Upgrade to Pro — share decks privately, control downloads, hide ads and more …

個人の活用を超えた AIファーストな開発チームを目指した取り組み

個人の活用を超えた AIファーストな開発チームを目指した取り組み

Avatar for Masaya Murakami

Masaya Murakami

June 10, 2025

Other Decks in Technology

Transcript

  1. 2 Copyright © 2015 every, Inc. All rights reserved. 自己紹介

    株式会社エブリー デリッシュキッチン開発部 部長 村上 将也(Murakami Masaya) 2019年 エブリーにバックエンドエンジニアで入社 2024年 デリッシュキッチン開発部 部長就任 最近の出来事: 『チ。- 地球の運動について』のアニメを全話いっき見
  2. 3 Copyright © 2015 every, Inc. All rights reserved. 『デリッシュキッチン』について

    レシピ提案 / レシピ検索 / 
 献立機能 
 買い物リスト / チラシ / 
 店頭ビーコン連動 
 調理手順動画/キッチンモード / 
 作った・レビュー / お気に入り 
 菅原千遥 
 DELISH KITCHEN
 カンパニー長
 料理研究家
 斎藤 香織
 副編集長
 管理栄養士
 • 30名以上の食のプロが、蓄積 データに基づきオリジナル 
 レシピを日々考案 
 • 月間1,500本以上の動画配信 
 サービス・機能 
 レシピ検討 
 買い物
 料理中・料理後 
 専門家によるレシピ考案・監修 
 ▪ 日本最大級のレシピ動画サービス 
 ▪ 「誰でも簡単においしく作れるレシピ動画」毎日配信 
 ▪ 全レシピ、管理栄養士が監修!蓄積データによるオリジナルレシピを考案 
 ▪ SNS/APP/WEBを通じて延べ50,000本以上のレシピ動画を提供 

  3. 4 Copyright © 2015 every, Inc. All rights reserved. 本日お話するトピック

    • AI活用を推進する中で感じた課題 • なぜその課題が生まれているのか • AIを上手く活用できる状態とはどんな状態なのか • チームで取り組むために今始めていること
  4. 5 Copyright © 2015 every, Inc. All rights reserved. 『AI料理アシスタント』への進化

    これまでの「レシピ動画アプリ」からあなただけの管理栄養士が スマホにいるような「AI料理アシスタント」に大きくアップデートし ていく。 CEOからのメッセージ 開発生産性 10倍 AIファーストな新しい働き方をプロダクトチームで模索し、より早く 高品質なサービスを提供していく。そのためのAIツールも積極投 資する。 AI ファースト・カンパニーを目指す プロダクト 組織
  5. 6 Copyright © 2015 every, Inc. All rights reserved. 直面している課題

    AS-IS(現状) 個人レベルの限定的な活用で止まる エンジニアそれぞれが工夫しながら、個別実装のサ ポートとして使ってる 1 TO-BE(理想) 「個人 → 組織」への壁 「属人化 → 標準化」への壁 ツールの導入や活用を推奨するだけでは AI活用は進んでいかない AI活用状況にばらつきがある まだまだ積極的に使っている層にノウハウが偏って いる 2 チームでAI前提のワークフローが組めてる 開発の各ステップでAIが入り込み、実装に関しては ほぼAIに任せられている 1 誰もがAI活用で生産性が向上できる AI活用のナレッジが溜まり、誰でもAIを使った業務推 進が当たり前になっている 2
  6. 7 Copyright © 2015 every, Inc. All rights reserved. メンバーにもまずは『AIに任せるところから始めてみよう』と声をかけた

    その中で以下のような声があがった • 実装について聞いてもいい加減なこと言って、正しく答えてくれない • 実装を任せてみたが、アウトプットが微妙で自分が書く方が早かった • AIに任せると実装漏れがあったり、まだ修正が残っているのに止まったりする → 結論: まだまだメインの実装は AIに任せられるようなクオリティではなさそう? 作業を部分的に AIがサポートするところで止まる 直面した課題
  7. 10 Copyright © 2015 every, Inc. All rights reserved. AIを

