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スポーツデータとデザイン / Design in sports data analytics (2022-10-19)

konakalab
October 19, 2022

スポーツデータとデザイン / Design in sports data analytics (2022-10-19)

京都大学情報学研究科「情報通信のデザイン」の1コマとして講演した内容です(過去の「データでスポーツを楽しもう!」とほぼ同内容です)

konakalab

October 19, 2022
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Transcript

  1. 野球:選手をどのように評価するの か? 選手の「良さ」を評価できる値はど れ? △打率 ◎出塁率 〇本塁打数 △打点 ×得点圏打率 ×盗塁数

    ×勝利数 △防御率 … 2021/11/30 京都大学大学院 情報科学研究科「情報通信のデザイン」 11 勝利にどれだけ 貢献したか? 選手個人を 評価できているか?
  2. ビル・ジェームズとセイバーメトリクス ビル・ジェームズ 野球の統計データ取得 データに基づく分析 1970年代に「セイバーメトリクス」の確 立に寄与 (SABRMetrics, SABR=Society for American

    Baseball Research) 提唱当初はあまり注目されず. 2021/11/30 京都大学大学院 情報科学研究科「情報通信のデザイン」 12 Colette Morton and Dan Holden - DSCF0551, CC 表示-継承 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=16358673 による
  3. 「セイバーメトリクス?」 野球における評価を統計に基づき行 う 「勝利にいかに貢献できたのか?」を 客観的に評価する 「伝統的」な指標は必ずしも勝利数を 増やさない or 選手個人の能力を表さ ない!

    打点,盗塁,得点圏打率,勝利数,防 御率,… 「野球で勝つためには?」 ホームランをたくさん打つ!→△ 打者3人がアウトになるまでにいかに 多くの塁を獲得できるか?→◎ 2021/11/30 京都大学大学院 情報科学研究科「情報通信のデザイン」 13
  4. 「セイバーメトリクス?」 野球における評価を統計に基づき行 う 「勝利にいかに貢献できたのか?」を 客観的に評価する 「伝統的」な指標は必ずしも勝利数を 増やさない or 選手個人の能力を表さ ない!

    打点,盗塁,得点圏打率,勝利数,防 御率,… 「野球で勝つためには?」 ホームランをたくさん打つ!→△ 打者3人がアウトになるまでにいかに 多くの塁を獲得できるか?→◎ アウトにならない確率=出塁率◎ 打席当たりの獲得塁数=長打率◎ 出塁率+長打率=◎◎ OPS (On-base Plus Slugging) 2021/11/30 京都大学大学院 情報科学研究科「情報通信のデザイン」 14
  5. 「マネー・ボール」 2021/11/30 京都大学大学院 情報科学研究科「情報通信のデザイン」 19 Leaders Event from London, United

    Kingdom - Billy Beane - General Manager Oakland A'sUploaded by Muboshgu, CC 表示 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=20513220による
  6. 「マネー・ボール」 2021/11/30 京都大学大学院 情報科学研究科「情報通信のデザイン」 20 Leaders Event from London, United

    Kingdom - Billy Beane - General Manager Oakland A'sUploaded by Muboshgu, CC 表示 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=20513220による メジャー屈指の 常勝球団に!
  7. セイバーメトリクスの効果と限界 野球の勝利に貢献する要素の正しい理解 過去のスコアブックの活用 ⇒スコアブックの粒度のデータでは 限界がある 自分自身やバット・ボールがどのように動いて いるのかわからない 具体的なトレーニング/技術向上には寄与しな い 計測:特殊な装置

    「裸の上半身に48個のマーカー「弱点知る」阪 神藤浪」 (日刊スポーツ.2019年12月10日) 2021/11/30 京都大学大学院 情報科学研究科「情報通信のデザイン」 22 選手やボールの 位置や速度を 球場でも計測 できたらなぁ… https://www.irasutoya.com/2015/02/blog-post_42.html
  8. statcast:スコアブックから物理計測へ statcast: リアルタイム計測&データ 蓄積システム Future of the Game: Baseball's Latest

    Statistical Revolution 軌道(時刻x位置)の計測 スコアブックから物理量に基づく評価 2021/11/30 京都大学大学院 情報科学研究科「情報通信のデザイン」 23 https://baseballsavant.mlb.com/statcast_field?ev=100&la=13
  9. データに基づく野球の現在 「勝利数」に換算される評価の客観化 WAR (Wins above replacement) リーグの標準的控え選手と交代したときに何勝 増やすことができるか https://www.espn.com/mlb/war/leaders/_/type /seasonal/year/2020

