2022年の95回大会での報告では、幾何学的データ解析(GDA)の中で、多重対応分析(MCA)と分散分析(ANOVA)の結びつきの実際を説明し手法の特徴を明らかにした。今回は、それを踏まえて幾何学的データ解析(SDA)と帰納的データ解析(IDA)の報告を行う。また、「現代日本の文化と不平等」(科研費:基盤(B) 22H00913)で取得したデータを用いて適用の実際を報告する
対応分析をめぐっては、拙訳書1)2)に続いて、『多重対応分析』3)が刊行され、分析手法として活用する条件が整ったといえる。しかし、この手法のアプローチが社会学会においては一般化されている回帰分析などのアプローチとは異なるものであるために、必ずしもわかりやすいものにはなっていない。
本報告では、以前の報告も踏まえて、幾何学的データ解析(GDA)における、多重対応分析(MCA)の位置付け。また、構造化データ分析(SDA)と概括される調査データ(個体x変数)の構造化モデリングを概説する。加えて、構造設計に用いられた構造因子(追加変数)に注目した部分集合間の関係に対する帰納的データ解析(IDA)というアプローチを紹介する。ここで用いられる「検定」手法は、計算手法としては、並べ替え検定(permutation test)であるが、検定目的である「典型性検定」(typicality test)および「同質性検定」(homoginity test)は、組合せ検定(comibinatorial Inference)すなわち集合論的推定(Set-theoretic Inference)として理論化されてきたものである4)。
本報告では、こうしたSDAおよびIDAの実際を、「現代日本の文化と不平等」(科研費:基盤(B) 22H00913)で取得したデータに対して適用したもの実例に報告を行う予定である。
1) Clausen,Sten-Erik,1987,”Applied Correspondence Analysis An Introduction”,SAGE,(訳:藤本一男,2015,『対応分析入門』,オーム社)
2) Greenacre.M.J,2017,”Correspondence Analysis in Practice Third Edition”,CRC press, (訳:藤本一男, 2020,『対応分析の理論と実践』,オーム社)
3) Briggite LeRoux, Henry Rouanet,2010, ”Multiple Correspondence Analysis”, SAGE (訳:大隈昇・小野裕亮・鳰真紀子,2021,『多重対応分析』オーム社)
4) Rouanet, Henry Bert Marie-Claude,1998,”Introduction to Combinatorial Inference”,New Ways in Statistical Methodology From Siginificance Tests to Basian Inference, 2nd Edition, Europian University Studies, Peter Lang
◾️関連する論考:
「Supplementary」変数から多重対応分析(MCA)を考える―幾何学的データ解析(GDA)と多重対応分析(MCA)―」『津田塾大学紀要』51号(2019),155 – 167
「対応分析は〈関係〉をどのように表現するのかーCA/MCAの基本特性と分析フレームワークとしてのGDAー」『津田塾大学紀要』52号(2020),169−184
「日本における「対応分析」受容の現状を踏まえて、 EDA(探索的データ解析)の中に対応分析を位置付け、 新たなデータ解析のアプローチを実現する」『津田塾大学紀要』54号(2022),177 – 193
「幾何学的データ解析(GDA)」では分散はどのように分解されるのか-GDAでANOVAの手法を用いるために押さえるべき事がある-」『津田塾大学紀要』55号(2023),119−139