ここに参加されている皆さんは PBL によって受講者が自律的に行動し、学習が促進されるという認識をお持ちの方々だと思います。
ところで、みなさんは新入社員のことを「あの子」と呼んでいませんか?
私は呼んでいました。
その姿勢は、受講者を「自律的に行動できる大人」として扱っていることになるのでしょうか。
私は長年、新入社員研修を担当してきた中で人事担当者や講師と新入社員の様々な関係を見てきました。
この会社を選んで入ってきてくれた若者なので、とてもかわいく感じると思います。
ただ、彼らは新人研修中とはいえ給料の発生している社員です。
彼らを「あの子」と呼ぶとどうなるのでしょうか。
単なる言葉尻の問題でしょ?と思うかもしれませんが、言葉には大きな力があります。
そもそも、咄嗟の言葉は思っているから出てくるものです。つまり、「あの子」と呼んだあなたは新入社員を子供だと思って扱っています。
「〜くん」「〜ちゃん」と呼ぶのも同じです。
その気持ちは態度にも出てしまい、結果として相手にも伝わります。
人間は、相手から子供として扱われたら、自分自身も子供として振る舞います。
また、同じく「講師と受講者がお友達感覚」という状況も発生しがちです。
指導する側として「新入社員に好かれたい。仲良くしたい」という気持ちは理解できますし、嫌われてしまうよりも指示は聞いてもらいやすいでしょう。
もちろん、悪い緊張感がなく心理的安全性の高い状態は保つべきです。
ただ、心理的安全性の高い状態と、単なる「仲良しグループ」は大きく異なります。
新入社員に学ばせる際には、厳しい指摘なども時には必要です。
友達感覚になることで統制が取れなくなり、指示が守られず、また少し厳しい指摘で心が折れてしまうことがあります。良かれと思った仲良しの関係が、裏目に出てしまいます。
「あの子」と呼び、子供扱いすることでこのようなことが起こるのを見てきました。
自分で行動を考えず、言われたことだけをする
理解できないことについても、手を差し伸べてもらえるまで待つ
理解できないのは教え方が悪い、と不平・不満が出る
また、講師と新入社員がお友達感覚となることで、こんなことが起こっていました。
仲良しの講師に対して裏で愚痴を言い、講師側もそれに迎合する
控えめな新入社員が、講師との仲良し関係の輪から取り残される
私の見てきた中では、新入社員を大人として扱っている研修現場では彼らの振る舞いや言動が明らかに変わっていました。
自分たちで工夫し、改善提案を行う
友達感覚の馴れ馴れしさが減り、節度のある言動が行われる
ネガティブフィードバックも含め、受け入れる姿勢ができる
もちろん、採用方針も個人の特性もさまざまであり、一概には言えません。
ただ、現場の体感としてこの違いは繰り返し目にしてきました。
また研修の実施方法としても、新入社員を子供扱いし懇切丁寧に手取り足取り教えることが行われてきました。
ただし、結局のところ「知識が繋がった」と感じるのは最後に開発演習などでアウトプットするフェーズでした。
我々現役のエンジニアも、プログラムの文法を順序立ててひとつずつ学んではいないです(そういう方もいらっしゃるかもしれませんが、多数派ではないと思います)。
まずコピペして動かしてみて、コードを読み、少し変えて試してみて、というように試行錯誤で学んでいるのではないでしょうか。
ここ数年の生成 AI の進化もあり、「コードを読む」ことに対しても生成 AI の力を借りて進めていくことが容易になってきました。
このような状況で、本当に新入社員だけ「文法をひと通り教えてあげないと先に進めない」のでしょうか。
このトークを聞いた後、今後の新入社員の育成に際して「大人」として扱い、学びのプロセスも相手を「大人」として組み立ててみてください。
これは新入社員に限らず、組織での通常のコミュニケーションにも言えると考えています。
まずはメンバーを「あの子」と呼んだり、「〜くん」「〜ちゃん」と呼ぶのをやめることから始めてみませんか。