    勝利に貢献できる最適なプレイの発見→そ れを実現できる身体的素質が限定されつつ ある 反射的・画一的となる懸念 イチロー選手の引退会見 https://youtu.be/a4AtxQWhN6I?t=3668 “2001年にアメリカに来てから、19年の野球は 全く違う野球になりました。頭を使わなくてもで きる野球になりつつあるような。” 「誰」が頭を使わない/使っているのか? 2021/11/30 京都大学大学院 情報科学研究科「情報通信のデザイン」 26
  10. サッカーとデータ:計測技術との戦い サッカー:データ測定を妨げる競技特性 広いピッチ:105 x 68[m]  バレーボール:18 x 9 [m]

     補:映像・データ分析が早くから発達.業界標準の分析ソフトあり.  テニス(ダブルス):23.77 x 10.97 [m]  バスケットボール:28 x 15 [m] 高い位置(=スタンド)に測定機器が必要 入り乱れる22名の選手 明確に区切られないプレー  攻撃/守備=ボール保持/非保持 物理計測以前に,野球のスコアブックに相当するデータ すら不十分 2021/11/30 京都大学大学院 情報科学研究科「情報通信のデザイン」 30 soccer basketball tennis volleyball
  11. 勝敗シミュレータ しくみ チームの平均得失点を入力 ポアソン分布に従い得失点の確率を計算する 勝ち・引き分け・負けの確率を計算 勝利確率:1-0, 2-0, 2-1, 3-0, 3-1,

    3-2, …のすべ ての確率を計算して足す 得失点は独立と仮定 2021/11/30 京都大学大学院 情報科学研究科「情報通信のデザイン」 33
  12. 勝敗シミュレータ しくみ チームの平均得失点を入力 ポアソン分布に従い得失点の確率を計算する 勝ち・引き分け・負けの確率を計算 勝利確率:1-0, 2-0, 2-1, 3-0, 3-1,

    3-2, …のすべ ての確率を計算して足す 得失点は独立と仮定 2021/11/30 京都大学大学院 情報科学研究科「情報通信のデザイン」 34
  13. 勝敗シミュレータ しくみ チームの平均得失点を入力 ポアソン分布に従い得失点の確率を計算する 勝ち・引き分け・負けの確率を計算 勝利確率:1-0, 2-0, 2-1, 3-0, 3-1,

    3-2, …のすべ ての確率を計算して足す 得失点は独立と仮定 2021/11/30 京都大学大学院 情報科学研究科「情報通信のデザイン」 35 シミュレータのリンクです (スマホでも遊べます)
  14. 限られたデータからの予測 レーティング 例:各国代表チームの実力評価 得失点などの公式記録 選手の市場価値・所属クラブなど 1分ごとに勝利確率を計算 FiveThirtyEight, 2018 World Cup

    Predictions 538: アメリカ大統領選挙の選挙人の総数 選挙結果の統計予測で有名なサイト スポーツデータも扱っている 2021/11/30 京都大学大学院 情報科学研究科「情報通信のデザイン」 37
  15. 計測技術の発達/サッカー市場の拡大 トラッキングデータ OptaPro data collection Opta(スポーツデータを扱う企業)のデータ取得 の様子(2018年) Tracking - How

    the Bundesliga Stats are Collected Bundesligaでのデータ取得システム紹介. The Future of Football - New Technology in the Bundesliga 画像認識での姿勢取得,など 市場拡大 「ファイナンシャル・フェアプレー(FFP)」 4つのキーワードで読み解くFFPの仕組み 「PE ファンド」や 「ヘッジファンド」が参入! サッ カークラブ買収の 新たなトレンド (私自身財務は素人でよくわかっていません が) 安定した投資先となるための規制が有 効に→投資の活性化・市場拡大 2021/11/30 京都大学大学院 情報科学研究科「情報通信のデザイン」 38
  16. 計測技術とデータ蓄積の果実: ゴール期待値 「ゴール期待値」 Bundesliga Match Facts powered by AWS: xGoals

