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AIと共に開発する時代の組織、プロセス設計 freeeでの実践から見えてきたこと

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November 13, 2025

AIと共に開発する時代の組織、プロセス設計 freeeでの実践から見えてきたこと

2025/11/13開催されたfindy株式会社様主催のイベントでVPoE竹田が登壇した際の登壇資料です。

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November 13, 2025
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Transcript

  1. 2 ⽵⽥ 祥 / Yoshi Takeda web Engineer 2005~ 執⾏役員

    VPoE 2021~ freee株式会社 常務執⾏役員 VPoE EM freee 2018 ~ Now PdM web Engineer
  2. 5 前提情報
 1. freeeの事業、プロダクトのご紹介 (さらっと)
 2. プロダクトリリースと組織拡大の歴史 (さらっと)
 本題 3.

    「AIと協業すること」を当たり前にするには。 
 - freeeにおけるAI活用推進事例の共有
 
 4. AIと共に開発するプロセス、組織の設計 - AIと共に価値創出を最⼤化するには -
  3. 12

  4. 17 プロダクトリリースと開発組織拡⼤の歴史 プロダクト リリース (⼀部) freee 会計 freee ⼈事労務 freee

    会社設⽴ freee 開業 freee 申告 freee finance lab freee アプリ ストア freee プロジェ クト管理 freee カード freee販売 freee業務 委託管理 freee 福利厚生 エンジニアは 右肩上がりで増加 毎年複数の プロダクトをリリース
  5. 18 freeeの開発組織の特性 ‧ 開発組織の⼈数はスケールし続けている   - エンジニアの数は1⼈からスタートし、現在は500⼈over   - AI時代においてもHC拡⼤を継続している

    ‧新規拠点⽴ち上げ、新規プロダクト⽴ち上げなど  新しい組織の⽴ち上げも頻繁に⾏っている   - 特定の局⾯においてはスタートアップ的な状態も多く存在   - ベンチャーマインドが⾮常に強い会社 ‧内製開発だけではなく、外注開発や業務委託さんとの協業も多い   - 価値を最速で⽣み出すために開発バリエーションは幅広く持っておきたい
  6. 28 具体的な効果の一例 
 コーディングエージェント利用率 
 100% / 2025/09末時点
 (※4月頃は45%くらいだった )


    
 社内AI基盤上に構築されたアプリ数 
 1913個 / 2025/09末時点
 (※非エンジニア職が非常に多く利用 )

  7. 29 1. まずは「量」を増やすことから始める ひたすらに全員がAIを使い試し、⼿に馴染ませ   「常に⾝近にAIがいる状態、使うのが当たり前」という環境。 • 社内AI基盤の構築 ◦ 安全性の担保、利⽤状況の可視化 •

    AI推進チームの新設 ◦ AI利⽤を推進する専⾨チームの組成、エンジニア経営メンバーと協業 • CTO直下のAI予算確保 ◦ ダイナミックな予算執⾏、⼗分なボリューム freeeでの具体的な施策例 

  8. 30 社内AI基盤の構築(※AIモデル呼び出しのプロキシ) freeeでの具体的な施策例 
 Raw Output
 Raw Input
 Safe Input


    Safe Output
 Proxy
 PC
 Model
 Provider
 • 安全性の担保 
 ◦ 社内LLM基盤を通して、モデルプロバイダ と接続するプロキシサーバを構築
 ◦ プロキシでは入力のマスキングと出力の ガードレールを構築
 ◦ 実行コマンドを解析し、危険なパターンを チェック。さらにLLMでリスクレベルを判定。 MCPも同様にチェック
 
 • 利用状況の可視化 
 ◦ 開発者ごと、ツールごとのtoken数やリクエ スト数を計測し、詳細な利用状況やコスト内 訳を独自に集計

  9. 31 AI推進チームの新設、ボトムアップ/トップダウン両輪での推進の軸に。 • ボトムアップでの推進 
 ◦ 入社時の環境設定手順に組み込み 
 ◦ 社内Slack,

