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国連も推進する、デジタル公共財とは何か

 国連も推進する、デジタル公共財とは何か

Urban Data Challenge 2024 キックオフで発表した講演資料です。(多少修正を加えています。)

Haruyuki Seki

July 03, 2024
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Transcript

  1. © Code for Japan オープンにつながり社会をアップデートする 3 シビック(市民) × テック(技術) 市民・民間企業・教育機関や行政の垣根を

    越えてアイデアを出し合い、自身のスキル を生かしながら参加する。 Who 市民(Civic) What 困りごと解決・アップデート Where 暮らしているまちなど How 技術(tech)を活用しながら シビックテックの特徴 垣根を越えた オープンな繋がり アイディアと ノウハウの蓄積・共有 シビックテックのアプローチ 社会課題 企業 大学 NPO テクノロジー活用 データ活用・場づくり 行政 市民 コミュニティ化 プロジェクト化
  2. © Code for Japan 4 地域の中で活動するコードフォー コミュニティ。 90以上のコミュニティが活動して おり、規模や活動テーマ、活動内 容は様々。

    ブリゲードは独立した団体とし て、各ブリゲードの自主性に基づ いて様々な活動をおこなう ブリゲードコミュニティ
  3. © Code for Japan 5 コミュニティ • ハッカソン・アイデアソンなど のワークショップ実施 •

    ブリゲードとの協働 • NPOや社会起業家の支援 3つの活動領域 GovTech • 行政の透明化 • 行政のDX支援 • 様々な主体との接続 Make our City • 参加型まちづくりの推進 • 市民合意形成PFの提供 • オープンソース都市OS開発
  4. © Code for Japan Code for Japan の注力分野 6 デジタルによる

    民主主義の アップデート デジタル公共財の 創出 ともに考え、 ともにつくる プロジェクト創出
  5. © Code for Japan Urban Data Challenge とは 地域の情報資源の中心的な役割を果たす空間情報をめぐっては、2014年にG空間社会の実現 に向けた実証事業やプラットフォーム開発が提案されるなど、その重要性がますます高まり

    つつあります。 (中略)  その一方で、これらの取組を開始した自治体や民間企業等も様々な課題を抱え、サステナ ブルな形で多くの自治体が広くデータを流通・公開することや、ビジネスレベルで多くの民 間企業等が参画するという状況には至っておりません。このため、私たち「一般社団法人社 会基盤情報流通推進協議会(AIGID)」は、2013年度から「アーバンデータチャレンジ (UDC)」という、地域課題の解決を目的としたデータ活用コミュニティの形成と一般参加 型コンテストを組み合わせた試みをこれまで実施してきました。 ※HPより引用 7
  6. © Code for Japan 9 官と民、双方の参加が必要 行政 市民や民間企業、大学等 透明性の高い情報発信 協働機会の提供

    参加機会の提供 政策の理解 主体的な参加 適切なフィードバック 信頼 醸成
  7. © Code for Japan 重要な点 • 市民の課題や、地球環境を中心に考える • データで状況を把握し、仮説を作りシミュレーションする •

    アイデアを考え、プロトタイプを作り検証を行う • データを元に結果を評価し、住民との合意形成を行う • 徐々に対象範囲を広げていく 10
  8. © Code for Japan データだけでは足りない! 11 アプリケーション データ データが生まれる プロセス

    課題解決 アイデアだけでなく 運用が発生するた め、ボトルネックに なりやすい 投入できるリソース を増やすか、実装/ 運用のコストを下げ る必要がある。 自治体ごとにバラバ ラのプロセスになっ ており、データの質 が上がらない 相互運用性を高める ことで、質をあげら れる
  9. © Code for Japan 12 皆がオープンに使える「デジタル公共財」を増やす デジタル公共財とは?(英語だと Digital Public Goods:

    DPGs ) オープンソースソフトウェア、オープンデータ、オープン AIモデル、オープンスタンダード、 オープンコンテンツなど、プライバシーやその他の適用される法律やベストプラクティスを 遵守し、害を及ぼさず、 SDGsの達成に貢献するもの ※国連事務総長の「デジタル協力のためのロードマップ(国連)」の発言から引用 https://www.un.org/sg/en/content/sg/statement/2020-06-11/secretary-generals-remarks-the-virtual-high-level-event-the -state-of-the-digital-world-and-implementation-of-the-roadmap-for-digital-cooperation-delivered
  10. © Code for Japan 13 デジタル公共財の例 インド India Stack Open

    Network for Digital Commerce source: iSPIRT source: ondc.org
  11. © Code for Japan 16 なぜ国連がデジタル公共財を推しているのか 米国に本拠点を置くDigital Impact Alliance (DIAL)とDPGAが共同リーダーとして、2022

    年にDPG(Digital Public Goods)憲章を発表 「各国が、安全で、信頼でき、包摂的な公共及び民間のサービスを大規模に提供するために 必要な基礎的なデジタル公共インフラ及びデータ・システムを構築し、飢餓、パンデミック 及び気候変動のような緊急の地球規模課題に協力して対処することができるよう、デジタル 公共財へのアクセスを前進させる意図を有する」ことを提唱している。 DPG憲章は、プロダクト・キャパシティ・導入・セーフガードとインクルージョン・エコシ ステムの支援の5分野におけるアウトカムを目指している
  12. © Code for Japan 17 なぜ国連がデジタル公共財を推しているのか デジタル公共財やデジタル公共インフラ(DPI: Digital Public Infrastructure)などのグ

