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シビックテックによる、社会と民主主義のアップデート

 シビックテックによる、社会と民主主義のアップデート

2024年5月31日、2024年度 人工知能学会全国大会「AIとデモクラシー」OS招待講演のプレゼンテーションです。

Plurality や Decidim、デジタル公共財について解説しています。

Haruyuki Seki

May 31, 2024
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Transcript

  1. © Code for Japan 自己紹介   2 関 治之 Twitter: hal_sk

    シビックハッカー オープンソース好きなエンジニア 所属 • Code for Japan Founder • デジタル庁 シニアエキスパート(シビックテック) • 株式会社HackCamp CEO • 合同会社Georepublic Japan CEO 他 • 東京都チーフ・デジタル・フェロー • 浜松市 フェロー • 岡山県西粟倉村 最高情報戦略監(チーフ・インフォメー ション・オフィサー) • 山口県 CIO補佐官 • 香川県 かがわDX Labフェロー • 大阪府枚方市 DXフェロー • 三重県 みえDXアドバイザー • 総務省 地域情報化アドバイザー • 内閣官房 オープンデータ伝道師
  2. © Code for Japan オープンにつながり社会をアップデートする 4 シビック(市民) × テック(技術) 市民・民間企業・教育機関や行政の垣根を

    越えてアイデアを出し合い、自身のスキル を生かしながら参加する。 Who 市民(Civic) What 困りごと解決・アップデート Where 暮らしているまちなど How 技術(tech)を活用しながら シビックテックの特徴 垣根を越えた オープンな繋がり アイディアと ノウハウの蓄積・共有 シビックテックのアプローチ 社会課題 企業 大学 NPO テクノロジー活用 データ活用・場づくり 行政 市民 コミュニティ化 プロジェクト化
  3. © Code for Japan 5 地域の中で活動するコードフォー コミュニティ。 90以上のコミュニティが活動して おり、規模や活動テーマ、活動内 容は様々。

    ブリゲードは独立した団体とし て、各ブリゲードの自主性に基づ いて様々な活動をおこなう ブリゲードコミュニティ
  4. © Code for Japan 6 コミュニティ • ハッカソン・アイデアソンなど のワークショップ実施 •

    ブリゲードとの協働 • NPOや社会起業家の支援 3つの活動領域 GovTech • 行政の透明化 • 行政のDX支援 • 様々な主体との接続 Make our City • 参加型まちづくりの推進 • 市民合意形成PFの提供 • オープンソース都市OS開発
  5. © Code for Japan Code for Japan の注力分野 8 デジタルによる

    民主主義の アップデート デジタル公共財の 創出 ともに考え、 ともにつくる プロジェクト創出
  6. © Code for Japan 民主主義の改善と連動している 9 デジタルによる 民主主義の アップデート デジタル公共財の

    創出 ともに考え、 ともにつくる プロジェクト創出 民主主義を改善す る試み コモンズを生み出 す プラグマティズム
  7. © Code for Japan 15 ⿻Plurality を構成する3つの哲学 • ハンナ・アレント(記述的) ◦

    社会は単一ではなく、集団と個人の両方のア イデンティティが交差する、重複的で複雑なも のである • ダニエル・アレン(規範的) ◦ 多様性は社会的進歩の原動力であり、燃料の ように爆発する可能性があり、その潜在的エ ネルギーを利用することに成功した社会は成 長する • オードリー・タン(処方的) ◦ デジタル=數位 ◦ 協調的多様性のためのテクノロジー
  8. © Code for Japan • 社会的側面:ソーシャルメディアが、これまでは社会的に孤立していた人々がつながり を提供してきた一方で、これらのツールは社会的孤立と疎外感を悪化させる一因にも なっている。 • 経済的側面:

    インターネットやテレワークによって多様な雇用形態が可能になったが、 発展途上国や伝統的な労働市場に適合しにくい労働者にも機会が広がった。多くの先進 国における中間層の空洞化に寄与する傾向 • 政治的側面: 先進国を含む多くの民主主義国家では、分極化や過激派政党の影響力が次 第に高まっている。テクノロジーは、2000年以降の分極化の長期的な傾向、特に米国 における傾向に寄与している可能性が高い 16 テクノロジーによる民主主義への攻撃
  9. © Code for Japan • 法的側面: 過去数十年の金融イノベーションの急増は、消費者への具体的なメリットが 限定的である一方で、金融システム全体の多くにおいてリスクを高め、金融商品の数を 増大させてきた。その結果、これらの弊害を軽減するための既存の規制制度に異議を唱 えたり、回避したりすることさえある。暗号資産や暗号通貨は既存の規制制度でカバー

