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感染症の数理モデル9

 感染症の数理モデル9

Daisuke Yoneoka

November 01, 2024
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  1. 目次 1. 感染症のコンパートメントモデル 2. 基本再生産数 3. 最終流行規模 4. R実装 5.

    人口の異質性とSIR 6. 再生産方程式とエボラ vs インフル 7. R 0 の推定方法(流行初期) 8. 内的増殖率の検定 9. Effective distance 10. 分岐過程 (Branching process) 11. 大規模流行確率と水際対策 12. Backcalculation 本書の内容をカバーします。 具体的なコードなどは右の本 詳細なプログラムなどは https://github.com/objornstad/epimdr/tree/ master/rcode (結構間違ってる。。。) 2/48
  2. 致命割合と人口規模の被害 死亡リスクの推定をしたい • 個人における死亡リスク = 致死割合 (CFR: Case fatality ratio)

    • 確定診断者数を分母にした場合:cCFR (confirmed CFR) • 発病者を分母にした場合:sCFR (symptomatic CFR) • 集団における死亡リスク = 一つの流行あたりの人口における死亡者数 • CFRの推定は累積患者数Ctと累積死亡者数Dtを用いて でいいのか? →もちろんダメ.Ctは右側打ち切りを受けている 58 ここは致命割合 ここは結局,最終規模 (つまりR0の関数) 実際は分母分子ともに実データを揃えるのは大変! (cf. インフルの感染者 incl. 受診しない人,症状の 出ない人,を推定する必要)
  3. Dt/Ctにおけるバイアス • Dt/Ctでやると(c)CFRは低めにバイアスされる • 証明は簡単 • p:致命割合 • c h

    :時点hにおける感染者数 • f:(死亡者中)の感染から死亡までの時間のpdf • じゃあどうすればいいのさ? • pも打ち切りを考慮した推定量にすればいい 59 Atは時刻tまでに死亡 リスクがある感染者数 この部分が underestimation factor t→∞で等号成立 上は単に,死亡の二項分布を仮定した 右のような尤度関数の最尤推定量
  4. CFRの欠点2 欠点というか注意点 2. 致命割合の比較 • 感染症AとBを比較したい • そのとき,分母と分子の測り方は同じか? • もし同じなら,母比率の差の検定(同等だが,2×2分割表の独立性検定)すればいい

    • サンプルサイズが小さければ,超幾何分布を用いたFisher’s exact testすればいい • 普通の疫学統計と同じですね. • 最終的な人口あたりの死亡者割合は,最終規模z,感染時の発病確率u,cCFRのpの積 • 季節性インフルは人口10万人あたり8-9人の死亡 • (適当だが)ある感染症がz=60%, u=2/3,p=0.22%とすると人口10万人あたり80人程度死亡 61
  5. CFRの欠点3 欠点というか注意点 3. 致命割合が伝播に与える影響 • 致命割合を上げすぎると,R 0 が低くなり,進化の方向としては不利に • 多くの場合,R

    0 は以下のような比の形. • 伝達係数β,死亡率α(致命割合pの増加関数),回復率γ,自然死亡率δ • だけど,変異株などはこのルートに乗らない • 基本再生産数R 0 とCFRをあわせてPademic potentialという専門的呼称 63 R 0 を上げたい→αが下がる→毒性は低下