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石仏情報学:石造物のデータ化およびデータに基づく石造物研究の推進に向けて/jinmonkon-2022

 石仏情報学:石造物のデータ化およびデータに基づく石造物研究の推進に向けて/jinmonkon-2022

第128回人文科学とコンピュータ研究発表会での発表資料になります

Code for History

February 19, 2022
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  1. 目次 • はじめに • ケーススタディ • 地蔵プロジェクト • 月待ビンゴプロジェクト •

    石造物3Dアーカイブプロジェクト • 令和館林石造物悉皆調査プロジェクト • 車載カメラとAIによる路傍の石造物調査 • 総括と今後の課題 • Appendix 2
  2. 石仏情報学の提唱 4 • 文化財データ:時代に応じたデータ化は必須、過去にも行われてきた • 石への刻銘 => ガリ版私家調査=> 商業出版 =>

    デジタルオープンデータ • 刻銘のみ => 写真 => 正確な経緯度、3D形状データ等 • 過去のデジタル化への取り組み: • 加来利一氏「千葉県の道標」:CC BYだが商用禁止とも • 国立民族学博物館「寺社・石碑データベース」、国土地理院「自然災害伝 承碑」:広範だが解像度が低く、悉皆性が少ない • 地域ごとの小さな石造物まで、悉皆的に共通の構造化されたデータを 整備する活動として、石仏情報学を提唱
  3. 地蔵プロジェクトとは 6 • 奈良市内の祠、石仏の存在を調査し、オープンデータで整備するプロ ジェクト • 街角の小さな祠や石仏ですら、1300年、700年といった歴史を持つ • マンションの土台にすら、地蔵の置き場が設計されるほど根付いた信仰 •

    都会のコンビニ以上の密度で存在する小さく身近な信仰の場 • 奈良の祠、石仏をリストアップし紹介することで、新たな教育の可能 性や観光ビジネスに繋がると考え、2016年活動開始 • 2022年1月末までに396件の地物、1,151件の写真を収集
  4. 地蔵プロジェクトの課題 8 • 石仏情報学提唱以前の2016年開始の活動のため、石造物だけでなく祠 も対象、個々の石造物ではなく群として整備するなど、今の方向性と の齟齬も多い • 情報は場所、写真、伝説など書籍言及への参照のみ、サイズ、年代、 刻銘その他の属性は今後の課題 •

    2022年1月以降、館林の活動で開発した文化財オープンデータ管理シ ステムToriiを適用、市民からの新規発見投稿にも対応 • 1989年奈良市教育委員会実施の「奈良市石造遺物調査報告書」との紐 づけも検討を始めているが、報告書側の情報が粗く苦戦中
  5. 令和館林石造物悉皆調査とは 15 • 館林には50年前の石造物準悉皆調査が存在 • 種別、サイズ、年代の他、刻銘など酸性雨の影響前で読み取れた時代の記録も 残っており貴重な調査 • 正確な位置、写真などが整備されておらず、現況照らし合わせ困難 •

    現況の調査に加え、時代に応じたデータ整備(経緯度、写真、オープンデータ 化、市民参加)を目指し2020年6月活動開始 • ぐんま史料ネットとも連携し、準悉皆調査以外に市誌、市史、図書館発行書 籍なども現況調査対象に加えた • 2022年1月末までに1,837件の地物をリスト化、現地調査済み703件(うちぐん ま史料ネット協力121件、市民協力8件)、新規発見73件、1,201件の写真を収 集
  6. 文化財管理ツールToriiの開発、適用 17 • データ管理の継続性を担保できる仕組みを開発 • QGISなど専門ツールを使わなくとも、Excelで一貫性のある更新 • Twitterを通じた市民からの投稿スキーム導入 (月待ビンゴを参考に) •

    他の文化財管理プロジェクトにも適用できるよう、オープンソース公開 C4Hの更新 ぐんま史料ネットの更新 変換 中間データ 変換 変換 両データ形式に出力 フォーマット 変換プログラム 変化内容は GeoJSONで検知
  7. 車載カメラとAIによる路傍の石造物 調査とは • 車載カメラで撮影した動画から、深層学習を用いて石造物と 像、文字を検出 • 石造物 - 石塔・石碑、 石灯籠、石祠、五輪塔

    • 像 - 地蔵菩薩、聖観音、 如意輪観音、阿弥陀如来 • 文字 - 夜、庚申、道祖、 馬頭、甲子、地神、念佛、 萬霊、蠶 19
  8. 今後の方向性 22 • データの質と量の向上 • 敷居の低い市民参加の仕組みは必須 • 敷居を下げる管理、補助ツールの準備 • オープンデータ化の許諾の仕組み

    • AIによる自動発見、自動収集 • データの構造化 • 石造物オントロジーの構築 • 各種データ形式への可搬化 • 過去のデータの名寄せ、有効活用 • 現時点の姿を3Dの形で未来に残す • 他研究での活用 (例: 石造物上の地名により村の成立時期を推定するなど) • これまで 広範囲低密度か、密度は高いが狭域のデータしか作られてこなかった石造物デジタルデー タだが、広範囲高密度のデータベースを目指し、データに基づく新たな石造物研究の道を拓く
  9. 石造物調査を補助するツールの開発 • 日本の年号推定ツール Harumi • 読み取りにくい石造物の年号を、元号、 干支、年数字の一部からでも推定 • 悉曇文字、異体字、変体仮名の Unicode表示、入力ツール

    Nagarjuna (開発中) • モバイル環境でもこれらの文字を表示、 入力をしやすくする • 石造物の形状、種別、彫などを表現する オープン地図アイコンセット Mogaoku (開発中) 24