    されておらず、投機、ギャンブル、詐欺、規制や租税回避、あるいはその他の反社会的 活動の機会を広範囲に提供してきた。 • 実存的側面: ますます高度化する大量破壊技術に対して、社会的な意味形成や集団行動 能力が分断されることは危険であるという懸念が高まってきている。その影響は、環境 破壊から、より直接的な兵器による世界終末的な破壊(AIと生物兵器の誤用など)に至 るまで多岐にわたる 17 テクノロジーによる民主主義への攻撃
  10. © Code for Japan • 科学をベースにしながら、社会にアプローチする • システムを意識しながら、新たな統治システムの構築を目指す • 社会組織の様々なレベルが交差する、分散型のコミュニティ

    大規模で統一された、合理的で科学的な計画システムを志向するので はなく、独立、孤立した個人と資本主義のダイナミクスに任せるので もなく、個人と社会の関係性を重視して実践していく 18 ⿻のアプローチ
  11. © Code for Japan 21 Polis, Talk to City https://pol.is/

    https://ai.objectives.institute/talk-to-the-city
  12. © Code for Japan 22 分散型技術 • アイデンティティ:自己主権アイデンティティ(SSI)、連合型アイデンティティ (Fediverse、ActivityPub...など)、信頼の網(Web of

    Trust) • プライバシー:ゼロ知識暗号(ZK)、選択的開示(Selective Disclosure)など • データ:分散型ストレージ(IPFS)、非対称暗号化(asymmetric encryption)、デー タ協同組合(data cooperatives) • 資産:Verifiable Credentials 、暗号資産など
  13. © Code for Japan Talk to the City demo 文化庁が収集したAIと著作権に関するパブリック

    コメントをAI(Talk to the City)で分析可視化 ※サイボウズラボ 西尾泰和氏による実証 https://nishio.github.io/tttc_aipubcom_japan/ 23
  14. 本スライドのURL:https://s.c4j.jp/about_decidim 問い合わせ:[email protected] Decidim概要 2024年4月版 © Code for Japan Decidimはカタルーニャ語で「我々で決める」を意味する、2016年にスペイン・バルセロナで誕生した オープンソースの参加型合意形成プラットフォームです。 Decidim(デシディム)について

    https://decidim.org/ja/ 24 世界での取り組み バルセロナから世界各地に広がり、スペイン、フィ ンランド、アメリカ、メキシコ、台湾などをはじめ 30カ国や地域・450サイト、約300万ユーザーが利 用しています。 日本における展開 2020年10月に兵庫県加古川市で初めて導入され、 国・自治体・民間部門で、約30サイトで利用されて います。
  15. 本スライドのURL:https://s.c4j.jp/about_decidim 問い合わせ:[email protected] Decidim概要 2024年4月版 © Code for Japan リアルのコミュニケーションも併用しながら市民エンゲージメントを高める取り組みになっています。 (例)地区別のコミュニティマネージャーが対面でワークショップをする、投票は紙でもできる等 世界のDecidim事例

    フィンランド・ヘルシンキ市 • 2018年開始 • 880万€の参加型予算編成プラットフォーム • まちづくりに関する396件の提案に対して12歳以上の 約5万人が投票し、75件の提案を採択 https://omastadi.hel.fi/?locale=en https://www.decidim.barcelona/ 世界のDecidim事例:https://meta.diycities.jp/assemblies/usedby 25 スペイン・バルセロナ市 • 2016年開始 • 市計画に参加者4万人が1万件以上の提案を寄せ、 1,500件が採択 • 100を超える市民参加プロセスを運用
  16. 本スライドのURL:https://s.c4j.jp/about_decidim 問い合わせ:[email protected] Decidim概要 2024年4月版 © Code for Japan 官民問わず幅広い分野でのコミュニケーションプラットフォームとしての活用がはじまっています。 日本のDecidim事例 26

    日本におけるのDecidim:https://meta.diycities.jp/assemblies/hereandthere 計画策定プロセスへの適用 パブリックコメントに加えて、市民同士、市民と自 治体のコミュニケーションの場として運用。 多様で個別のニーズを反映する仕掛け アウトリーチを意識したサイト運営が、参加プロセ スの設計にもなっています。 (例)兵庫県加古川市 – 地元高校生をはじめ多くの若者が参加 – オンライン・オフライン双方での対話を組み合 わせて計画を策定 パブリックコメントのアップデート
  17. 本スライドのURL:https://s.c4j.jp/about_decidim 問い合わせ:[email protected] Decidim概要 2024年4月版 © Code for Japan 官民問わず幅広い分野でのコミュニケーションプラットフォームとしての活用がはじまっています。 日本のDecidim事例 27

