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COVID-19の地図化:Web地図はインフォデミックにどう影響したか

wata909
August 02, 2022

 COVID-19の地図化:Web地図はインフォデミックにどう影響したか

Dialogues in Human GeographyのSpecial Issue: Geographies of the COVID-19 pandemic輪読会の資料。
https://journals.sagepub.com/toc/dhga/10/2

説明したのは、
Mapping COVID-19: How web-based maps contribute to the infodemic
https://doi.org/10.1177%2F2043820620934926

wata909

August 02, 2022
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  1. COVID-19オンライン輪読会3 2020/11/5 Mapping COVID-19: How web-based maps contribute to the

    infodemic COVID-19の地図化: Web地図はインフォデミックにどう影響したか 農研機構・岩崎亘典 1
  2. 著者について • Levente Juhászさん – Florida International University • Mapillary,

    Pokémon Go 等の研究 – (お二人とも、極めて近い人) 3 はじめに
  3. 要旨 • 新型コロナウイルス感染拡大の様々な側面について、多 くのWeb Mapが公開 • ここでは、COVID-19パンデミックの間のWeb Mapにつ いて考察 •

    急速に変化し、疫学的に複雑で、地理的境界のない (COVID-19の拡大)プロセスに情報を提供するにあた り、誤った使われ方をしている場合が多い – infodemicを引き起こしている 4 Introduction
  4. 研究の背景と目的 • 世界的なCOVID-19パンデミックの最初の数ヶ月 間におけるWeb Mapの利用を検討 – Web Mapと関連する地図作成に誤用が多いため – 今日のWeb

    Mapは、大変使いやすい – 一方でそのために、COVID-19パンデミックの間に ‘infodemic’の一部をになった。 • WHOによる警告 • Web Mapは悪いツールではないが、面倒な道具と もなり得る – 根拠となるデータ、モデル、プロセス、そして地図 学の基礎的原理を考慮せず、不正確に広く使われる 場合 • Ashら(2018)による挑戦的思考 – Web Mapや関連プラットフォームなどのデジタル技術が地理を再 構築し、地理的知識の生産を媒介する方法 6 Introduction
  5. デジタル時代の情報公開のための新たなツール • Web地図は、地理的データをデジタル地図に重ねて表示 できる – ウェブページやアプリケーションに埋め込まれており、インタ ラクティブである – ここ20年間で、新時代が到来した(McQuire, 2019)

    • One map to rule them all? Google maps as digital technical object – 現在では、オンライン地図で、多くのGIS機能をWebブラウザ上 実現可能 • ニュースメディアでもますます利用される – Usher, 2020: 250 7 Web-based maps
  6. デジタル時代の情報公開のための新たなツール • しかしそれでも、デザインの選択は根本的問題 – 上手くしないと制御不能。Monmonier (2018: 205) • Web Mapは、地図の民主化ともいえる

    – 専門家だけのものではなくなることで、より強力なツールへ • Crampton and Krygier (2005), An introduction to critical cartography • 地図が有効なのは、人々がそれを素朴に信じるから – だからこそ、”フェイクニュースの時代”には危険 8 Web-based maps
  7. COVID-19パンデミック時のWeb mapの状況 • 空間疫学(COVID-19 Map)でも、それは同様 – 人々は容易に信じる。しかし、その複雑さ故、要注意 • Carroll et

    al., 2014 An introduction to critical cartography • 精緻な地図であっても「データ過多情報欠如」となる – 限られたIFに情報を詰め込みすぎた場合 – 異なるスケール、視点の情報を詰め込むのも問題 • 感染率、検査場、人口動態など • Web Mapを非難している訳ではない – そうではなく、誤ったデザインや開発が問題 – 以下のリストが実際に見られた例 9 Illustrating web-map
  8. COVID-19パンデミック時のWeb mapの状況 • 簡単にできるが故の、以下のような問題 – そもそものも問題 • 全体的に地図デザインが貧弱 • 標準化されていない地図

    • 不正確で矛盾した縮尺や単位をまとめて使う • バブルチャートやヒートマップの不適切な使用 • COVID-19症例や医療施設位置を示すドット/ピンマップが 過密 • 主題図の階調や階級が不十分 • 適切な方法ではなく、コロプレスマップが使われる • 全世界を対象として設計された地図は、全世界のデータを使 用すべき。しかし、これでは地域住民への訴求力が低下 – 難しい問題 • 不確実性の表現がない地図 • 疫学モデルの複雑性のため、COVID-19の伝播の時間的ダイ ナミクスを効果的に表現できない。 10 Illustrating web-map
  9. HealthMapの問題 • 異なる集計単位の影響 – 受ける印象 • ドイツ、イタリア、イギリスで多く、フランス、 スペインでそうでもない – 実際の患者数

    • イタリアとスペインは同数。他は未確認 • 調査の不確実さが反映されてない – ハンガリーやスロバキアは本当に0? 12 Illustrating web-map
  10. フロリダ保健局地図の問題 Mooney and Juhász(2020) • 事例数の問題 – 絶対数を示している。人口が多いほど多い • 本当に危険性を反映している?

    • 凡例の色の問題 – 赤系から青系の色を使用 • 膨張色と縮退色(進出色,後退色) – 実際の面積とは違って見える可能性 14 COVID-19感染マップに見る地理情報可視化の問題点 http://color-psychology.jp/kouka_look.html
  11. COVID-19パンデミック時のWeb mapの状況 • 動的な地図に限らない – こうした場合、制作者、 利用者双方に警鐘すべき • Dodge and

    Kitchin (2000) – COVID-19の地図化では、 意図を同正確に伝えるか が重要だが、不十分 – また地図は、“バズる”事があり、誤報や「代 替事実」を助長すること • 右上の10年前の航空旅行を示す地図 • これにより、コロナ拡散の不安が助長された 15 Illustrating web-map
  12. Infodemic-pandemic下でのWeb Map • 制作者自身による検証が必要 – Web Mapは十分に利用されてないが、その原因は商業的プレッ シャーとリソースの問題 • 報道での地図使用のガイドラインが必要

    – Web Mapの可能性を活かすために • 参考:メディアの外側から COVID-19 国内症例マップ を発信する意味、 オープンデータとシビックテック • https://aimerci.hatenadiary.jp/entry/20200301/1583063754 • 公共地理学の目指すところとも一致 – Kitchin et al. (2013) 16 The future
  13. Infodemic-pandemic下でのWeb Map • そもそもCOVID-19に関する情報を伝えるのに地図は適切な ツールか? – 背後に、複雑なモデル等がある。 • それを十分に地図で伝えるのには、注意が必要 –

    手法が多々あるにせよ、地図が矛盾する場合も多々ある • WHOが指摘したinfodemicを助長した恐れ • Depouxら(2020)の指摘 – SNSによる情報の伝搬は、COVID-19より早い – これに対抗するために運用ツールが必要 • ダッシュボード、リアルタイムのWeb地図など • 東京都COVID19, JUST 道 ITの活動等 • 十分に検討されたWeb Mapも、対抗ツールとなると期 待している 17 The future