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ゲームの世界からこれからの図書館を考える〜文化資源に対して図書館はどう向き合うのか〜

fukudakz
November 05, 2020

 ゲームの世界からこれからの図書館を考える〜文化資源に対して図書館はどう向き合うのか〜

@図書館総合展2020
https://2020.libraryfair.jp/forum/2020/f219
https://www.careerpower.co.jp/service/libraryfair2020s/?_fsi=5FMpkjAv
日時:2020年11月5日
作者:福田一史

fukudakz

November 05, 2020
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Transcript

  1. ⾃⼰紹介 • https://researchmap.jp/fukudakz • 博⼠(学術) • ⽴命館⼤学⼤学院 先端総合学術研究科 授業担当講師 •

    ⽴命館⼤学ゲーム研究センター メンバー • メディア芸術情報基盤整備推進事業 有識者タスクチーム員 • 専⾨分野︓ゲーム研究・メタデータ・ビジネス • not 図書館プロパー 4
  2. ⽴命館⼤学ゲーム研究センター • Ritsumeikan Center for Game Studies: RCGS • ゲームの総合的研究を⽬的に2011年設⽴

    • 調査研究⽤にアーカイブを構築、所蔵数は16,000点 (ゲーム11,000点、関連資料5,000点)
  3. 図書館とゲーム • 図書館でゲームを所蔵・提供すると… • うるさい︖ • メンテナンスが⾯倒︖ • 書誌データがない︖ •

    ゲームを購⼊するチャンネルや予算 がない︖ • 著作権で問題が⽣じるかもしれな い︖ • 不良が集まりそう︖
  4. 図書館とゲーム • 国内の図書館ではゲームの所蔵実践例が少ない • ⽴命館⼤学ゲーム研究センター. 2015. “平成27年度メディア芸術連携促進事業 連携 共同事業 ゲームアーカイブ所蔵館連携に関わる調査事業

    実施報告書.” 東京. 機関種別 質問票送付件数 回答機関数 ゲーム所蔵機関数 国公⽴図書館 143 118 1 博物館 44 30 4 美術館 39 27 0 ⼤学図書館 231 164 4 専⾨学校 105 23 16 表. 全国の図書館・博物館などのゲーム所蔵に関する質問票調査結果 8
  5. 図書館とゲーム • 北⽶・ヨーロッパやASEAN諸国などでは、ビ デオゲームを図書館を所蔵することは⼀般 • Groat, Greta de. 2015. “A

    History of Video Game Cataloging in U.S. Libraries.” Cataloging & Classification Quarterly 53: 135–56. • Kirsch, Breanne A. 2014. Games in Libraries: Essays on Using Play to Connect and Instruct. McFarland. • Worldcatでゲームを検索すると、「107,363 件」の資料がヒット(2020年11⽉1⽇時点) 図. Worldcatゲーム検索結果 (年・⾔語件数) 9
  6. Libraries Transform • http://www.ilovelibraries.org/librariestransform/ • アメリカ図書館協会(ALA)による、図書館の変化と図書館を 通じた社会変化のためのイニシアチブ • プロジェクトのゴール •

    図書館の変化を⽀援し、その認識を向上させる • 図書館の認識を、すたれたものやいい感じのもの(nice)から不可⽋ なものにシフトする • 図書館の専⾨家に働きかけ、活⼒を与え、地域、州、国の意思決定者 に影響を与える外部の⽀持者を育成する • Libraries Transform Year Four Report より(発表者訳) 10
  7. International Games Week • 国際ゲーム週間 • アメリカ図書館協会(ALA)が主導する活動 • “International Games

    Week is an initiative run by volunteers from around the world to reconnect communities through their libraries around the educational, recreational, and social value of all types of games.” from Games in Libraries • 2008年"National Games Day“としてスタート • 2012年より”International Games Day” • 2017年より”International Games Week” 図. IGWロゴ from Games in Libraries 12
  8. ゲームを識別・検索する フルカラー ファンタジー リンク アクション RPG スーパーファ ミコン 1991-11-21 7767円(税抜)

    ⽇本語 ⾊彩 物語ジャンル 主⼈公 ⾔語 価格 プラットフォーム 出版⽇ ゲーム ジャンル 図. ビデオゲームの記述要素 15
  9. ビデオゲームの記述的特徴 • 複製され頒布される「出版物」 • 作品の体現の形式が数多く存在(異版) • 物理的な版違い • 通常版と特典版、キャリアの形式、廉価版の再配布 •

    内容的な版違い • リメイク、移植、増補 • FRBRやIFLA LRMのアプローチは有効。ただ し実体の配置に難あり(McDonough et al. 2010, Jett et al. 2018) 図.3 異版の事例 (アンジェリークトロワ・ファイナルファンタジー3) https://www.jp.square-enix.com/game/detail/ff3/ (accessed 2019-12-13) https://apps.apple.com/jp/app/final-fantasy-iii-for-ipad/id430823968?l=ja (accessed 2019-12-13) 16
  10. RDA(リソースの記述とアクセス)とは • Resource Description and Access • AACR2の後継である国際的な⽬録標準 • FRBRに基づく実体関連モデル

