Lock in $30 Savings on PRO—Offer Ends Soon! ⏳
Speaker Deck
Features
Speaker Deck
PRO
Sign in
Sign up for free
Search
Search
オーロラ4Dプロジェクト 文理融合研究とオープンサイエンスの一事例
Search
オープンサイエンス・ミートアップ
July 24, 2016
Science
0
560
オーロラ4Dプロジェクト 文理融合研究とオープンサイエンスの一事例
第2回勉強会
スピーカー:早川尚志さん(京都大学大学院文学研究科)
日 時:2016年7月20日(水)18:00-19:30
場 所:京都大学吉田泉殿
オープンサイエンス・ミートアップ
July 24, 2016
Tweet
Share
More Decks by オープンサイエンス・ミートアップ
See All by オープンサイエンス・ミートアップ
市民科学と科学技術政策
kyotoopenscience
0
230
ACADEMIC GROOVE —— 学術を「体感」するということ
kyotoopenscience
0
130
せんだい歴史学カフェ in KYOTO オープンサイエンスミートアップ! 歴史学の面白さ、伝えます!
kyotoopenscience
1
150
市民が取得した魚類の情報を科学的に活用する試み
kyotoopenscience
1
230
宇宙・地球のオープンデータでハッカソン
kyotoopenscience
0
86
ゲームを研究してみよう (でも、どうやって?) / How to study "game"
kyotoopenscience
0
330
市民参加型調査「花まるマルハナバチ国勢調査」でできたこと・できなかったこと
kyotoopenscience
0
210
ナメクジ捜査網 -市民科学とナメクジのこれから-
kyotoopenscience
0
300
市民参加型のヒアリ防除のための発見位置共有システムの開発と普及
kyotoopenscience
0
260
Other Decks in Science
See All in Science
Mechanistic Interpretability の紹介
sohtakahashi
0
360
ICRA2024 速報
rpc
3
5.3k
Factorized Diffusion: Perceptual Illusions by Noise Decomposition
tomoaki0705
0
240
ウェーブレットおきもち講座
aikiriao
1
790
Science of Scienceおよび科学計量学に関する研究論文の俯瞰可視化_ポスター版
hayataka88
0
130
多次元展開法を用いた 多値バイクラスタリング モデルの提案
kosugitti
0
190
はじめての「相関と因果とエビデンス」入門:“動機づけられた推論” に抗うために
takehikoihayashi
17
6.9k
240510 COGNAC LabChat
kazh
0
140
WCS-LA-2024
lcolladotor
0
120
トラブルがあったコンペに学ぶデータ分析
tereka114
2
980
いまAI組織が求める企画開発エンジニアとは?
roadroller
2
1.3k
構造設計のための3D生成AI-最新の取り組みと今後の展開-
kojinishiguchi
0
570
Featured
See All Featured
The Art of Delivering Value - GDevCon NA Keynote
reverentgeek
8
1.1k
Ruby is Unlike a Banana
tanoku
97
11k
Writing Fast Ruby
sferik
627
61k
Into the Great Unknown - MozCon
thekraken
33
1.5k
How to train your dragon (web standard)
notwaldorf
88
5.7k
Typedesign – Prime Four
hannesfritz
40
2.4k
Easily Structure & Communicate Ideas using Wireframe
afnizarnur
191
16k
Evolution of real-time – Irina Nazarova, EuRuKo, 2024
irinanazarova
4
390
Git: the NoSQL Database
bkeepers
PRO
427
64k
Creating an realtime collaboration tool: Agile Flush - .NET Oxford
marcduiker
25
1.8k
Java REST API Framework Comparison - PWX 2021
mraible
PRO
28
8.2k
Distributed Sagas: A Protocol for Coordinating Microservices
caitiem20
329
21k
Transcript
オーロラ4Dプロジェクト 文理融合研究とオープンサイエン スの一事例 早川尚志 京都大学大学院文学研究科 第二回オープンサイエンス勉強会 2016/06/25 京都大学 Aurora in
15/01/2016 at Poker Flat in Alaska
自分の研究分野
Aurora4D project http://aurora4d.jp 2015/5/25
太陽黒点の観測の歴史:400年 フレアの観測の歴史:150年 黒点の数 太陽活動 高 多 低 少 過去400年の黒点の数 Galileo
Galilei フレアの観測第一号(1859年9月1 日、Carrington(UK)により) 約11年の活動周期 ではそれ以前を知 るには?
