Upgrade to Pro
— share decks privately, control downloads, hide ads and more …
Speaker Deck
Features
Speaker Deck
PRO
Sign in
Sign up for free
Search
Search
教科教育学における指導介入の全般的効果 ―メタ分析を通した研究成果の量的統合―
Search
Daiki Nakamura
September 09, 2018
Education
0
26
教科教育学における指導介入の全般的効果 ―メタ分析を通した研究成果の量的統合―
日本教科教育学会 第44回全国大会 2018年9月9日
Daiki Nakamura
September 09, 2018
Tweet
Share
More Decks by Daiki Nakamura
See All by Daiki Nakamura
適切な回帰推定量の使用が学力調査の推定精度を向上させる効果の検討
arumakan
0
14
Developing a Diverse Interests Scale for STEM Learners: Based on the ROSES Survey in Japan
arumakan
0
10
条件制御能力を測定するコンピュータ適応型テストの開発
arumakan
0
160
科学教育の読書会を中心とした新しい研究活動の展開
arumakan
0
170
The Value of Science Education in an Age of Misinformation
arumakan
1
170
教育研究における研究倫理問題の論点整理
arumakan
0
530
TIMSS 2019 環境認識尺度に関する日本人学習者の特徴
arumakan
0
190
統計勉強会2023春@岡山大学
arumakan
0
900
Materials for ReproducibiliTea session on Pownall et al. 2022
arumakan
0
170
Other Decks in Education
See All in Education
Nodiレクチャー 「CGと数学」講義資料 2024/11/19
masatatsu
2
190
Introduction - Lecture 1 - Web Technologies (1019888BNR)
signer
PRO
0
4.9k
Human Perception and Cognition - Lecture 4 - Human-Computer Interaction (1023841ANR)
signer
PRO
0
710
Tableau トレーニング【株式会社ニジボックス】
nbkouhou
0
19k
Flip-videochat
matleenalaakso
0
14k
Amazon Connectを利用したCloudWatch Alarm電話通知
junghyeonjae
0
260
Epithelium Flashcards
ndevaul
0
1k
Web 2.0 Patterns and Technologies - Lecture 8 - Web Technologies (1019888BNR)
signer
PRO
0
2.4k
【COPILOT無料セミナー】エンゲージメントと自律性の高いプロジェクト型人材育成に向けて~プロジェクト・ベースド・ラーニング(PBL)という選択肢~
copilot
PRO
0
130
cbt2324
cbtlibrary
0
110
Kindleストアで本を探すことの善悪 #Izumo Developers' Guild 第1回 LT大会
totodo713
0
130
Repaso electricidade e electrónica
irocho
0
200
Featured
See All Featured
I Don’t Have Time: Getting Over the Fear to Launch Your Podcast
jcasabona
28
2k
Optimising Largest Contentful Paint
csswizardry
33
2.9k
BBQ
matthewcrist
85
9.3k
CSS Pre-Processors: Stylus, Less & Sass
bermonpainter
356
29k
Raft: Consensus for Rubyists
vanstee
136
6.6k
CoffeeScript is Beautiful & I Never Want to Write Plain JavaScript Again
sstephenson
159
15k
Building an army of robots
kneath
302
43k
Building Your Own Lightsaber
phodgson
103
6.1k
Embracing the Ebb and Flow
colly
84
4.5k
RailsConf 2023
tenderlove
29
900
Become a Pro
speakerdeck
PRO
25
5k
The Art of Programming - Codeland 2020
erikaheidi
52
13k
Transcript
教科教育学における 指導介入の全般的な効果 -メタ分析を通した研究成果の量的統合 - 町田市立七国山小学校 中村 大輝 教科教育学会 2018-9-9 全23枚+補
研究概要 研究の目的 教科教育における資質・能力を志向した介入 の全体的な効果を明らかにする 2 1. 小~中程度の効果量 2. 出版バイアスは× 3.
