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ウィキペディアタウン以外にもある、地域資源の継承と発信 /wikimediacon-2025

ウィキペディアタウン以外にもある、地域資源の継承と発信 /wikimediacon-2025

West-Japan Wikimedia Conference 2025 発表

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Code for History

December 06, 2025
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  1. みんなのよく知るウィキペディアタウン 歩いて • フィールドワークで地域を体感 調べて • 図書館・博物館・資料館で裏付けを取る/典拠を探す 書く • Wikipediaに記事を立てる/改善する

    価値の再確認 • 「図書館の書庫に眠る地域資料」を世界に開いてきた活動[1] • MLA連携・情報リテラシー教育[2]・地域の再発見 • 地域の図書館・博物館と市民の協働 3
  2. 「過去の未知」を「現在の既知」に - 大字誌 - 大字誌とは[3] • 生活と生業に密着した最小単位の地域「大字」を単位とした歴史・ 民俗の記録 • 大字の歴史資料を地元住民と研究者が一緒に調べて記録し、地域で

    共有し、未来へ継承することを目的とする市民活動 活動地域例 • 福島県 浪江町請戸地区、双葉町両竹地区、富岡町小良ヶ浜地区など (歴史資料継承機構じゃんぴんなど) • 群馬県 玉村町角渕地区[3]、前橋市東上野町地区(群馬史料ネット) • 兵庫県 神戸大学地域連携センターの活動など 6
  3. 大字誌「角渕」の事例 - 群馬歴史資料継承ネットワーク - 史料ネット代表・群馬県立女子大学 簗瀬大輔准教授の問題意識 • 民間の住宅に埋もれたままの史料の所在を把握・共有し、活用「公開や 活用こそ最強の保存方法」 •

    歴史とは「ある」(Be history)ではなく、「する」(Do history)もの • 史料の被災リスク直面時も、日常的な活動が、救出や保全に役立つ • 史料の残存はある意味奇跡、被災などで「存在の記録すら失われる前に 活動を広げたい」 活動主体 • 角渕地域の地元住民(玉村歴史塾) • 研究者(群馬史料ネット) • 学生(群馬県立女子大) 7
  4. 類似の活動 @ 奈良 京終本にはじまる奈良市中心街誌 京終(きょうばて)…ならまちの南玄関 • 奈良中心街を構成する「ならまち」「きたまち」「高畑」「京終・紀寺」 の4地域のうち、南方に位置する地域 • 紀氏ゆかりの古代寺、紀寺の系譜を持つと言われる、璉珹寺を会場と

    した月一度の学習会、「京終さろん」が10年以上続く • テイチクレコード創業の地の本社工場跡地に、「元興寺文化財研究所」 が移転 … 地域の人々と歴史研究者の交流も盛んに 地域の人々を巻き込んだ、地域誌本の企画が立ち上がる • 古代中世は最新の発掘や研究成果を元にして主に元文研が、 近世近代は京終さろんメンバーを中心として主に地域の人々が 担当し調査執筆 12
  5. 京終本にはじまる奈良市中心街誌 - その位置と活動のようす - 13 © 図版は奈良町見知ル実行委員会、京終ニュース、 国土地理院、京終さろん Facebook から引用

    0 100m 0 100m 京終駅 璉珹寺 崇道天皇社 元興寺文化財研究所 椚神社 京終地蔵院 肘塚(春日若宮社) 京終天神社 (飛鳥神社) 地域の古写真を確認 京終さろんの様子
  6. 京終本にはじまる奈良市中心街誌 - 成果とひろがり - ⬅ 2021年7月、京終本活動の成果を冊子として発売 © 元興寺文化財研究所/京阪奈情報教育出版/奈良町座 14 ⬅

    元興寺文化財研究所では 成果を元にした特別展も 開催 ➡ 同様のスキームでの 「ならまち本」作成も、 「奈良町座」グループを 中心に進行中 きたまち、高畑の各地区 にも、現地団体に活動が 紹介され、検討に入った
  7. 民間に埋もれていた史料を元に、地域住民を巻き込んで歴史を紡ぐ マトリクスに大字誌を配置 知識の状態 未知 ⇔ 既知 ⇔ 周知 過去 ⇔

    現在 時間軸 「過去の未知」を「現在の既知」へ運ぶ活動 簗瀬准教授の言葉を借りるならば…「歴史をする」 Be History 歴史が「ある」 Do History 歴史を「する」 15
  8. 「埋もれた史料」を掘り起こしても、次は「埋もれた書籍」にならないか 周知はどうするのか 知識の状態 未知 ⇔ 既知 ⇔ 周知 過去 ⇔

    現在 時間軸 「過去の未知」を「現在の既知」へ運ぶ活動 ウィキペディアタウンとの組み合わせで、一気通貫に周知できるのでは 「既知」を「周知」へ運ぶ活動 Tell History 歴史を「伝える」ことをウィキペディアタウンが担いうる 16
  9. 過去 ⇔ 現在 ⇔ 未来 時間軸 「未来」を考えに入れると? 知識の状態 未知 ⇔