    • 図書館資料全般に対応する包括的な枠組み • 資料へのアクセスに焦点化 • Linked Dataに対応 • 物理的実体の記録は転記を重視 18
  11. とにかくRDAはややこしい • 実体関連モデル • 記述要素(実体・属性)が抽象的 • 膨⼤な記述要素 • 参照︓RDA Tookit,

    RDA Registry • ⽤語や概念の追加/変更 • アクセスポイント、キャリア、本タイトル…etc. • 参照︓Yale University Library n.d. “RDA Terminology” • 継続的に更新中で流動的 type count rdf:Property 4354 owl:Class 22 skos:Concept 2 表. RDA 3.3.0の記述要素数 19
  12. FR Familyの展開経緯 FRBR (1998) FRAD (1999) FRSAD (2005) FRBR-LRM (2016)

    IFLA-LRM (2017) FRBRoo (2009) 図. FR Familyの展開経緯 21
  13. FRBR / IFLA LRM RDA ⽇本⽬録規則 2018年度版 具体化 翻案 図.

    図書館資料のための概念モデル・メタデータスキーマ
  14. Best Practice for Video Game Cataloging • Online Audiovisual Catalogers

    Inc, Cataloging Policy Committee, and Video Game RDA Best Practices Task Force. 2015. “Best Practices for Cataloging Video Games - Using RDA and MARC21.” 2015. • ビデオゲームをRDAで記述するためのガイドライン • “Work in Progress” 23
  15. RDAでビデオゲームを書く上での問題 • RDAのメタデータスキーマだけでは、重要なビデオゲームの識別的特徴が記録で きない。例えば︓ • プラットフォーム • 内容レーティング • ゲームジャンル

    • キャラクター • ⼀⽅で記述に不要なプロパティが多すぎる • いうなれば「帯に短し襷に⻑し」。 • 少なくとも現状では、ビデオゲームのようなフィクションやインタラクティブメディア などは膨⼤な図書館の資料のごく⼀部であり、専⾨的対応は⼆の次にされている。 • やはり、RDAを参照(マッピング)可能なものとして、ビデオゲーム専⽤モデル を考えるというアプローチは妥当だろう。 24
  16. Video Game Metadata Schema • https://gamer.ischool.uw.edu/ • ワシントン⼤学のJin Ha LeeらGAMER

    GroupとSeattle Interactive Media Museumが提案するビデオゲーム記述のた めのメタデータスキーマ • Jett, Jacob, Simone Sacchi, Jin Ha Lee, and Rachel Ivy Clarke. 2016. “A Conceptual Model for Video Games and Interactive Media.” Journal of the Association for Information Science and Technology 67 (3): 505–17. https://doi.org/10.1002/asi.23409. • Lee, Jin Ha, Rachel Ivy Clarke, and Andrew Perti. 2015. “Empirical Evaluation of Metadata for Video Games and Interactive Media.” Journal of the Association for Information Science and Technology 66 (12): 2609–25. https://doi.org/10.1002/asi.23357. 25
  17. RCGSビデオゲーム語彙 • https://collection.rcgs.jp/terms/ • ビデオゲームを記述するためのデータモデル⽤に策定した語彙 • 福⽥⼀史, 三原鉄也, ⼤⽯康介, and

    細井浩⼀. 2019. “著作を含むビデオゲーム書誌データベースの構築︓Omeka Sを⽤ いた「RCGS Collection 試作版」による所蔵書誌提供の事例.” じんもんこん2019論⽂集, no. 2019 (December): 77– 84. http://id.nii.ac.jp/1001/00200982/. • ビデオゲームに特有の属性や実体などの記述要素を追加 • プラットフォーム、内容レーティング、ゲームエンジン・ミドルウェア、ゲームジャンル、物語ジャ ンル、キャラクター、内容の書誌的関連、スタッフ • LRMの抽象的な実体をより具体的に定義 • RDAやBIBFRAMEとの互換性を担保 • WebVOWL での検証 • メタデータスキーマなどより詳細は このサイトについて│RCGSコレクション を参照のこと 26
  18. FRBR / IFLA LRM RDA ⽇本⽬録規則 2018年度版 具体化 翻案 RCGS

    データモデル VGMS 具体化 参照 参照 参照 図. RCGSデータモデルと関連のモデル 27
  19. rcgs:Work rcgs:Variation rcgs:Package rcgs:Item rcgs:variationOf rcgs:embodimentOf rcgs:exemplarOf rcgs:Topic foaf:Agent 図.

