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チェックリストの正体に迫る!
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Yutaka Kamei
March 07, 2026
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チェックリストの正体に迫る!
Yutaka Kamei
March 07, 2026
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Transcript
Yutaka Kamei Scrum Fest Fukuoka 2026 March 7, 2026 チェックリストの正体に迫る!
Self-introduction • Yutaka Kamei • かめちゃん • @yykamei on GitHub
• @_yykamei on X • ソフトウェア開発者 • パーソナルコーチ • Timee, Inc.
Copyright © Timee All Rights Reserved 3 タイミーとは
Copyright © Timee All Rights Reserved 4 タイミーの特徴
Copyright © Timee All Rights Reserved 5 導入実績
Copyright © Timee All Rights Reserved 6 導入企業の例
なぜこの話をしたいと思ったか — クールではない!? インシデントが発生した後に行われるポストモーテ ムにおいて、再発防止策としてチェックリストが取り 上げられることがあります。しかし、チェックリストの 項目は簡単に増えていきますし、特にソフトウェア 開発者の間では「クールではない」対応と考えられ るように見受けられ、結果として敬遠されがちで す。
なぜこの話をしたいと思ったか — 正体に迫る! そうはいうものの、日々のお仕事、およびプライ ベートも含めてチェックリストの恩恵を受けることが 多いと感じたため、チェックリストにスポットライトを 当てて、その意義を確かめたいという狙いがありま す。
アジェンダ • チェックリストとは • なぜ、チェックリストが必要なのか? • チェックリストの運用とエコシステム • 拡張するチェックリスト •
チェックリストの正体 • 結論
チェックリストとは? 思考と選択を補助するシステム
思考を補助する 「思い出すこと」に使っていた脳のエネルギーを「判 断すること」に振り向けます。 • ワーキングメモリーの解放 • システム2(熟考モード)の起動 • シミュレーション(未来予測)の足場
ワーキングメモリーの解放 一般的なチェックリストに期待する役割です。次の ような思考に陥らないように助けてくれます。 • 「えーと、次はなんだっけ?」 • 「さっきの手順、飛ばしてないかな?」 • 「あとでアレやらなきゃ」
ワーキングメモリーの解放 チェックリストに覚えるべき手順などを預ける(外部 化)することで別のことに考えがめぐらせることがで きます。 • 「今の状況で、この手順を実行しても本当に 大丈夫か?」 • 「手順通りやっても何か違和感があるぞ」 •
「顔色は悪くないか?」 • 「お?」
システム2(熟考モード)の起動 人は慣れてくると、省エネのために無意識(システ ム1)で作業を処理しようとします。「いつものやつ ですね、OK、OK」という状態です。この状態だと、 「問題があるかもしれない」という意識がないため、 問題を探ろうともしません。
システム2(熟考モード)の起動 チェックリストのチェック項目を読み上げ、確認する という行為は、この「流れるような作業」を物理的に 中断させます。 例 • チェック項目「バルブが閉まっていることを確 認すること」 • 人「バルブは閉まっているか?ヨシ!」
シミュレーション(未来予測)の足場 頭の中だけで「来週のリリース手順」を完璧に計画 するのは難しいです。要素が多すぎて混乱するか らです。
シミュレーション(未来予測)の足場 チェックリストとして書き出し始めると「このタイミン グではこうするのか?」「そのときにこれがないと困 るぞ?」という「どうなる?」を想像しながらシミュ レーションできます。 例 • 「デプロイが終わってないのにこの作業はで きない!順番を変えないと!」 •
