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プロダクト戦略を運営する話 @pmconf2021

yono_memo
October 26, 2021

プロダクト戦略を運営する話 @pmconf2021

pmconf2021でのセッション「プロダクト戦略を運営する話」 の資料(https://2021.pmconf.jp/sessions/RO1BMccY)
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プロダクト開発とビジネス/セールスが半々という組織環境で、Chatworkが事業として掲げる中長期戦略の実現に向けて全社的な認識をどう整えてプロダクト開発を行っていくのか。プロダクトオペレーションチームの発足や、Scrum@Scale導入におけるプロダクトオーナーサイクル観点の取り組みについて紹介します。

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October 26, 2021
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  1. - 制作会社やフリーランスでモバイルUI開発やWebディレクション - コンタクトセンター事業会社でチャットボット事業立ち上げ - 2018年2月 メルカリ - CS部のプロダクト連携やCXプログラムのチーム立ち上げ -

    PMとしてマーケット管理・監視ツール領域でPO - 2021年4月 Chatwork - CTO室(PM部兼務)で、プロダクトオペレーションの立ち 上げとID基盤領域のPM担当     自己紹介 大野木 達也 / Tatsuya OONOGI   Twitter: yono_memo
  2. 事業概要 4 *1 Chatwork事業以外の事業として、ESET社提供のセキュリティ対策ソフトウェア「ESET」の代理販売事業を展開。安定的な収益貢献となっている *2 Nielsen NetView 及びNielsen Mobile NetView

    2021年4月度調べ月次利用者(MAU:Monthly Active User)調査。調査対象47サービスはChatwork株式会社にて選定 *3 2021年9月末時点 • 国内最大級のビジネスチャット「Chatwork」を中心に、複数の周辺サービスからなる「Chatwork事業」を展開*1 • ビジネスチャットのパイオニアであり国内利用者数No.1*2、導入社数は33.2万社*3を突破 • 電話やメールから効率的なチャットへ、ビジネスコミュニケーションの変化を加速させプラットフォーム化を目指す
  3. KPIハイライト 6 *1 Annual Recurring Revenue(年間経常収支)、2021年6月末時点のMRRの12ヶ月分 *2 2019年12月末における課金顧客から生じる2020年12月末時点におけるストック収入 ÷ 2018年12月末時点から2019年12月末時のストック収入

    *3 登録ID数に対しての解約率。2020年7月から2021年6月末までの12か月平均値 *4 Chatwork利用料の課金IDあたりの平均単価(Average Revenue Per User) *5 1日あたりのサービス利用者数(Daily Active User) 439万 2Q末時点 登録ID数 48.8万 2Q末時点 課金ID数 33.2万 9月末時点 導入社数 25.8億円 2Q末時点 ARR*1 120% 2020年末時点 NRR*2 0.3% 2Q末時点 解約率*3 445.4円 2Q末時点 ARPU*4 93.4万 2Q中の最大値 DAU*5 (課金IDのみ:1.9%)
  4. 中長期方針 • 2021〜2024年でシェアを拡大し、中小企業No.1ビジネスチャットのポジションを確立する • 2025年以降で、中小企業市場における圧倒的なシェアを背景に、 あらゆるビジネスの起点となるビジネス版スーパーアプリとしてプラットフォーム化していく • 2021〜2024年の中期をシェア獲得における最重要フェーズと捉え、投資スピードを最大限に加速 7 Chatwork事業でCAGR40%

    前年を超える売上成長率の実現 継続した売上成長のための体制整備 長期:2025年〜 投資スピードを 最大限に加速 2024年シェア40% 全社売上高100億円 中小企業No.1 ビジネスチャット 中小企業のあらゆるビジネスの起点となるプラットフォーム ビジネス版スーパーアプリ 中期:2024年 当期:2021年
  5. まず、プロダクト戦略とは 解決すべき問題の決定に役立つのが プロダクト戦略、実際に問題を解決で きる戦術を見つけるために役立つの がプロダクトディスカバリー、ソリュー ションを構築して市場に投入できるよ うにするのがプロダクトデリバリーであ る。 マーティ・ケーガン 『EMPOWERED』