• C14 (年輪),Be10 (氷縞コア) etc. – ex. Miyake (2012; 2013)
=> CE 775, CE 994 の天文イベントを 示唆 (スーパーフレアの候補 ?) • 問題点 – 原理上1年刻みの精度が限界 – 一部年代を除き,10年刻みのデータくらいしかない(Solanki et al. 2004; Steinhilber et al. 2009) – 誤差から年代のずれが生じるケースも => 補正が必要 方法1:放射性同位体比分析
方法2:文献史料は2500年 • Eddy (1980) → 利用の重要性を指摘 • 黒点・オーロラの形で記録が残る – 黒点:BC
465 ギリシア〜(Wittman et al. 1978) – オーロラ:BC 567 バビロニア〜(Stephenson et al. 2004) • 以降世界中で記録 => 特に東アジア – 中国:Keimatsu (1970-76), Yau et al. (1988), 斎藤(1992), Yau et al. (1995),荘(2009),Hayakawa et al.(2015) – 日本:神田(1933), Matsushita (1956),Matsushita (2005) – 韓国:Lee et al. (2004)
• 黒点 … 黒子,黒氣(日中) • オーロラ … 用語論にも変遷 – 神田(1933):赤氣…「極光らしい場合が多い」
– Keimatsu(1970-76):「夜間の発光現象全て」 – 斎藤&小澤(1992):赤氣,白氣 – Yau et al.(1995):基本的に赤氣…慶松から「流星」を除外 – 荘(2009):夜間の発光現象 − 流星・彗星 – Hayakawa et al.(2015):氣,雲,光 – Hayakawa et al.(2016):白虹にもその可能性 • 用語は日中韓でほぼ共通 => 漢字文化圏の所以 用語論 天元玉曆祥異賦,国立公文書館 昌平坂學問所本 内閣文庫 305-257 実際の所,各々の用語にどれほどの妥当性があるのか => 有名な短期イベントを元に検証 しかし,冷静に考えてみると, とんでもない作業量!
今までの研究 膨大な量の文献から 必要情報を拾い出す必要
最近:テキストデータの公開 ↑ キーワード 検索結果→ 台湾・中央研究院が整備する「新漢籍全文」:正史他有名史料を多数収録
最近の変化:写本画像の公開 Vatican Digital Library:NTT DATAの後援で所蔵史料のデジタル化を進展
オープンサイエンスの恩恵 • 今まで – 文字史料:一頁ずつめくる必要 – 写本史料:所蔵先に出向いて手続きする必要 • 現状の変化 –
文字史料:一括検索が可能に! – 写本史料:現地に出向かずともアクセス可能に • 即ち,自宅に居ながらに能率良い研究が可能な時代に • 無論,最後は原典に当たる必要性あり(入力段階のミスetc)
Aurora4D project http://aurora4d.jp 2015/5/25 オーロラに思いを馳せるのは研究者だけじゃない 目指すは三つのオープンサイエンス
① 史料調査成果の発信 時間軸を示しつつ(地図も追加予定),オーロラの歴史を視覚的に説明
None
③ 地方の史料を集める • オーロラ記録は日記類に残りやすい(異常気象として) • 観測地点が増えた方がオーロラのオーバルが再現可能 – e.g. 1770年の巨大イベント(Hayakawa et
al., in prep) – => 世界はもとより,日本全国の文献を蒐集する必要 • 当然,扱う範囲が膨大になりすぎて手が回りきらない • 地方の民間人の協力が不可欠 • 2016/03/12 「古典オーロラハンター」開催 => キャパ以上の応募
• 人類史上初めて科学的に観測されたフレア(Carrington、 1859)…観測史上最大の磁気嵐(~1760nT) => ハワ イ,キューバなど低緯度でもオーロラ!(N16°まで) • 電信機などの火花放電が原因の火事が多発(Loomis 1859-64)) •
いわば観測史上最初の極端宇宙天気に拠る災害例 具体事例:キャリントンイベント(1859) Sunspots sketched by Richard Carrington on Sept. 1, 1859. Copyright: Royal Astronomical Society Green 2005
