Upgrade to Pro
— share decks privately, control downloads, hide ads and more …
Speaker Deck
Features
Speaker Deck
PRO
Sign in
Sign up for free
Search
Search
力学の基本原理を用いたオーバハンドパスにおける合理的ルール構築の検討
Search
MinchiMinchi
August 11, 2022
Technology
1
790
力学の基本原理を用いたオーバハンドパス における合理的ルール構築の検討
MinchiMinchi
August 11, 2022
Tweet
Share
More Decks by MinchiMinchi
See All by MinchiMinchi
放課後レクチャ(2022)
minchiminchi
0
110
何故,協調活動が創出するのか?
minchiminchi
0
240
大円距離の式の導出
minchiminchi
0
40
戦術面のトレーニングで感じてほしいこと(何故,協調活動が創出するのか?)
minchiminchi
0
71
戦術面のトレーニングで感じてほしいこと(何故,協調活動が創出するのか?)
minchiminchi
1
200
オフ・ザ・ボールの選手位置に関するデータ記録方法の検討
minchiminchi
0
45
ジャンプ動作時の床反力発生に関する力学的考察
minchiminchi
0
1.2k
ラインジャッジにおける人間の認知限界の検討
minchiminchi
0
640
身体を用いたボールヒットにおける撃心についての検討
minchiminchi
1
460
Other Decks in Technology
See All in Technology
技術広報のOKRで生み出す 開発組織への価値 〜 カンファレンス協賛を通して育む学びの文化 〜 / Creating Value for Development Organisations Through Technical Communications OKRs — Nurturing a Culture of Learning Through Conference Sponsorship —
pauli
5
300
身近なCSVを活用する!AWSのデータ分析基盤アーキテクチャ
koosun
0
1.3k
re:Invent完全攻略ガイド
junjikoide
1
360
re:Invent2025 事前勉強会 歴史と愉しみ方10分LT編
toshi_atsumi
0
120
AIを前提に、業務を”再構築”せよ IVRyの9ヶ月にわたる挑戦と未来の働き方 (BTCONJP2025)
yueda256
1
740
Claude Code 10連ガチャ
uhyo
4
690
Redux → Recoil → Zustand → useSyncExternalStore: 状態管理の10年とReact本来の姿
zozotech
PRO
16
8.3k
改竄して学ぶコンテナサプライチェーンセキュリティ ~コンテナイメージの完全性を目指して~/tampering-container-supplychain-security
mochizuki875
1
230
us-east-1 の障害が 起きると なぜ ソワソワするのか
miu_crescent
PRO
3
920
Service Monitoring Platformについて
lycorptech_jp
PRO
0
150
やり方は一つだけじゃない、正解だけを目指さず寄り道やその先まで自分流に楽しむ趣味プログラミングの探求 2025-11-15 YAPC::Fukuoka
sugyan
1
790
JavaScript パーサーに using 対応をする過程で与えたエコシステムへの影響
baseballyama
1
100
Featured
See All Featured
The World Runs on Bad Software
bkeepers
PRO
72
12k
Why Our Code Smells
bkeepers
PRO
340
57k
How Fast Is Fast Enough? [PerfNow 2025]
tammyeverts
3
320
The Straight Up "How To Draw Better" Workshop
denniskardys
239
140k
Why You Should Never Use an ORM
jnunemaker
PRO
60
9.6k
Building a Modern Day E-commerce SEO Strategy
aleyda
45
8.1k
GitHub's CSS Performance
jonrohan
1032
470k
I Don’t Have Time: Getting Over the Fear to Launch Your Podcast
jcasabona
34
2.5k
CoffeeScript is Beautiful & I Never Want to Write Plain JavaScript Again
sstephenson
162
15k
The Myth of the Modular Monolith - Day 2 Keynote - Rails World 2024
eileencodes
26
3.2k
How To Stay Up To Date on Web Technology
chriscoyier
791
250k
Balancing Empowerment & Direction
lara
5
750
Transcript
力学の基本原理を用いたオーバハンドパス における合理的ルール構築の検討 三村泰成 鶴岡工業高等専門学校 Discussion of rational rule construction in
overhand pass using basic principle of mechanics 1
はじめに バレーボール(Volleyball)という競技とは?: 「ボールを地面に接地させずに打ち返す」という競技 オーバーハンドパス 「打ち返す」という現象ではない?
ルールでも明示されていない? (両手でボールヒットする?) • 「オーバーハンドパス」という力学現象を明らかにする • 力学を用いてルールを提案する. 2 • 『持っているかどうか』の判別をする方法がこれまでない. • カテゴリによっては,大きな大会で反則を取られていないケースもある. • チームはルールに従った行動をとるので,選手育成に悪影響がある. 問題 目的
ボールが跳ね返るとは? 3 ボールが床でバウンドして跳ね返る挙動(概念図) 離床 最大変形 着床
ボールが跳ね返るときの床反力 4 弾性反発 接地時間は約 0.01 秒 1m程度の高さから静かに落と して反発した時 ボールをたたきつけて反発した 時
弾性反発現象の分類 5 time time time (床で)跳ね返る 打ち返す 突く(先端で打ち返す) time ボール以外の弾性体で跳ね返す
弾き返す Volley ??
