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問題事象から変数を見いだす力の評価方法の開発
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Daichi Morikawa
September 23, 2021
Education
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問題事象から変数を見いだす力の評価方法の開発
2021年9月20日
日本理科教育学会全国大会(群馬大会)
Daichi Morikawa
September 23, 2021
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Transcript
問題事象から変数を⾒いだす⼒の 評価⽅法の開発 東 京 都 板 橋 区 ⽴ 桜
川 ⼩ 学 校 森川 ⼤地 中村 ⼤輝 広 島 ⼤ 学 ⽯⾶ 幹晴 ⼯藤 壮⼀郎 広 島 ⼤ 学 広 島 ⼤ 学 ⽇本理科教育学会 第71回全国⼤会(群⾺⼤会) 2021.9.20
発表の概要 Keyword︓問い 変数 妥当性 項⽬反応理論 評価問題 ⽬的 「変数を⾒いだす⼒」測定問題の開発 @ 問いの⽣成場⾯
項⽬反応理論に基づき 調査問題の特性 を検討 指導法の効果検証 段階的な指導法の考案 児童の実態把握 計 10問 本研究を通して 今後… 磁⼒
背 景 ⽬ 的 ⽅ 法 結 果 問いの重要性 理科の問題解決学習
問いを⽴てることから始まる その後の活動の⽅向性を決める鍵 (Chin & Osborne, 2008) (猿⽥・中⼭,2015) 考 察 問いの⾒いだし ⇨ 予想・仮説の設定 ⇨ 検証計画の⽴案 ⇨ 観察・実験 ⇨ 結果の処理 ⇨ 考察 ⇨ 結論の導出 1
背 景 ⽬ 的 ⽅ 法 結 果 問いを⽴てる際の思考過程 問いに⾄るまでに
変数 を⾒いだす思考過程が含まれている 考 察 ⇨ 変数を⾒いだす⼒が重要なポイント 吉⽥・川崎(2019) 河原井・宮本(2021) 2
背 景 ⽬ 的 ⽅ 法 結 果 変数の測定問題に関する先⾏研究 考
察 Burnsら(1985) 「Test of Integrated Process Skills Ⅱ」 (TIPS Ⅱ) 荒井・永益・⼩林(2008a,b) 「中学⽣の事前事象に関わる変数への気づきに影響を及ぼす要因の検討」 「⾃然事象から変数を抽出する能⼒に影響を及ぼす諸要因の因果モデル」 △ 問いを設定する場⾯ ではない △ 扱う事象の抽象度が⾼い △ 得点化⽅法の妥当性 評価⽅法の課題 実験に含まれる変数の 同定を求める問題 ⾃然事象の中から 変数を⾒いだす問題 計3問 3
将来的に… 指導法の効果検証が可能 学習者への効果的な介⼊ に貢献 背 景 ⽬ 的 ⽬的 問題事象から「変数を⾒いだす⼒」の
評価⽅法の開発を⽬的とする ⽅ 法 結 果 考 察 4
背 景 ⽬ 的 定義 ⽅ 法 変数を⾒いだす⼒… ⽬の前の問題事象の中から 変
化 し 得 る 要 素 を 特 定 す る ⼒ ⽬に⾒えない変数 考 察 結 果 ⽬に⾒える変数 必須のプロセス ⾒いだすことが困難 5
変数を⾒いだす⼒の定義︓⽬の前の問題事象の中から変化し得る要素を特定する⼒ 例えば… 第3学年 単元「⾵とゴムの働き」 独⽴変数 従属変数 3年⽣ から ⽬に⾒えない変数 を取り扱う
教 師 は 児 童 の 実 態 を 把 握 す る 必 要 が あ る ⽬に⾒えない変数の取扱い 背 景 ⽬ 的 ⽅ 法 考 察 結 果 問い︓⾵の強さによって、物が動く距離は変わるのだろうか。 6
内容的な側⾯の検討 背 景 ⽬ 的 ⽅ 法 結 果 ⽅法
1. 評価問題の作成 2. 予備調査 3. 本調査 4. 量的分析 ⾯接調査 ⼩学⽣4名 発話思考法 項⽬反応理論 項⽬⺟数と潜在特性値を推定 考 察 cf. 村⼭(2012) 都内⼩学校7校 846名(第3〜6学年) ※原稿執筆時点 7
