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日本理科教育学会 第63回関東支部大会(茨城) 発表スライド資料

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December 12, 2024
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日本理科教育学会 第63回関東支部大会(茨城) 発表スライド資料

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Daichi Morikawa

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  1. ⼩学校理科における気象の不確実性 に関する指導法の考案 − 単元「台⾵と天気の変化」を中⼼に − ⻄ 東 京 市 ⽴

    栄 ⼩ 学 校 森川 ⼤地 中村 ⼤輝 宮 崎 ⼤ 学 教 育 学 部 2024.12.07 ⽇本理科教育学会 第63回関東⽀部⼤会(茨城) A2−04 連絡先 メールアドレス X(旧Twitter)
  2. ⼩学校 第5学年の気象を扱う単元「天気の変化」 1 学習指導要領で⽰されている内容(⽂部科学省,2017) • 天気の変化は映像などの気象情報を⽤いて予想できること • 天気はおよそ⻄から東へ変化していくという規則性があり(中略)予想できることを捉えるようにする 教科書に記載されている内容 天気に関する学習内容

    1. 「天気の変化の仕⽅にはきまりのようなものがあるのだろうか」という問題 2. 数⽇間の気象情報を集めて,天気の変化を記録する(またはウェブサイトで気象情報を集める) 3. 天気も雲の動きにつれて,およそ⻄の⽅から変わっていくことをまとめる 4. 実際に天気予報をしてみよう 台⾵に関する学習内容 1. 「台⾵はどのように動くのだろうか」という問題 2. これまでの台⾵の動きを調べる 3. 右図のような傾向をまとめる 4. 次の台⾵の進路を予想してみよう 引⽤:気象庁HP 主に天気の変化に関する規則性を扱う 主に台⾵の進路を扱う
  3. 単元「天気の変化」における課題点 2 • 気象科学はとても複雑であり,初学者が予測することは極めて難しい(Hall, 2006) • ⼩学校で扱われる微気象スケールは理解が難しく,観察から結論を導き出すことが困難である (名越,2000) • 単純化された規則性を⾒いだすことを⽬的とした学習では,実⽣活での経験と独⽴してしまい,

    暗記するだけの単調な学習となってしまう(名越,2000) • 近年の異常気象などを踏まえると,学習内容と実際の現象に⼤きな乖離が⽣じている (e.g., 線状降⽔帯の発⽣・不規則な台⾵進路) 結果として… 「天気を予想してみよう」「台⾵第◯号の進路を予測してみよう」のような活動を⾏なっても 当たった・外れたと⼀喜⼀憂する活動に留まってしまう傾向にある その要因には 気象予報に含まれる不確実性が明⽰的に扱われていないこと
  4. 検証⽅法 • 児童のノート記述 / 授業中の児童の発話プロトコルを中⼼に質的分析 4 対象者 • 東京都公⽴⼩学校 •

    第5学年 3クラス(n=104) 単元 • 台⾵と天気の変化(「天気の変化」は1学期に既習) 実施時期 • 2024年9⽉〜10⽉ 分析対象
  5. 台⾵の不確実性を扱った授業の展開 5 導⼊ 展開 まとめ ◯ 台⾵の天気予報ニュースを⾒る ◯ 気付いたことを学級全体で共有する ◯

    台⾵進路の予測に関する明⽰的な教⽰ ・台⾵の予報円 ・予報に伴う誤差や確率 ・予報円の変遷 ◯ 台⾵の天気予報ニュースを⾒る ◯ 台⾵の進路予想に対する捉え⽅がどのように変化したか記述する
  6. 台⾵の不確実性を扱った授業の展開 6 導⼊ 展開 まとめ ◯ 台⾵の天気予報ニュースを⾒る ◯ 気付いたことを学級全体で共有する ◯

    台⾵進路の予測に関する明⽰的な教⽰ ・台⾵の予報円 ・予報に伴う誤差や確率 ・予報円の変遷 ◯ 台⾵の天気予報ニュースを⾒る ◯ 台⾵の進路予測に対する捉え⽅がどのように変化したか 同 じ 内 容 の 動 画 を 視 聴
  7. 児童が捉える予報円の把握 11 すぐに定義を伝えるのではなく ⇨ 3択から選択 <児童の理解度を把握> 円の⼤きさに合わせて どんどんおおきくなった ⼤きさはそのまま 円のとちゅうまでいった

    ⼤きさはそのまま 円のはしっこにいった NHK for School 「台⾵の進路を予測しよう」https://www2.nhk.or.jp/school/watch/clip/?das_id=D0005320306_00000#in=0&out=90
  8. 台⾵の不確実性を扱った授業の展開(再掲) 19 導⼊ 展開 まとめ ◯ 台⾵の天気予報ニュースを⾒る ◯ 気付いたことを学級全体で共有する ◯

    台⾵進路の予測に関する明⽰的な教⽰ ・台⾵の予報円 ・予報に伴う誤差や確率 ・予報円の変遷 ◯ 台⾵の天気予報ニュースを⾒る ◯ 台⾵の進路予測に対する捉え⽅がどのように変化したか 同 じ 内 容 の 動 画 を 視 聴
  9. 台⾵進路の予測への捉え⽅の変化 20 台⾵進路の予測に伴う不確実性やリスクを認識 ⇨ 不確実性を考慮した意思決定への⼿がかりとして 児童A 今回の学習では機械にも誤差があることがわかった。予報円は台⾵が来る70%の確率を表しているから,もしかしたら ズレるかもしれない。⾃分が住んでいる地域の近くに予報円があったら注意しようと思った。災害に対する備えをしっか りとして置かなければいけないと思った 児童B

    今までは,予報円の真ん中が⼀番強いから端だったら⼤丈夫だと思っていた。 けど今⽇の学習で,円の中は同じ確率でくるかもしれないことを学んだ。予報円の端の⽅だったとしても危険さは同じ ってこと。予報の⾒る時の気持ちが変わった。 あと予報円はほぼ外れることはないと思っていた。だけど,⾃分が思っていたよりも確率が低かった。 予報円が外れることもあり得るから,予報円から遠く離れているから⼤丈夫と思ってはいけないと考えるようになった。
  10. 参考・引⽤⽂献 21 Brendan Hall(2006)Teaching and learning uncertainty in science: the

    case of climate change. Higher Education Pedagogies, 17(1), 48-49. 気象庁(2023)「【報道発表】台風進路予測の改善について」 https://www.jma.go.jp/jma/press/2306/26b/20230626_typhoon_track_forecast_improvement.pdf (閲覧:2024.12.04) 文部科学省(2017)『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説理科編』東洋出版社. 名越利幸(2000)「天気予報の科学を中心とした新しい気象カリキュラムの提案」日本科学教 育学会研究会研究報告,第14巻,第6号,45-50. NHK for School 「台風の進路を予測しよう」 https://www2.nhk.or.jp/school/watch/clip/?das_id=D0005320306_00000#in=0&out=90(閲覧: 2024.12.04)
  11. ⼩学校理科における気象の不確実性 に関する指導法の考案 − 単元「台⾵と天気の変化」を中⼼に − ⻄ 東 京 市 ⽴

    栄 ⼩ 学 校 森川 ⼤地 中村 ⼤輝 宮 崎 ⼤ 学 教 育 学 部 2024.12.07 ⽇本理科教育学会 第63回関東⽀部⼤会(茨城) A2−04 連絡先 メールアドレス X(旧Twitter)