Upgrade to Pro
— share decks privately, control downloads, hide ads and more …
Speaker Deck
Features
Speaker Deck
PRO
Sign in
Sign up for free
Search
Search
Apple M1 CPUの脆弱性「PACMAN」について解説する
Search
kuzushiki
June 27, 2022
Technology
0
730
Apple M1 CPUの脆弱性「PACMAN」について解説する
第20回 初心者のためのセキュリティ勉強会 (
https://sfb.connpass.com/event/249919/
) での発表資料です。
kuzushiki
June 27, 2022
Tweet
Share
More Decks by kuzushiki
See All by kuzushiki
ECS-cape – Hijacking IAM Privileges in Amazon ECSを解説する
kuzushiki
0
220
Next.jsの脆弱性(CVE-2025-29927)の話
kuzushiki
0
17
CISSPに出てくるセキュリティモデルとアクセス制御モデルをまとめてみた
kuzushiki
0
96
攻撃者の視点から見たGraphQLのセキュリティ
kuzushiki
0
16
PythonのURLパーサで見つかった脆弱性について解説する
kuzushiki
0
29
Pythonのtarfileによる展開処理がセキュアになりそう
kuzushiki
0
9
Web Cache Deception Attackについて解説する
kuzushiki
0
23
PHP8.2の新機能✞SensitiveParameter✞につい て
kuzushiki
0
12
ファームウェア解析はじめました
kuzushiki
0
9
Other Decks in Technology
See All in Technology
会社を支える Pythonという言語戦略 ~なぜPythonを主要言語にしているのか?~
curekoshimizu
3
770
20251024_TROCCO/COMETAアップデート紹介といくつかデモもやります!_#p_UG 東京:データ活用が進む組織の作り方
soysoysoyb
0
110
個人でデジタル庁の デザインシステムをVue.jsで 作っている話
nishiharatsubasa
3
5.1k
入院医療費算定業務をAIで支援する:包括医療費支払い制度とDPCコーディング (公開版)
hagino3000
0
110
ブラウザのAPIで Nintendo Switch用の特殊なゲーム用コントローラーを体験型コンテンツに / IoTLT @ストラタシス・ジャパン
you
PRO
0
140
ソフトウェアエンジニアの生成AI活用と、これから
lycorptech_jp
PRO
0
910
SOTA競争から人間を超える画像認識へ
shinya7y
0
550
可観測性は開発環境から、開発環境にもオブザーバビリティ導入のススメ
layerx
PRO
2
600
激動の時代を爆速リチーミングで乗り越えろ
sansantech
PRO
1
100
スタートアップの現場で実践しているテストマネジメント #jasst_kyushu
makky_tyuyan
0
130
ハノーファーメッセ2025で見た生成AI活用ユースケース.pdf
hamadakoji
1
480
serverless team topology
_kensh
3
230
Featured
See All Featured
Balancing Empowerment & Direction
lara
5
700
Exploring the Power of Turbo Streams & Action Cable | RailsConf2023
kevinliebholz
36
6.1k
BBQ
matthewcrist
89
9.9k
Put a Button on it: Removing Barriers to Going Fast.
kastner
60
4k
Product Roadmaps are Hard
iamctodd
PRO
55
11k
How to train your dragon (web standard)
notwaldorf
97
6.3k
Automating Front-end Workflow
addyosmani
1371
200k
Being A Developer After 40
akosma
91
590k
Code Reviewing Like a Champion
maltzj
526
40k
Refactoring Trust on Your Teams (GOTO; Chicago 2020)
rmw
35
3.2k
Connecting the Dots Between Site Speed, User Experience & Your Business [WebExpo 2025]
tammyeverts
10
620
Rails Girls Zürich Keynote
gr2m
95
14k
Transcript
Apple M1 CPUの脆弱性 「PACMAN」について解説する kuzushiki 第20回 初心者のためのセキュリティ勉強会 kuzu7shiki
発表内容 Apple M1 CPU の脆弱性「PACMAN」の詳細が 6/9 に公開された PACMAN: Attacking ARM
Pointer Authentication with Speculative Execution https://pacmanattack.com/ 面白そうだったので調べてみることに 第20回 初心者のためのセキュリティ勉強会 kuzu7shiki 2 / 13
PACMAN ってなに? Apple M1 CPU の Pointer Authentication を回避することができる新しい攻撃手法 PACMAN