背 景 ⽬ 的 作成した評価問題(⼀部抜粋) 考 察 (森川・中村,2021) ⽅ 法
結 果 ⽐較 磁⼒ 正答︓1点 誤答︓0点 8
内容的な側⾯の検討 背 景 ⽬ 的 ⽅ 法 結 果 ⽅法
1. 評価問題の作成 2. 予備調査 3. 本調査 4. 量的分析 ⾯接調査 ⼩学⽣4名 発話思考法 項⽬反応理論 項⽬⺟数と潜在特性値を推定 考 察 cf. 村⼭(2012) 都内⼩学校7校 846名(第3〜6学年) ※原稿執筆時点 9
2事象を⽐較し、共通点や差異点を⾒いだす ⽬に⾒える変数(違い)から疑問を抱く ⽬に⾒える変数から因果関係を模索 ⽬に⾒えない変数(背後に隠れている) を⾒いだす 「極は⼀緒だけど、 クリップの数が違うなあ」 「ん︖クリップの数が 違うのはなんでだろう」 「クリップの数が違うってことは…
磁⼒が違うのかな」 「クリップの数と磁⼒が関係して、 Aの⽅が数が多くなるのかな」 背 景 ⽬ 的 考 察 ⽅ 法 結 果 予備調査から⾒えた思考過程 10
内容的な側⾯の検討 背 景 ⽬ 的 ⽅ 法 結 果 ⽅法
1. 評価問題の作成 2. 予備調査 3. 本調査 4. 量的分析 ⾯接調査 ⼩学⽣4名 発話思考法 項⽬反応理論 項⽬⺟数と潜在特性値を推定 考 察 cf. 村⼭(2012) 都内⼩学校7校 846名(第3〜6学年) ※原稿執筆時点 11
背 景 ⽬ 的 ⽅ 法 考 察 結 果
作成した調査問題 ⼀覧 磁⼒ 太陽の位置 球の素材 空気の体積 ⾊の⾒え⽅ ⾵の向き 濃度 観測者の位置 栄養 気温 12
内容的な側⾯の検討 背 景 ⽬ 的 ⽅ 法 結 果 ⽅法
1. 評価問題の作成 2. 予備調査 3. 本調査 4. 量的分析 ⾯接調査 ⼩学⽣4名 発話思考法 項⽬反応理論 項⽬⺟数と潜在特性値を推定 考 察 cf. 村⼭(2012) 都内⼩学校7校 846名(第3〜6学年) ※原稿執筆時点 13
背 景 ⽬ 的 項⽬反応理論による分析結果 ⽅ 法 結 果 Item
b a Item b a 1 −1.28 1.44 6 −2.05 2.21 2 −1.21 1.88 7 0.82 0.68 3 −0.77 1.14 8 – – 4 −1.38 1.73 9 −0.47 0.92 5 −0.35 1.27 10 0.19 1.06 項⽬⺟数 (困難度b,識別⼒a) 考 察 ⼤きいほど 能⼒を識別する⼒が⾼い 問題の難しさ 例)Q6とQ7 ⇨ Q7の⽅が難しい a>0.4 2⺟数ロジスティックモデル 14
背 景 ⽬ 的 識別⼒ a の結果(問題の精度を⾒分ける値) ⽅ 法 結
果 Item b a Item b a 1 −1.28 1.44 6 −2.05 2.21 2 −1.21 1.88 7 0.82 0.68 3 −0.77 1.14 8 – – 4 −1.38 1.73 9 −0.47 0.92 5 −0.35 1.27 10 0.19 1.06 項⽬⺟数 (困難度b,識別⼒a) 考 察 評価問題として⼗分な性質 いずれも a>0.4 15
背 景 ⽬ 的 困難度 b の結果(問題の難易度を表す値) ⽅ 法 結
果 Item b a Item b a 1 −1.28 1.44 6 −2.05 2.21 2 −1.21 1.88 7 0.82 0.68 3 −0.77 1.14 8 – – 4 −1.38 1.73 9 −0.47 0.92 5 −0.35 1.27 10 0.19 1.06 項⽬⺟数 (困難度b,識別⼒a) 考 察 全体的にやや易しい問題 16
背 景 ⽬ 的 テスト情報曲線の結果 ⽅ 法 結 果 考
察 平均よりやや低い集団において⾼い弁別性 今回の測定問題は この辺りの能⼒を識別するテスト ⾼ 低 (平均) テ ス ト の 精 度 変数を⾒いだす⼒ 17
背 景 ⽬ 的 今後の活⽤例 ⽅ 法 考 察 結