指導法が影響 統合した全体の効果量は0.44 指導法の評価の判断基準に ゆがめられているとは言えない 〇課題解決、足場かけ、モデリング ▲反復練習 効果量 g の統合 (メタ分析)
発表の流れ 3 Ⅰ.研究の背景 Ⅲ.出版バイアス Ⅱ.全般的な効果 Ⅳ.影響する変数
資質・能力 4 新学習指導要領における資質・能力 学びを人生や社会に生かそうとする 学びに向かう力・人間性の涵養 生きて働く知識・技能の習得 未知の状況にも対応できる 思考力・判断力・表現力等の育成 文部科学省(2016)学習指導要領改訂の方向性
実践研究 5 ⚫ 資質・能力の育成に関する実践研究 事後調査 事前・事後調査 群間比較 質的研究 量的研究 混合研究
知識 技能 意欲 態度 思考 表現 これらが育ったかを検証 数値データ
実践研究の蓄積 6 ⚫宮田(2013)小学校理科 モデルの作成 上皿天秤の操作技能に正の効果 ⚫榊原・水落(2017)小学校社会 多面的思考の促進 批判的思考態度の育成に正の効果 ⚫津田・川口・齊藤(2017)中学体育 反復練習
ボール投げの技能に負の効果 -0.40 0.28 効果量 g 1.05 0 比較可能になった
研究目的 7 教科教育における資質・能力の育成を志向 した介入の全体的な効果を明らかにする 目的 小中高 実践研究 知識・技能 思考・判断・表現 態度
効果量 g を人数で 重み付き平均
研究の方法 8 論文 抽出 論文 2008-2018 ・小~高校生を対象とした実践研究 ・資質・能力を測定 ・効果量が算出可能 論文26件
『日本教科教育学会誌』 ※効果量が明記された論文は2件
研究の方法2 9 論文26件 𝒈 = 1 − 3 4 𝑛1+𝑛2−2
−1 × 𝜇1−𝜇2 𝑛1𝑠1 2+𝑛2𝑠2 2 𝑛1+𝑛2 重み付き平均 平均効果量 =全般的な効果 どの研究も、平均効果量付近に 収束するはず →出版バイアスの検討 平均 プロット メタ分析 平均値の差 (実験群-統制群) 標準偏差 補正
発表の流れ 10 Ⅰ.研究の背景 Ⅲ.出版バイアス Ⅱ.全般的な効果 Ⅳ.影響する変数
効果量の統合 11 論文26件 0.44 [ 0.33, 0.56] 文献 効果量 [95%信頼区間]
平均効果量 𝒈 = 1 − 3 4 𝑛1 + 𝑛2 − 2 − 1 × 𝑑 Ntotal = 1772 研究 11 藤川・林 2015 研究 10 筒井・日高・後藤 2015 研究 9 高田 2015 研究 8 筒井・日高・後藤 2016 研究 7 山岡・松本 2016 研究 6 谷津・山野井 2016 研究 5 灘本・山下・日高・後藤 2017 研究 4 山本・渡邉 2017 研究 3 津田・川口・齊藤 2017 研究 2 榊原・水落 2017 研究 1 千菊 2018 0.42 [ 0.18, 0.66] 0.31 [-0.08, 0.70] 0.29 [-0.16, 0.74] -0.09 [-0.42, 0.23] 0.32 [-0.02, 0.65] 0.56 [ 0.19, 0.94] 0.53 [ 0.22, 0.85] 0.58 [ 0.31, 0.86] -0.40 [-1.05, 0.25] 0.28 [ 0.05, 0.51] 0.14 [-0.22, 0.49] 研究 26 寺本・松浦・角屋・森 2008 0.47 [ 0.09, 0.85] … … …
平均効果量の解釈 12 平均効果量 g=0.44 Cohen基準:小~中程度の大きさ • Lipsey & Wilson(1993):心理・教育分野 <0.50>
• Hattie(2009) :指導法全体 <0.40> ◆先行研究との比較 →指導法の効果の程度を判断する基準になり得る →教科教育における指導介入は0.4~0.5に収束? →教科を超えた議論が可能
発表の流れ 13 Ⅰ.研究の背景 Ⅲ.出版バイアス Ⅱ.全般的な効果 Ⅳ.影響する変数
漏斗プロット 14 平均効果量 g=0.44 0.371 0.278 0.185 0.093 0 -0.5
0 0.5 1 1.5 2 効果量 標準誤差 出版バイアスの 傾向は見られず (p = 0.16)
フェイルセーフ N 15 この先,効果量が0という研究結果を 何個追加したときに, 全体の平均効果量が有意でなくなるか フェイルセーフ N 効果がないという研究結果が多少存在したとしても、 プラスの効果があるという結果は揺るがない
=14896 効果がない ↓ 未公開の研究によって結果が揺らぐ?
発表の流れ 16 Ⅰ.研究の背景 Ⅲ.出版バイアス Ⅱ.全般的な効果 Ⅳ.影響する変数
調整変数ごとの効果量 17 調整変数 研究数 g QB 指 導 法 メタ認知
2 .33 16.39* (p =.04) モデリング 2 .99 強調・視覚化 5 .32 教材・教具・単元設計 8 .41 足場かけ 2 .63 直接体験 1 .49 反復練習 1 -.40 批判的思考 4 .41 課題解決学習 1 1.02 下位変数間 のばらつき →指導方法によって効果量が有意に異なる
調整変数ごとの効果量 18 調整変数 研究数 g QB 教 科 英語 4
.44 2.05 (p =.73) 保健 2 .55 理科 12 .51 社会 1 .28 体育 7 .33 資 質 能 力 態度 6 .40 2.22 (p =.53) 知識 9 .51 技能 10 .38 思考 1 .73 学 校 種 小学校 11 .51 0.99 (p =.61) 中学校 9 .40 高等学校 6 .38 下位変数間 のばらつき →下位項目間で有意差は見られず
年齢による変動 19 10 12 14 16 18 0.0 0.5 1.0
1.5 年齢 効果量 年齢による変動 は見られない
出版年による変動 20 2008 2010 2012 2014 2016 2018 0.0 0.5
1.0 1.5 出版年 効果量 出版年による変動 は見られない
今後の課題 21 ⚫研究の蓄積が必要 ⚫他の調整変数の検討
提案 22 ⚫ 効果量を指標として、教科を越えた指導法の比較を! ➢ 効果量の記載 ➢ 平均的な指導効果が0.4~0.5という基準 ⚫ 同じ指導法の実践研究成果を統合した議論を!
➢ 1つの実践例からの一般化は難しい (ex. サンプルサイズ、発達段階、地域特性) ➢ メタ分析手法の活用
研究概要 研究の目的 教科教育における資質・能力を志向した介入 の全体的な効果を明らかにする 23 1. 小~中程度の効果量 2. 出版バイアスは× 3.
指導法が影響 統合した全体の効果量は0.44 指導法の評価の判断基準に ゆがめられているとは言えない 〇課題解決、足場かけ、モデリング ▲反復練習 効果量 g の統合 (メタ分析)