「フィーチャーフラグを 0%にしたらどうすれば いい!?」
選択を補助する チェックリストを作成する時と実行する時とで選択 を補助します。 • 作成時の選択 ◦ 無限の可能性から「やるべきこと」を絞り込む (フィルタリング) • 実行時の選択
◦ 混乱の中で「最善の道」を選ばせる(ナビゲー ション)
無限の可能性から「やるべきこと」を絞り込む 私たちは人生や仕事において、理論上は「無限の 選択肢」を持っています。 • 今日、何をしてもいい。 • 旅行に、何を持っていってもいい。 とはいえ、無限であることは何も選んでいないのと 同じです。
無限の可能性から「やるべきこと」を絞り込む 無限の選択肢の中から「本当に大事なもの」を選 ぶという行為をサポートするのがチェックリストで す。逆に言えば、「これ以外のことはやらない」と決 める(捨てる)行為とも言えます。 • 家にある数万個のモノの中から、「旅行に必 要な20個」だけを「選択」する。 • 今日できる100個のタスクから、「絶対にやる
べき3個」だけを「選択」する。
混乱の中で「最善の道」を選ばせる 現場(実行時)では、プレッシャーや疲労により、私 たちは誤った選択をしがちです。 • トラブル発生時:パニックになり「闇雲にコー ドをいじる」 • 忙しい朝:「大事なメール返信」よりも「目につ いたSNSチェック」
混乱の中で「最善の道」を選ばせる チェックリストには冷静なときにシミュレーションさ れた「最善の手順(ベストプラクティス)」が書かれ ています。 • 「まずはログを確認せよ」 • 「朝イチでメールを返せ」
混乱の中で「最善の道」を選ばせる — ハドソン川の奇跡 ハドソン川の奇跡は一人の英雄の物語というより、訓練通りに泥臭く チェックリストを遂行したプロフェッショナルな規律によるものです。 • エンジンをかける前のチェックリスト(自己紹介、計画、懸念、 トラブル時のことを話し、チームをつくりあげる) • エンジン停止時のチェックリスト(この直前に機長が操縦を代
わり、不時着水の決断をし、副操縦士が脅威的なスピードで 両エンジンの再始動に成功する) • 不時着に備えるためのチェックリスト(遭難信号、不時着の準 備、客室乗務員らによる乗客への案内) ◦ 全員の脱出はわずか3分ほど • 避難用チェックリスト(火災などが起きていないかチェック) —ガワンデ, A. (2011). アナタはなぜチェックリストを使わないの か? (吉田竜 訳). 晋遊舎. (原著出版年: 2009)
チェックリストがあっても予想外のことは起きる 当然、あらかじめ作成したチェックリストを活用すれ ば未来の諸問題全てに対応できるわけではありま せん。予想外のことは常に待ち構えています。
コミュニケーションとしてのチェックリスト 建設を任された専門家たちは個人の能力を過信 せず、二種類のチェックリストを使う。単純な手順 の間違いを防ぐチェックリストと、話し合いをさせる ことで予想外の困難も確実に全て解決させるため のチェックリストだ。 —ガワンデ, A. (2011). アナタはなぜチェックリスト
を使わないのか? (吉田竜 訳). 晋遊舎. (原著出 版年: 2009) チェックリストに「なにかあったときはそれぞれの専 門家同士で話し合う」という項目を設けておき、想 定外の事象にその場の判断で対応させるようにし ます。
チェックリストによる権限移譲 チェックリストはある意味「絶対に外してはいけない ポイント」をおさえたものです。逆に言えば、これ以 外のことは自由です。そして、コミュニケーションを とらせておくことで独断専行にならないため、現場 の裁量を与えやすくなります。つまり、チェックリス トは権限移譲としても機能します。
スクラムにおけるチェックリスト イベントより • スプリント • スプリントプランニング • デイリースクラム • スプリントレビュー
• スプリントレトロスペクティブ 成果物より • プロダクトバックログ • スプリントバックログ その他 • プロダクトゴール • スプリントゴール • プロダクトバックログリファインメント • ミーティングのアジェンダ • 完成の定義 • 受け入れ基準
スクラムはチェックリストですね!