    戦略的な仕事: マーケットで勝利して目標を達成するた めにプロダクトや会社のポジショニングを 考えます。プロダクトや会社の将来像 や、そこに至るために必要なことに着目 します。 メリッサ・ペリ 『プロダクトマネジメント』 上記を踏まえて、下記のように定義してみる 「企業としてプロダクト/サービスを成長させるためのビジョンと指針」 9
  6. Chatworkの状況を当ててみると… 大きくは下記3つの仕事に分解できる: 1. 戦術的な仕事  機能を作って世に出すという短期的な行動に焦点を当てます。次にすべきことを決めるのに使うデータを処理し たり、日々、開発者やデザイナーと一緒に作業を分解してスコープを決めたりすることも含まれます。 2. 戦略的な仕事  マーケットで勝利して目標を達成するためにプロダクトや会社のポジショニングを考えます。 プロダクトや会社の将来像や、そこに至るために必要なことに着目します。

    3. 運営の仕事  戦略を戦術的な仕事に結びつけます。プロダクトマネージャーは、プロダクトの現状と将来像を つなぐロードマップを作り、チームはそれに沿うように仕事を進めます。 (メリッサ・ペリ 2020, プロダクトマネジメント, p47) 事業戦略の中長期方針に対して、プロダクト戦略を 十分に練れているとは言えない… あまり上手くやれてない… 11
  7. 色々調べてみたところ… • 海外のテックカンパニーでは、プロダクト戦略の運営を専門にやる組織が あるようだ • Product Operationsというようだ • Google, Facebook,

    Twitter, Stripeなど多くの企業で求人もある • 運営と言っても、担当のVPを置くレベルで重要視されているようだ この専任組織を作って、運営ができるようになれば、 現状のChatworkのプロダクト開発にも、今後の中長期方針に向けた 準備にも大きく寄与するに違いない!!! 12
  8. Product Operationsの役割 (『プロダクトマネジメント』を読み返したら後半で言及されていた…) 担うべき役割は下記のようなものらしい • 各チームの目標とアウトカムに対する進捗データ収集の仕組み構築 • プロダクト開発活動のレポートと活動の財務影響の整理 • プロダクト分析のプラットフォーム構築

    • プロダクトエンゲージメント指標のレポート • プロダクト戦略や開発に関わる複数チームをまたがるプロセスの標準化 • 戦略策定、戦略展開、リリースといった重要なプロダクト会議の運営 • プロダクトチームへのコーチングやトレーニング (なかなかハードル高…) 13
  9. とはいえ、Product Operationsは絶対重要になるはず という強い意志を持ったので、まずはProduct Operations(ProdOps *1)チームを立ち 上げ、やれるところから準備。これまでに進めたことをかいつまんで説明します 1. ChatworkにおけるProdOps定義 2. 実現ステップを決めてチーム立ち上げを上申

    3. Chatworkとしてのプロダクト戦略パッケージ整理 4. プロダクトビジョンとプロダクトイニシアチブの策定 5. ノーススター指標策定と、プロダクト指標の整理 6. プロダクトカウンシルの立ち上げ 7. 各プロダクトイニシアチブに応じた中期の戦略ストーリーを整理 8. アジャイルなロードマップ運用の仕組み構築 9. PMの戦術のデータ分析フォロー 14 *1 Googleの求人でProduct Operations (aka ProdOps) と書いてあって気に入ったので、これを推します
  10. 1. ChatworkにおけるProdOps定義 PM PM PM PM ProdOpsチームは、より良いプロダクト開発のメカニズム構築・運営に責任を持ちます。 関連するチーム間での共同作業のギャップを埋める部門横断的な役割を担い、意見を効果的にまとめて プロダクト戦略を管理・運営し、ユーザーに最適なプロダクトを届けられるようにプロダクト開発を支援します。 PM

    PM PM PM ProdOps: プロダクト戦略の管理・運営 ProdOps: 各施策の分析サポート ProdOps: 俯瞰した課題の探索 ProdOps: 顧客フィードバックサイクルの仕組み構築・運用  … etc 15 ProdOpsチームの役割定義 PMは事業や機能の企画・推進に注力し、 ProdOpsは横軸でプロダクト開発を支援する体制
  11. 17 いきなりあるべき姿の実現は難しいので、社内の期待コントロールも意識して、優先的 に必要そうな領域から1年位を目処に4ステップで導入提案 ステップ1:プロダクト戦略運営のカタ作り  • プロダクト戦略・ロードマップ、承認プロセスなどの運用管理体制フレーム化 • 組織横断的なプロダクトカウンシルの発足 • プロダクトオーナーサイクルの会議体運営