    ローバル公共財 (GPG)において開発されるプロダクトやサービスは、国境を越え他国にも影 響を与えられることから、従来の「先進国/開発途上国」や「グローバルノース/グローバル サウス」等の二分法ではあらゆるプロセスや特徴が見落とされやすいと言われている (Horner, 2020)。 経済状況や地理的位置関係なくデジタル主権を提唱し、DPGやDPIの国際普及を狙う国々が 登場すると言われている (OECD, 2021)。代表的な例として、インドによるIndiaStackが挙 げられている。 この考え方は、日本において広がりつつある自治体間のデジタルサービス格差の解消にも 繋がるのでは?
  13. © Code for Japan 18 民間企業に依存しないための、 「デジタル主権」という考え方 欧州連合を中心とした、 主権の確保 米国を中心とした、ビッ

    グテックによる支配 EUも、「デジタル公共財」という言い方はしてこなかったが、歴史的にオープン ソース技術の活用や公開を積極的に推進してきた。 ビッグテックによるロックインや情報収集を警戒しており、デジタル主権 (Digital Sovereignty)の確保の観点から、様々なポリシーが作られている。 オープンソース技術の採用により、政府が自らプラットフォームを管理し、相互 運用性の確保や官民連携(PPP)を加速させることができ、加盟国間での相互運 用性なども期待できる。
  14. © Code for Japan 19 日本におけるデジタル公共財 日本政府は「デジタル公共財」という言葉を積極的には使ってこなかったが、デジタル行財 政改革会議などで取り上げられ、岸田総理からも下記の発言があった。 「第2に、人口減少社会においても公共サービスをデジタルの力で維持・強化していくに は、約1,800の自治体が個々にシステムを開発・所有するのではなく、国と地方が協力

    して共通システムを開発し、それを幅広い自治体が利用する仕組みを広げていくこと、これ が重要です。また、その際、マイナンバーカードやGビズIDをデジタル公共財として位置 付け、社会全体で広く活用していくことも必要です。」 (令和6年2月22日、第4回デジタル行財政改革会議) 出典:https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202402/22digitalgyouzaisei.html
  15. © Code for Japan 20 日本におけるデジタル公共財 日本政府は、官民データ連携推進基本法で自治体のオープンデータ公開を義務付けるなど、 オープンデータの推進は行ってきた。令和5年6月1日時点で約81%(1,449)の自治体が オープンデータを公開している※ 。

    行政のオープンソースソフトウェアの活用や公開については、2000年代には官民における 取組みや調査が活発的に行われていたものの、あまり普及しなかった歴史がある。 ただし、一部の機関、例えば国土地理院は以前からオープンソース公開などを積極的に行っ てきた。また、デジタル庁において現在ベースレジストリの取組みを促進していたり、オー プンソースのデータ連携基盤であるFIWAREの積極活用を推進している。 ※ 出典:https://www.digital.go.jp/resources/data_local_governments
  16. © Code for Japan 21 デジタル公共財創出を阻む、地方自治法 地方自治法二百三十八条 この法律において「公有財産」とは、普通地方公共団体の所有に属する財産のうち次に掲げ るもの(基金に属するものを除く。)をいう。 (略)

    五  特許権、著作権、商標権、実用新案権その他これらに準ずる権利 ※つまり、ソフトウェアは公有財産にあたる。そして、公有財産は行政財産と普通財産に分 けられる。 第二百三十八条の四 行政財産は、次項から第四項までに定めるものを除くほか、これを貸 し付け、交換し、売り払い、譲与し、出資の目的とし、若しくは信託し、又はこれに私権を 設定することができない。 ※国有財産法でも類似の記述があるが、「著作権」は行政財産だが、「著作物」は国有財産 法から見て対象外、という整理をしている。
  17. 1.進めたい政策の理解や発展につながる • ソースコードを共有するというこ とは、ソリューションの設計図を 共有すること。 • ソースコードに対する要望や改 善は、課題や期待する結果に 対するフィードバックでもある。 •

    別の用途に使われた場合で も、新たな発展系を学べる 課題 ソリュー ション 期待する 結果 ソース コード 要望・改善・ フィードバッ ク ソース コード 別の用途に利用 別の解法やより良い やり方の発見
  18. • 東京都コロナ対策サイト の GitHub を、アクセシ ビリティで検索した結果 は、20件 • 業界のプロフェッショナル による意見交換が多い

    • これを読むだけで、サイト が供えるべきアクセシビ リティについて相当詳しく なれる https://github.com/tokyo-metropolitan-gov/covid19/issues? q=is%3Aissue+is%3Aclosed+%E3%82%A2%E3%82%AF %E3%82%BB%E3%82%B7%E3%83%93%E3%83%AA% E3%83%86%E3%82%A3
  19. GSA (U.S. General Services Administration) のCode.gov Vision: コミュニティリーダーとしてコード の再利用とオープンソース開発 を推進し、コードの品質を向上さ

    せながらコードの使用量を削減 する Mission: 私たちの使命は、コードの再利 用を促進し、オープンソースコ ミュニティを教育して結びつける ことで、政府のパートナーや開 発者がコストを削減し、品質を 向上させることができるようにす ることです。
  20. 英国 GDS (Government Digital Service)のサービス標準 1. 利用者とニーズを理解する 2. 利用者のために全体の問題を解決する 3.

    すべてのチャネルで統合された経験を提供す る 4. シンプルに使えるサービスを作る 5. 誰もがサービスを利用できるようにする 6. 多職種のチームを持つ 7. アジャイルな働き方をする 8. 反復し、頻繁に改善する 9. 利用者のプライバシーを守る安全なサービス を作る 10. .成功がどのようなものであるかを定義し、パ フォーマンスデータを公開する 11. 適切なツールや技術を選ぶ 12. 新規のソースコードをオープンにする 13. オープンな標準や共通コンポーネントやパ ターンの利用と貢献 14. 信頼できるサービスを運営する https://www.gov.uk/service-manual/service-standard
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