    How Did These Goals Go In? - We Explain How Goal Probability Works シュートの「位置」「状況」ごとの成功確率を大量の シュートデータから生成  Premier League: 'Expected goals' tells us whether a player really should have scored 2021/11/30 京都大学大学院 情報科学研究科「情報通信のデザイン」 39 公開データを活用 インタラクティブ版 簡易版ゴール期待値 (simplified expected goals, sxG) A public data set of spatio-temporal match events in soccer competitions
  17. サッカーにおけるデータ分析の最前線 ボロノイ図とフォーメーション評価 Geometry of football (Voronoi) ボロノイ図:点(選手)からの距離が等しくなる 境界線を描いた図 2021/11/30 京都大学大学院

    情報科学研究科「情報通信のデザイン」 40 VAEP(VALUING ACTIONS BY ESTIMATING PROBABILITIES) すべてのプレイ(パス,ドリブル,…)がどれだ け得点確率を上げたかを統計的に算出
  18. AI-inspired analysis ゲームAIに触発されるデータ分析 VAEP←囲碁AI 「強化学習」 得点から逆算して手前の状況の評価値を算出 ちょっとした未来予測 コンピュータ内のサッカーシミュレータで多量の 試合を行う→最適戦略を導出 Google

    Research Football with Manchester City F.C. 物理学者を採用するサッカークラブ 新指標の開発から分析作業の自動化まで。 ドイツ代表復権のカギを握る“AI研究” リバプールはデータで「プレーの質」を問う。 南野らを評価する新指標「EPV」 物理学者など,動的システム理論,統計学, コンピュータプログラミングを理解する人材の 登用 サッカー版「セイバーメトリクス」 2021/11/30 京都大学大学院 情報科学研究科「情報通信のデザイン」 43
  19. 「公式世界ランキング」って正しいの? 競技ごとの「公式世界ランキング」は各国の 実力を正しく表しているのか? ランキングの正しさ ランキングが高いほうが勝つ可能性が高い リオ五輪 球技予測プロジェクト 球技5競技10種目を予測する  バスケットボール,ハンドボール,ホッケー,バレー

    ボール,水球  予測内容:各試合の勝敗,メダルの有無/色 予測方法  世界ランキング  雑誌・新聞予測  小中英嗣の予測  Konaka, “A Unified Statistical Rating Method for Team Ball Games and Its Application to Predictions in the Olympic Games” 2021/11/30 京都大学大学院 情報科学研究科「情報通信のデザイン」 48
  20. リオ五輪予測プロジェクト 各試合の勝敗予測 公式世界ランキング:「ランキングが高いほうが 勝つ」 メダル予測 公式世界ランキング:ランキング1-3位 雑誌・新聞の予測  雑誌:Sports Illustrated

    (アメリカのスポーツ専門雑誌)  新聞:USA Today (アメリカの全国紙) 2021/11/30 京都大学大学院 情報科学研究科「情報通信のデザイン」 50 試合数 正解 公式ランキング 370 238 小中英嗣 370 ??? メダル数 正解(メダ ル有無) 正解(メダ ル色) 公式ランキ ング 30 14 6 雑誌(SI) 30 16 8 新聞(USA Today) 30 14 7 小中英嗣 30 ??? ???
  21. リオ五輪予測プロジェクト 各試合の勝敗予測 公式世界ランキング:「ランキングが高いほうが 勝つ」 メダル予測 公式世界ランキング:ランキング1-3位 雑誌・新聞の予測  雑誌:Sports Illustrated

    (アメリカのスポーツ専門雑誌)  新聞:USA Today (アメリカの全国紙) 2021/11/30 京都大学大学院 情報科学研究科「情報通信のデザイン」 51 試合数 正解 公式ランキング 370 238 小中英嗣 370 262* メダル数 正解(メダ ル有無) 正解(メダ ル色) 公式ランキ ング 30 14 6 雑誌(SI) 30 16 8 新聞(USA Today) 30 14 7 小中英嗣 30 ??? ??? (* p<0.01 で有意差あり)
  22. リオ五輪予測プロジェクト 各試合の勝敗予測 公式世界ランキング:「ランキングが高いほうが 勝つ」 メダル予測 公式世界ランキング:ランキング1-3位 雑誌・新聞の予測  雑誌:Sports Illustrated