オーバーハンドパスとは? 6 • ボールの弾性反発? • 身体部位で弾き返す? • キャッチ&スロー? 日本バレーボール協会,コーチングバレーボール基礎編,大修館書店,(2017)
ラファエル・オリベイラ選手 https://youtu.be/71tGWES43gw http://www.volleyball-movies.net 7
アンダーハンドパス 8 ボールが変形している!! ボールの弾性反発 30fps 240fps 接触時間: 0.01667秒 (4/240)
オーバーハンドパス 9 30fps 240fps 接触時間: 0.0833秒 (20/240) “volley” ではないが,ここまでを Good
とするようである. ボールはほとんど変形しない!! 身体側で弾性反発を実現
高速キャッチ&スロー 10 30fps 240fps 肘が屈曲方向に動く 接触時間: 0.1542秒 (37/240) もはや弾性反発とは 言えない!!
高速キャッチ&スロー時の肘関節の屈曲 11 ボールタッチ後に肘関節が屈曲側に動く!
接触時間の比較(概算) 12 0.01秒~0.03秒 アンダーハンドパス オーバーハンドパス 高速キャッチ&スロー 0 0.1 0.2 キャッチ&スロー
0.08秒~0.14秒 0.12秒~0.2秒 0.2秒~ 時間での判別は困難!!
オーバーハンドパスの動作解析 13 (1)手の“ばね”を活かす (2)手の“ばね”を、身体の“力”で活かす Makita et al.,(2015), the
25th Congress of the Int. Society of Biomechanics, AS-0165. ボール接触時の床反力 縄田, 日本バレーボール学会 第21回大会2日目(2016/03/20) 肘の伸展
直上突きパス(できるだけ肘を固定) 14 30fps 240fps 接触時間: 0.1333秒 (32/240) “突いていると感じる” オーバーハンドパス. 実際には手首の弾性反発であり,ボールは
変形しない.
玉突き現象 15 手 体 幹 下肢 上腕 前腕 手首 縄田,
日本バレーボール学会 第21回大会2日目(2016/03/20) 突きパス オーバーハンドパス 手 体 幹 下肢 上腕 前腕 手首 肘 肩 肘関節は 伸展方向 に動く! 屈曲方向に動くと バネを活かせない!
突きパスの 3DCAD モデル 16 初期状態 バネの力で体幹を加速 ゴムの塊 炭素鋼
「床反力」と「手とボールの接触力」 17 バネ反力 両足 接触力(両手とボール) ボールの速度
オーバーハンドパスに関するルールの提案 18 オーバーハンドパスは,ボールではなく,身体の弾性エネルギを利 用した弾性反発である.弾性エネルギの蓄積&解放には,手指関 節に付随する筋腱複合体を主に利用する. 力学現象 オーバーハンドパスのとき,ボールが接触してから肘関 節は屈曲方向に動いてはならない. 屈曲方向に動いた場合は,「キャッチ」の反則と見なす. ルール
ボール接触時に肘関節は伸展しないと バネを活かすことができない!!
今後の課題 19 多くの選手を使った動画撮影,計測,検証. 信頼性を向上するには,信頼性のあるデータが必要である. 今回のルールを多くの審判が理解し,判定に利用できるかの 検証も必要である.
力学モデル: 「突きパス」を実現できるロボットの製作. オーバーハンドパスを実施できる「義手」,「装具」の製作. 人工物を用いて力学現象を実現できれば, 「動作の力学モデル」の信頼性が向上する n 数が必要
ジャンプ動作との比較 20 スクワットジャンプ ≒ ゆっくりキャッチ&スロー 垂直跳び(反動をつけてジャンプ)≒ 高速キャッチ&スロー
リバウンドジャンプ ≒ オーバーハンドパス 「オーバーハンドパス」という動作感覚は, バレーボール以外で経験することは少ないかもしれない.
まとめ 「オーバーハンドパス」という力学現象を明らかとした. 筋腱複合体を用いた「弾性反発」であることを示した. 3DCADモデルを製作し,力学モデルを検証した. 「肘の伸展・屈曲」に着目することで,「オーバーハンド・ パス」と「キャッチ&スロー」を判別できることを示した.
新たな「ルール」を提案した. 「力学現象」を示すことで,合理的なルールを 規定できることを明らかにした. 21
資料 22
動作を習得できる環境とは? マクロスケール: 身体全体で行われてる仕事 ミクロスケール: 各部位が行う仕事 メゾスケール: 簡略化したモデルが行う仕事 • 身体中で起きている現象? •
形,負荷のタイミング,...? • 外から教えることは不可能! 選手自身が感じて, 自分自身で学習できる 環境 を整備する. 過剰な関節 過剰なアクチュエータ 過剰に変形する • マルチスケールで観察が必要! • 何が起きてほしいのか? • 何を感じてほしいのか? 思考錯誤,試行錯誤 23