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感染症の数理モデル8

 感染症の数理モデル8

Daisuke Yoneoka

October 30, 2024
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Transcript

  1. 目次 1. 感染症のコンパートメントモデル 2. 基本再生産数 3. 最終流行規模 4. R実装 5.

    人口の異質性とSIR 6. 再生産方程式とエボラ vs インフル 7. R 0 の推定方法(流行初期) 8. 内的増殖率の検定 9. Effective distance 10. 分岐過程 (Branching process) 11. 大規模流行確率と水際対策 12. Backcalculation 本書の内容をカバーします。 具体的なコードなどは右の本 詳細なプログラムなどは https://github.com/objornstad/epimdr/tree/ master/rcode (結構間違ってる。。。) 2/48
  2. HIV感染者数をAIDS患者数から逆計算 AIDS患者数が全数報告されているとして、HIV感染者数は何人か? Notation a t : 流行開始t年後のAIDS患者数(正確にはその期待値) h t :

    流行開始t-1年目からt年目までの新規HIV感染者数 w(): HIV感染からAIDS発症までの潜伏期間のpdf w t : w()を離散化させてt-1年目のAIDS発症確率 52 1年目のHIV感染者数h1 に1年以内の発症確率w0 をかけたもの 1年目のHIV感染者h1 が2年目での発症確率w1 をかけたもの + 2年目のHIV感染者h2 が1年目での発症確率w0 をかけたもの 今、at は観察されていて、wは既知とする 欲しいのはht ! Backcalculation!!
  3. 推定は? 一般的には 1. 最尤法: aかhのどちらかにパラメトリックなモデルを仮定 • 例えば、 を仮定して、θの最尤推定量を求めればOK • しばしば負のhになっちゃうので難しい

    2. ノンパラ: hのポワソン過程を仮定するとaもポワソン過程 3. EMS (EM algorithm + smoothing) • EMでhを作ってそれを最大化する。ただし、各iterationの間でhがある程度 smoothになるようにペナルティをかける 54
  4. 逆計算による短期予測 1期先予測 2期先予測 Note • 青い箇所は、全く無情報なので、自分で考える • 短期的な将来予測に対してのみ有効とされている • 潜伏期間がiidを仮定しているので、今はかなり古い手法

    • AIDSの全数把握を仮定しているため、日本ではムリ 55 t時点では もう知っ ている ちょっとトリッキー 全体のHIV感染者のうちの何人がまだ AIDSを発症してないか、を知っているか のように推定する。
  5. もうちょっとだけ複雑にしよう1 (Cui and Becker, StatMed, 2000) (競合リスク)Competing risk model (ex.

    がん死亡のハザードを知りたいときに、脳卒中死亡は競 合リスク) まず、ある個人は時間uにHIV感染 HIV感染からAIDS発症までの時間をD その時間の密度関数(incubation period)をf(x)、その累積密度関数をF(x)とする ある時点xのハザード関数は 同様に、HIV感染からHIV診断までの時間をD’とし、そのハザード関数を とする 2つの関係は のように定める 56 ρ’はρをγだけ定数倍 +vだけ定数移動
  6. もうちょっとだけ複雑にしよう2 (Cui and Becker, StatMed, 2000) (競合リスク)Competing risk model (ex.

    がん死亡のハザードを知りたいときに、脳卒中死亡は競 合リスク) 時刻 zのHIV感染者h(z)を加法ハザードモデル 感染からHIV診断 or AIDS発症までの時間の早い方 (i.e., min(D, D’)):Induction period の報告期間ごとの差分を とすると 57 Induction period ρたちが定数 とする