    日本におけるのDecidim:https://meta.diycities.jp/assemblies/hereandthere デジタルシチズンシップの展開 例:福島県西会津町 – アントレプレナーシップ教育として中学生がまちづく りを提案を行う – 町内外が連携して社会実装を目指す 例:兵庫県加古川市 – 高校生が企業プロボノ・市役所職員のサポートを受 け、市長に政策提案 地域運営組織での活用 例:京都府与謝野町 – 500人規模の集落での活用 公共空間のプレイスメイキング まちの広場や公園の管理者と参加者が利用ルールの整備・活用を協働して行う ボトムアップでの特徴的アプローチ
  18. 本スライドのURL:https://s.c4j.jp/about_decidim 問い合わせ:[email protected] Decidim概要 2024年4月版 © Code for Japan 民間セクターが主体になり、共通の目的を持った複数地域が利用するプラットフォームとしての活用も進 んでいます。 日本のDecidim事例

    https://shibuya-goodtalk.diycities.jp/ https://shinshu-goodtalk.diycities.jp/ 民間主体の取り組み 地域間連携のためのプラットフォーム 阪神間で産学官民協働を推進するための共創型人材育成研 修において、プロジェクト管理ツールとして活用 民間企業による複数地域での展開 まちづくりのプロジェクトの共通プラットフォームとして 横展開する事例が登場(東京都渋谷区・長野県信州地域) 28
  19. 本スライドのURL:https://s.c4j.jp/about_decidim 問い合わせ:[email protected] Decidim概要 2024年4月版 © Code for Japan 29 ・新規性  インターネットでできることの、1周まわった目新しさ。

    ・熟議?  役所ホームページよりも長い閲覧時間。じっくり読んでいるユーザーの存在。 ・フランクなコミュニケーション  公開の場でフランクに議論ができる。「中の人」とやりとりするノリが生まれている。 ・双方向+α  役所だけでなく他の参加者の意見を知ることができる。 ・コロナ禍でのオンラインの経験  オンラインを抜きにした方法は、もはや考えにくい。 プラットフォームを取り巻く可能性
  20. 本スライドのURL:https://s.c4j.jp/about_decidim 問い合わせ:[email protected] Decidim概要 2024年4月版 © Code for Japan 30 プラットフォームを取り巻く課題(運用面) ・代表性・意見集約

     どこまで言っても「一部の人の意見」ではないのか?という疑問が根強くある。  多様な意見が出たとして、それをどのように集約するか? ・行政側の対応コストや能力  一つ一つにどう返信するか・できるかジレンマを抱えるのではないか? ・スマホネイティブ時代への対応  「インターネット=スマホ」のユーザーは「ながら見」など、より短時間での行動完結が  明確。「気軽に見て意見が出せる」と「きちんと読む」の間にジレンマが生じる。 ・参加者のリテラシーやアウトリーチ  参加してもらうこと自体にハードルがある。参加までの導線設計が複雑になりやすい。
  21. 本スライドのURL:https://s.c4j.jp/about_decidim 問い合わせ:[email protected] Decidim概要 2024年4月版 © Code for Japan 31 プラットフォームを取り巻く課題(技術面) ・テキストベースでの意見交換とデータの活用

     何かしらのテキストマイニングを行うことなどが試みられているが、  生身のファシリテーターとの協働はどのようにすればよいのか? ・意見表明のラストワンマイル問題  ふと思い浮かぶ「身近な」プラットフォームになるのか? ・IDの問題  諸外国はそれぞれのデジタルID政策(住民登録ID、学校ID)と連動している。  なりすまし・複数登録への対策が不可欠になる。  さまざまなID・パスワードにあふれた我々の日常がどう変わっていくか。
  22. © Code for Japan 33 皆がオープンに使える「デジタル公共財」を増やす デジタル公共財とは? オープンソースソフトウェア、オープンデータ、オープン AIモデル、オープンスタンダード、オー プンコンテンツなど、プライバシーやその他の適用される法律やベストプラクティスを遵守し、

    害を及ぼさず、SDGsの達成に貢献するもの ※国連事務総長の「デジタル協力のためのロードマップ(国連)」の発言から引用 https://www.un.org/sg/en/content/sg/statement/2020-06-11/secretary-generals-remarks-the-virtual-high-level-event-the -state-of-the-digital-world-and-implementation-of-the-roadmap-for-digital-cooperation-delivered
  23. © Code for Japan 35 官と民、双方の参加が必要 行政 市民や民間企業、大学等 透明性の高い情報発信 協働機会の提供

    参加機会の提供 政策の理解 主体的な参加 適切なフィードバック 信頼 醸成
  24. © Code for Japan 誰でも参加できる、プロジェクト持ち込み型の 1day ハッカソン。 ・アイデアが無くても参加できる! ・興味あるプロジェクトを選んで参加 ・途中入場・途中退出可

    ・エンジニアでなくても大丈夫 ・プロジェクト持ち込みも大歓迎 ・初心者向けのオンボーディングも 37 ソーシャルハックデー