    社内ブログによるプラクティスの 共有。AI活用社内勉強会の実施
 ◦ 熟練者とのモブプロやライブコーディング
 
 • トップダウンでの推進 
 ◦ エンジニア経営メンバーと協業
 ◦ AI合宿、強制AIデーなど、開発組織全体を巻 き込んだムーブメントを起こす
 freeeでの具体的な施策例 

  10. 32 CTO直下のAI予算確保 • ダイナミックな予算執行 
 ◦ CTO決済で面倒な承認フローをショートカットで きる(※ガバナンスは担保)
 ◦ お金が必要な場面に最速で対応


    
 • 十分なボリューム 
 ◦ 意思決定時点では投資的な意味合いも強かっ たが、強い意志でしっかりとしたボリュームを確 保
 freeeでの具体的な施策例 

  11. 33 具体的な効果の一例 
 コーディングエージェント利用率 
 100% / 2025/09末時点
 (※4月頃は45%くらいだった )


    
 社内AI基盤上に構築されたアプリ数 
 1913個 / 2025/09末時点
 (※非エンジニア職が非常に多く利用 )

  12. 37 AI特区、AI駆動開発チームの新設 変化の早い AIツール特有の課題へのソリューション 
 • AIの急速な技術進歩に対応しながら、前例の少ないセキュリティリスクの適切な管理が必要
 • 企業、プロダクトとしての安全性確保と技術革新の両立が必須
 AI特区


    
 • 特区認定されたチーム/メンバーに限定し て、最新のAIツールの使用を許可
 • 各種意思決定フローにおいて優先的な対 応
 • 早いサイクルでの検証と評価を実施
 AI駆動開発チーム 
 
 • AIツールに関わるリスクや課題に対処する専門 チーム
 • 社内向けのガイドラインや開発者向けのLLM基盤 機能の開発
 • 迅速な組織への導入とインパクトの最大化
 freeeでの具体的な施策例 

  13. 38 AI特区、AI駆動
 チームでの 
 AIツールの評価 
 ガイドライン 
 策定と基盤構築 


    専門チームによる 
 全社展開&運用
 安全な環境、限られたメン バーによるスピーディーな 検証サイクル 
 特区で得られた知見を形式 知&基盤化。全社展開のた めのセキュリティ対策 
 AI推進チームによるスピー ディーな展開と 
 継続的な評価 
 freeeでのAIツール検証フロー 
 
 freeeでの具体的な施策例 

  14. 39 AI駆動開発レビュー 
 freeeでの具体的な施策例 
 • 開発プロセス横断での生産性向上 
 ◦ 関連ファンクション横断で参加

    
 ▪ エンジニア 
 ▪ PdM、デザイナー、 QAなど
 ◦ 全チームが共有 &レビュー
 ▪ ノウハウ、知見の共有 
 ▪ インサイトからの改善、 FB

  15. 40 AI Agent基盤の構築(※こちらはまだ公開情報少なめ) • プロダクションレベルの AI Agentを最速で構築 するためのフレームワーク 
 


    ◦ セキュリティ 
 ◦ 適切なロギング 
 ◦ 可用性
 ◦ コストコントロール 
 ◦ 認証、認可 
 ◦ デザインシステム 
 ◦ etc…
 AIエージェント 
 「 freee AI(β) 」
 freeeでの具体的な施策例 

  16. 47 3. AI活⽤を組織カルチャー組織設計に根付かせる 「AIを活⽤している⼈が称賛される」という価値観を作る 既存社員、これから⼊ってくる⽅、全てのメンバーに適⽤する • AIマニア認定制度 ◦ AIをより使いこなしている⼈を可視化。称賛し、事例化する •

    AI情報の積極的な発信、採⽤基準への組み込み ◦ 今回のように内部情報を積極的に公開 ◦ この中⾝を⾒て「⼊りたい」と思う⼈を引き寄せる freeeでの具体的な施策例 

  17. 48 AIマニア認定制度 freeeでの具体的な施策例 
 • bynameでAI利用量とそこからのアクティビ ティを計測。一定の期間、一定の水準を超える と「AIマニア」と認定 
 ◦

