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ICT活用授業と著作権

Takahiro Sumiya
October 11, 2018
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 ICT活用授業と著作権

授業使う教材に他人の著作物を使うときに注意すべき点を、著作権の基本から説明しました。以下の構成:

1. 授業内での他者著作物利用の基本
 ・著作物とは、著作権とは、権利制限とは
 ・38条(非営利の上映)、35条(授業目的の複製)、32条(引用)の権利制限
2. 著作権法における「公衆送信」
 ・公衆送信とは
 ・ICT活用教育における問題点
3. 改正著作権法35条について
 ・授業目的の公衆送信と補償金
 ・指定管理団体

2018年10月11日に松山大学で行なったFD研修会の提示資料です。元ファイル(Keynote)はこちら→ http://bit.ly/2018mdfd-src

Takahiro Sumiya

October 11, 2018
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Transcript

  1. 自己紹介 5 1990 1995 2000 2005 2010 2015 総合科学部 情報メディア教育研究センター

    情報教育 共用端末 LMS コンテンツ作成支援 ePF eラーニングコンテンツ 動画 著作権処理 2016年から、 AXIES-csdの著作権チームで活動してます https://axies-csd-cr.blogspot.jp
  2. 著作権 (財産権) 人格権 著作権(財産権)では、「〇〇されない権利」を〇〇権という 13 ஶ࡞ݖ ✓ 公表権 ✓ 氏名表示権

    ✓ 同一性保持権 ✓ 複製権 ✓ 上演権・演奏権 ✓ 上映権 ✓ 公衆送信権 ✓ 公の伝達権 ✓ 後述権 ✓ 展示権 ✓ 譲渡権 ✓ 貸与権 ✓ 頒布権 ✓ 翻訳権・翻案権 ✓ 二次的著作物の 創作・利用権 著作者
  3. 例えば「リンゴの唄」の曲の著作権は今年(2018年)の年末で無くなる予定 17 1900 1920 1940 1960 1980 2000 2020 2040

    作詞 : サトウハチロー (1903-1973) 作曲 : 万城目正 (1905-1968) 2018 2023 2043 ♪
  4. 教室でスライド上映ができる根拠がこれ 23 (営利 ⽬的 上演等) 第三⼗⼋条 公表 著作物 、営利 ⽬的

    、 、聴衆⼜ 観衆 料⾦( 名義 問 、著作物 提 供⼜ 提⽰ 受 対価 。以下 条 同 。) 受 場合 、公 上演 、演奏 、上映 、⼜ ⼝述 。 、当該上演、 演奏、上映⼜ ⼝述 実演家⼜ ⼝述 ⾏ 者 対 報酬 ⽀払 場合 、 限 。 • 聴衆から、入場料を取らない • 講師はギャラを受け取らない ⭕ • 翻訳/翻案/編曲などをしてはならない ❌
  5. こちらは、授業用の複製の根拠 24 (学校 他 教育機関 複製等) 第三⼗五条  学校 他 教育機関(営利

    ⽬的 設置 除 。) 教育 担任 者及 授業 受 者 、 授業 過程 使⽤ 供 ⽬的 場合 、必 要 認 限度 、公表 著作物 複製 。 、当該著作物 種類及 ⽤途並 複製 部数及 態様 照 著作権者 利益 不当 害 場合 、 限 。
  6. 授業の過程における複製(第35条の1) ‣ 学校その他の教育機関(営利を目的として設置されて いるも のを除く)における授業であること ‣ 教育を担任する者または授業を受ける者が複製すること ‣ 授業の過程における使用に供することを目的とすること ‣

    必要と認められる限度内であること ‣ 公表された著作物であること ‣ 著作権者の利益を不当に害するものでないこと ‣ 慣行がある時は出所の明示をする事(第48条三) ‣ 翻訳、編曲、変形、翻案もできる(第43条一) 25
  7. 「引用」は、著作権侵害にならない転載 26 (引⽤) 第三⼗⼆条  公表 著作物 、引⽤ 利⽤ 。 場合

    、 引⽤ 、公正 慣⾏ 合致 、 、報道、批評、研究 他 引⽤ ⽬的上正当 範囲内 ⾏ 。
  8. 引用の目的に「報道、批評、研究」ってあるけど、教育に使えるの? 28 (引⽤) 第三⼗⼆条  公表 著作物 、引⽤ 利⽤ 。 場合