    (アメリカのスポーツ専門雑誌)  新聞:USA Today (アメリカの全国紙) 2021/11/30 京都大学大学院 情報科学研究科「情報通信のデザイン」 52 試合数 正解 公式ランキング 370 238 小中英嗣 370 262* メダル数 正解(メダ ル有無) 正解(メダ ル色) 公式ランキ ング 30 14 6 雑誌(SI) 30 16 8 新聞(USA Today) 30 14 7 小中英嗣 30 19 10 (* p<0.01 で有意差あり)
  23. リオ五輪予測プロジェクト 各試合の勝敗予測 公式世界ランキング:「ランキングが高いほうが 勝つ」 メダル予測 公式世界ランキング:ランキング1-3位 統計予測を扱う企業(Gracenote) 2021/11/30 京都大学大学院 情報科学研究科「情報通信のデザイン」

    53 試合数 正解 公式ランキング 370 238 小中英嗣 370 262* メダル数 正解(メダ ル有無) 正解(メダ ル色) 公式ランキ ング 30 14 6 雑誌(SI) 30 16 8 新聞(USA Today) 30 14 7 統計予測 (Gracenote) 30 14 10 小中英嗣 30 19 10 (* p<0.01 で有意差あり)
  24. リオ五輪予測プロジェクト:まとめ 公式ランキングは実力を適切に評価 できていないのではないか? 現場を取材している記者・専門家も 実力を適切に評価できていないので はないか? 小中英嗣は何をしたのか? 統計予測企業も公式ランキングや専門家 を出し抜いている 2021/11/30

    京都大学大学院 情報科学研究科「情報通信のデザイン」 54 試合数 正解 公式ランキング 370 238 小中英嗣 370 262* メダル数 正解(メダ ル有無) 正解(メダ ル色) 公式ランキ ング 30 14 6 雑誌(SI) 30 16 8 新聞(USA Today) 30 14 7 統計予測 (Gracenote) 30 14 10 小中英嗣 30 19 10
  25. 「実力」とは何か? 人間の専門家の特徴 ◎競技特性・構造の定性的な理解 ×データの記憶 ×みられる試合数は限られる ×「実力」評価に必要・不要な要素を適切に 分別できない 余分な情報を得られすぎる 「実力」とは何か? 5競技の共通点:得点が多いほうが勝ち

    「実力」=「得点を取る能力」「失点を抑える 能力」 仮説:実力評価に最も有効なデータは過去 の結果(得失点)である 「1点取られる間に何点取れるか」=得失点比 専門家による技術・戦術の評価は必ずしも実力 を定量化しない 2021/11/30 京都大学大学院 情報科学研究科「情報通信のデザイン」 56
  26. 球技の本質 競技ごとの得点機会数や成功率 の差を吸収できる単一モデル チームの得点能力差(横軸)-勝 率(縦軸) ロジスティック回帰? 京都大学大学院 情報科学研究科「情報通信のデザイン」 そうです!! ෝ

    𝑤𝑖,𝑗 = 1 1 + exp −𝐷𝑘 𝑟𝑖 − 𝑟𝑗  𝑟𝑖 , 𝑟 𝑗 :チーム𝑖, 𝑗の実力(レーティング) 𝐷𝑘 : 競技𝑘の変換パラメータ ෝ 𝑤𝑖.𝑗 : チーム𝑖の𝑗に対する予測勝率 (Eloレーティングと同様のモデル) 2021/11/30 60
  27. モデルの構築  find  that minimize subject to 京都大学大学院 情報科学研究科「情報通信のデザイン」

    ෝ 𝑤𝑖,𝑗 = 1 1 + exp −𝐷𝑘 𝑟𝑖 − 𝑟𝑗 𝐽 = ෍ 𝑓𝑜𝑟 𝑎𝑙𝑙 𝑚𝑎𝑡𝑐ℎ𝑒𝑠 𝑤𝑖,𝑗 − ෝ 𝑤𝑖,𝑗 2 𝑟𝑖 (𝑖 = 1, ⋯ , 𝑁𝑇 ), 𝐷𝑘 𝑤𝑖,𝑗 : past results  過去の試合結果と予測勝率の誤差 (二乗和)が最小となるような各チーム レーティング(実力値)と競技パラメー タを導出する 実際は得点割合を説明するパラメータの 導出が間に入っています.[Konaka(2019), to be published] 2021/11/30 61
  28. ランキングが正しくないことの弊害: 世界選手権2018男子大会 日本男子:世界選手権2018出 場 FIVBランキング: 12 プールA内3位 結果: プールA5位 FIVBランキングでの過大評価

    が原因 [https://italy-bulgaria2018.fivb.com/en/results-and-ranking/round1] 2021/11/30 京都大学大学院 情報科学研究科「情報通信のデザイン」 71
  29. イロレーティングの具体例 予測過程 試合前:𝑟𝐴 = 1800, 𝑟𝐵 = 1600 𝑟𝐴 ,

