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Eigenzeiτ ─ 人工環世界音響生成
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uyupun
October 20, 2026
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Eigenzeiτ ─ 人工環世界音響生成
uyupun
October 20, 2026
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Transcript
Eigenzeiτ ─ 人工環世界音響生成 Oct 2026 Kazukichi 1
出発点 ブース出展では、∂hostsをはじめ、前景化しやすい視覚表現がすでに充実している そこで、背景化しやすい表現が必要になる その代表的なものとして、音響表現に着目する ∂hostsを前景のA面とし、本作を背景のB面として位置付けたい AIの環境化という主題の表現において、∂hostsからはこぼれ落ちたものがあ ると感じている 2
補足: AIの環境化 (∂hostsより) 自然は、生命や気象といった現象を絶えず生成してきた そこにAIというレイヤーが合流し、生成の範囲が拡張される 人間はそのアウトプットをキュレーションし、アウトカムへと繋げる側に回る 3
アンビエントからジェネラティブへ 背景化しやすい音響の代表として、アンビエントミュージックがある ただし、その多くは作品から鑑賞者へ一方向に投げかける開ループである それでは、その場に来なければ体験できないものにならない ∂hostsと共有する主題である、AIの環境化も表現できない そこで、作品と鑑賞者が相互にフィードバックし合う、閉ループのジェネラティブ ミュージックに目を向ける しかし、それもすでに数多く試みられている 本作もジェネラティブミュージックの一種だが、単にそうするだけでは手法 として新規性がない
4
補足: ブライアン・イーノ イギリスの音楽家(1948-) 1978年の『Ambient 1: Music for Airports』で、「無視できると同時に興味深い」ア ンビエントミュージックを提唱 その後、規則を与えたシステムが音楽を生み続けるジェネラティブミュージック
へ展開 2008年、ピーター・チルヴァースとのアプリ『Bloom』で、鑑賞者の操作に応答 する閉ループのジェネラティブミュージックも実現 5
ジョン・ケージの系譜 そこで、ジェネラティブミュージックをジョン・ケージの系譜に位置付けられな いだろうか ジョン・ケージ: アメリカの作曲家(1912-1992) ケージの「人は何を音楽として認識するか」という視点は、自分の作家性と相性 が良い ∂hostsは認知を扱う作品だった AIの環境化を同じく掲げる本作でも、認知について考えることは必然である 6
4′33″とその後継作 4′33″ (1952): 演奏者は音を出さず、環境音が音楽として聴かれる 0′00″ (1962): 規律ある行為を最大限に増幅し、演奏とする One³ (1989): 会場の音響特性そのものが作品になる
7
One³の次 One³の次に位置し、ジェネラティブミュージックとしても成立するものは何か One³は、会場という環境の音響を作品にした AIが環境化した今、AIが出力する音響もまた環境の音響になる ただし、AIと鑑賞者が単に相互作用するだけでは、既存のジェネラティブミュー ジックと変わらない そこで、ユクスキュルの環世界という概念を導入する 8
補足: ユクスキュルの環世界 ヤーコプ・フォン・ユクスキュル: エストニア出身のドイツの生物学者(18641944) 生物はそれぞれの知覚と行為に応じた、固有の意味世界である環世界を生きる 環世界は、知覚と作用が循環する「機能環」によって成り立つ マダニの世界は、哺乳類の酪酸の匂い・体温・体毛の感触というわずかな刺 激だけで成り立つ 同じ環境にいても、何を知覚し何が意味を持つかは主体ごとに異なる 9