    ”上手く” 活用するためのコストは意外と大きい 直面した課題 作業を AIがサポートする(限定的な活用) AIに作業を任せる(フル活用) 手間なく、すぐにAIが機能する活用中心 • コーディングの補完 • エラー解決・デバックのアシスト • 汎用的なコーディング • テストの雛形作成 基本的には従来通り、エンジニアがコーディング AIに業務を任せる上で行うこと 1. ドメイン知識、会社独自のルールなど暗黙知に なっている部分も含め、学習させる 2. AIが読み書きしやすいコード設計にする 3. 作業を適切な粒度に分解し、言語化する 正解がない中でトライ&エラーを繰り返し、AIの精度をあ げていく 短期的に効率化された状態 足元の業務で早くアウトプットを出すための最適解 短期的に非効率な状態 成果が出るまで時間がかかるので選択しにくい
  8. 11 Copyright © 2015 every, Inc. All rights reserved. 直面した課題

    作業を AIがサポートする(限定的な活用) AIに作業を任せる(フル活用) 手間なく、すぐにAIが機能する活用中心 • コーディングの補完 • エラー解決・デバックのアシスト • 汎用的なコーディング • テストの雛形作成 基本的には従来通り、エンジニアがコーディング AIに業務を任せる上で行うこと 1. ドメイン知識、会社独自のルールなど暗黙知に なっている部分も含め、学習させる 2. AIが読み書きしやすいコード設計にする 3. 作業を適切な粒度に分解し、言語化する 正解がない中でトライ&エラーを繰り返し、AIの精度をあ げていく 短期的に効率化された状態 足元の業務で早くアウトプットを出すための最適解 短期的に非効率な状態 成果が出るまで時間がかかるので選択しにくい 開発生産性 10倍に向けた AIファーストなチームへの道
  9. 12 Copyright © 2015 every, Inc. All rights reserved. •

    ドキュメント&ナレッジの整備 • 業務フロー・ドメイン知識をドキュメント化して、最新の状態に保つ • 情報が検索しやすい状態に整理 • 品質の高いコード • システムをコード化できている • 適切に設計され、読みやすく変更しやすいコードになっている • 今後の拡張が容易な作りになっている • 自動でAIのコード品質を担保できる仕組み • CI/CD、テスト、Linter/Formatterでのセルフチェック整備 • 自動生成で決まったコードが出力できるものは積極的に活用 AIが活躍できるオンボーディング環境がまず必要不可欠 AI活用で必要なこと 1 2 3
  10. 13 Copyright © 2015 every, Inc. All rights reserved. •

    所属先の事業詳細 • 社内用語 • 業務ルール • システムの全体構成 • 各サービスの責務・データフロー • ブランチ/PRルール・コードレビュー方針 • 実装時に注意すべきこと • リリースフロー → これらが古いままだったり、無視して指示を出しても動けないのは人間と同じ 人間が入社後にオンボーディングで学ぶことは AIも必要な知識 ドキュメント&ナレッジの整備
  11. 14 Copyright © 2015 every, Inc. All rights reserved. •

    そもそもコード化されておらず、把握に時間かかる(インフラ、API仕様など) • マジックナンバーが多く、意味が理解できない • 変数名が適当で処理が追いにくい • README.mdがない • 関数やファイルが肥大化しすぎている • 使われていなさそうなコードが多くあって、影響範囲が正しく認識できない • 冗長なコードが多くて、変更箇所が多い • 書き方が場所によってバラバラでどのように書けばいいのかわからない → AIによるアウトプットの質の悪さ、正しい実装理解の妨げにつながる エンジニアにとって辛い開発環境は AIも同様に辛い 品質の高いコード
  12. 15 Copyright © 2015 every, Inc. All rights reserved. 並列でAIエージェントが動いていく時代に人間による

    レビュー負荷をどう下げていくかが重要 AIがセルフチェックできる基盤 • CI/CD • テスト(単体/E2Eなど) • Linter • Formatter 自動生成でレビュー不要な領域を増やす • OpenAPIドキュメントからコード生成 • DBからモデルコード生成 AIエージェント時代にいかに人間のレビュー負荷を下げるか 自動でAIのコード品質を担保できる仕組み Devinの実行ログ(一部) テスト失敗 テスト成功 & コミット リトライ
  13. 16 Copyright © 2015 every, Inc. All rights reserved. •