日本歴史書哀史 • キャリントン・イベントの日本での観測地点は全4箇所(Hayakawa et al. PASJ, submitted) – J1和歌山県新宮,J2和歌山県印南,J3弘前,J4秋田県大館 –
この内,原史料が残るのはJ3弘前の金木屋日記のみ – 残りの史料は自治体史に引用される形で残存 • 原史料は何処に…? • 実際に聞いてみると… – 自治体史編纂後,所有者に返却 – 所有者が引っ越してしまうと,自治体も把握できず => 行方不明 • 市民参加 => 貴重な歴史書の足取りを掴む意味でも重要
クローズな研究会x3 →H28はオープンに 古典オーロラハンター
None
新手法と社会的な意義の発見 • 市民参加で今までの研究から漏れていた新記述を発掘 – 「北斗七星にかかり淡く広がる白気」、1189年、吾妻鏡。 • 老若男女の幅広さ、市民参加はネットだけではない。 – 終了後、多くのお年寄りから「今日はきて良かった、ありがとう」と声をかけていた だきました。今回、グループで活動することで、お年寄り同士が友達になりまし
た。また、なかには家で予習をしてきて、となりのお年寄りに教えてあげたりして、 人の輪がひろがりました。 – 高校生グループは「もっと漢字がよめたら、できるんだけど」言っていました。現在、 高校では古文・漢文は必修ではありません。そうした高校の教育の問題点、 真のグローバル教育のあり方も見えてきたかと思います。
第一回オーロラハンターの印象 • 立川と言う微妙(?)な立地にも関わらず,開催すれば来る • 抽選漏れで苦情まで来たとか… • 国文研のネームバリューが大きい面は否定できない? • 遠路来てくれた人の存在も •
地方で開催してもそれなりの集客を見込める? • 中には在野の地方史家も来る可能性 • しかし,開催のための人員・資金は必要… 潜在的な需要は明らか <=> しかし,同時に問題点も浮き彫りに
情報の質をどう担保するか • 市民参加型研究が進むにつれて浮き彫りになる問題点も • 市民 ≠ プロの学者…情報の質を吟味する必要 • (ex)廿日/甘日,卅日/冊日etc. •
データで入力してもらってもそのままは使えない。 • 出典を頁数まで書いてもらうのを徹底する必要 • 1000頁くらいもある文献を一から読み直して探すなら,自分でやる 方が早い
情報をどう管理するか • 著作権・知財権:学術・教育目的は免責が効く – => オンラインデータベースでのネット公開はさすがに逸脱 • 他の文献からの引用も,引用の範囲で止める必要 – 『日本近世天文史料』の内容の無断公開は,刑事罰対象
• 図像史料・写本等,非出版物は所蔵先の許可を取る必要 – Vatican Library等は規定がネット公開されているが,多くの図書館で は直接問い合わせないと規定は分からない – ネットでの無断改変を恐れる流れ(金沢市玉川図書館) – 公開の都度,版権交渉が必要 => 下手うつと出禁に(東丸神社)
情報をどう管理するか • 情報公開が研究を促進するのは事実 – (ex)スバルの観測データ:1年後には全公開 • 歴史学では誰が最初にその記録を見つけたかも重要 – 論文発表前に無批判にネット公開して良いのか? –
歴史学者はデータ観測用の人工衛星ではない! – 目下,Aurora4D Projectでの文理での争点 • データへの責任は持てるのか – 論文公開後の方がなおさら良いのでは • 公開のタイミングも問題
史料利用は実は大変 • 閲覧のため現地に行く必要 – 最近オンライン公開が進んでると言っても,ごく一部 • 閲覧できるかは,図書館の規定と裁量次第 • 画像の正式取得,掲載許可で各々料金がかかる –
バチカンの事例(回覧資料) – 史料保管のために止むを得ないコストとはいえ • 図書館の司書達に聞いてみる – 無断で変な意図の下に使われたくない
便利と責任の狭間で • データの質の担保 – ホームページ上に即反映は危険 – 市民の報告を専門家がチェックする形が良いか • 公開のタイミング –
論文公開前/公開後? – 何処までのデータを隠して,何処までのデータを出すか • 史料の利用・公開 – 版権交渉はしっかりやる必要 – 史料所蔵機関への敬意
結論 • 展望とメリット – オープンサイエンスによって歴史学にも変化 – 市民参加で地方史料の蒐集・行方の特定が可能に? – 史料自体へのアクセス自体も容易に? •
問題点と改善点 – 情報の確度の担保 – 著作権・知財権との棲み分け – 集めた情報をどう管理・発信して行くか