アジェンダ • チェックリストとは • なぜ、チェックリストが必要なのか? • チェックリストの運用とエコシステム • 拡張するチェックリスト •
チェックリストの正体 • 結論
1. American Psychological Association. (2006, March 20). Multitasking: Switching costs.
https://www.apa.org/topics/research/multit asking 2. Blades, S. (2017, Fall). The multitasking mirage: More is not always better. The Higher Education Workplace, 4–7. https://www.cupahr.org/wp-content/upload s/KC/heworkplace/Multitasking_Vol9No2.p df 人は案外動きながら考えるのが苦手 • 人間の脳のアーキテクチャーは基本的に直 列処理。並列処理は物理的にできず、タスク を切り替えている(コンテキストスイッチ) • コンテキストスイッチにはコストが伴う [1] • 複数の認知タスクを並行して行うと IQを一次 的に10〜15ポイント(睡眠不足や薬物使用 と同等レベルに)低下させることもあるらしい [2]
未来を見通すには熟考する必要がある 人間の脳のアーキテクチャーは基本的に直列処理 であり、タスクの実行と並行して未来予測(シミュ レーション)を完璧に行うのは困難です。マルチタ スクによる認知的負荷(コンテキストスイッチのコス ト)を避けるため、一度立ち止まり、思考に集中す る「熟考モード」(システム 2)への切り替えが不可 欠です。
熟考するためにはポーズポイント(停止点)が必要である 無意識的な「流れるような作業」は意識的な「熟考 モード」(システム2)へ切り替えるためのトリガーが ポーズポイント(停止点)です。
チェックリストでポーズポイントを強制する まさに、チェックリストの作成こそが、このポーズポ イントの役割を果たします。また、タスク実施中にも チェックリストの確認というポーズポイントを設ける ことで意図的に俯瞰して見つめ直すことも可能で す。
集中して実行する 『スマホ脳』によると、マルチタスクは非効率なのに マルチタスクをすると脳は喜んでしまいます(ドー パミンが出る)。「火災報知器の原則」によってあら ゆるものに反応してしまいがちです。そうした環境 であってもチェックリストを基準にして「やることはこ れ」というガードレールを敷くことが 確実な実行 に つながります。
—ハンセン, A. (2020). スマホ脳 (久山葉子 訳). 新潮社. (原著出版年: 2019)
静と動 — 熟考と実行 1. 【静】チェックリストを作成する(未来を見通 す) 2. 【動】実行する 3. 【静】チェックリストで確認する(ふりかえり)
4. 【動】実行する 5. 【静】次のチェックリストを作成する
アジェンダ • チェックリストとは • なぜ、チェックリストが必要なのか? • チェックリストの運用とエコシステム • 拡張するチェックリスト •
チェックリストの正体 • 結論
何を載せ、何を載せないか チェックリストはマニュアルではありません。詳細に 書きすぎると使われなくなります。載せるべき情報 は極限まで 少なくした方がよいです。
何を載せ、何を載せないか 載せるべきもの • 実行中に忘れがちで、忘れると致命的な結 果をもたらすもの • コミュニケーション項目 ◦ 例 ▪
ある作業の直前に話し合う ▪ 問題があったときに話し合う 載せるべきではないもの • それをやる理由 • すでに実施者の間でわかりきっている内容
何を載せ、何を載せないか — よくない例 • コンテキストがわからない人が誰でも対応で きるように詳細すぎるステップで記述 ◦ そもそもコンテキストがわからないチームがそ の手順書を触ることがない ◦
細かすぎてコンテキストがわかる人は見なくな り、重要な手順まで飛ばす • それを行う意図まで記述されている ◦ 文量が多くなり、やはり、見られなくなる • 何かがあると追加されがち ◦ 情報量が膨れ上がる
3つのサイクル • Create(書く) ◦ 立ち止まって言語化することが大事 ◦ 先を見通してみる • Use(使う) ◦
日々のワークフローに組み込む ◦ 読み上げて確認するとよい • Refine(見直す) ◦ 使い勝手はものすごく大事 ◦ 「これいるの?」は積極的に振り返りたい ◦ 戸惑うことがあるなら何かが足りない
形骸化との戦い チェックリストの利用が定着すると、中身を見ずに 「はい、はい」とチェックを入れるだけの作業になる 可能性があります。そのためにも、次のような心構 えが大事になってきます。 • チェックリストを利用するときは読み上げる ◦ 「見ているが見えていない(Look but
not see)」の防止 • 常に削除できる項目がないか?を意識する ◦ 項目が多いと「面倒」な気持ちが芽生 えて形骸化になりやすいため
チェックリスト自体への信頼性もとても大事です。 結局、チェックリストが役に立つものだと思われな いといくらチェックリストを使うように訓練されても使 われることはありません。 形骸化との戦い
既存のチェックリストとの向き合い方 納得できないチェックリストであってもそのチェック リストが作成された文脈に注目してみましょう。何 かなければそのようなチェックリストはつくられな かったはずです。 新しい環境に身を置いたタイミングでは素朴な質 問が効果を発揮することもあります。活用しましょ う。
