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ドイツの中間支援組織

Shota FURUYA
November 25, 2023

 ドイツの中間支援組織

2023年11月25日(土) ニッセイ財団 環境問題助成研究 ワークショップ 再生可能エネルギー事業における中間支援と認証制度

Shota FURUYA

November 25, 2023
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Transcript

  1. 再エネの普及になぜ中間⽀援組織が求められるのか • 再エネプロジェクトの計画・開発には、多岐にわたる分野で専⾨性が求められる • 国や都道府県/州などの上位レイヤーで設定される導⼊⽬標と基礎⾃治体での導⼊量は、本 来連動するべきだが、地域の⽂脈を無視した導⼊はきわめて難しく、多くの場合、さまざま な⽭盾や社会的摩擦が現場のプロジェクトレベルで顕在化する • 2030〜50年に向けて、世界的にもエネルギー転換のスピードを加速し、再エネの導⼊をスケール アップすることがが求められている(それを可能にするテクノロジーの発展も加速中)

    • しかし、地域の現場では広義/狭義のステークホルダーを特定することからはじまり、ステークホ ルダーの懸念の把握とそれに対する応答、プロジェクトの環境影響の予測、各種規制への対応、地 域の⽂脈にあわせたビジネスモデルの構築、資⾦調達等々、検討すべき事項は膨⼤にあり、簡単に スケールアップすることはできない • そもそも再エネ事業者の単独の取り組みで完結するものではなく、多様なステークホルダー が相互にコミュニケーションをとり、信頼関係を築かなければ再エネの普及は進まない 2
  2. 再エネの普及に中間⽀援組織は何をすることが求められるのか • 再エネプロジェクト計画・開発に関する専⾨知識・情報の提供 • ⽴地選定における潜在的リスク助⾔、参加型ビジネスモデル、科学的知⾒ etc. • ステークホルダー同⼠のコミュニケーション媒介 • 地域⽂脈の把握、ステークホルダー対話のプロセス構築

    → メディエーター • 広域・基礎⾃治体の再エネ普及戦略の構築⽀援 • エネルギー需要、再エネポテンシャルのマクロデータ整理 → 地域エネルギー需給 データベース(東北⼤学) • 地理・空間的な基礎情報の整理 → ゾーニング計画 3 参考:古屋将太(2022)「メディエーターの戦略的媒介による地域の意思決定⽀援」丸⼭康司・⻄城⼾誠編『どうすればエネルギー転換はうまくいくのか』新泉社.
  3. ドイツの中間⽀援組織 ⾃然保護とエネルギー転換のための専⾨センター (KNE, Kompetenzzentrum Naturschutz und Energiewende) • 2012年に環境団体が⾃然に配慮したエネルギー転換の⽅向性を提案 し、2013年に連⽴政権の合意書で設⽴が決まり、2016年にベルリン

    に設⽴される • 「専⾨知識・情報」「媒介・調停」「対話促進」「メディア活動」 の4つを柱として、客観的な情報と信頼にもとづくコミュニケーショ ンを通じて、⾃然・⽣物多様性および景観の保護とエネルギー転換 の対⽴を回避するための活動を展開してきた • 30⼈弱のスタッフが⾼い専⾨性を発揮して従事しており、近年は媒 介・調停の機能は⾃治体や地域レベルで取り組みが進むようになっ たため、情報発信およびメディア活動の⽐重が⾼まっている 4 出典:KNE Webサイト
  4. ⾃然保護とエネルギー転換のための専⾨センター(KNE) メディエーターの経験 • 紛争調停・コミュニケーション仲介に関して200時間、環境エネルギー に関して80時間のトレーニングを経て、メディエーターとして登録され る • 地域からの要請を受け、フルタイムの有給待遇(基本的に再エネ事業者が拠出) でその地域に⼀定期間駐在し、専⾨性をもってステークホルダーとコ ミュニケーションをおこなう

    • 主要なステークホルダーとの 1on1 ミーティング、対話セッション、参 加型景観評価、ステークホルダー協定書など、さまざまな⼿法を組み合 わせながら、地域の⽂脈に即した媒介をおこなう • すべてのステークホルダーが「⾃分の発⾔が尊重されている」と感じる ことができるように、信頼を醸成することがもっとも重要 ※ 現在はKNEがメディエーターを直接派遣せず、研修および品質管理をおこなっている 5 出典:KNE Webサイト
  5. ドイツの中間⽀援組織 テューリンゲン・エネルギー・グリーンテック機構 (ThEGA, Thüringer Energie- und GreenTech-Agentur) • テューリンゲン州の再エネ・省エネ促進および気候変動対策を専⾨的に 担当する機関(州開発公社LEGの⼦会社として位置づけられ、経済・産業・技術⽂脈が軸

    となっている) • テューリンゲン州の⾃治体、企業、市⺠を対象として、⾵⼒・太陽光・ 省エネ・熱供給・モビリティなどに関する情報と助⾔を提供している (vorwettbewerblich = 競争前のサービス提供という⽴場 ) • それぞれの分野に専⾨的なコンサルティングサービスを提供するだけで なく、ユーザーが⾃ら⾏動できるようにオンラインツールを充実させて いる他、優良事例を認証する仕組みも実施している • エネルギーおよび建築技術のエンジニア、環境技術者、建築家、都市計 画家、エネルギーコンサルタント、コミュニケーションの専⾨家など、 30⼈以上のスタッフが従事している 6 出典:ThEGA Webサイト
  6. テューリンゲン・エネルギー・グリーンテック機構(ThEGA) オンラインツール 7 Energieatlas Thüringen 州内のエネルギー関連データを地図にまとめ、再エネのポテン シャルと成功事例を紹介 ⾃治体/企業/市⺠ Thüringer Solarrechner

    州内の具体的な場所での太陽光発電と太陽熱システムの収益性や 投資回収期間を数分で計算できる ⾃治体/企業/市⺠ KOM.EMS ⾃治体向けのエネルギーマネジメントシステム ⾃治体 Thüringer Bauwegweiser 持続可能な建築のための建材などを紹介する建築ガイド ⾃治体 Einsparrechner Straßenbeleuchtung ⾃治体向け街灯の省エネ効果計算ツール ⾃治体 Unternehmensdatenbank 州内のエネルギー・グリーンテック企業データベース ⾃治体/企業/市⺠ Fuhrparkplattoform ⾞両ライフサイクルアセスメント分析 ⾃治体/企業/市⺠ Vergleichsrechner Alternative Antriebe ⾞両からの排出量⽐較計算ツール ⾃治体/企業/市⺠ ecocokpit 製品・技術プロセスの温室効果ガスバランシングツール 企業 Wertschöpfungsrechner 太陽光・⾵⼒の地域付加価値計算ツール ⾃治体/市⺠ 出典:ThEGA Webサイト
  7. まとめと今後の検討課題 ▼ まとめ • ドイツの中間⽀援組織による活動を踏まえると、再エネ導⼊において、なによりも重要なこ とはステークホルダー間の信頼を醸成すること • 中間⽀援組織は、適切に専⾨性を提供できることが必須(その対価が適正に⽀払われることと表裏⼀体) ▼ ⽇本の⽂脈での検討課題

    • 既存の公的/⺠間組織に⽀援機能を追加するのか or 新たに中間⽀援組織を設⽴するのか • 国/都道府県/市区町村のどのレイヤーで中間⽀援組織を置き、どのような機能を担うよう に設計するか • 専⾨性をもってミッション達成にコミットする⼈材をどのように採⽤・配置することができ るのか 9