    𝑟𝐵 : 選手A,Bのレーティング 予測勝率 𝑝𝐴,𝐵 = 1 1+10 1600−1800 400 ≃ 0.7597 修正過程 試合が多い場合 Aが勝利  𝑟𝐴 ← 𝑟𝐴 + 16 × 1 − 0.7597 ≃ 1804  𝑟𝐵 ← 𝑟𝐵 + 16 × 0 − 0.2413 ≃ 1596  ±3.84 Bが勝利  𝑟𝐴 ← 𝑟𝐴 + 16 × 0 − 0.7597 ≃ 1787  𝑟𝐵 ← 𝑟𝐵 + 16 × 1 − 0.2413 ≃ 1613  ±12.16 2021/11/30 京都大学大学院 情報科学研究科「情報通信のデザイン」 78
  30. イロレーティングの具体例 予測過程 試合前:𝑟𝐴 = 1800, 𝑟𝐵 = 1600 𝑟𝐴 ,

    𝑟𝐵 : 選手A,Bのレーティング 予測勝率 𝑝𝐴,𝐵 = 1 1+10 1600−1800 400 ≃ 0.7597 レーティング差0=予測勝率0.5 レーティング差大→予測勝率が1に近づく シグモイド関数 2021/11/30 京都大学大学院 情報科学研究科「情報通信のデザイン」 79
  31. イロレーティングの具体例 修正過程の解釈 強いほうが勝つ→予測と実際が近い→レー ティングをそんなに修正しなくてよい→修正量 が少ない 弱いほうが勝つ→予測と実際が遠い→レー ティングをたくさん修正するべき→修正量が多 い 修正過程 試合が多い場合

    Aが勝利  𝑟𝐴 ← 𝑟𝐴 + 16 × 1 − 0.7597 ≃ 1804  𝑟𝐵 ← 𝑟𝐵 + 16 × 0 − 0.2413 ≃ 1596  ±3.84 Bが勝利  𝑟𝐴 ← 𝑟𝐴 + 16 × 0 − 0.7597 ≃ 1787  𝑟𝐵 ← 𝑟𝐵 + 16 × 1 − 0.2413 ≃ 1613  ±12.16 2021/11/30 京都大学大学院 情報科学研究科「情報通信のデザイン」 80
  32. イロレーティングの具体例 修正過程の解釈 強いほうが勝つ→予測と実際が近い→レー ティングをそんなに修正しなくてよい→修正量 が少ない 弱いほうが勝つ→予測と実際が遠い→レー ティングをたくさん修正するべき→修正量が多 い 修正過程 試合が多い場合

    Aが勝利  𝒓𝑨 ← 𝒓𝑨 + 𝟏𝟔 × 𝟏 − 𝟎. 𝟕𝟓𝟗𝟕 ≃ 𝟏𝟖𝟎𝟒  𝒓𝑩 ← 𝒓𝑩 + 𝟏𝟔 × 𝟎 − 𝟎. 𝟐𝟒𝟏𝟑 ≃ 𝟏𝟓𝟗𝟔  ±𝟑. 𝟖𝟒 Bが勝利  𝑟𝐴 ← 𝑟𝐴 + 16 × 0 − 0.7597 ≃ 1787  𝑟𝐵 ← 𝑟𝐵 + 16 × 1 − 0.2413 ≃ 1613  ±12.16 2021/11/30 京都大学大学院 情報科学研究科「情報通信のデザイン」 81
  33. イロレーティングの具体例 修正過程の解釈 強いほうが勝つ→予測と実際が近い→レー ティングをそんなに修正しなくてよい→修正量 が少ない 弱いほうが勝つ→予測と実際が遠い→レー ティングをたくさん修正するべき→修正量が 多い 修正過程 試合が多い場合

