Upgrade to Pro — share decks privately, control downloads, hide ads and more …

Fintech領域において注目すべき2021年以降の法令の改正

 Fintech領域において注目すべき2021年以降の法令の改正

2020年12月11日に開催した『フィンテックトレンド 2021(フィンテックエンジニア養成勉強会#12)〜ニューノーマル時代に不可欠なコンパスを持ち歩く〜』の発表スライド。

タイトル『Fintech領域において注目すべき2021年以降の法令の改正』
発表者:関口 諒(弁護士)

https://fintech-engineer.connpass.com/event/193987/

More Decks by フィンテック養成コミュニティ

Other Decks in Business

Transcript

  1. 【近著】 ・ 海外の決済関連サービスの我が国での適応可能性-事業面および法規制面からの検討-(金融法務事情2019年11月25日号) ・ 海外の保険テックサービスの我が国での適応可能性-事業面および法規制面からの検討-(金融法務事情2019年12月10日号) ・ 加盟店管理の法的視座 キャッシュレス社会の決済サービスにおける加盟店管理のあり方 (金融財政事情2018年8月6日号60頁) 関口

    諒(せきぐち まこと) 堀総合法律事務所 弁護士 2012年 慶応義塾大学法科大学院修了 2013年より堀総合法律事務所にて執務 2015年より外資系金融機関(銀行/証券会社)に出向 2019年 カリフォルニア大学バークレー校法科大学院 (LL.M.)修了 2019年10月 NY州司法試験合格 米国Smith, Gambrell & Russell 法律事務所での執務を経て、日本での執務に復帰 銀行、信託会社、証券会社、ベンチャーキャピタル、保険会社、決済事業者等の金融法務を幅広く担当 ⓒHori & Partners All rights reserved 2
  2. 説明の基本方針 ・ 令和2年の通常国会(第201回国会)で成立した内容が中心 - 資金決済法の改正 - 割賦販売法の改正 - 新しい金融仲介制度(金融サービス仲介業) +

    ペイロールに関する議論 ・ 現在、金融審議会で議論されており、来年の通常国会で審議されることが想定される 銀行等の規制・証券規制については時間の関係で紹介のみ ・ 改正により可能となる事項を中心に説明 → 実施に必要な規制対応は網羅していないのでご留意ください。 ⓒHori & Partners All rights reserved 3
  3. 新たな資金移動業の類型の創設 ・ 資金移動業を三類型に分類 ① 第一種資金移動業(法36条の2第1項) = 高額資金移動業 ⇒ 送金上限額なし ②

    第二種資金移動業(法36条の2第2項) = 現行の資金移動業 ⇒ 現行の政令どおり1回あたり100万円以下となる見込み ③ 第三種資金移動業(法36条の2第3項) = 少額資金移動業 ⇒ 政令の定めを待つことになるが、宿泊料金等での利用も想定して5万円としてはどうかとの意見が あったとされている 6 ⓒ Hori & Partners All rights reserved BtoB送金や海外送金 での利用が想定される?
  4. 第一種資金移動業への対応(滞留規制) 【法】 第一種資金移動業に関し負担する債務の制限(51条の2) ① 第一種資金移動業者は、各利用者に対して、移動する資金の額、資金を移動する日その他内閣府令 で定める事項が明らかでない為替取引に関する債務を負担してはならない ② 第一種資金移動業者は、資金の移動に関する事務を処理するために必要な期間その他の内閣府令 で定める期間を超えて、為替取引に関する債務を負担してはならない +

    資金移動業者一般に為替取引に用いられない利用者資金を保有しないための措置を求める 7 利用者A (送金者) Aの アカウント Bの アカウント 利用者B (受取人) 資金移動業者 入金 付替え 内閣府令で定める 期間内に出金 アカウントで 受け取った資金を 他に利用しにくい ⓒ Hori & Partners All rights reserved 都度入金 第二種や第三種 にも適用される
  5. 日本で少額・後払いサービスを提供する場合・・・(割販法) ⓒHori & Partners All rights reserved 11 登録包括信用購入あっせん業者の登録を受けてサービス提供 マンスリークリアに限定することで、登録包括信用購入あっせん業者の登録なしでサービス提供

    登録少額包括信用購入あっせん業者の登録を受けてサービス提供 ・ 本人を識別する符号を用いないならば・・・ 登録個別信用購入あっせん業者の登録を受けてサービス提供 ・ 本人を識別する符号を用いるならば・・・ マンスリークリアに限定することで、登録個別信用購入あっせん業者の登録なしでサービス提供 貸金業者としての後払い サービスの提供もありうる
  6. 複数の業種の仲介を一つのライセンスで 金融機関側 顧客側 銀行 銀行代理業者 電子決済等代行業者 証券 金融商品仲介業者 金融商品取引業者 保険

    保険募集人 保険仲立人 貸金 貸金業者 貸金業者 ※ 貸金業法では媒介も貸金業に該当する → 仲介しようとする業種に応じて複数の登録等が求められる。 ⇒ 銀行・証券・保険・貸金といった分野における仲介を一つのライセンスで行うことが可能に 15 ⓒHori & Partners All rights reserved
  7. どのようなサービスが考えられるのか① ⓒHori & Partners All rights reserved 16 銀行 証券会社