例 — 受入基準 • ポーズポイントとしての受入基準。何を満た していればこのタスクは完了なのか?を考え る(Create) • 受入基準を満たしているか?の確認( Use)
• ポストモーテムによって受入基準のテンプ レートが更新(Refine) 「起こったら困ること」というチェックリストも使ってい ます。
例 — 定例ミーティング • 必要そうな定例ミーティングを定める (Create) • 定例ミーティングの実施( Use) ◦
カレンダーに登録 • 定例ミーティングの見直し( Refine) ◦ ふりかえりの時間を調整 ◦ リファインメントの時間を調整
例 — 採用面接 採用面接はある程度、アジェンダが固定されてい るのでチェックリストでポイントごとに押さえておくべ き項目が書かれています。 • 始まりのタイミング:AI議事録を使ってもよい か?の許可どり •
自己紹介後:本日のアジェンダの共有 • メイントピック:あらかじめ記載した質問内容 をもとに対話 • メイントピック:対話中にでたトピックについて 話す(これはチェックリストにない) • クロージング:事務的な連絡を項目ごとに伝 達
アジェンダ • チェックリストとは • なぜ、チェックリストが必要なのか? • チェックリストの運用とエコシステム • 拡張するチェックリスト •
チェックリストの正体 • 結論
チェックリストは一人で始められる • 旅行のチェックリスト • 買い物チェックリスト • これから15分なにするチェックリスト • 今日1日成し遂げたいチェックリスト
チェックリストは一人で始められる 今日のランチのチェックリストをつくってみましょう! • Aさんとしゃべる • Bさんに最近困っていることを聞く • シフォンケーキマリィのシフォンケーキをゲットする • 伊都きんぐのどらきんぐ生をゲットする
チェックリストはチームで活用できる • カレンダーもチェックリスト!定例ミーティン グは重要なポーズポイントとして活用しましょ う • 試しにチーム内で暗黙的に行なっている作 業をチェックリストにしてみましょう! ◦ 何か発見があるかもしれません
• 新しいチェックリストの作成には熟考と議論 を重ねましょう ◦ そして、そのチェックリストが機能するかテスト しましょう
目標やゴールもチェックリスト • ゴール自体、それによるアウトカムから考え るとチェックリスト • ゴールに至るための中継地点が目標である ならば目標もチェックリスト • 目標を達成するためのやることリスト(バック ログ)もチェックリスト
チェックリストがフラクタルな構造になっているのが わかると思います。
チェックリストは様々な期間で活用できる 15分、1日、1週 間、1ヶ月、 1年、人生...
アジェンダ • チェックリストとは • なぜ、チェックリストが必要なのか? • チェックリストの運用とエコシステム • 拡張するチェックリスト •
チェックリストの正体 • 結論
人生は選択の連続 チェックリストは選択肢を明確化します。 チェックリストの作成自体が連続する人生のストー リーから必要なエッセンスを抽出する作業です。 チェックリストの作成により何が本質的に大事なこ となのか?の目を養うことができます。 「人生の選択肢を手放すな」
ポーズ、実行、話し合い チェックリストは「Create」「Use」「Refine」のサイク ルと言いましたが、言い換えると、「ポーズ」「実行」 「話し合い」のサイクルとも言えます。 チェックリストの意義は「実行」以外のイベントがあ ることです。これにより、その取り組みが本当に意 味のあるものなのか?を俯瞰して見ることができま す。
計画と実行をつなげる橋渡し • システム2とシステム1を半ば強制的に分離 し、熟考した内容を実行につなげる • ポーズポイントとして機能、いわば「立ち止 まって考える」ことを促す チェックリストの正体とは
チェックリストの正体とは コミュニケーションのための結節点 • 未来を完全に見通すことはできないので計 画外のことが起きた時に集まる場 • 権限を「現場の裁量」に任せるためのガード レール
アジェンダ • チェックリストとは • なぜ、チェックリストが必要なのか? • チェックリストの運用とエコシステム • 拡張するチェックリスト •
チェックリストの正体 • 結論
結論 • チェックリストとは?(思考と選択を補助するシステム) ◦ 思考の補助: ワーキングメモリーを「思い出すこと」から「判断すること」へ解放します。無意識の作業を中断し、熟考 (システム2)を起動させるシミュレーションの足場となります。 ◦ 選択の補助: 作成時には無限の選択肢から「やるべきこと」を絞り込み、実行時の混乱の中では「最善の道」へとナビ
ゲートします。 • 運用の極意(Create - Use - Refine) ◦ Create(書く): 立ち止まって言語化し、ポーズポイント(停止点)を設ける。 ◦ Use(使う): 無意識の作業を物理的に中断し、読み上げて確認する。 ◦ Refine(見直す): 詳細すぎるマニュアル化を避け、「これいるの?」を問い直して極限まで項目を絞る。 • チェックリストの正体 ◦ 単なる作業手順書ではなく、チームや個人の力を最大化する以下の役割を持っています。 ▪ 計画と実行の橋渡し: 熟考した内容を確実な実行へとつなげる。 ▪ コミュニケーションの結節点: 想定外の事態が起きた際、専門家同士が話し合うための場を作る。 ▪ 権限移譲のガードレール: 「絶対に外してはいけないポイント」だけを押さえ、現場の自由と裁量を広げる。
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