    ビデオゲーム記述のためのデータモデル(概要) schema:holdingAgent dcterms:creator dcterms:contributor rcgs:publisher rcgs:distributor ビデオゲームの作品、 個別の創作の内容 同⼀の経験を提供する ビデオゲームの内容 ビデオゲームの頒布単 位、内容か形式やデザ インが違う場合区別し て記録される 実際に⼿にするもしく は⽬にすることができ る資料現物 作品の創作や制作、頒 布物の頒布、個別資料 の所有などに責任・権 利を持つ個⼈や団体 作品の主題などの件名 e.g. ジャンル、キャラ クター、テーマ、舞台、 世界、フランチャイズ skos: definition skos: definition skos: definition skos: definition skos: definition skos: definition dcterms:subject schema:genre schema:character foaf:Person foaf:Organizati on rdfs:subClassOf rdfs:subClassOf 28
  20. 29 @prefix schema: <http://schema.org/> . @prefix rdf: <http://www.w3.org/1999/02/22-rdf-syntax-ns#> . @prefix

    rcgs: <https://collection.rcgs.jp/terms/> . @prefix xsd: <http://www.w3.org/2001/XMLSchema#> . @prefix dcterms: <http://purl.org/dc/terms/> . @prefix rdfs: <http://www.w3.org/2000/01/rdf-schema#> . <https://collection.rcgs.jp/resource/AGENT0000833> a <http://xmlns.com/foaf/0.1/Organization> ; rdfs:label "任天堂株式会社. 1963-" ; schema:address "京都市南区上⿃⽻鉾⽴町11-1" ; schema:startDate "1963-10"^^dcterms:W3CDTF ; <http://www.w3.org/2004/02/skos/core#altLabel> "任天堂"@ja ; <http://www.w3.org/2004/02/skos/core#prefLabel> "Nintendo Co., Ltd."@en , "任天堂株式会社"@ja ; <http://xmlns.com/foaf/0.1/homepage> <https://www.nintendo.co.jp/> . <https://collection.rcgs.jp/resource/PACKAGE0010203> a rcgs:PhysicalPackage ; rdfs:label "ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド. 任天堂株 式会社. 2017-03-03. Wii U. computer disc." ; dcterms:accessRights "12才以上対象" ; dcterms:format [ a dcterms:MediaTypeOrExtent ; <http://purl.org/dc/elements/1.1/extent> "1 computer disc" ; <http://purl.org/dc/elements/1.1/type> <http://rdaregistry.info/termList/RDACarrierType/1013> ; schema:encodingFormat <https://collection.rcgs.jp/resource/MEDIAFORMAT0000122> ; rcgs:dimension "12 cm" ] ; dcterms:rights "© 2017 Nintendo" ; dcterms:source "Title from disc label" ; schema:contentRating <https://collection.rcgs.jp/resource/RATING0000002> ; schema:copyrightYear "©2017" ; 図. RDFデータとそのグラフ表現(右図はThe Web KANZAKIの「RDFグラフの視覚化(https://www.kanzaki.com/works/2009/pub/graph-draw)」にて⽣成、左図はRDFの⼀部のみ表⽰した)
  21. RCGS Collection • https://collection.rcgs.jp/ • 2019年8⽉よりリリース • 2020年3⽉から正式版(継続的に改修中) • Omeka

    Sを⽤いてシステムを実装 • Linked Open Dataの提供に焦点化 • 前述データモデルを内包 • 著作典拠としてWikidataを⽤いる 図. RCGSコレクショントップページ 31
  22. 34 マンガ作品 アニメ作品 ゲーム作品 メディア アート作品 版権 キャラ クター 舞台

    責任主体 図. メディア芸術データベース データリンクの考え⽅(発表者作成) パッケージされた資料
  23. 書誌データ作成における課題 • Linked Dataとしての公開を前提とした書誌データ作成体制 • 旧来の図書館司書に求められるスキルセットに含まれない • ユーザのニーズに対応するための、ドメイン(領域)オリエン テッドな記述の⽅法論策定 •

    図書館という枠から⾶び出し、国内外の専⾨家やコミュニティと接続 • コミュニティと共同による典拠構築と活⽤ • Work︓作品 • Agent︓⼈や団体 • Topic︓ジャンル・舞台・シリーズ・フランチャイズ・キャラクター 36
  24. 次世代メタデータへの遷移 • Smith-Yoshimura, Karen. 2020. Transitioning to the Next Generation

    of Metadata. Dublin, OH: OCLC Research. https://doi.org/10.25333/rqgd-b343. • OCLC Research Library Partners Metadata Managers Focus Groupでの6年間の議論の集約 • コンテンツ • Linked DataとIDへの遷移 • 「内側にある外」と「整理された」コレクションの記述 • 「サービスとしてのメタデータ」の進化 • 将来のスタッフ配置要件の準備 37 図. Transitioning to the Next Generation of Metadata