    リーダーとメンバーから選出した AIエバンジェリストでAI推進部隊を作る • チームの意思決定やコスト捻出の調整ができるリーダーが伴奏するのが大切 • 業務の内情を熟知したメンバーで AI検証ができ、即時活用できる → 短期的な工数増加やアウトプット遅延を許容した投資を行う AI推進部隊をチーム内に作る 現在の取り組み リーダー AIエバンジェリスト メンバー メンバー メンバー AI推進部隊
  14. 17 Copyright © 2015 every, Inc. All rights reserved. AI活用のPDCAを回しながら、オンボーディング環境を整えていく

    現在の取り組み   AI検証 • 新しいツールの導入 • 過去の実装や1タスクをAIに一旦任せてみ る • 環境整備が必要な部分の見極め • AIと人間の役割分担を整理   オンボーディング環境整備 • ドキュメントの整備 • MCP、プロジェクトルールの作成 • 他職種(PdM、Des)との協働 • コードの設計見直し • ガードレールの強化   チーム内の知見共有 • 全員が業務で活用可能な状態にする • playbookの作成 • プロンプトテンプレートの共有 • 検証結果のドキュメント化 • 実行のデモ 1 2 3
  15. 18 Copyright © 2015 every, Inc. All rights reserved. •

    そもそも未知の業務、実装イメージがつかないものは任せられない • 過去のPRから同じタスクをAIに任せてみると気づくことがある • 過去の業務経験や得た知識から無意識に当たり前と思ってたことができない • 特定ファイルを読み込む時だけ、適切に理解できるコンテキスト量を超えて性能悪化する • ある変更を加えた時に付随する変更箇所が必要以上に多く、 AIが処理仕切れない • マイグレーション中なのに古い実装を参考にしてコードを書いてしまう • そこから足りない情報を整備するのも立派なAI活用に向けた第一歩 → 人間が無意識にやってたこと、頑張ってやってたことに気づく まずは過去の実装を AIに任せてみるだけでも学びがある 現在の取り組み
  16. 19 Copyright © 2015 every, Inc. All rights reserved. •

    実装の各ステップごとに分けて、どんなガイドラインを守っ て欲しいかを明文化して指示を出す • DBのマイグレーション操作 • APIを作成/編集 • テストの追加 など • 事業固有のドメイン知識や業務フローをドキュメント化して おく ※ AIツールが増えていく中でドキュメントの一元管理をどうして いくか検討中 ドキュメント、ルール整備 現在の取り組み (例)db-migration.mdc
  17. 20 Copyright © 2015 every, Inc. All rights reserved. •

    API変更でテストケースを必要以上に修正が多くなり、AIが処理しきれない事象が発生 • bodyに新しいフィールドを requiredで追加すると、各テストケースにフィールドを追加しないといけない (テストファイル自体、数千行) • 変更箇所が小さくなるようにリファクタ コードの見直し 現在の取り組み (例)APIのリクエスト層のテスト
  18. 21 Copyright © 2015 every, Inc. All rights reserved. •

    データベース構造をAIが正しく把握するためのMCP サーバーの構築 • カラムが取りうる種別や補足で追加したい情報を 付与してAIに教える • テストデータの作成や保存されているデータの確 認が可能 MCPサーバーの構築 現在の取り組み (例)describe_tablesツール
  19. 22 Copyright © 2015 every, Inc. All rights reserved. 現在の状況

    • 徐々にAI活用も小手先のテクニックよりオンボーディング環境整備に動けるようになった • 業務ルールのドキュメント化 • 曖昧になっていた実装方針の明文化 • 冗長なコードのリファクタ • 責務を分離して、設計自体を見直す • 新しいツールの導入時に検証のスピード感が上がった • 整備していたオンボーディング環境を再利用して、より本質的なツール自体の価値検証に時間を使える • AI時代におけるエンジニアの必要なスキルセットをメンバー自身も考えはじめた • より品質の高いコードを生み出すための設計能力など上流工程を重視する傾向 • ソフトスキルっぽい課題設定力やそこからの課題解決力にも目が向き始める
  20. 23 Copyright © 2015 every, Inc. All rights reserved. まとめ

    • AIをちゃんと活用するにはその使い方以上に周辺の環境を整えることが大事 • ドキュメント&ナレッジの整備 • 品質の高いコード • 自動でAIのコード品質を担保できる仕組み • ツールを導入するだけではなく、短期的に時間がかかってもその環境整備に投資する意思決定 をしよう • やみくもに環境を作っていくよりも AI検証と環境整備のサイクルを高速で回せる体制が良いので はないか