AIの環世界 AIが、人間には知覚できない情報を含むセンサ値を活用し、独自に解釈して音響 を出力する その出力と鑑賞者の反応の一部が、再び入力に取り込まれる 知覚と作用が循環する、AIの機能環となる 人間の事情ではなく、AIの事情、つまり環世界によって音響が生み出される それはジェネラティブミュージックの枠組みでも意味を持ち、One³の次としても 適切ではないか 10
本作の関心 ∂hostsは、メタ幽霊文字という人間寄りの形式で出力した 本作は、AIの環世界に従うAI寄りの形式で出力する 人間に合わせて最適化されていない出力は、人間にとって毒物かもしれない 人は様々な毒物を、あの手この手で調理し、食べられるものにしてきた 同じように、人間の認知はその音響にどう適応し、チューニングできるのか そのとき、その音響を音楽として聴くことはできるのか 11
期待する音響 どのような音響が生まれるかは、究極的には分からない それでも、旋律や和声ではなく、周波数・パルス・ノイズによる構造物として現 れてほしい 旋律や和声は、人間の事情に合わせた形式である イメージは、サイン波やパルスを素材にするアルヴァ・ノトの音楽 12
作品タイトル: Eigenzeiτ ケージの作品名に倣い、時間を表す言葉をタイトルにした Eigenzeitの末尾のtをτに置き換えた、リート文字的表現 Eigenzeit(アイゲンツァイト): ドイツ語で「固有時間」。ユクスキュルの言う、 主体ごとに固有の時間を表す τ: 物理学で固有時などに用いられる、時間を表す記号 ∂hostsは先頭、本作は末尾の文字を置き換えるという対称性
はじまりの物語と、おわりの物語として対になる 13
作品の構成(仮) M5Stack CoreS3 PlatformIO・C++ ESP32-S3(内蔵) Wi-Fi・BLEの電波 Raspberry Pi 5 USBシリアル
JSON Lines Python 受信 pyserial AMG8833 正規化 鳴った⾳・センサの値 river ⾚外線 CO2 Unit(SCD40) 電波 ⾚外線 CO2 学習の進み(好奇⼼) MOTU M4 river・バンディット 好奇⼼で選ぶ JSON Lines TensorBoard SuperCollider 選んだ⾳ ⾳を選ぶ仕組み 記録 CO2 予測モデル PyTorch・MLP ずれから、その場で学ぶ 特徴量(OSC) オーディオインターフェース ⾳のパラメータ(OSC) マイクの特徴量 Amplitude・FFT・Onsets ⾳を作る SinOsc・Impulse・Dust USB オーディオ YAMAHA HS5 ×2 スピーカー Superlux ECM999 測定⽤マイク ⾳・声 会場 近づく・離れる・集まる 来場者 体・スマートフォン・呼気・声 ⾳が届く 閉ループ: 出した⾳が来場者と空間を変え、その変化を再び測る 14
作品の構成: AIモデル AIの好奇心を、世界を予測するのが上達していくこと(学習の進み)として定義する シュミットフーバーが提唱した考え方 好奇心の全てではなく、分かっていく面白さという一側面を捉えたもの 予測モデルは、今の入力と出す音から、少し先の入力を予測する 出す音そのものは予測しない 予測と、実際に鳴った音・センサの値とのずれから、リアルタイムに学ぶ 展示の間ずっと学び続け、自分の音と外の世界の境界を自ら引く 音を選ぶ仕組みは、音のパラメータの範囲を区画に分け、最近、一番上達してい
る区画を選ぶ サイン波のうねりやクリックの頻度などを、数秒ごとに選ぶ 15
補足: シュミットフーバーの好奇心の理論 ユルゲン・シュミットフーバー: ドイツ出身のAI研究者(1963-) 時系列を扱うニューラルネットワーク、LSTMの研究で知られる 1990年代初めから、予測の上達を報酬として行動を選ぶ、好奇心の仕組みを提唱 している ピエール=イヴ・ウデイエ(フランスのAI研究者)らが発展させ、ロボットで実 現した 美しさを予測しやすさ、面白さをその上達として捉え、芸術や音楽にも当てはま
るとする AIが予測を上達させていく音響は、AIにとっての音楽かもしれない 16
本作で見送った要素 創作と模倣の境界、本物・偽物とはなにかというテーマ AIの環世界は本物の環世界か、という問いにも接続していた ヨルシカの『盗作』、Vaundyの『replica』を参照する予定だった コンセプトが散らかることを懸念し、見送った 17
ご清聴ありがとうございました 18