    ステップ2:PM組織のカタ作り  • プロダクト開発を容易にするためのビジネスプロセス標準化 • PM組織のキャリアラダーや役割の見直し • PM採用のプランニングやサポート(必要人材の人員数やスキル要望の特定、面 談、体験入社のプログラム運用など) 2. 実現ステップを決めてチーム立ち上げを上申
  12. 18 2. 実現ステップを決めてチーム立ち上げを上申 いきなりあるべき姿の実現は難しいので、社内の期待コントロールも意識して、優先的 に必要そうな領域から1年位を目処に4ステップで導入提案 ステップ3:プロダクト開発の高度化  • プロダクトチームと組織内の他チーム間のコミュニケーションの合理化 • Scrum@Scale、フィーチャーチーム体制に向けたPOサイクルのアップデートと、

    開発フェーズにおけるPO責務などを整理 • プロダクト管理で十分な情報に基づいた意思決定を行うために役立つ製品データの 収集、整理、分析 ステップ4:カスタマーオブセッションとPM組織の強化  • 顧客フィードバックサイクルの仕組み化(サーベイ取得等)と管理・運営 • 市場開拓戦略での顧客体験の向上を目的に営業や製品マーケティングをサポート • PMチームのパフォーマンス向上のためのオンボーディングやトレーニング策定
  13. プロダクト戦略 プロダクト戦術 経営計画・経営戦略 プロダクトビジョン プロダクトイニシアチブ 結果指標 全社売上 100億 マーケット シェア

    40% 目標 ユーザー数 Acquisiton Activation Retention Referral Revenue 施策A:Macro / Micro KPI 施策B:Macro / Micro KPI 施策C:Macro / Micro KPI 施策D:Macro / Micro KPI 施策E:Macro / Micro KPI Product Initiative 1 Product Initiative 2 Product Initiative 3 Product Initiative 4 Product Initiative 5 North Star Metric 中期経営計画 中期経営戦略 Product Led Growth戦略 Horizontal x Vertical戦略 相互相関 DXソリューション戦略 19 3. Chatworkとしてのプロダクト戦略パッケージ整理
  14. 21 4. プロダクトビジョンとプロダクトイニシアチブの策定 働くをもっと楽しく、創造的に 誰もが簡単に活用できる チャットサービスを通して 業務プロセスのムダをなくし、 中小企業の生産性を劇的に 向上させる Mission

    すべての人に、一歩先の働き方を Vision 中期 Product Vision プロダクトイニシアチブ1 プロダクトイニシアチブ2 プロダクトイニシアチブ3 プロダクトイニシアチブ… Chatwork事業をひとりで立ち上げて育てて きた現CEO山本にタタキ案を当ててフィード バックと思いをもらい、複数回の議論を経て 決定。現段階では中期として策定 (中期戦略の内容になるので、実内容はごめんなさい…) 現段階でテーマを絞り込むというよりは、戦略全体を カバーできるよう幅広く策定 中小企業No.1ビジネスチャット 中期Vision
  15. 23 5. ノーススター指標策定と、プロダクト指標の整理 North Star Metricはプロダクト体験を評価しビジネス成長につなげる手法 多くのテックカンパニーでも採用されている 10日間で7人以上の 友達を追加した ユーザーの数

    プライム会員1人 あたりの購入金額 宿泊の予約数 月あたりの視聴時間が 10時間以上の購読者の数 顧客あたりの平均 レコード作成数 エンゲージメントが高いサ ブスクリプション・サービス の購読者数 月間コンテンツ再生時間 投稿が2000を超えた 組織の数 North Star Metric の例 
 https://amplitude.com/blog/product-north-star-metric
  16. 24 5. ノーススター指標策定と、プロダクト指標の整理 North Star Metricは下記の3つの要素を整理し、3要素が含まれる指標を策定 ① 企業側 プロダクト提供 ②