    AIマニアになると、一部AIツールの利用選択 肢が広がるなどいくつかの特典あり
 ◦ slackのバッチなどももらえる
 ◦ 全員がいつでも状況を見れる
 
 • みんなでAIマニア目指そうぜという世界観 
 ◦ 全社OKRに載せるレベルで、AIマニアになる ことを全社的に促進
 ◦ チーム内でのノウハウ共有などが加速度的に ブーストされていっている

  18. 49 AI情報の積極的な発信、採⽤基準への組み込み • AI Dev Branding責任者をアサイン 
 ◦ freeeの利用実態を含め、どういった形で誰に 向けて発信するか、そのメッセージング戦略を

    常にアップデートしながら発信
 
 • これから入ってくる方に関しても妥協なし 
 ◦ 採用EVにおいて、AIの活用度を評価項目の 一つに追加
 ◦ AI活用度を確認するための質問やディスカッ ションテーマをエンジニア組織内で日々共有
 https://speakerdeck.com/freee/12geng-xin-freeenoainiguan-suruqu-rizu-mi freeeでの具体的な施策例 

  19. 67 例) 企画フェーズの詳細分析 調査とブリー フ作成 ビジネス要 件整理 情報アーキテク チャ PRD作成

    画⾯ デザイン 32.95% 1.94% 11.24% 13.57% 14.34% 重み割合 後続フロー への影響 次の段階は誤っ た前提から始ま る 原因不明のPRD および頻繁なス コープ変更 デザイナーは不 明確な構造や流 れで作業する 設計レビューと テストにおいて 混乱を招く ユーザ テスト リリース 関連作業 リリースは直前 の修正により遅 延した 不明確な引き継 ぎによる設計修 正 17.44% 8.53%
  20. 71 改めて、AIと協業するためのプロセス/組織設計の流れをおさらい 1. Lv1~3⽣産性と各Lvの接続点について⾃組織の状況を棚卸しする 2. 現状と⽬指す像を全てプロットし、そこから具体的なプロセスや組織を設計していく 3. AIによるブーストポイントを⾒極め、実⾏する 1. 各⽣産性レベル内の構成要素をさらに分解する

    ▪ 企画、開発、テストなど各⽣産活動のより詳細な要素分解 2. 分解した各要素について「AIを使うことでブーストできるか」を⾒極める ▪ AIによる現状の得⼿、不得⼿をしっかりと区分けする 3. AIを活⽤したプロセス、体制を設計する 4. 1の棚卸しを定期的に⾏い、Lv3⽣産性(価値創出)がブーストされていることを確かめる
  21. 72 1. 「Lv1⽣産性」はめちゃくちゃ上げられる ➢ 企画〜実装〜テスト問わずアクティビティ増⼤の効果は⾮常に⼤きい 2. 「Lv2⽣産性」も⼀定の効果が出る ➢ 特に企画段階において何を作るかの仮説⽴案に⼤きな効果あり 3.

    「Lv3⽣産性」はまだこれから。全社的なAI活⽤が必須 ➢ R&D以外のS&M、CS等でのAI活⽤が必須 ➢ また、接続点の効率アップの難易度も⾼い ◦ ⼈⼒でファンクション融合を進めることは必須 参考) AIによるブースト、現状のインサイト
  22. 74 1. AI活⽤は「量」と「質」を意識して進める ➢ その結果として「AIが常に⾝近にいて、安⼼して仕事を任せられる状態」を作る 2. AIを使った⽣産性向上を最⼤化するために、⽣産性の要素分解をしっかりやる ➢ 闇雲にやるのではなく、現状把握&ボトルネックを分析し、⾃組織の状況に合わ せたAI活⽤を⾏う。

    3. 現状はまだまだ試⾏錯誤が続くフェーズ、この変化を楽しみましょう ➢ 今⽇の内容が、今後の皆様の開発のなにかしらのヒントになれば幸いです。 ➢ どんな質問でもいいので、是⾮ぶつけてもらえると嬉しいです。