によるも 
 
 • よって、『年間新規獲得売上(そ 年に新規登録したユーザー 合計L ) 』
 をチーム内KGIとして設定する がわかりやすいと我々 考えた

  17. 事業貢献戦略フレームワーク 
 ① KGIと貢献目標を設定する 
 ② KGIを重要KPIに分解する 
 ③ ボトルネックを特定する

    
 ④ ボトルネック 解消度を 
 測るため 評価基準を確立する 
 ⑤ ボトルネックを狙い撃ちする 
 モデル改善を行う 
 年度新規獲得売上 

  18. DMM レコメンドモデル開発におけるKPI分解 
 KGI:年度新規獲得売上 
 ① 
 ③ 
 ②

    
 皆さんなら、どういったKPI分解を考えるでしょうか? 
 昨年度比10%改善 
 スタート:検索レコメンドモデル 学習・評価 

  19. DMM レコメンドモデル開発におけるKPI分解 
 KGI:年度新規獲得売上 
 ①新規獲得会員数 
 ③有料会員L 
 ②有料転換率

    
 新規無料会員を
 どれだけ連れて来れるか
 新規無料会員 
 何%を有料会員にできるか
 1有料会員あたり
 累計いくら課金するか
 昨年度比10%改善 

  20. DMM レコメンドモデル開発におけるKPI分解 
 KGI:年度新規獲得売上 
 ①新規獲得会員数 
 ③有料会員L 
 ②有料転換率

    
 新規無料会員を
 どれだけ連れて来れるか
 新規無料会員 
 何%を有料会員にできるか
 1有料会員あたり
 累計いくら課金するか
 検索レコメンドによる 
 変動可能性なし 
 検索レコメンドによる 
 変動可能性あり 
 昨年度比10%改善 

  21. 事業貢献戦略フレームワーク 
 ① KGIと貢献目標を設定する 
 ② KGIを重要KPIに分解する 
 ③ ボトルネックを特定する

    
 ④ ボトルネック 解消度を 
 測るため 評価基準を確立する 
 ⑤ ボトルネックを狙い撃ちする 
 モデル改善を行う 
 年度新規獲得売上 
 ②有料転換率 vs ③有料会員L 

  22. DMM レコメンドモデル開発におけるボトルネック特定 
 ③有料会員L 
 ②有料転換率 
 新規無料会員 
 何%を有料会員にできるか


    1有料会員あたり 
 累計いくら課金するか
 • ②と③をそれぞれどれほど改善することで、KGI目標を達成するつもり? 
 • ②と③ どちらに大きな改善余地が存在するかによって、 
 モデル 学習方法や評価方法が180度異なってくる 
 • 完璧に遂行するためで なく、運任せよりも高確率 貢献を達成するため 
 KGI:年度新規獲得売上 
 昨年度比10%改善 

  23. • 無料期間で離脱:50万人
 • 1ヶ月以上利用
 6ヶ月未満で離脱:20万人
 • 6ヶ月以上利用:30万人
 • 無料期間離脱率:50%
 •

    1ヶ月以上利用
 6ヶ月未満離脱率:40%
 • 6ヶ月以上利用
 7ヶ月目離脱率:10%
 サブスクサービスにおけるボトルネック特定 例 
 昨年新規加入会員 構成比率 
 (あくまで数値例)
 現状 各種離脱率 

  24. 各種会員 平均総課金額 
 • (無料期間で 離脱を含む)全ユーザー平均:2000円 (△2000円) 
 • 1ヶ月以上利用ユーザー平均:6000円

    (△4000円) 
 • 6ヶ月以上利用ユーザー平均:9000円 (△3000円) 
 • 無料期間で離脱:50万人
 • 1ヶ月以上利用
 6ヶ月未満で離脱:20万人
 • 6ヶ月以上利用:30万人
 • 無料期間離脱率:50%
 • 1ヶ月以上利用
 6ヶ月未満離脱率:40%
 • 6ヶ月以上利用
 7ヶ月目離脱率:10%
 サブスクサービスにおけるボトルネック特定 例 
 (あくまで数値例)
 現状 各種離脱率 
 昨年新規加入会員 構成比率 

  25. サブスクサービスにおけるボトルネック特定 例 
 ユーザー変容 
 母集団
 現状 離脱率 
 単位変容あたり

    
 KGI増分 
 無料離脱会員 有料転換
 50万人
 50%
 4000円
 有料会員 早期離脱防止
 20万人
 40%
 3000円
 これまでに得た集計情報をまとめる
 (あくまで数値例)

  26. サブスクサービスにおけるボトルネック特定 例 
 ユーザー変容 
 母集団
 離脱率 改善 
 1変容あたり

    KGI増分 
 KGI増加量 
 無料離脱会員 有料転換
 50万人
 50% => 45%
 4000円
 10,000万円 
 有料会員 早期離脱防止
 20万人
 40% => 36%
 3000円
 3,200万円
 仮に各種離脱率を現状から10%改善した場合
 改善 難易度を揃えたとき、無料離脱会員 転換率上昇が最大 KGI改善 

  27. 事業貢献戦略フレームワーク 
 ① KGIと貢献目標を設定する 
 ② KGIを重要KPIに分解する 
 ③ ボトルネックを特定する

    
 ④ ボトルネック 解消度を 
 測るため 評価基準を確立する 
 ⑤ ボトルネックを狙い撃ちする 
 モデル改善を行う 
 「②有料転換率」に大きな改善余地 
 年度新規獲得売上 
 ②有料転換率 vs ③有料会員L 

  28. ボトルネックを踏まえたABテスト運用 
 KGI:年度新規獲得売上 
 ③有料会員L 
 ②有料転換率 
 10%改善したい 


    昨年度比10%改善 
 現状維持でよい 
 皆さんなら、ど ようにABテストを運用しますか? 

  29. ボトルネックを踏まえたABテスト運用 
 有料会員 離脱率をガードレール指標(足切り)に設定した上で、
 無料会員における 以下 指標を主要 and 先行指標 に設定


    KPI② 有料転換率 
 お気に入り登録数
 総視聴時間
 視聴日数
 主要指標
 先行指標
 などなど・・
 • 先行指標についても、無料会員について み比較 
 • 年度が変わって戦略が変われ 、必要に応じてABテスト 運用も変更 

  30. 策定した戦略に基づいたモデル学習 
 • 本日詳細に 踏み込まない 
 
 • しかしこれまでに策定した戦略を踏まえると、 


    推薦モデル 学習方法が( じめて)見えてくる 
 全ユーザーに対し均等 に視聴時間を改善 するモデル学習 無料体験中ユーザー に特化して お気に入り登録数や 
 視聴時間など 重要先行指標 をバランスよく改善するモデル学習 よくある“雰囲気ドリブン”な学習 戦略策定後 モデル学習
  31. • 『検索レコメンドによる事業貢献フレームワーク』をご紹介 
 ◦ 事業貢献達成確率が向上したり、失敗したとき 役割変更判断が行いやすくなる 
 ◦ 工程を飛 すと、“雰囲気ドリブン”や“運任せ”

    モデル開発・評価になってしまう 
 ◦ 今日 話を聞いた上で、フレームワークに乗っかるか否か 皆さん次第 
 
 • DMM におけるフレームワーク活用事例をご紹介 
 ◦ 今回 発表で 、先行指標 特定やモデル学習方法 詳細に 踏み込まず... 
 ◦ 次回以降 勉強会やDMMブログ、書籍等にてさらなる詳細を順次ご紹介予定 
 まとめ
 ご清聴いただきありがとうございました