    、 引⽤ 、公正 慣⾏ 合致 、 、報道、批評、研究 他 引⽤ ⽬的上正当 範囲内 ⾏ 。 จԽிࢿྉʹʮղઆʯͷྫ͕͋Δ
  9. 授業の過程における公衆送信(第35条の2) 33 第三⼗五条  2 公表 著作物 、前項 教育機関 授業 過程

    、当該授業 直接受 者 対 当該著作 物 原作品若 複製物 提供 、若 提⽰ 利⽤ 場合⼜ 当該著作物 第三⼗⼋条第⼀項 規定 上演 、演奏 、 上映 、若 ⼝述 利⽤ 場合 、当該授業 ⾏ 場 所以外 場所 当該授業 同時 受 者 対 公衆送信(⾃ 動公衆送信 場合 、送信可能化 含 。) ⾏ 。 、当該著作物 種類及 ⽤途並 当該公衆送信 態様 照 著作権者 利益 不当 害 場合 、 限
  10. LMSへの掲載は「公衆送信」なの?? ‣ 履修生も公衆の可能性 ✓ 公衆=不特定または多数の人 ‣ 多数って何人ですか? ✓ 「24 戸以上の入居者...『公衆』と言い得る程度に多

    数」(大阪高裁*1) ✓ 「一般には『50人を超えれば多数』と言われていま す」(文化庁 *2) 36 *1 大阪高判平成19年6月14日判時1991号 *2 http://www.bunka.go.jp/chosakuken/naruhodo/outline/4.3.html#koshu
  11. Creative Commons 40 Copyrighted 全ての権利を主張 Public Domain 全ての権利を放棄 Creative Commons

    作品の再利用を許しつつ、 いくつかの権利を主張 表示 (BY) 作品のクレジットを表示すること 非営利 (NC) 営利目的での利用をしないこと 改変禁止 (ND) 元の作品を改変しないこと 継承 (SA) 元の作品と同じライセンスで公開すること https://creativecommons.jp
  12. まとめると… 42 引用 32 条 授業目的の複製 35 条 どちらでもない プリント配布

    ◦ ◦ × スライド提示 ◦ ◦ △ 授業の録画配信 ◦ × × LMSで配布 ◦ × × インターネットで公開 ◦ × ×
  13. 2015年6月以降、「教育の情報化を促進するため」文化審議会で検討 1. 異時公衆送信 ✓ 授業の過程で行う異時の公衆送信 2. 教材共有 ✓ 教師間、教育機関間での教材共有 3.

    MOOCs ✓ MOOCsやOCW等一般向けの公開 44 権利制限 検討継続 ライセンスで対応 2017年4月審議会結論 ↓ 2018年5月法律改正
  14. 2018年度の著作権法第35条改正の内容 45 授業目的の   複製 OK 授業目的の   同時公衆送信 OK 35 条

    1 項 35 条 2 項 35 条 1 項 35 条 2 項 35 条 3 項 授業目的の   複製、公衆送信、公の伝達 OK 上記の公衆送信については   補償金 を支払うこと ただし同時公衆送信については   補償金の支払い不要 第 104 条の 11〜17 で扱いなどを規定 改正 現行の著作権法 改正著作権法 2018/5/25 から 3 年以内に施行
  15. 補償金額の決まり方 47 文化庁長官 文化審議会 補 償 金 金 額 補

    償 金 金 額 申請 申請 意見 意見 「指定管理団体」 著作権管理団体 著作権管理団体 著作権者 著作権者 認可 認可 答申 答申 国立大学協会 *? 日本私立大学団体連合会 *? 公立大学協会 *? 全国都道府県教育委員会連合会 *? 教育機関 教育機関 教育機関を設置する者の団体 (改正著作権法 104 条の 13) (改正著作権法 104 条の 11) 教員 ・ 学生 教員 ・ 学生 *? 現段階ではどの団体が 「教育機関を設 置 す る も の の 団 体」 と な る か 不 明。 2018 年 10 月に 「著作物の教育利用 に関する関係者フォーラム」 が立ち上が り、 権利者団体と教育機関の意見交換 が始まる予定。 利用者側 権利者側
  16. こうなりますが、縦線の境目は曖昧 52 引用 32 条 授業目的の複製 35 条 どちらでもない プリント配布

    ◦ ◦ × スライド提示 ◦ ◦ △ 授業の録画配信 ◦ ◦ × LMSで配布 ◦ ◦ × インターネットで公開 ◦ × × ココとかココ