    保険会社 貸金業者 預金等媒介 有価証券等仲介 保険媒介 貸金業貸付媒介 金融サービス仲介業者 スーパーアプリ 利用者
  8. どのようなサービスが考えられるのか③ • 近時、欧米では、ITを活用したオンライン(モバイル)専業銀行が多く登場 - チャレンジャーバンク = 自ら銀行免許を取得して銀行サービスを提供 - ネオバンク =

    銀行免許を取得せずに対顧客側のフロント業務のみを行い、銀行免許を要する業務はパートナー 銀行に行わせる チャレンジャーバンク 顧客 パートナーバンク ネオバンク 顧客 銀行サービス の提供 銀行サービス の提供 提携 口座管理等は パートナー銀行 で行われる ⇒ 顧客からは、チャレンジャーバンクもネオバンクも一見相違がないように見える 18 口座管理や 銀行間決済
  9. チャレンジャーバンクとネオバンクの例 Cross River Bank ⇒ ニュージャージー州の州法銀行 ⇒ Fintech企業向けに、銀行免許を要する業務をバックヤードで担当するサービスを提供 = 大手数行が強力な米国銀行業界で、地方銀行ながら存在感を見せている

    ※ 概要はこちらを参照 https://www.crossriver.com/cross-river-operating-system チャレンジャーバンク ネオバンク N26 (ドイツ) Simple (アメリカ) Revolut (イギリス) Moven (アメリカ) Monzo (イギリス) Chime (アメリカ) Atom (イギリス) MoneyLion(アメリカ) Varo(アメリカ) Seed (アメリカ) ネオバンクなどのFintech業者の サポートというビジネスを展開 19 消費者向け ネオバンクサービスを 終了? Banking-as-a-Platform
  10. ネオバンクと金融サービス仲介業 ・ ネオバンクのサービスと現行規制の相性については前記のような問題があったところ・・・ 20 ・ 金融サービス仲介業者としての登録を受けることで預金等媒介業務を行うことができる ※ 預金等媒介業務とは? ― 金融機関のために行う預金等又は為替取引の媒介

    ― 金融機関と顧客との間での貸付け等の媒介 ・ 金融サービス仲介業の枠組みでは所属銀行制が採用されない ・ 電子金融サービス仲介業務を行う金融サービス仲介業者は、財産的基礎などの一定の要件を満たす場合 には、電子決済等代行業の登録を受けることなく、電子決済等代行業を行うことができる → ただし、届出は必要 → 電子決済等代行業者とみなして電子決済等代行業者に対する銀行法上の行為規制が適用される 一方で・・・ 金融サービス仲介業では、 取り扱うことができる商品が 高度な専門的説明を要しないもの に限定されている
  11. どのようなサービスが考えられるのか④(その他) ⓒHori & Partners All rights reserved 21 ローンの比較サイト (住宅ローン・カードローン)

    ⇒ 単なる比較から媒介へ 保険プラットフォーム 中規模流通系 ハウス型電子マネー 本業+仲介業 → 住宅販売+住宅ローン → ウェディング+ローン → クレカ+投資 資産管理サービス (家計簿アプリ)
  12. 取扱可能な金融サービス 【法】 ・ 顧客に対し高度に専門的な説明を必要とするものを除く(法11条2項~5項) = 具体的にどのようなものが除かれるかは政令で定められる 22 ⓒHori & Partners

    All rights reserved 決済法制及び金融サービス仲介に関するワーキング・グループ 第5回参考資料(事務局)2頁より引用 WG時点での たたき台である ため注意
  13. ペイロールの意義と問題の所在 ・ ペイロールの意義 = デジタルマネーによって、給与の支払いを行うサービス 例: XX Payのアカウントへの給与の支払い ・ 労働基準法24条の「賃金の通貨払いの原則」との関係が問題

    = 現行法上は、通貨払いの原則の例外として認められるのは・・・ ① 労働協約で通貨以外の方法による給与支払いを定めている場合 ② 銀行等の金融機関における預貯金口座への振込※ ③ 一定の要件を満たす金商業者における労働者の預り金への払込み ※ 通達(H19.9.30基発0930001号など)における要件を満たすことも必要 ⓒHori & Partners All rights reserved 25
  14. ペイロールに関する現在の議論 ・ 現時点では通貨払いの原則との関係で原則として不可 ・ 令和2年7月17日の成長戦略フォローアップ = 2020年度できる限り早期の制度化を図る ⇒ その条件として検討されるべきポイントは主に3つ ①

    資金移動業者破綻時の資金保全 : 保険や保証会社による保証? ② 換金性(現金化)の確保 : 月1回以上の無料引出し? ③ 不正利用・不正引出しの防止 : (多要素認証?) + 改正資金決済法の滞留規制との関係も整理が必要 ⓒHori & Partners All rights reserved 26
  15. 銀行制度等WG 【銀行制度等ワーキング・グループ第1回事務局説明資料4頁より引用】 ⓒHori & Partners All rights reserved 28 ・業務範囲規制

    ・議決権取得制限 ・協同組織金融機関 ・銀行代理業 外国グループ会社 銀行主要株主規制 ・業務範囲規制 ・議決権取得制限