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感染症の数理モデル11

 感染症の数理モデル11

Daisuke Yoneoka

February 20, 2025
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  1. 目次 1. 感染症のコンパートメントモデル 2. 基本再生産数 3. 最終流行規模 4. R実装 5.

    人口の異質性とSIR 6. 再生産方程式とエボラ vs インフル 7. R 0 の推定方法(流行初期) 8. 内的増殖率の検定 9. Effective distance 10. 分岐過程 (Branching process) 11. 大規模流行確率と水際対策 12. Backcalculation 13. 致死率の計算 14. (シンプルな)ワクチン接種の自然史と流行条件 本書の内容をカバーします。 具体的なコードなどは右の本 詳細なプログラムなどは https://github.com/objornstad/epimdr/tree/ master/rcode (結構間違ってる。。。) 2/48
  2. パラメタライズ • m : 母親からの移行抗体によって免疫を保持する期間(6 か月) • s : 母体からの免疫が消失してから死亡するまでの感受性を有する

    期間 • sv :ワクチン接種までの感受性期間 • v :ワクチン接種後から死亡するまでの免疫保持期間 • si : 自然感染までの感受性期間, • l : 非感染性期間(感染した後に他者に感染させる能力を持たない 期間) • i : 感染性期間(他者に感染させる能力を有する期間) • r : 自然感染から回復してから死亡するまでの免疫保持期間 71 t si は M から A までの時間であることに注意
  3. 定常状態においては • ワクチン接種(割合p)による集団的効果を考える • 定常状態は2つ。まずは自明な感染者が0の場合 • 麻疹患者が一定数いる定常状態。 • 仮定1: 左図Aはほとんど0とする。

    • 仮定2: 自然感染をする人はワクチン接種をしない 72 ワクチン接種群 (左図B) ワクチン非接種群 (左図A) Memo: 一瞬 t sv /Lは2つ目の式にいらないの か?と思うが、仮定2よりそういう人はいない
  4. 流行条件の導出 • ランダムな接触を仮定すると、一人の感染者あたり 人の感染者 → 定常状態なので 、もっと言うと も も定数 •

    自然感染の平均年齢は(A 0 はワクチン非接種群の自然感染の平均年齢) • 感染症を根絶したいなら以下の状態を目指す(前のスライドで、感染者0の定常状態) 73 以下に代入して 定数であることが確認できる ワクチン接種率pとは無関係! R0は変えられないとすると、 この右辺の値を小さくしていく ことが感染症の根絶につながる つまり、オレンジが青より小さければ良い → これが目指すべきワクチン接種率 面白い式:ワクチン接種割合 が高くなるにつれ, 自然感染 を経験する平均年齢が上昇す る傾向にある
  5. 免疫を有する者がいる人口への流入 • 現実に平衡状態にある感染症なんてないよね。 • 多くは「他地域からの流入」と「地域内根絶」を繰り返して流行の波ができている • 流行開始前の免疫を有する者の割合を • 流行が繰り返される主要因は、感受性を持つ割合 が平衡状態の感受性割合

    より少し大きくなること • 最終規模(一つの流行を通じて観察される感染者の割合)を • また、(一人が)流行中に感染する確率は (第4回プレゼン(次のスライド再掲)を参照) • 最終規模は (普通よりf s0 だけ小さくなる) 74 fs0 : 一つの流行が終息しても感受性を持 ったままの割合 これを2次のテイラー展開 平衡状態では より この意味:前の感受性宿主の割合f s0 が、平衡状態の感受性宿主 の割合f s を1%上回る度に、短期的流行(再流行)を通じて感染 する者の割合が2%増える ひとたび流行が下火になっても、感受性を有するものがどれ くらい人口内にいるかを確認することの重要性を示唆 重要な示唆
  6. 最終流行規模 (Final epidemic size) もうちょっと現実的に人口あたりで考える SIRには2つの均衡点 (s, i, r) =

    (1, 0 , 0)と(s*, 0, r*) 75/20 t→∞としたときに感染者は0人になり、 s* (= s(∞)): 何%が感染を逃れたか r* (= r(∞)): 何%が感染したか 新しい基本再生産数 r*にてつい て解く (解析的には解けないので)数値計算 R0 が大きいとき はr*≒1なので R 0 だけから、最終的な流行規模が見積もれる! 求め方:上の3番目を1番目に代入し て積分するだけ