は ソフトウェア攻撃とハードウェア攻撃の中間 に位置する画期的な攻撃とのこと 第20回 初心者のためのセキュリティ勉強会 kuzu7shiki 3 / 13
M1 CPU 使ってるから心配なんだけど ソフトウェアのアップデートをちゃんとしているなら大丈夫! あくまで数あるセキュリティ機構のうち Pointer Authentication という機能をバイパスできるだけ Q. M2
CPU 買えば大丈夫? A. 「M2 チップで PACMAN が可能となるかどうかはまだ確認されていない」とのことなので、不安な方は購入を待つと良いかも… 第20回 初心者のためのセキュリティ勉強会 kuzu7shiki APPLE M1 チップのポインタ認証を迂回する攻撃「PACMAN」 | スラド IT から引用 4 / 13
Pointer Authentication って何? ポインタの先頭部分に Pointer Authentication Code (PAC) と呼ばれるハッシュを付与し、検証できるようにする仕組み メモリ破壊の脆弱性(バッファオーバーフローなど)により、ポインタが書き換えられ不正な命令を実行されるのを防ぐ
M1 独自の機能というわけではなく、ARM, Qualcomm, Samsung などのチップメーカーも今後対応予定 第20回 初心者のためのセキュリティ勉強会 kuzu7shiki 5 / 13
どうやってバイパスするの? (1 / 3) 投機実行を悪用したサイドチャネル攻撃 投機実行とは? 標準的な CPU は順番通りに命令を実行 命令に使うデータを読み込むまで待機
<- この時間がもったいない! データを読み込むまでの間にもできることをしよう、というスタンス 例えば下記のケースでは yes() と no() を両方実行しておき、使わないほうは破棄する <- ここが大事 第20回 初心者のためのセキュリティ勉強会 kuzu7shiki ` ` ` ` 1 if (cond): 2 yes() 3 else: 4 no() 6 / 13
どうやってバイパスするの? (2 / 3) 破棄されるほうの分岐で PAC の検証を行う 通常、PAC の検証に失敗すると例外となりプログラムがクラッシュしてしまう ->
投機実行の裏で行った場合、「例外となる」という結果が破棄されるため、クラッシュさせずに続行できる でも、破棄されるのに PAC の検証に成功したかどうやって判定するの? 第20回 初心者のためのセキュリティ勉強会 kuzu7shiki 7 / 13
どうやってバイパスするの? (3 / 3) サイドチャネル攻撃を行う サイドチャネル攻撃とは? コンピュータの物理的な特性を外部から観察あるいは測定することで、内部の情報の取得を試みる攻撃 今回は TLB (仮想アドレスに対応した物理メモリのアドレス専用のキャッシュ)
を使う TLBは直前に参照されたアドレスを格納する PAC を求めたいポインタのアドレスで埋め尽くしてしまう PAC の検証後にそのポインタへアクセスさせるように仕向け、その後アクセスした際の時間を確認 アクセス時間が短い -> TLBに格納されているキャッシュがロードされずに残ってる -> 検証失敗 アクセス時間が長い -> TLBに格納されているキャッシュがロードされ退避された -> 検証成功 アクセス時間により、 PAC の検証が成功したかどうかを確認できる! 第20回 初心者のためのセキュリティ勉強会 kuzu7shiki 8 / 13
攻撃の実証 (1 / 3) 1. PACMAN 攻撃の正確さ 不正な PAC と正常な
PAC (それぞれ1万個)を用い、TLB のデータに差が生じるかを検証している 縦軸: 頻度 横軸: ロードが成功し TLB から退避されたデータの個数 (a) と (b) では異なる PACMAN ガジェットを使用している 不正な PAC と 正常な PAC で明確な差が生じている -> PACMAN 攻撃は正確である 第20回 初心者のためのセキュリティ勉強会 kuzu7shiki 9 / 13
攻撃の実証 (2 / 3) 2. 総当りにかかる時間 1つの PAC をテストするのに平均 2.69
ミリ秒かかる -> M1 では 16 ビットの PAC が使われているので平均で 2.94 分かかると推定できる -> 十分実用的 ( 2.69 x 10 x 2 ≒ 176.29 ≒ 2.94 x 60 ) 3. 総当りの正確さ 50 回実験を行った -> 45回は正しい PAC が見つかり、残りの5回は見つからなかった 「ダメじゃん」と思われるかもしれないが、あくまで偽陰性のため再度総当りすればよい。 ※偽陽性(不正な PAC を「正しい」と判断してしまう)があるとクラッシュしてしまうので NG 第20回 初心者のためのセキュリティ勉強会 kuzu7shiki -3 16 10 / 13
攻撃の実証 (3 / 3) 4. 実際に悪用できることの確認 意図的にバッファオーバーフローの脆弱性を作り込み、 Pointer Authentication をバイパスして関数ポインタをカーネル内に存在
する別の関数に書き換える -> 攻撃に成功した 第20回 初心者のためのセキュリティ勉強会 kuzu7shiki 11 / 13
対策 1. PAC の検証結果が投機実行により漏洩しないように、マイクロアーキテクチャやソフトウェアを変更する 2. Spectre に対する防御の先行研究を、PACMAN に対する防御に適応させる 3. ソフトウェアに存在するメモリ破壊の脆弱性にパッチを適用する
-> 皆さんが実行できるのは 3 の対策のみ 第20回 初心者のためのセキュリティ勉強会 kuzu7shiki 12 / 13
終わりに Apple M1 CPU の脆弱性「PACMAN」についてざっくりと解説した 今後検証コードが公開されるとのこと Check back here for
a complete release of all of our code coming soon. -> 来月までに公開されていたら勉強会でデモやるかも 第20回 初心者のためのセキュリティ勉強会 kuzu7shiki 13 / 13