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量子力学入門(1)

Etsuji Nakai
December 25, 2019

 量子力学入門(1)

2019/12/25 ver1.0 Initial release.
2019/12/27 ver1.1 ヒルベルト空間の説明を修正、抽象的な意味での状態空間の概念を説明
2019/12/27 ver1.2 古典的な波動の関数表現についての説明を追加

Etsuji Nakai

December 25, 2019
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Transcript

  1. 量子力学における解釈 • スクリーンに衝突する(スクリーンを構成する分子と相互作用する)まで、 電子がどこにあるかは、観測者には分からない。 • 個々の電子に対して、その電子を観測した際に、「特定の場所 x に発見され る確率」を表す波動が存在する。 •

    確率を表す波動が二重スリットで干渉した結果、スクリーン上で電子が観測 される確率に濃淡が生じる。 ⇨ この解釈の下に組み立てられた量子力学によって、さまざまな実験結果を  説明できるので、大部分の物理学者はこれが正しいと信じている。 9
  2. ブラケット記法に関する補足 • 先ほどの関数   と   を形式的に            と表すこ とにすると・・・・ ・・・というのは、厳密には正しい言い方ではありません。 • シュレーディンガーは、「物質の状態は波動関数で表される」と考えましたが、その後の議論に見

    たように、波動関数はヒルベルト空間の元であることが分かりました。 • そこで、考え方を改めて、「物質の状態は、抽象的なヒルベルト空間(状態空間)の元で表され る」と考えて、これを量子力学の根本原理とみなします。(古典解析理学では、質点の状態は「相 空間」の点で表されると考えたのと同様ですね。) • ブラケット記法は、この抽象的な「状態空間」の元を表します。ただし、波動関数全体がなすベク トル空間と状態空間は、同型なベクトル空間なので、波動関数とケットベクトルは、(同型ベクト ル空間の元として)同一視することができます。(具体的な同型写像の取り方は後述) • ・・・というあたりの厳密性にこだわる方は、波動関数とケットベクトルの間の「=」は、「同型 ベクトル空間の元として同一視する」という意味の記号と解釈してください。 19
  3. • 逆にこれに対応する演算子 を探すと、座標 x の固有状態であることから、 • 上式が任意の  について成り立つことから、次の結果が得られる。     (単純に x

    を掛けるという操作をする演算子) 座標演算子 • 座標 x の固有状態は、(波動関数の確率解釈から)ディ ラックのデルタ関数(の平行移動)と自然に決まった。 26
  4. 座標演算子 • 任意の波動関数   は、座標 x の固有状態        を用いて、確 かに展開できる。 • ブラケット記法に直すと次のように書ける。つまり、波動関数は、座標の固 有状態で展開した時の展開係数とみなすこともできる。

    ⇨「波動関数が作るベクトル空間」と「ブラケット記法による抽象的な状態空間」を厳密に区別する立場では、  これ(状態空間の元を位置の固有状態を基底として展開した時の展開係数)が波動関数の定義であり、  (抽象的な)状態空間と、波動関数が構成するベクトル空間の同型写像を与える。 27
  5. 演算子の可換性と同時固有状態 • 一般に、2つの物理量   が可換      であれば、両方の同時固有状 態(の集合)が存在して、それらが状態空間の正規直交基底となる。 • 証明(線形代数が分かる方向け・・・) ◦ 状態空間に任意の正規直交基底(例えば、運動量の固有状態)を入れて、成分表示すると、

    線形演算子は、行列で表示できる。この時、線形演算子が可換であることは、対応する行列 が可換があることと同値。可換行列は、あるユニタリ変換(直交変換の複素数版)で同時対 角化できる。このユニタリ変換で基底全体を変換すると、これらは、両方の演算子の同時固 有状態となる。 32
  6. 自由粒子の波動関数 • 運動量の固有状態 • 各点 x の値は、複素平面上の円を等速回転する。 • 全体として、運動量方向に平行移動していく。(ネジを真横から見ながら回 転させると、ネジ山が平行移動するのと同じ。)

    •     とすると、右に行くほど位相は進んでいる(=左の方が位相が遅れ ている)。時刻が少し進むと、ある点の位相は戻る(=左の位相が自分の場 所にやってくる)ので全体として右に平行移動するように見える。 40