    既知 ⇔ 周知 「過去の未知」を「既知」へ 運ぶ活動 「既知」を「周知」へ 運ぶ活動 我々の日常もあたりまえも、はるか未来から見れば過去の「歴史」 意識して残さなければ、時間の経過や災害で、わからない「未知」となる 17
  10. 「現在の未知」を「未来の既知」に - まちの記憶を残し隊 - まちの記憶を残し隊とは[5] • 山形大学 小幡圭祐准教授の発案 • 山形県庁の位置していた山形市七日町界隈は、明治以降劇的な変化を

    遂げた地区、景気の低迷やコロナ禍で劇的変化は今も続く • 地域アーカイブの構築には、年単位で継続的に地域の「記憶」を収集 する施策が必要 • 活動主体は学生、当初は学生の授業における課題、のちに学生サークルとして 活動継続 • デジタルカメラによる街並みのアーカイブ(ボーンデジタル史料) • インタビューによる「記憶」の収集(オーラルヒストリー) • 定期的な活動報告イベントの実施「ななはく!ソーレ(2月)ルーナ(9月)」 • 現在の記憶も1秒経てば取り戻すことのできない立派な歴史となる 18
  11. 「まちの記憶を残し隊」の事例 - その位置 - 七日町通り 0 100 200m 0 100

    200m 済生館病院 アズ中央公民館 花小路 旧千歳館 旧大沼百貨店 Q1(旧一小) 文翔館(旧県庁) © 国土地理院 御殿堰 19
  12. 「まちの記憶を残し隊」は拡大中 - 塩竃、新潟 - しおがま まちの記憶を残し隊 • 山形の残し隊の初代隊長、高橋氏の 故郷での活動 •

    定例撮影会を中心に、まちの変化の 記録から活動開始 花街の記憶を残し隊 • 山形アーカイブのスキームを 活かし、新潟大学の 榎本千賀子准教授を中心に、 新潟古町花街の記憶を残す 活動が始まる • 古町芸妓の方々の オーラルヒストリー 聴き取りなどから 活動開始 22
  13. そのままでは残らず「未知」となる我々の「現在」の日常を、 画像化や言語化で残し得る形にして「未来の既知」に変える 過去 ⇔ 現在 ⇔ 未来 時間軸 マトリクスに「残し隊」を配置 知識の状態

    未知 ⇔ 既知 ⇔ 周知 「現在の未知」を「未来の既知」へ運ぶ活動 今自分が生きる日常を歴史にする Live History 歴史を「生きる」 とでも言えるのでは 23
  14. 過去から未来へ繋がる地域の営みを、未知から周知まで一気呵成に紡ぐ 過去 ⇔ 現在 ⇔ 未来 時間軸 3つの活動をマトリクスで俯瞰 知識の状態 未知

    ⇔ 既知 ⇔ 周知 「現在の未知」を「既知」へ運ぶ活動 「過去の未知」を「既知」へ 運ぶ活動 WPT 「既知」を「周知」へ 運ぶ活動 歴史を織る(Weave History) 過去から未来へ繋がる地域の営 経糸と緯糸で「歴史を織る(Weave History)」ような活動ができるのでは 24
  15. 双方向の連携可能性 大字誌、残す会 ⇔ ウィキペディアタウン 未来に周知し残す媒体が、ウィキペディアがベストとは限らない • ウィキペディアの特性に合わない記録対象もある • 特筆性がない、未対応のデータ型、コントロールが必要な場合 •

    自ら作り上げた書籍の出典は、独自研究と紙一重 • ウィキペディア以外の媒体で周知しネットに残す方法も考える • 大学/博物館デジタルアーカイブ • 地域デジタルメディア • OpenStreetMap、localWikiなど 未来の再利用を容易にする公開方法について、Wikimediaのノウハウを伝える • ライセンスを示した公開の方法、Creative Commonsの精神 • 出典の示し方、著作権の取り扱い方 25
  16. 参考文献 [1] 青木 和人「図書館における地域資料の新たな活用方法としてのウィキペディア・タウン 事業の意義と現状、今後の展開について」(『図書館界』71巻 6号、2020) [2] 谷島 貫太「大学にウィキペディアタウンをインストールする :

    二松学舎大学谷島ゼミの 事例」(『大学の図書館』38巻 7号、2019) [3] 群馬歴史資料継承ネットワーク、玉村歴史塾編『大字誌「角渕」』(群馬歴史文化遺産 発掘・活用・発信実行委員会、2022) [4] 野口 華世「前橋市東上野町公民館所蔵文書の発見・保存・調査とその活用実践について ── ぐんま史料ネットとの連携と大字誌へ──」(『群馬学研究KURUMA』3号、2025) [5] 小幡 圭祐、本多 広樹「地域アーカイブのレコード・マネジメント確立の試み:山形大学 「まちの記憶を残し隊」の実践から」(『デジタルアーカイブ学会誌』6巻S3号、2022) 27