果 ⽬に⾒えない変数を⾒いだす⼒が低い学習者 スクリーニング 個別⽀援 問いを⽣成する際の全体指導 今後例えば ⼩学校第3学年において ・段階的に問いの⽣成や変数について指導 ・⽬に⾒える変数を⼿掛かりに指導 ・⽬に⾒えない変数を⾒いだせない 児童への重点的なフォロー 当該能⼒の⾼い児童を中⼼に ⽬に⾒えない変数を共有 ↓ 学びを広げていく スモールステップで ⽬に⾒える変数・⾒えない変数を組み込んだ 問題づくりの場⾯の授業設計 ↓ 学⼒が中〜下層の児童 問いを⾒いだす⼒の育成 18
参考・引⽤⽂献 Chin, C. & Osborne, J. (2008) Student’s question; A
potential resource for teaching and learning Science. Studies in Science Education, 44 , 1-39. 河原井俊烝・宮本直樹(2021)「中学校理科における科学的探究可能な『問い』の⽣成プロ セス」『理科教育学研究』61(3), 403-416. 森川⼤地・中村⼤輝(2021)「理科における変数を⾒いだす⼒の評価⽅法に関する試案」 『⽇本教育⼯学会研究報告集』JSET21-1-A10, 62-65. 村⼭航(2012)「妥当性概念の歴史的変遷と⼼理測定学的観点からの考察」The annual Report of Education Psychology in Japan, 51, 118-130. 猿⽥祐嗣・中⼭迅(2011)『思考と表現を⼀体化させる理科授業ー⾃らの⾔葉で問いを設定 して結論を導く⼦どもをさだてるー』東洋館出版社,東京,pp.17-28. 吉⽥美穂・川崎弘作(2019)「科学的探究における疑問から問いへ変換する際の思考の順序 性の解明に関する研究」『理科教育学研究』60(1), 185-194.
問題事象から変数を⾒いだす⼒の 評価⽅法の開発 0.項⽬反応理論とは 1.先⾏研究 2.本調査に関する資料 3.調査問題の⼀覧 4.得点化について 5.調査結果の活⽤⽅法 6.構成概念妥当性 7.各項⽬反応曲線
8.変数の分類 資料 連絡先 本⽇のスライド資料は ⇨ Zoom チャット
資料 0.項⽬反応理論とは 1.先⾏研究(「問いと疑問の区別」「変数に関する評価問題」) 2.本調査に関する資料 3.調査問題の⼀覧(最終版/削除した問題) 4.得点化について 5.調査結果の活⽤⽅法 6.構成概念妥当性 7.各項⽬反応曲線 8.変数の分類
資料0︓項⽬反応理論とは 正答数に基づかないテスト得点の算出(問題の難易度に応じた得点化) 学⼒がθだけある⼈は、問題Xに対して<正解・不正解>のような反応をするだろう 受験者の正誤パターンから最も統計的に可能性の⾼い “学⼒θ” を推定する⼿法 異なる問題からなるテストの結果を互いに⽐較できる 異なる集団で得られたテストの結果を互いに⽐較できる 参考︓熊⾕・荘島(2015)『⼼理学のための統計学4 教育⼼理学のための統計学ーテストでココロをはかる』
資料0︓項⽬反応理論とは つまり今回開発した測定問題は… 別の地域の児童でも活⽤できる A問題 B問題 事前・事後テストで⽐較できる
操作可能な変数に着⽬ 種⼦が発芽するために、 空気は必要なのだろうか 「なぜ」「どうして」など ⾃ら問い直したもの 疑い、驚き、困惑 など 問題をつくる上での 前提条件となる⼼理状況 独⽴変数
や 従属変数が明確 疑問 疑問感 問い 科学的に探究可能な問い 独⽴変数 従属変数 資料1︓問いと疑問の区別 (廣,内之倉 2017)
「変数を同定するスキルの測定」 @TIPSⅡ 実験⽅法が与えられた状況から ⽂に含まれる独⽴変数と従属変数の同定を求める問題 △ 問いを設定する場⾯ではない Burnsら(1985) 「Test of Integrated
Process Skills Ⅱ」 (TIPS Ⅱ) 資料1︓変数に関する先⾏研究
(⼀部) 炎が⼀定時間に出す熱の量を測定するために、1リットルの⽔を⼊れた ビーカーを10分間バーナーで加熱する実験を⾏いました。 この実験でバーナーの炎から発⽣する熱の量をどのように測定したらよい ですか。 A.10分後の⽔の温度変化を記録する B.10分後の⽔の量を測定する C.1分後の炎の温度を測定する D.1リットルの⽔が沸騰するまでの時間を計算する 実験場⾯を