    ユーザー側 プロダクト体験 ③ 上記要素の評価を表す 売上への先行指標 Chatworkとしての取り組み: 1. 継続的に見るべき基本的なプロダクト指標リストアップ 2. 他社のNSMも参考に、プロダクトビジョンの実現につながる先行指標を模索 3. ビジネスモデル上、直接的に収益連動する指標策定が難しく高い相関を探って策定 4. いったん事業全体ではなくプロダクト本部内での指標として検証開始
  17. 26 5. ノーススター指標策定と、プロダクト指標の整理 ①Acquisition / 新規登録 新規ID数 etc ②Activation /

    新規登録15日以降の活用 Growth KPI (※独自定義) ③Retention / 継続利用 MAU, DAU, リテンション率, 顧客チャーン率 etc ④Referral / 紹介獲得 紹介リンク登録数, 紹介経由新規登録者数 etc ⑤Revenue / 有料顧客化 有料利用顧客数, ARPPU, 有料利用顧客チャーン率 etc 顧客行動ファネル (AARRRモデル) AARRRモデルはグロースハックのモデル。 サービス全体を顧客行動に合わせた5段階のステージに 分け、各段階の増加や離脱を整理したもの ①ユーザーを獲得 (Acquisition)し、 ②サービスの価値を感じてもらい(Activation)、 ③繰り返しサービスを使ってもらい(Retention)、 ④ 友人紹介 (Referral)や、 ⑤課金(Revenue)をしてもらう 現状のChatworkのフリーミアムモデルだと このモデルを結果指標として追うと 事業成長を少しブレークダウンして追えそう
  18. 31 現時点での振り返り 1. ProdOps定義や実現フェーズを決めてチーム立ち上げの上申 →期待を持って受け入れてもらえたよう  2. プロダクト戦略パッケージ整理 →プロダクト戦略判断の立ち戻りに良い。ビジネス側の期待が大きくなった  3. プロダクトビジョンとプロダクトイニシアチブの策定

    →プロダクトビジョンで経営陣(特に現CEO)の思いを組み入れることができ、  プロダクトイニシアチブで、ビジネス側開発側を含めて事業としての大項目  をすり合わすことができた  4. ノーススター指標策定と、プロダクト指標の整理 →ノーススター指標は、まずプロダクト本部内のみ運用で価値検証  プロダクト指標の整理は、今後のプロダクト戦略の指標ともなるので、  今後の起案や価値検証で価値が出てくる(はず)
  19. 32 現時点での振り返り 5. プロダクトカウンシルの立ち上げ →まずは月イチで開始。回を追う毎に少しづつ改善は進んでいるが、認識合わせや  議論の活性化にはまだ課題あり 6. アジャイルなロードマップ運用の仕組み構築 →プロダクトカウンシルでの月次レポートや施策整理に活用。プロダクト戦略や  ディスカバリーでの活用はまだ 

    7. 各プロダクトイニシアチブに応じた中期の戦略ストーリーを整理 →経営戦略との連動で上記を補強するために付け加えたが、合わせた運用で  ビジネス側や開発メンバーへも落とし込む活用ができそう  8. PMの戦術のデータ分析フォロー →一定機能し始めてたが、もっと強化したい。PMがデータにもとづく意思決定の  意識を高める観点でも、壁打ち人材を増やしたい
  20. 37 本日のまとめ • ProdOpsはプロダクト開発でPMを横軸で支援する • 一気に理想実現は高難易度。自組織には必要な部分から取り入れる • 兎にも角にも横軸のコミュニケーション。タタキを当てて、 あり方を探ってかたち作っていく動きがとても大事 •

    上層のプロダクト戦略はできる限り簡単に意思疎通できるように • 具体の戦術と線引きしてパッケージを考えると運営しやすくなる ◦ ProOpsやPMのコストはかかるけど組織拡大時は特に重要 • Chatwork、中期の目標はとても高いけど、事業は順調に成長中。 間近のPLG戦略や今後のスーパーアプリ構想など、 とても面白いフェーズなので、ぜひ興味を持ってください!! 
  21. 38 PM/ProdOpsメンバー、絶賛募集中です • プロダクトマネージャー • プロダクトオペレーションマネージャー ※近々募集出します • プロダクトアナリスト ※近々募集出します

      上記以外でもUIデザイナーもエンジニア等ほぼ全方向募集中です    → https://recruit.chatwork.com/jobs/ URLはこちら