    Aが勝利  𝑟𝐴 ← 𝑟𝐴 + 16 × 1 − 0.7597 ≃ 1804  𝑟𝐵 ← 𝑟𝐵 + 16 × 0 − 0.2413 ≃ 1596  ±3.84 Bが勝利  𝒓𝑨 ← 𝒓𝑨 + 𝟏𝟔 × 𝟎 − 𝟎. 𝟕𝟓𝟗𝟕 ≃ 𝟏𝟕𝟖𝟕  𝒓𝑩 ← 𝒓𝑩 + 𝟏𝟔 × 𝟏 − 𝟎. 𝟐𝟒𝟏𝟑 ≃ 𝟏𝟔𝟏𝟑  ±𝟏𝟐. 𝟏𝟔 2021/11/30 京都大学大学院 情報科学研究科「情報通信のデザイン」 82
  34. 様々な競技での イロレーティング系ランキングの採用 ランキングポイント差と得点差 (RWC 2003-2015大会) 「番狂わせ」の定量化 日本初戦が番狂わせランキングトップ (2015) 「番狂わせ」=ランキングポイントが少ないほう が勝つ:わずか15%

    (2003-2015大会) 最大ランキングポイント差(2015大会まで):- 13.09 日本対南アフリカ(2015大会) 2021/11/30 京都大学大学院 情報科学研究科「情報通信のデザイン」 84
  35. 結果的にイロレーティングの 変種となっていた例(とその改善) 大相撲 番付 番付の近い力士と対戦 勝ち越し・負け越し数と番付の上下量が対応 以下の点でランキングとしての性能が下がる 経験的 特殊な運用の番付(横綱・大関) 数理的なレーティングで予測精度が改善

    横綱としてふさわしいか?の定量的な基準 番付と数理的手法の比較(予測正解率) 2021/11/30 京都大学大学院 情報科学研究科「情報通信のデザイン」 86 小中.「大相撲における力士の実力の定量的評価 指標の提案」
  36. 結果的にイロレーティングの 変種となっていた例(とその改善) 大相撲 番付 番付の近い力士と対戦 勝ち越し・負け越し数と番付の上下量が対応 以下の点でランキングとしての性能が下がる 経験的 特殊な運用の番付(横綱・大関) 数理的なレーティングで予測精度が改善

    横綱としてふさわしいか?の定量的な基準 番付と数理的手法の比較(予測正解率) 2021/11/30 京都大学大学院 情報科学研究科「情報通信のデザイン」 87 小中.「大相撲における力士の実力の定量的評価 指標の提案」
  37. どの「平幕優勝」がすごいの? の定量化 2020年1月場所 「最も驚きの」幕内優勝10傑(~2020年3月) year month nameEng wins predicted wins

    logloss 1991 7 Kotofuji 14 5.6273 1.5755 2020 1 Tokushoryu 14 5.5564 1.4768 1984 9 Tagaryu 13 6.1411 1.2961 2008 5 Kotooshu 14 6.8338 1.2534 1972 1 Tochiazuma 11 6.2910 1.2266 1975 7 Kongo 13 6.8946 1.2054 2018 1 Tochinoshin 14 6.6507 1.1892 1961 5 Sadanoyam a 12 7.0139 1.1161 1976 9 Kaiketsu 14 6.6405 1.1107 2000 3 Takatoriki 13 5.9884 1.1094 2021/11/30 88 京都大学大学院 情報科学研究科「情報通信のデザイン」
  38. 横綱昇進の条件は 妥当か? 横綱 内規(とされる) 大関で2場所連続優勝:現役横綱 の人数に左右される どこを基準とするべきか? 前頭の平均=0 (右図) 稀勢の里関

    2017年1月場所終了時:全力士中 最高評価 1度のみの優勝で議論を呼ぶ 2021/11/30 京都大学大学院 情報科学研究科「情報通信のデザイン」 90
  39. で,東京オリンピックは? 公式ランキングの改善 イロレーティング系への改善 バスケットボール ホッケー バレーボール その他2種目(ハンドボール,水球) 公式ランキングを公開しなくなった 提案手法と公式ランキングの比較 ◦

    有意差無し(p=0.271>0.05) 2021/11/30 京都大学大学院 情報科学研究科「情報通信のデザイン」 93 試合数 正解 公式ランキング 354 250 小中英嗣 354 258 数理的根拠を伴う,公正なランキングが広まりつつある
  40. まとめ(3) 適切なランキングの設計 ランキングの良し悪し ランキングの上下が試合結果の予測となってい るべき 大会形式と合わせて慎重に設計されるべき 過大・過小評価による弊害 イロレーティング 勝率予測モデルと試合結果に基づく修正を繰り 返す

    様々なランキングがこちらに変更されつつある 「順序をつける」 スポーツだけではない Web検索など 抽象化:「評価を定量化して並べる」 数学的な構造の活用 2021/11/30 京都大学大学院 情報科学研究科「情報通信のデザイン」 96