提⽰ 実際の問題 資料1︓変数に関する先⾏研究
荒井・永益・⼩林(2008a,2008b) 「中学⽣の事前事象に関わる変数への気づきに影響を及ぼす要因の検討」 「⾃然事象から変数を抽出する能⼒に影響を及ぼす諸要因の因果モデル」 変数への気づきの能⼒ △ 問題事象の抽象度 △ 得点化⽅法の妥当性 △ 問題数が少ない(≒信頼性の低下)
資料1︓変数に関する先⾏研究 従属変数を抽出する能⼒ 独⽴変数を抽出する能⼒ 従属変数を数値化する能⼒
(⼀部) 実際の問題 太陽の光は私たちの⽣活にどのような 影響を与えているか。あなたが思いつくことを できるだけたくさん、簡単に書きなさい。 抽象的な質問 回答数を得点 (能⼒) 各能⼒ 1問ずつ
資料1︓変数に関する先⾏研究
準 備 す る も の □ タブレットPC □ 回答⽤紙
□ タイマー ・A問題とB問題 → 児童の負担を考慮して ・各A、B問題 10分を⽬安 予備実験から ・対象︓第3〜6学年(サンプルサイズ750名程度を⽬指して) 様々な学⼒層を網羅 ⇨ ⺟集団への代表性を⾼める 資料2︓本調査に関する資料
資料2︓本調査に関する資料
資料2︓本調査に関する資料
資料3︓調査問題の⼀覧(最終版)
資料3︓削除した問題の⼀覧 予備調査より 思考のプロセスが 異なったため削除 基礎集計より 正答率が著しく低く ⼩学⽣には不適切と判断
資料3︓評価問題の領域 Item 領域 Item 領域 1 物理 6 物理 2
地学 7 物理 3 化学 8 地学 4 化学 9 ⽣物 5 ⽣物 10 化学
資料4︓得点化について Item 正答例 誤答例 Item 正答例 誤答例 1 磁⼒ 粘着⼒,威⼒
6 ⾵の向き こいのぼりの 向き 2 太陽の位置 太陽の強さ 7 濃度,温度 卵の重さ 3 球の素材 落とすときの⼒ 8 (観測者の)位置 太陽の向き 4 空気の体積 ゴムの伸び⽅ 9 栄養 時期 5 ⾊の⾒え⽅ 体の中の様⼦ 10 気温 雲の種類 ⾃由記述(短答,複数回答可) 正答︓1点 誤答︓0点
資料5︓結果の活⽤⽅法 全問正答の児童 全問不正答 の児童 ⼀部正答の児童 個別⽀援 思考過程の確認 など 互いに学び合う
資料6︓構成概念妥当性 村⼭(2012) 複数の専⾨家で検討 予備調査を通して検討 本調査後に検討
⾼ 低 (平均) 資料7︓各項⽬反応曲線 変数を⾒いだす⼒ 正 答 す る 確
⽴
⾵の向き 濃度 Item b 6(B1) −2.05 Item b 7(B2) 0.82
資料7︓本測定問題と難易度 易 難
資料8︓変数の分類(エネルギー領域) 領域 学年 独⽴変数 従属変数 エ ネ ル ギ %
領 域 3 ⾵の強さ 物が動く距離 ゴムの⼒ 物が動く距離 太陽の光 明るさ / 暖かさ ⾳の⼤きさ 物の振動(振え) つなぎ⽅ 電気がつくかつかない 物の素材 電気を通すか通さない 物の素材 磁⽯に引き付けられる(有無) 磁⽯と物の距離 磁⽯に引き付けられる強さ 磁⽯の極 引き付け合うか退け合う 4 乾電池の数 / つなぎ⽅ 電流の⼤きさ / 向き 乾電池の数 / つなぎ⽅ ⾖電球の明るさ / モーターの回り⽅ 5 重さ / ⻑さ / 振れ幅 時間 電流の有無 磁化する・しない 電流の向き 極 電流の⼤きさ 電磁⽯の強さ 導線の巻数 電磁⽯の強さ 6 ⼒を加える位置 / ⼒の強さ てこの傾き てこの仕組み 道具(物) 光、⾳、熱、運動 / 道具(物) 電気 電気 光、⾳、熱、運動 / 道具(物) 各学年で ⽬に⾒えない変数 が扱われている
資料︓知識への依存 なるべく 知識に依存しない事象 を⽤いた 測定問題 既習の知識に⼤きく依存していない 内容的側⾯の検討において 本調査の結果から もし依存しているのならば… 【磁⽯の問題】
⇨ 3年⽣(未履修) ︓解けない ⇨ 4年⽣以上(履修済)︓ほとんどの児童が解ける 【ボールの問題*】⇨ 「ボールに⼊っている空気の量」という回答も⾒られた ⽣活経験から問題の場⾯を 想起できるように (*) 知識があり、変数を知っていても “その変数を⾒いだせるか” は別問題